〇会津・米沢地域観光圏                  福島県会津若松市

 

1.視察の意図

空前の歴史ブームで脚光を浴びる会津若松市。

しかしただお城や白虎隊という過去の遺産に頼るのではない新しい観光戦略、また県境をも越えて歴史で結びつく山形県米沢市などと広域で連携を図り、列車の路線のないスポットまでバスをつないで一大観光エリアを創出している、そんな地域観光圏の取り組みを勉強したいと思いました。

 

2.事業の概要

「観光圏整備法」に基づき、国際競争力の高い魅力ある観光地の形成による地域活性化を図るため、複数地域の行政・観光事業者・商工事業者等の連携のもと、滞在促進地区の整備を通じて「2泊3日以上の滞在型観光」を推進する、というもの。

 

・平成207月、「会津・米沢観光圏整備推進協議会」を設立。構成メンバーは福島県

 会津若松市、喜多方市、下郷町、南会津町、山形県米沢市。同10月、観光圏認定、さ

 らに翌年度には猪苗代町、磐梯町、西会津町、北塩原村が加わり9市町村に拡大。こ

 れにより、十字クロスの主要道路を囲むすべてのエリアを網羅。

・国の補助制度(4割)を活用。温泉など滞在促進地区の整備、圏域間の連携、行政と

 観光ほかの他業種が連携し一体的に取り組むところがポイント。民間事業者の創意工

 夫を尊重、民間主導の観光圏整備プラス行政主導の大キャンペーン。

・民間が担うものとして、インストラクター養成、案内所チラシ・観光案内など情報提

 供、旅行商品開発。利便性向上の調査、モニターツアー開催などで連泊ニーズ調査。

・温泉地区魅力向上事業では花、景観、ロードマップ、英語表記看板、チラシなどの充

 実。「着地型」と呼んでいる。

・訪れたい人がスムーズに情報を入手できるポータルサイト。これにミニコミ紙も連動

 している。受付窓口の一元化で二次交通(列車を降りてから目的地までの交通手段)

 まで一括予約できるようにしている。

・外国人対応の案内所を設置。

・観光来客340万人/年。会津若松城の入場者はH2062万人、H2173万人。

・協議会には91団体が所属。うち民間企業が70団体。温泉組合、鉄道・バス・タクシ

 ーの交通事業者、バス運行協議会、JA、国際交流協会、旅行エージェント、エコツ

 ーリズム協会ほか。

・協議会の運営も民間主導で。宿泊部会が重点として、泊まってもらう企画をランダム

 に出し、必要なものを探求していく。宿泊施設の人がノウハウを勉強する、などの事

 業を展開。

(参考:国の補助を受けるに際し国から求められる実践活動)

 泊食分離の実施、共通入湯券の導入、体験メニュー充実、ゆかり・こだわりの地域ブ

 ランド、アクセス改善、共通乗車券、提案型の観光案内強化、顧客満足へマーケティ

 ング。

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3.感想

リーマンショックで観光の足は伸び悩み、高速無料化では宿泊を倹約し日帰り客が増えるなど、厳しい局面もあった。遠方からの客は泊まらず、訪問スポットを絞り込み、その日のうちに帰るという現象。

一方、隣の山形県米沢市では「天地人」の大ブームにより観光客は前年比140%を記録した。

これらのことから、観光客のニーズをつかみ、誘致を活発化させることで地域を活性化させる、そのための知恵が随所に見られ、大いに刺激されました。

国の補助のしくみは基本的には2年で終わることになっている(最長でも5年)が、これを機に、国からの補助が切れたあともこの事業を継続していきたいと意気込みをお聞きしました。

資料として、会津・米沢地域観光圏整備事業と右下に小さく書かれ、さら小さな文字で9市町村の名が連なった観光パンフレットをいただきました。タイトルには大きく「会津・米沢」。四国に住む私たちには会津と米沢がどんな地理関係にあるのかピンときませんが、ページをめくると一目で鳥瞰できる地図にスポットが賑やかに書き込まれています。そして次のページからはぎっしりと、前述の民間主導の「商品開発」によるモデルコース、バスのご案内など。温泉や歴史探訪だけではありません。ラーメン、名水、トレッキング、サイクリング、カヌー、ピザ焼き、指圧、絵手紙、和歌詠み、写経体験。桧原湖ワカサギ釣りに猪苗代湖の無人島ツアーなどなどなど。ひとつの市が単体で商品開発するのに比べ、ここでは何倍もの魅力と価値が創出されている印象です。

大内宿、というところがいま、とても人気を呼んでいるそうですが、ここは交通が至って不便なところ。だからこそ、他のスポットとバスで結んで、オリジナルな観光ルートが開発できると、そのように考えるわけです。

ところで、市の機構についても尋ねてみました。

市商工観光部、観光課が担当部局。そこには2グループが置かれ、ひとつは観光振興グループ、そしてもうひとつが広域グループ。ここでは4つの広域事業が展開されているそうです。すでに、会津若松の市役所自体が、外に向いている、連携を前提としている、というところが注目点です。

これらを総合すると、単に「国からお金が出るからやろう」という活動ではないことが感じられます。

改札口からマスコット「あかべえ」が出迎え、駅前の白虎隊の少年像、レトロバスのたたずまい、戦国武将の姿の観光案内人など、駅を降り立ったところからすでに心が浮き立つような、そんな会津若松市。

前述のとおり、お城の入場者数において丸亀城と比較にはなりませんが、私はどこまでも、「マネ」をする必要はないと思います。

いただいた資料によると、入り込み客数、宿泊客数それぞれにH24年度への目標値が明確に記されています。19年度入り込み1800万人から1900万人へ100万人増、宿泊280万人から304万人へ、24万人増との目標。観光客の満足をかなえながら、この戦略は実のところ、住民とまちの活力へ、満足を求めるようとしているにちがいありません。

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