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〇全国地方議会サミット2022                東京都

 

     2022.5.12、13
   早稲田大学大隈講堂

    テーマ:デジタルで広がる・つながる・深まる議会改革


久しぶりの上京、早稲田大学大隈講堂で、全国からのリモート参加の方々とのハイブリッドスタイルで「全国地方議会サミット2022デジタルで広がる・つながる・深まる議会改革」が開かれました。

 

1.主催者挨拶、北川正恭早稲田大学名誉教授「チーム議会で取り組む自己決定・自己責任の地方自治」。

 

○以前の「議会改革」は“量的改革”だった。コストの削減、定数削減、報酬削減。これからは“質的改革”へ。執行は行政、議会は追認、というあり方を脱却。基本条例に基づき「政策提案」の議会へ変貌を。

○サミットへのご参加に感謝します。でも「いい話だったね」で終わらせず「ウチでもやろう」となってこそサミットの意味があります。現場へここで「ネタ」を仕入れて帰ってほしい。

○残念なのは改革をやってない議会に限って「ウチはやっている」と思っていることだ。「行政を監視するのが議会の仕事」との観念に縛られている議会があまりにも多い。「二元代表」の本来の機能を発揮しないといけない。「監視」は一部。民意の反映機関が議会であると考え、地域を変えていくのが議会。国を変えるのは地方だ。

○2日間、学んだことを実践に。「よし、ウチはこれをやろう」。それを私たちは応援します。

 

 

2.デジタル大臣、牧島かれん氏(リモート)「一人一人の多様な幸せを実現するデジタル庁のミッション」

 

○日本はコロナで、DXで世界に遅れを露呈した。

20219月、デジタル庁スタート。当初600人、現在は700人の陣容。民間からも多様なバックグラウンドを持つ人が結集。これまでの「霞ヶ関」とは違う。

2つのビジョン。Goverment as aServiceGovermentasaStartup

4つのバリュー。①一人ひとりのため 皆が便利を感じる②目的を問い 「やめる」勇気で生産性高める③立場を超えて 地方を巻き込む④成果への挑戦 挑戦と失敗で学ぶ

○ガバメントクラウドのすすめ。今年の夏までに20の基幹を統一標準化する。一例。引越しした人にはワクチン3回目案内が来ないという不都合。これをマイナンバー法の解釈によって解決した。接種証明をデジタル化。予防接種法の改正で実現した。

○デジ臨(デジタル臨調)とデジ田(デジタル田園都市国家構想)は両輪。デジ臨ステージ1から2へ、さらに3へ。デジタル原則を国から地方へ。

 

 

3.江藤俊昭大正大学教授、寺沢長野市議会議長、伊波読谷村議会議長3氏による鼎談「住民自治と多様な議員で構成された活力ある議会」

 

江藤

○議会改革の「本史」の確認。「住民自治の根幹」の再確認。多様性に基づく公開と討議。デジタル、ジェンダー、議員のなり手不足。

○議会改革「第二ステージ」。質問も大事だが討論がさらに大事。「住民の幸せのために成果を出しているか」を議会は自らに問う。議会は「住民自治」の根幹である。デジタルが多様性を豊富にしていく。報酬を高くすれば多様性(若い議員、女性議員を輩出して)高くなる。報酬というのは「役務活動の対価」というのが通説。なのに「生活できない」報酬額は問題。

寺沢

○結婚、出産したら「世間に取り残された」感じがした。できることからやろう、と、子ども子育て活動を始めた。辛い子育てに支援が必要だ。ここまでの活動を報告。現在、34人中9人が女性議員。条例改正で出産育児欠席を認めた。録画での常任委員会ネット中継、タブレット導入、オンラインとリアルでの市民と議会の意見交換会を5月に実施。4分の1がオンライン参加だった。委員会のオンライン開催を検討中。議会BCPを策定。

伊波

○議会基本条例を制定。議員報酬・定数検討特別委員会。住民説明会を企画するもコロナで開催できず現在に至る。定数については議論が分かれ、報酬についてはコロナで住民が苦しむ中、報酬増額は理解得られないだろうと据え置きを決めた。

 

 

