※以下、文責は内田にあります。
1.基調講演「なんのための議会改革か」
法政大学教授 廣瀬克哉氏
・議会が良くなると市民にどんな良いことがあるのか、との原点の問い。
・条例を作り、報告会を重ねてきたが、どんな成果が出たのか、即答ができない。
・「改革前」の、市民から見た議会像は、
○政策をチェックしているようには見えないが、足を引っ張っている印象は
ある。
○個別のお願い事をすることはあっても政策を実現しているようには見えな
い。
○意味のある仕事をしているように見えない。なくてもいいとは言わないが。
○議会があるおかげで、と言えることがない。
○ゆえに、選挙に行く気にならない。
・さまざまに改革に取り組む議会。『にもかかわらず』、市民からの「改革後」の
印象は良くない。
・「改革後」の、市民から見た議会像は、
○可決ばかり→仕事をしてないように見える。
○「いつ、誰が決めたんだ?」となる。
○改革といっても議論のための議論。本質的なことをやってない。
○実現した条例は少なく、「掛け声」ばかり。
○何を得るために質問をしているのか。「ダメだったけど、惜しい!」と評価
できるような質問になってない。
○「今のは何だったの?」という、質問のための質問に終始。
○改革をしたと言うが、よくなったとは思えない。
○ゆえに、選挙に行く気にならない。
・改革の中で「目的地」を再確認しよう。議員間討議はいつ、どのようにやるの
か。反問権はどう使うのか。それが「何のため」なのかがわからなくなってい
る。
・「原案可決」は仕事をしていないことにならない。そのプロセスを公開するこ
とが大切。
・議会の「意味のある仕事」とは何かを、議員が理解することが必要。
・「自由かったつな討議を通して、論点、争点を発見、公開すること」が必要。
・それが「市民のものになったか」が問われる。
・「なぜそう決まったのか」が見える場であること。
・市民にとって発見と納得の機会であること。
・市による情報提供に頼らず、多角的な資料、材料提供をして審議している。だ
から議会は勉強になる、と評価されるように。
・「議会だより」を工夫しても「伝えるに足る」議論がなければ読まれない。
・「普通の言葉」で市民に届ける。「民主主義の学校」とは言うが、地方自治ほど
難しいものはない(廣瀬)と感じる。
・「課題」→「修正」→「仕上げ」のプロセスを“見える”ように。
・「自動的にうまくいく」改革など存在しない。
・議会は意味のある仕事をしている、とのイメージを、市民と議員が共有するこ
とが当面の達成目標。
2.事例報告①国立市議会「議長選挙を議会改革のエンジンにする」
国立市議会 議会改革特別委員長 生方裕一
・平成10年から改革の意識は高まるも議会内全体の課題として位置づけられな
かった。方策を議員間で共有できなかった。
・今回、議長を除く全議員で議会改革特別委員会を発足。
・「議長立候補者は所信表明を」との機運が高まり、改革を公約に掲げた議長の
もと、本格的に改革に着手。
・今年5月に市民の意見を聴く会開催、パブコメ後、9月に最終取りまとめの方
針。
3.事例報告②東村山市議会「市民に開かれた議会へ」
東村山市議会議員 石橋光明
・23年6月、「議会基本条例制定を進める特別委員会」設置(石橋委員長)。
・当初は現状認識がバラバラ。合意形成はできるのか?
