○がんばる中小企業応援事業 愛知県安城市
1.安城市の概要と事業の背景
明治用水の開拓でできた歴史を持つ。徳川家康の5代先祖が安城に築城。徳川家のルーツとの誇りを持っている。
商業、工業、農業のまち。特に農業では先進的な取組み。
平成18年から着実に区画整理事業が奏功し、人口増、税収も増えてきていたが、リーマンショックにより、ピーク時60億に上った法人税であったがゆえに、逆に還付を余儀なくされている事態。
財政力指数1.2。
国の経済対策が中途のままで事業仕分けにより、効果があがらないままに補助を停められようとしている。そこで、先の9月議会で1200億円の補正予算を計上。苦しむ中小企業に市が独自で応援事業を展開することとした。
豊田市に隣接し、中小事業所も非常に多く、市は独自の事業展開をする必要があると判断した。
これまでにもH20年9月から急落、H21.1〜3月期が底。20年10月に信用保証協会へ補助金を拡充、21年、180企業に8千万円の融資上乗せ。22年4月、9月と拡充の手を打った。
2.応援事業の概要
産業空洞化が進み、これまで主幹事業だけで取り組んでいた内容では太刀打ちできず、市外へ流れていく傾向がある。
そこで従来と違う分野に向かおうとする企業を応援しようと検討を進めた。これが「がんばる中小企業応援事業」に結実した。
同事業費補助金交付要綱は今年10月1日施行したばかり。
・人材育成、販路拡大等の経費の一部を助成。経営改善、組織強化、事業拡大
を促進することに対して、市「補助金等の予算執行に関する規則」に則り、
補助金を交付する事業。
・対象は中小企業基本法2条にいう企業、中小企業団体の組織に関する法律3
条に規定するもの。
・新しい分野に進出しようとするとき、例えば塗装、板金、電気…というよう
にさまざまな事業主が関わることになる。このために単に中小企業者だけを
対象とするのでなく、それら関連会社が組織する中小企業団体をも補助対象
としている。
・市内で事業を行う企業、または構成員の過半数が市内に主たる事業所を有す
る団体。碧海(へきかい)信用金庫(←国の事業仕分けで5回が3回に減らされ
た補助につき、不足分2回の窓口となる。また経営改善アドバイザーを置く)。
その他、新規開拓のために連合しようとする任意の団体も補助対象とした。
風力発電の分野を開こうとした金型企業がこれにあてはまる。
・補助の内容
@人材育成事業…社内研修開催費、社外研修への参加費、資格取得の費用(玉
賭け、フォークリフトなど)
A販路拡大事業…見本市など出展経費、サンプル展示をする場合の費用など
B特許申請等事業
以上@〜Bへの補助率は50%、それぞれに上限あり。
C専門家派遣支援事業…前述の碧海信金にかかるもの。経済産業省委託事業
として信金が市内中小企業者に専門家派遣をするときの費用
Cへの補助率は100%。(これは1〜3回の国事業が100%であることの整合を
はかるため。
※一般に商業では30%補助が一般的。けれどもこういう状況だから、あえて
50%と手厚い補助制度にした。
・ペットボトルキャップを集め、加工してワクチンに代えるという事業で、そ
の加工会社が安城市にあり。こうした会社が広告会社などと連携する、プロ
ジェクトチームを作るなどに対し、スムーズにマッチングができようにする
といったことも行っている。
・この補助制度は23年度限り(24年3月31日失効)。2年間の時限とした。ど
の程度の時間と費用がかかるのか分からないが、まず1年では効果が見込め
ないだろう。一般に、ISOなどでは3年見直しがふつう。23年度末でその見
3.課題、質疑応答での話
補助対象に認定するにあたり、新しい分野に挑戦して成果があがると見込まれるのかの判断が難しい。
研究開発で学生が活躍するがその際の食事代などに助成できないか、など課題がある。
この補助制度は事業転換への補助金という性格を持つ。
市と企業が話し合いをしながら作り上げている制度。トップ(市長)が社長と会うことが多い。事務方もフットワーク軽く、市内企業に赴く。家族経営の小さな会社まで訪問や電話で問い合わせなどもする。自動車、被服、食料品などとジャンルに分けて会社訪問をする。
4.感想
資料としていただいた市のガイドマップ「おいでん安城」を開くと、観光スポット、アクセス、宿泊施設、市街地マップなど定番の内容のほかに、
・工場見学ができる事業所一覧…見学内容、所要時間、問い合わせ先など
・観光協会認定土産品の写真つき紹介
が目を引きました。
ここからも、安城市が市内の企業に大きく力を入れていることが感じられました。
豊田市に隣接する、事業所の多い地域であるからでしょうが、税収の動向が市の発展と衰退を大きく左右する、そのような自覚のもとに政策が展開されており、今回視察の補助制度もその一環であると理解できます。特に行政のトップが熱心に会社を訪問し、意見を聞いて歩くという姿勢は市職員の意識や行動に大きく影響しているようです。
企業の収益が上がり、社員の収入に反映され、それが市の活気に結び付く、というのは安城市に限らない方程式だと思います。商工業への丸亀市の施策が有効なものであるかどうか、この事例に照らして検討してみたいと思います。