○地方議員のためのRESAS活用 基礎編/応用編
1.概要 日時、場所 2020年2月11日(祝) 午前10時~午後4時半
新大阪駅近くのセミナー会場
講師 ㈱富士通総研経済研究所 主任研究員 榎並利博氏
2.受講意図
昨今、「ビッグデータ」の利活用が官民を問わず重要視され、これからの社会の在りようを考え課題解決に向かうに当たり、これを使いこなせないではすまない時代が到来しました。
そのいわば「自治体版」である「RESAS」は、最近とみに耳にする言葉となりました。パソコンからただちに引き出すことができるものではありますが、一度その「要領」を、セミナーを体験して見につけておきたいと考えました。
講師はこのシステムの開発に携わった第一人者。昼の休憩時間に名刺交換をしましたが、「税金で作っているのです。どんどん活用してください」とおっしゃっていました。
祝日にも関わらず会場は満席。関心の高さが伺えました。
3.受講内容:基礎編
通常、私が参加するセミナーや先進地視察は、そこにある努力や工夫、知らなかった知恵を学ぶなどの「感動」がありますが、今回は異なります。
このシステムの「使い方」を学ぶもので、何かの「トリセツ」のように、いただいた資料に首っ引きで利活用するための導入。講師も「今日だけで使いこなせるものではありません。とっつきにくいが慣れれば誰でも使えます。ぜひとも「慣れて」「使いこなして」ください」と。
○概要。このセミナー受講のあとも、メインメニュー下方にある「RESASオンライン講座」を活用してください。会員登録→「eラーニング始めよう」→終了証という流れ。画面を見ながら案内。迷ったら左上の「星」のようなマークに戻る。
全体像は
・人口マップ
・地域経済マップ
・産業構造マップ
・企業活動マップ
・観光マップ
・まちづくりマップ
・雇用/医療・福祉マップ
・地方財政マップ
で構成。午前の基礎編では人口、雇用/医療・福祉、地方財政を見ていく。
○人口マップはさらに人口構成、増減、自然増減、社会増減、新卒者就職・進学、将来人口推計、人口メッシュ、将来人口メッシュの細目に分かれる。それぞれを使ってみる。市町村単位の「ヒートマップ」は、赤いところほど人口が多いことを示す。画面右の操作メニューで他市との重ね合わせや都道府県単位と市町村単位の切り替えなどが可能。人口ピラミッドでは各地概ね、90歳以上の人口が突出していることが見える。2015年の「つりがね型」から2040年は「かんおけ型」へ。以降、参加議員所属の自治体を検索しながら説明。
○棒グラフにカーソルを合わせると、当該年の数値も表示される。
○社会増減では、丸亀からどこに出て行くのか、どこから来ているのかが可視的に示される「From-to分析」。年代別にも見ることができる。
○新卒者就職・進学のデータは都道府県単位のみ。
○人口メッシュ。500mメッシュ、透過率80%で市のどこに人口が密集しているか、ばらけているかを知る。
○地方財政マップはさらに自治体財政状況の比較、一人当たり地方税、同町村民税法人分、同固定資産税の細目に分かれる。ここでは財政力指数、経常収支比率、ほか大量の財政データが準備されている。
○財政力についても指数を地図に示す「ヒートマップ」がある。また財政指標を比較する「レーダーチャート」がある。画面を下にスクロールすると推移が示される。各税も同様で、全国ランキングも見ることができる。
○雇用/医療・福祉マップはさらに一人当たり賃金、有効求人倍率、求人・求職者、医療受給、介護需給の細目が準備されている。そこからさらに産業別、年齢別、年月別、職業分類別などを知ることができる。ここは主に都道府県単位のデータ。どんな仕事に従事している人が多いのか、病院数、要介護の人の数などが示され、全国ランキングもある。
○分析の視点。地方議員として「あなたの地域の持続可能性は?」「自治体経営に問題はないか?」「地域の課題は?」「課題解決の方法は?」「将来のためにすべきことは?」などの問いに答えるため、このシステムを利用してほしい。
4.受講内容:応用編
○午後は地域の産業分析のために準備された午前以外のメニューを学ぶ。
○各地のRESAS活用事例。八戸市を例に。長所は「域外から稼ぐ力」や「集客力」。短所は「労働生産性が低い」「高齢化が急速」など。そこで施策として①八戸ブランド強化②既存のストック活用で観光振興③労働生産性の高いデジタルコンテンツビジネスの創出④コミュニティビジネス創出で女性や団塊世代の就業、などが示された。ブランド強化では、いま100円で売っているものに価値を加え500円で売れるような戦略が必要、など。豊岡市では伝統の「かばん製造業」が行き詰り、海外への活路開発が示された。
