〇「地産地消」運動推進事業 福島県会津若松市
1.視察の意図
「あいづわかまつ地産地消推進プラン」を制定し、生産、流通、消費、食育の4つの視点から具体的に取り組む会津若松市。
農業関係者だけが対策を考えるという体制でなく、市を挙げて取り組む姿こそこれからの市の戦略というにふさわしいものです。地産地消だけでなく、そこから見える「市を挙げて」という「隊形の取り方」についても、学ぶべきものがあると思い視察を計画しました。
2.事業の概要
H14年、「会津若松市食料・農業・農村基本条例」を制定。これに基づき基本計画「アグリわかまつ活性化プラン21」を策定。
地域内での食料自給体制の確立、自給率の向上、健全な食生活の推進を図ることに。また食の安全意識の高まりから、市民共通認識に基づく「食」の政策に取り組むこととした。
地域連携による食料の安定供給を推進するため、H19、「あいづわかまつ地産地消推進プラン」を策定した。
・「地産地消推進協議会」を設置。
18名で構成。農業団体、生産者、流通業者、消費者、食生活改善推進員、調理士会、
商工会議所、教育委員会、農業委員会、市農政部が参画。
学校課と農政課が参画しているところがポイント。
3つの分科会を置く。・流通加工部門・集団給食部門・旅館、飲食部門。
分科会にはさらに細かく、PTAや病院、特老から栄養士、小売業者、市観光課、観
光物産協会、旅館組合、飲食組合なども参画する。
・緊密に連携を取ることで、例えば夏場は野菜が高騰することに対して高いものを買わ
ないよう、情報交換ができる。
・2学年の給食からは米飯給食100%に。農政課から補助を行い、給食費は上げず。
・具体的な活動内容
〇交流会の開催 〇地産地消協力農業者を拡大するためのHP、パンフ、まつり開催
によるPR 〇市内22ヶ所の「土の駅」認定直売所を運営し、生産者情報、おいしい
食べ方など紹介 〇有機野菜「會津野彩」ブランド化 〇会津の伝統野菜、地鶏のブ
ランド化 〇米粉利用食品の開発 〇協力店拡大への働きかけ 〇11月1、2日開催
の地産地消まつりでは米食味コンテスト、お弁当コンテスト、料理教室。マスコット
キャラの「あいちゃんお弁当」などアピールし、会津産米の消費拡大を図る 〇11月
1日は地産地消の日、11月は地産地消月間で民間活動を推進 〇「地産地消だより」
を8月1日に全戸配布 〇地産地消サポートクラブを結成(現在276名登録)、通信の
発行やクラブ活動を展開 〇年4回、地元農産物と会津産米を使用した料理教室を開
催し親子で参加 〇あいちゃんイラストコンテスト 〇「こしひかりでパンづくり」
など地産地消セミナー 〇農家民宿、あいづ四季の里体験村、ワーキングホリデー農
業体験で食育推進 〇学校給食現場での地元産物PRや米粉利用促進
・これらによる効果 (まつりで行ったアンケート調査での数値。H18の基準値→H21
の成果、カッコはH23の目標値の順。)
〇地産地消認識度 59%→74% 90%
〇有機栽培面積 15ha→22ha 20haの目標はすでに達成
〇特別栽培面積 325ha→376ha 1000ha
〇エコファーマー面積 1689ha→2045ha 2300ha
〇地産地消協力農業者 82名→61名 120名
〇同 協力店 55店→120店 80店の目標はすでに達成
〇サポートクラブ 165名→233名 250名
〇直売所設置数 19ヶ所→22ヶ所 25ヶ所
〇学校給食農産物利用割合(重量ベース)41%→51.5% 55%
※55%の目標は市長のマニフェストによる。
※なお重量ベースとしたことについて、国・県は品目ベースで算出しており、重量ベ
ースは計算に手間がかかる。しかし実態に即しているのは重量ベースである。
※品目ベース換算だと42.21%。県平均は40.2%で、これを上回っている。
〇農林業体験交流人口 1706名→3285名 2800名の目標はすでに達成
※食料自給率については国が示さなかったため算定が不可能となった。
このように算定が不可能のものをどうするか、またすでに達成したものの上方修正
をどうするかが課題。
・今後は農商工連携による広域的推進と、観光資源をさらに活用する方向で課題に取り
組む。
・学校給食における取り組み
〇長期保存可能なじゃがいも、にんじん、たまねぎの3品目は市場流通を活かした地
元農産物利用「北海道のものよりなるべく地元のじゃがいもを」
〇地元生産者からの供給。「生産者の顔が見える」。来月の献立票を生産者に見てもら
い、供給してもらう。
3.感想
いただいた資料の最後のページには「学校給食における地元農産物の活用状況」の表が掲載されていました。
米、100%。「ひとめぼれ」というお米だそうです。
力をいれているのはアスパラガス。「あれですよ」という名前だそうです。81.2%。
果物ではりんご、90.8%、柿、88.5%などが群を抜いています。
実際にすべての品目を地産でまかなうことは不可能、また冬の積雪、天候不良で数値が下がることもあるそうです。それでも担当者の方は「旬のものを旬の時期に」と、この事業に胸を張り、真剣に、また意欲的に取り組んでいることがよく伝わってきました。
地産地消推進ロゴマーク「あいちゃん」のマスコットには「生れも育ちも会津です」のキャッチフレーズ。それが表紙に印刷された「地産地消推進プラン」の冊子もいただきました。めくると上記紹介以外の細かな項目についても年次ごとに推進計画が数値と矢印で示され、役割を担うセクションまで明記されています。まるで地産地消マニフェストの観。
さらにまた本文で紹介した「地産地消だより」と「直売所・協力店まっぷ」もいただきました。「地産地消の店」を示すのぼり旗には「大地のめぐみ まるかじり!」とのフレーズ。野菜、果物、肉、味噌、酒…があいちゃんを先頭に元気にパレードしているイラスト。「たより」に紹介された「あいづわかまつ地産地消大賞」はある旅館が受賞。内容は自ら生産者や生産現場で食材を選び、メニューも工夫し、お客に提供しているという取り組み。同「優秀賞」はある小学校の地元食材直接購入のシステムや栄養士の熱心な取り組みが受賞。学校の先生自らが農家に赴いて、農家の人とコミュニケーションしながら生産情報を入手し、子どもたちに伝えているという熱心ぶり。
「たより」にはこのほか、地産地消まつりのもようや運動参加へのお誘い、「会津地鶏 丼ものコンテスト」など多彩な催し物案内が満載。ここまで盛り上げるのが大変。担当者、関係者の努力がひしひしと伝わる内容です。
思えばパンフレットには、外部からの客をクールに呼び込むタイプのものと、こうして市内の方々に泥臭く、熱く誘いかけるものと、ふたつの種類があるといえるのかも知れません。「参加してみようか」と、その気にさせるのは後者の場合、やはり主催者側の熱意が決め手だと、これらの資料を眺めつつ、あらためて感じたところです。