4.セッション「オンライン議会の展開事例」清水克士、大津市議会事務局長

 

20204/255/6、大津市役所本庁でクラスター発生。多くの職員が陽性で「市内で一番危険な場所」に。本庁舎閉館。もし議会開会中だったらどうしたろうか、の危機感。そこでオンライン委員会を開けるよう検討。例規を整備した議会は全国1788135議会(7.55%)、実施した議会は178835議会(1.95%)。少ない理由は意識が薄いからか。「めったにないよね」という気持ちや「専決処分やむなし」の声も根強いと思われる。

○コロナに限定せず、育児・介護によるオンライン出席の道を開いた。国会のオンライン化が議論されているので、地方は国会の後でいいんじゃないか、との意識もあるが、これでは「団体自治」の憲法の精神にもとる。自治法改正を待たず、解釈で可能ではないか?

○ただ司法判断は必至となる。大津市議会では6人が陽性、または濃厚接触者となり、結果、2議員が質問を取りやめた。採決以外の日程ならば法10012項「協議調整の場」の規定を活用し、「(仮称)一般質問協議会」に切り替えて開催できるのではないか?(提案)

 

岩崎弘宣、取手市議会事務局次長

○「デモテック」を標榜し、これまで議会改革を推進してきた。デモクラシーとテクノロジーを掛け合わせた。どこまでも「DX」でなく「デモテック」で進めたい。

○音声変換技術が進み、瞬時にかつ正確さも高く、オンラインでAI字幕が実現。アドバンストメディア社。委員会オンラインでテロップ。住民が議事録作成。高校生が校正を担ってくれている。

○委員会には360度カメラを導入、ネット配信。現地調査にもカメラが活躍。VRを併用するとあたかも委員会に隣席しているような感じになる。ただ現地調査は公開していない。

○来週公開予定「議事録視覚化システム」。AIが議事録で多く発された言葉を拾い上げ、議事録にリンクさせる。

○コロナだけでなく、妊娠、出産ほかでオンライン出席可能に。怪我した議員もオンラインで欠席することなく議事に参加できる。

○出席しないのは、楽をするためではない。有事のためである。オンラインは非常時に限る。平時はリアル会議。デジタルに不安な議員もいるが、事務局職員がマンツーマンでサポートしている。

 

(オンライン)中野智基、知立市議会議長

○コロナを機に「市民とつながる・深まる議会改革」スタート。

ICT導入。平成252月制定の議会基本条例第222項に根拠を明文化させた。しかしデバイドとリテラシーで10年間進まず。議会だより編集委員会(H28.10)がまず電子機器を使用。令和22月「運用基準」。同5月、コロナ禍でも「活動を止めない」「議論を止めない」「公開を止めない」ことを心がけた。

○令和29月、委員会条例を改正しオンライン会議を追加。議会BCPを補完する「指針」。防災訓練、災害対策会議のオンライン開催、議会報告会はハイブリッド開催。

○議会DX推進プロジェクトチーム発足。コロナ転機に本来の議会活動のあり方に目覚めた。「市民とつながる」「深まる議会改革」を進める。

○市議会モニター制度。校区から1人×7校区で7人構成。

 

(オンライン)松尾徳晴、春日市議会議長、米丸貴浩、同広報公聴委員長

Zoomで「議員と語ろうオンライン議会報告会」を開催。参加者は30人に設定。これまでは開催時刻を平日6時、仕事帰りの人をターゲットにしていたが、これを土曜日の朝に変更。議員も基本的に自宅で参加する。全員協議会室をキーステーションとする。後日、録画を配信。内容は、委員会ごとの報告各5分の後、意見交換の2部構成。

○ブレイクアウトルームを活用。広報公聴委員がファシリテーターを務める。6人×5グループ=30人。広報公聴委員会は議会だより、議会HP、議会SNS、ポスター、チラシを担当、高校へも告知。

○研修をしっかり受けたファシリテーターのスキルが決め手。開催スタイルについては「せめて年4回やるべき」との市民の声もあり。土曜日の朝にしたから高校生が参加してくれて若々しく、柔軟な内容になった。さらなる参加者の年齢層拡大を図りたい。