○RESAS活用で議員の役割とは。危機感を市民と共有する、市民、行政、企業や事業者などとの対話のツールにする、関係者を巻き込んだ議論を始める、などの行動のために役立てる。
○地域経済循環マップ。これはさらに地域経済循環図、生産分析、分配分析、支出分析、労働生産性等の動向分析に細分される。地域経済循環図とは、例えば丸亀市民は外で稼いでくるが外に行って支出している。他市の市民が丸亀で働き、これを丸亀でなく生活地で消費する、などの分析をした結果、丸亀市としてどれだけ「分配」が行われているかを見る指標。地産地消で経済規模を拡大することも政策となる。観光客誘致でも、「経済規模を拡大するため働く人を呼び入れる」ことが政策となる。
○生産分析とは、何を作って稼いでいるのかの分析。分配分析とは、稼いだ金を誰が持って行っているのか、の分析。ビジネス街、ベッドタウンの町など対比。支出分析とは、外から来る人がどれだけわが町でお金を落としてくれるか、の分析。地域経済循環マップを使うと、東京都23区では73兆円がぐるぐる回っていることがわかる。近郊の狛江市では、23区で稼いでくるが23区で買い物をしていることがわかる。
所得への分配÷所得からの支出=地域経済循環率
→値が低いほど他地域から流入する所得に対する依存度が高い。
江津市、79.7%、大田市、75.4%、など。
○産業構造マップ。全産業の分析のほか、製造業、小売・卸売業、農業、林業、水産業の分野で、自治体ごとの分析が可能。例えば千代田区の製造業の内訳では、圧倒的に「印刷・同関連業」が占めることがわかる。小売・卸売業で北海道のFrom-to分析で加工品・乳製品・チーズがどこに「移出」されているかを知ることができる。
○企業活動マップ。企業情報、海外取引、研究開発に細分化される。海外取引では輸出入の国別内容もわかる。
○観光マップ。国内と外国人に分け、目的地分析、宿泊者のFrom-to、宿泊施設、外国人の訪問分析、滞在分析、入出国空港分析、消費の詳細が出ている。クレジットカードなのか現金なのか、どういった分野におカネを使っているか、国別に、買い物の動向や訪問先も知ることができる。外国人メッシュでは、例えば丸亀市に来た外国人が丸亀のどこに立ち寄っているのかを分析する。
○まちづくりマップ。 From-to分析で滞在人口を調べ、滞在人口率、通勤通学人口、流動人口メッシュ、事業所立地動向、施設周辺人口、不動産取引といった細目ごとに人の流れを掌握する。平日・休日、昼夜別、男女別、年代別、地域内の産業割合や事業所一覧も出てくる。例えば馬路村にはどこから、どれほどの人が来て、何時間滞在しているのか、など。
○その他のツールの紹介。自治体、まちづくりに資するビッグデータ解析ツールとして、今回のRESAS以外のものも簡単に紹介。
九州大学の提供する「EvaCva」
東京大学による「MyCityForecast」
千葉大学、地域ストックマネジメント研究=オポッサムによる「未来カルテ」
アメリカの「NEIGHBORHOOD DATA FOR SOCIAL CHANGE」
なお本セミナーでは特典として講師より、「未来カルテ」が提供するデータをエクセルにて各自治体分をご恵与いただいた。
6.感想
講師もおっしゃるように今日一日でマスターできるものではないと思いました。使いこなすためには「慣れる」ことが大切と、私も痛感。それに時間を費やすことが必要ですが、実際に政策提言にまで活用できるところまで行けるのか、正直、なかなか大変だという印象を持ちます。
ここに、いただいた「丸亀市未来カルテ」があります。これを読み解いていかなければなりません。これを読み解いた結果、こういう政策が見えてきます、というところまで示唆をいただいて、政策構築、提言に至る、というのがこれまでの私の認識だったのですが、その前段階の素材分析、そこにRESASという世界が横たわっています。
若手の議員を中心に、わが丸亀市議会でもいわゆる「ヨコモジ」が質問にもよく聞かれるようになりました。まだガラケーをいじる私自身です。けれども時代の取り残されることに居直っているつもりはありません。よく勉強をしあい、研鑽を重ね、議会としての政策提案に「後手」集団とならぬよう、こうした勉強での成果や刺激をしっかりと議会内で発揮してまいりたい。