・大津市の「議会のBCP」に刺激を受ける。通年議会をやったからこそできた。
・次第に、相手議員に耳を傾けられるようになってきた。
・信頼関係が築かれ、各論は違うが、合意形成ができるようになってきた。
・今までのとおりでよい、というものもあることが分かってきた。議論するまで
は、それにさえ気づかなかった。
・25年12月、議会基本条例を制定。自治基本条例も併せて制定。
4.事例報告③鶴ヶ島市議会「新たな価値創造のステージ」
鶴ヶ島市議会 元議会改革検討委員会副委員長 山中基充
・20年4月、埼玉県内で初の議会報告会、21年3月、議会基本条例を制定。
・「もっと身近な議会へ、もっと確かな議会へ」をキャッチフレーズに、ワーク
ショップ形式での公聴会も開催。
・26年6月定例会で議会初の政策条例「空き家等の適正管理に関する条例」制
定を目指す。
・今では条例制定当時を知らない1期生議員が広報委員会を作り、先輩議員た
ちからの反対もなく、さらに予算決算常任委員会の再編をやり遂げた。
・議会改革白書を作製。
・「議会報告会はもはや、鶴ヶ島市の文化になった」。
5.ワークショップ「3つのカベをどう乗り越えるか」
第1のカベ「改革をしようという合意ができない」
第2のカベ「改革の中身が深まらない」
第3のカベ「改革の成果が見えてこない」
3つの教室に分かれてワークショップ。1つの教室で5人単位のグループに分かれ、自己紹介、テーマ決定、討議スタート(45分)、グループ発表、振り返り、という手順。内田は「第3のカベ」に参加。千葉市議、東村山市議、民間会社からの出席者が同席するグループで、丸亀市議会での歩み、抱えている問題点などを披瀝。また各人からの発言に傾聴した。
6.全体会に戻り、振り返りとまとめのセッション
各教室からの報告、廣瀬教授による講評、最後に東京財団、元栗山町議会事務局長、中尾修氏からのコメントで、閉会。
7.感想
ワークショップ、という形式が盛んになりましたが、私は実体験としては初めてのことでした。議論を戦わす、というが、そうではなく相手に傾聴し、情報を共有し、合意点を見出していく。議会が「議するところ」というときに、感情的に、胸倉をつかむような口調でやるのが「議会らしい」のか、そうではないと、静かに諭してくれるような体験でありました。
しかしまあ、これまでの議会はそもそも「議する」ことがなかった。いや、基本条例を制定し、報告会を開催している今となっても、なるほど本会の中でも話されていたように、議会だよりが充実するかは議会そのものが充実しているかにかかっているわけで、まさに「自動的にうまくいく」改革など存在しない、との教授のご指摘のとおりです。
「カベ」に突き当たっている全国各地の議会。意識が高い人々がここに集う。そもそもここに参加して欲しい議員がここには来ない、などとカルグチも出ていましたが、「粘り強くやるしかない」「市民に根気よくアプローチするしかない」、このことを、ワークショップで初対面の議員と対面しながら、終わる頃には一人、また一人と「同志」ができたような心地になっていました。
ある大きな人口規模の自治体議会では、基本条例制定ははるか先のこと、と嘆いておられました。そこで大学生を招いて「議会」に対して抱いているイメージをインタビューしてみたそうです。
「学校の卒業式に来ていたけど、それだけ」
「だらだらと質問や発言をしているだけ」
こういうマイナーな、遠慮ない反応だった、とのことでした。痛いほど、よくわかる気がします。
3つの市議会それぞれからの事例報告は、私たちの取り組みがまさに現在進行形であることを印象付けました。そして3つのカベ。講評で廣瀬教授は、「これからも第4、第5のカベが立ちはだかるだろう」とおっしゃいました。カベを破るノウハウでなく、はるかに続く改革の峰を、指し示された心地でありました。
最後に登壇された中尾氏はわが丸亀市議会にも招聘した議会改革の大先達。久しぶりの再会のあいさつができました。こんどお会いするときには、「丸亀市議会もここまで来ました」と、良い報告をしたいものです。
うまくいく、とは限らない、各地それぞれの試行錯誤。こうして事例を持ち寄り、ワークショップで課題を共有。愚痴りあいでなくキズのなめあいでもなく、真に前向きで、民主主義の名にふさわしい地方議会が必ず実現するだろう。そう考え、カベに挑むしかありません。
「議会報告会はいまや、ウチの市の文化となりました」。そんな喜びと自信に満ちた一言が、この会議に参加しての最大の光明でありました。