○ただし「ファシリテーターが一番しゃべった」との反省点もあり。

 

 

5.セッション「多様な議員の一般質問を議会の政策形成へ」法政大学法学部教授、土山希美枝氏。これにはリモートで別海町議会、リアルで鷹栖町議会が参加

 

○土山 いい質問なのに生かされない。一人の議員が言っていることだから。生かされないのはもったいない。議員にとっても議会にとっても、何より市民にとってもったいない。

○別海町議会、西原浩議長 議会モニター制度を導入。「一般質問する議員が少ないのではないか?」との意見あり。第2期議会活性化計画を令和元年スタート。基本4指針を定めた。①わかりやすい議会②開かれた議会③行動する議会④結果を出す議会。議会サポーターに土山氏ほか委嘱。「一般質問検討会議」を始めた(振り返りの会)。一議員の質問「アレルギー除去給食」についてが優れていて議会として取り上げることに。これにより「一般質問が変わった」。アンケート結果にも如実。新たな展開へ。質問通告を新聞折り込みすることになり、質問が増え、傍聴も増えた。

○鷹栖町議会、青野議会運営委員長はリアルで、片山広報広聴委員長はリモートで出席。なお広報広聴委員会は常任委員会の位置づけ。まず、議会へ足を運んでもらうための「議場コンサート」実施→議会報告会開催→「地域を語ろう会」を開催→一般質問の「その後」を追跡する制度→2016年、土山氏によるフォーラム開催→2019初めて議員政策によるチラシを作成。「えっ!日曜日に議会?」と週刊誌の吊り広告風。質問の期日だけのお知らせから「もっと内容を教えて」との要望高まる。→さらに「"通信簿"に議員戦慄!?」とセンセーショナルな見だしに。「議員に通信簿をつけるなんて面白いね」と評判に。傍聴者の声を「可視化」。通信簿の結果を議会報に掲載。「議会傍聴ガイドブック」を作成し「質問みどころ」を紹介。「語ろう会」で得た声を基に委員長が一般質問をする。一般質問でごみ問題を取り上げ→通信簿で初の"満点"が出た→委員会で取り上げた。

○Q&A そういう発想は誰から出ているのか。反対の声はないのか。片山氏の頭の中から出てくる。1年かけて構想し、青野氏に相談。他の議員にも相談をかけて進めていく。

○Q&A 行政広報と議会広報の違いは? 行政の広報は「うまくいってるお知らせ」、議会広報は「まちの課題のお知らせ」。

○まとめ 先進事例のマネでなく、その「本質」を学んでほしい。チラシに「ふざけてる」の批判もあったがそれを機に町民の対話を進めた。

○セッション後、青野氏と名刺交換。話の中で「先着順ですよ」と言っていた「吊り革広告」ふうチラシと「怪獣映画」ふうポスターをあしらったクリアフォルダーと副読本をもじったような「議会傍聴ガイドブック」をいただいた。片山委員長ってどんな人ですか? と率直に質問したところ「陶芸家です」。

 

 

6.講演「コロナ2年の経験をどう活かしていくのか!?」法政大学総長、廣瀬克哉氏

 

○「コロナは去る。もう対応しなくていい」と思っていないか?  「集まれなくなる」事態が今後起きた時の対策を今、整えるべき。今回、オンラインの経験ができた。この会合でも行われている。何ができ、何ができないのかの経験値が2年間で積まれた。そのノウハウを議会として整理する時期が来ている。

○「落とし穴」は「正常性バイアス」や「戦術的楽観」による「戦略的無策」である。元に戻すこと、「復旧」しか考えない。そうでなく、今与えられた時間をちゃんと活用しておくことが大事だ。法整備を今のうちに整えよ。「出席」の概念の明確化を。何でも軽々「超法規」と言ってはいけない。「備える」ことは責務だ。「備え」のレベルを上げておく必要がある。

