諸々,徒然… その五 パロディ・In・うる星やつら(1) 
 
昨年秋以降,東京でVHF波最後のチャンネルを使用する某民放局(回りくどい言い方…)をキー局に,故・石ノ森章太郎先生の代表作「サイボーグ009」が放映されていますね(‘02年4月現在)。かつて,‘70年代後半に放映された作品(009こと島村ジョーの声は,井上和彦さん@尾津乃つばめ)はもちろんのこと,それを遡ること約10年,60年代後半制作の「モノクロ」版アニメまで見た記憶がある私には,懐かしいやら嬉しいやら!これで,うる星がオリジナルに近いキャストで復活などしたら,狂喜乱舞することは想像に難くない…と,私自身の希望のことは,この際置いておきましよう(^_^;)。

何でまた「009」の話題を持ち出してきたかと申しますると,目立つんですよ。うる星の中に「009」ネタのパロディが。今回から暫く,この009パロはもちろんのこと,うる星のアニメで扱われたパロディに関する私見を記したいと思います。狭義の「るーみっくパロディ」は,曲がりなりにも私の守備範囲(?)の一つです。遅かれ早かれ,このような雑感を記すコーナーを設けた以上は,避けて通れない内容でしたし。 

なお,ここで言うパロディとは,ドタバタシーンなどに映画を含めた他作品のキャラがスタッフの遊び的に登場するようなものは,外しておきます。この手のものも,結構目立つんですけどね。「怪人赤マントが乱入を企てた闇鍋ディスコ」では,江川事件で巨人から阪神へ移籍した小林投手がシャドーピッチングしてたり,「お芝居パニック!」では,この間「RED SHADOW」としてリメイクされた仮面の忍者赤影怪人ハルク,ナントカ戦隊まで出てきたり。「魔境転生」じゃ,水木しげる先生の妖怪たちが,まんまの格好で練り歩いていたシーンもありました。
が,取り上げるのは,あくまでメインキャラの面々が,「演じて」たり直接「関わりを持って」いたシーンに出てたりしたパロとしたいと思います。


案外多いなと思うのが,『映画』のパロディではないでしょうか?

うる星TVシリーズには,自主映画を作るエピソードが2作あります。

1つめの「ラムちゃんの理由なき反抗」!タイトルからしてパロってますね〜,ジェームズ・ディーンですよ♪んで,冒頭あたるのナレーションが『突然炎のごとく』と来たもんだ!作中,自主映画の試写で判明したのが,爽やか〜(笑)に自転車を二人乗りするシーンは『青い山脈』ーっ。ラムやしのぶ,歌ってるよ〜っ(@_@)。これ,ラストでも出てますね。
(ちなみに,この作に009ネタあります。竜ちゃんの…とまで書けば,お判りですね?)

自主映画2本目は「これがラムちゃんの青春映画」。メガネが,ラムの美しさをフィルムに残すためだけに作ったというオチが着いてますが,『風と共に去りぬ』,『セーラー服と機関銃』」や『北北西に進路を取れ』に『カサブランカ』と,和洋を問わず,名の知られた映画のワンシーンを随所に盛り込んでいます。
なお,この作中のあたる,ちょっと挙動不審…。制作資金のためとは言え,ラムに「脱いでくれ」と頼んだ(くぉらっ!)かと思えば,ラムと面堂が深夜に「本読み」(脚本を読んで行うリハーサル)するのを,ラムが浮気してると早とちりしてるし。この「あたるに一貫性がない」点は不満です。まぁ,パロの点から,ここでは不問としておきましょう…。

2作とも「映画を作る」展開ですから,その上でのこれらのパロは,いたって自然にストーリーにとけ込んでいます。いかにもパロディという「作為的な匂い」は,何気なく見た場合には感じません。ただ,逆に元ネタに詳しい人でないと,何のことやら…になるところは否めませんね(-_-;)

除外すると言っておきながら「掟破り」なんですが(^^;),「退屈シンドローム」では『未知との遭遇』や『ゴジラ』がドタバタシーンに出ますし,エピローグに該当するシーンでも,メガネが見上げる高層ビル街でゴジラが放射能ビームを吹きまくってます。
この『ゴジラ』,「ビューティフル・ドリーマー」では,生き残った(?)メインキャラたちが青天井になった友引町の名画座で見てましたよね(しかも,博士役の故・志村喬氏までがスクリーンの中に…)。
これを見ながら,あたるがラムにポップコーンを食べさせてた!印象度,高レベルです♪あ!面堂はハラハラ顔,メガネは大泣きしてましたっけ…(^_^)
BGM“池のほとり”のメロディに乗って,次々と挿入される「サバイバル・バカンス」の一コマとして描かれていた映画鑑賞シーンでしたが,ゴジラという日本はおろか海外でも有名な「ブランド」を用いて,ストーリー展開やキャラ設定を些かも干渉せず,その上で,その存在をしっかり主張するという,両立しにくい上質パロの条件を見事に満たしていました。


存在感を持ちながら,メインの展開を邪魔しない。それどころか,さらに展開を面白くしたパロと言えば,「決死の亜空間アルバイト」でのあたると奇妙な老店主の会話でしょう。

あしゅら湯の場所を尋ねるあたるに対して,阿修羅の由来を始め,およそ場所を教えているとは思えないことを口にし,あたるをイライラさせる店主。挙げ句に「おまえさんの言おうとしていることが,だいたい理解できました。『あしゅら湯は何処か』と,こう言いたいのじゃな?」
この不条理なやり取りつげ義春氏の『ねじ式』の代表的シーンをほぼそのまま持ち込んで,異世界でラムとはぐれ道に迷うあたるの不安と焦燥感を,見事に盛り上げています。
『ねじ式』のパロは,ランちゃんが亜空間にたい焼きの材料を買いに行く時にも出てきますが,この時は単なる「つなぎ」の役割しか果たしていないので,パロとしてのインパクトや展開の見事さは「亜空間アルバイト」には到底及びません…。

メインの展開を盛り上げていると言えば,「ニャオンの恐怖」におけるトラジマとの決闘シーンを忘れることはできません。原作でも,あたるは悪戦苦闘した後にトラジマを叩きのめす展開ですが,アニメでは,『あしたのジョー』よろしく,ボクシングでボロボロになるまでやり合った末,最後に繰り出した渾身のカウンターが勝利を呼び込みます。カメラが回り込むように連続して変わるアングルや,トラジマのパンチが唸りを上げる際の描き方やら効果音やら,対決のスピード感や重厚感を,これでもかと言わんばかりに引き立てています。錯乱坊は,ダウンしたあたるに「立て〜っ!立つんじゃ,あたるーっ!」とアイパッチまで着けて『丹下段平』になって絶叫してるし(爆笑)。



 

このように,素晴らしいパロディとは,「ストーリー展開やキャラに対して無理がない表れ方をしながら,作品を一層魅力的に見せると同時に,それ自体の存在感を強烈に印象づけるもの」である,と私は考えます。では,009ネタのパロディは…と言うところでページを改めることにしましょう。また,悪い癖で長引いてしまいそうですから。私にとって魅力あるパロだけでなく,感心できないものにもふれなくてはと思いますし…。

慌てない,慌てない。一休み,一休み…(^^;)

 

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