○空き店舗の活用事業 宮城県登米市
1.視察意図
登米市は宮城県一の農業市。
H17年に9町が合併して誕生。S55年とH17年を比較すると25年間で第1次産業従事者は6割減少するも、いまだに県下一を誇る16.9%の第1次産業従事者を誇る(県平均は6.3%)。
合併により市の面積は536平方キロと丸亀市の5倍。3つの沼と北上川の自然に恵まれる。
合併前の旧迫(はざま)町(新市の中心部に当たる)で始められていた「空き店舗活用事業」が、新市に引き継がれ、全市で展開されている。
人口減少と商店街後継者不足、大型店の進出によって商店街が衰退、「虫食い」状態に。その中で懸命に生き残りをかけ、空き店舗の活用へ、真剣に取り組んでいる様子を視察させていただいた。
2.事業の概要
・空き店舗を活用しようとする商店街団体や新規出店者に対して補助。
・対象は小売、飲食、サービス業など、昼間の賑わいに資する事業者とし、
事務所は対象外。
・店舗改修に上限35万円とし、費用の1/2を補助。
・店舗賃借料に月2万5千円を上限とし、賃借料の1/2、20ヶ月分を補助。
・市のHPや商工会でPRしているほか、市内不動産業者と連携。
(市HP「くらしのガイド」のページに外観写真、間取り、地図、詳細条
件も付して物件別に紹介している)
・実績はH19、4件227万円、H20、6件364.5万円、H21、4件432.5万円、
H22、4件309.2万円、H23(途中)2件325万円。理美容店が多い。
・これらをもって「シャッター通り」と言われる商店街ににぎわいを創出し、
また新規出店者の安定的な経営を応援する。
・市で予算化した補助金額は最大850万円に対し、上記のように申請件数も
少ないのが現状。地主さんも、さびれた状態に「もう貸したくない」とい
う声も少なくない。
・居宅兼用店舗の取扱いがネックになっている。
・今後は事業の拡大を図りたい。国の緊急雇用の制度のほか件にも補助メニ
ューがあり、これらも併せて活用したい。来年度、商店街活性化計画の見
直しを行う際に、3つの商店街をモデルに拡大の方向で補助制度を検討した
い。
・空き店舗対策からさらに空き地対策にも着手したい。固定資産減免の方策
も準備中。このような政策で「初期投資の負担軽減」を狙う。
3.感想
視察当日、この冬でも最大の寒波と積雪に見舞われ、私たちの列車も大幅遅れ。
たいへん恐縮しましたが、駅では市職員とわが党の議員が待ってくださっていました。
視察後、同議員のご好意で市内を車で案内していただきました。折れた電柱は復旧されているが斜めに傾いたものはまだ使えるのでそのままの状態。あちこちに大震災の爪あとが残っていました。
3.11により、商店も被災し、廃業の動きも多い。被害状況は3商工会で470店舗、22億円の損害。
また隣接する南三陸町からも登米市内の仮設住宅に移り住んでいる人も多い。
市は宮城県に先駆け、県内初の取組みとして300万円を上限とする被災事業者の復興支援も行った。これまでに60件の申請があり、15000万円の補助実績がある。南三陸町民も登米市内に開業。かまぼこ店、畳店、理容美容店など10軒が開業した。
ちなみに登米市内の被災状況は全壊187、大規模半壊315軒だった(市内最大震度6強)。
このことを別としても、合併時9.1万人だった人口がH23年には8.5万人に減少。年間の消費は1人当たり124万円と見込まれ、これだけで72億円の消費減少と計算される。このままでは商店街発展も市の経済存続も見込めない。このような深刻な事態の中、生き残りをかけた事業投資が続いておりました。
丸亀市の商店街振興についても明確な指針は見えず、むしろ「商店街だけにどうして補助しなければならないのか」という声も小さくありません。コミュニティバスの走らせ方からさらに2市3町の定住自立圏での取組みまで、まちづくりのグランドデザインのレベルから、市民どなたにも納得いただける施策が望まれるところです。「それは一経営者におカネをあげることではないのだ」ということに市民が納得してくださるのか、そこに地方政治や行政も手腕も問われるとも思います。
日本が「富の再配分」から「負担の再配分」という、苦しい時代にさしかかる中、自治体の政策にこれまで以上に責任がかかっています。