○本会議は当面無理でも委員会ならば、条例さえ整えればリモート開催は可能だ。本会議については、「出席」とは「物理的に参集」と総務省が解釈している。本会議を勝手にオンラインで行った場合に、向こうを訴訟で争われて「勝てる」確信はあるか? 訴訟リスクを考慮しなければならないが、法律上「オンライン出席」を認める例もある。その旨を記しておくことで成立する。衆院憲法審査会202233日の会議で「出席」の概念が議論された。憲法561項に根拠。地方議会の「出席」は、自治法改正を待つのでなく、議会自律権に基づき自ら考えるべきではないか。3/3の会議だったから3月の定例会では無理だったとしても、6月定例会では”頭出し”をやるべきではないか。

○予行演習を重ね、オンラインには「対面ではできないこと」を可能にする力があることを知ってほしい。オンラインでしかできないこともある。「近くにいた人とは遠くなったが、遠くの人は近くなった」と言われる。これまで物理的に、年に12回しか行けなかったところと毎週でも打ち合わせできるようになった。「誰でもzoom」の時代だ。オンラインでの視察もスムーズにできるようになる。それをどう活かすかだ。オンラインでつながるのは先進地だけとではない。住民ともつながれるツールだ。オンライン議会報告会で新たな参加者を得よう。これを機に「議会がやったならウチもやれる」と、町内会も動くかも。「復旧」でなく、以前よりさらに良くすることだ。復旧ではなく改革の機会だ。「終わったからもういい」でなく、さらに進む時だ。

 

 

7.講演とセッション「地方議会における男女共同参画の推進と実践」。日本大学法学部准教授、林 紀行氏。これにはリアルとリモートで永野裕子(豊島区議会議員)、髙橋たい子(柴田町議会議長)、平間奈緒美(同副議長)各氏が参加

 

2020.11.25の岩沼市議出席停止事件最高裁判決。「議員は、住民自治の原則を具現化する…責務を負う」に関し、宇賀克也裁判官の補足意見は画期的。「不文文化の中で明記した」こと、「地方議員への期待が高まっている」ことに注目。

○議員の年齢構成の中心は5070歳の男性。なり手不足が深刻化し、結果として無投票になり、だから定数減、との循環があるが、それでいいのか? 岡山県でシミュレーションすると、2040年には現在の469人が376人になる。

○それでは女性議員が増えるといいのか? 議会改革度との相関関係はない。変わるわけではないが、多様な議員の確保に貢献する。

○豊島区の永野区議。標準会議規則が改正された。2021.2.25付全国市議会旬報に所載。これに基づき21.10.20現在、8489%の議会で改正が行われた。産前産後休暇、議会内の休憩スペース、保育の確保が必要だ。

○柴田町議会。我が町は8㎞の桜並木、「樅の木は残った」ロケで有名。18人中4人が女性議員で全国から注目。正副とも女性議長なのは全国2例目。町の男女共同参画の取り組みが進み、女性議員第1号が誕生したのは93年。26人中1人であったが女性施策について質問。翌94年、町に「女性政策係」を設置、お茶くみ廃止、女性史編纂し、学校副読本とした。男女混合名簿は県内初導入。96年、女性模擬議会。98年、リバース模擬議会。男女共同参画都市宣言。2000年、「輝く柴田男女共同ネットワーク」発足、2010年まで。2009年、高橋議長が初当選。高橋氏は、「議員だらけ」の家に嫁ぎ、選挙の手伝いをさせられるのがイヤだったが、「定年後は何をするの?」などと言われて「だんだんその気になった」。当時、先輩女性議員が3人おり、この年3人が加わった。18人の中に6人の女性議員が誕生。「条例を作ろうよ」となり、2010年に「考える会」を立ち上げた。「議会を知ってもらおう」活動をスタート。「お茶飲み会」から始めた。

 

 

8. 講演・セッション「速報! 議会改革度調査ランキングとトレンド」。早稲田大学マニフェスト研究所事務局長、中村 健氏

 

間もなく発表となる今年度の発表を前に、調査結果に見られる傾向やトピックスを紹介。

近年のチェックポイントは「住民の意見を集めて調査し、議論し、決める。そしてそれを広報する」という議会の姿勢です。また「地域経営を実現しようとする議会」に注目しています。今年の傾向は「集まれない、話し合えない、意思決定できない」コロナ状況の中での新たな活動の動きがみられること。

○四日市市議会。議会開会前に議案を市民に公開し、市民にあらかじめ知識を持ってもらう。

○情報共有、住民参画、議会機能強化の各部門で調査項目に加点したことを詳細に説明。

○スコア分布として、上位300議会が積極性を示す。今年は上位の差が詰まり、400議会までが積極的に取り組んでいる。上位はさらに改革が進み、下位はさらに「動きなし」の状況。

○横浜市の職員の異動希望ナンバーワンは議会事務局。「やりたいことをできるのは議会だ」。職員の政策提案中、良いものは「ジャーナル」に掲載されるが、それが議会図書室に置かれ、議員の目に止まる。やりたいことを実現する近道だ、と。

○松本市では高校生が陳情や請願を、模擬でなく本当にやっている。

ここからはランキング3位からの議長が登壇、取り組みをアピール。

3位奥州市議会。大谷選手の出身地。目指せ二刀流。ガイドラインを作成し、市長へ提言する仕組みを作った。実現まで追いかけるサイクルも。グーグルフォームで市民アンケートを取る。

2位登別市議会。登別は温泉ランキングでも全国3位。ついに追いついた。「あるべき論」を脱して「改革方法論」へ。結果を出せる仕組みづくりを心掛けた。住民参加、シチズンシップ教育を強く推進。

1位取手市議会。オンライン駆使して議会活動。模擬本会議に取り組む。自治法改正によるオンライン本会議を目指す。全国の皆さん、協力してください。紙の議会だよりは完全廃止、web版のみとした。

○福島町議会。HPに、これまでの選挙での「選挙公報」をずっと掲載している。各議員の「公約」を選挙時だけのものにしないため。約束をすっぽかさない。なお「選挙NEXT」のサイトには過去のすべてが掲載されている。参考に。AIがあれば「あなたにピッタリの候補を選んでくれます」マニフェスト・スイッチ。福島町議会参画推進条例。「傍聴」をあえて「参画」と表現。傍聴席は「参画者席」とし、議長の許可を得て参画できる、という仕組みにした。

 

 

9. 講演・セッション「Z世代にも届く! デジタルを活用した広報・広聴」古井康介(POTETO Media代表)、小林真子(ZEXT代表)、吉永一輝(同副代表)

 

先端を走る方々の、ちょっと早口でパワフルな話。可能な限りメモしました。

厚労省の母子家庭にまつわる施策。調査では利用した人6%、知っていたら利用した人26%、知らなかった人48%。この626の差は埋めることができる。そのためのデジタル活用を。わかりやすく発信してほしいとの強い要望。見せ方を変えるだけでずいぶん変わる。ここで古井氏が自らのプロフィル紹介画面をスライドに出す。A:おキマリの文字羅列バージョン。B:画面いっぱいに手を振りながら笑顔で向こうからやってくる古井氏の姿を背景に短いセンテンスを貼り付けたバージョン。2枚目には要人と笑顔で語るいくつものシーンをコラージュしていて訴求力は抜群。違いは一目瞭然。同様に、行政サービスを「わかりやすく」発信することが肝要。議論の成果物を「おトク」に見せること。Z世代の心に届く「見せ方」を。「What to say」何を伝えるか、と同時に「How to sey」どう伝えるか、に注力を。そのツールとしての自社「POTOCU」を提案。ベストツールは「Twitter」。しかし全国の地方議員のTwitter利用率は15%。「Z世代の一定層は地方の政治にも興味がある。確かに参加している人にとって、満足な情報を発信しないことには始まらない。伝えたい対象が求めている情報を発信しよう。発信するときはSNSTwitterをうまく使おう。Z世代の言葉で語ろう。

 

 

10. 講演「いまこそ問われる地方自治と議会の役割」。元総務大臣、片山善博氏

 

○社員の不祥事から会社やトップの問題が見える。同様に、見過ごしそうな話題にも行政の課題が潜んでいる。それをえぐってみたい。

○国交相の「統計改ざん」。水増しし、GDPに上乗せした。「5兆、たいしたことない」と報告。それもホントかどうかわからない。「直しました」と言われてもホントかな? と思う。統計がウソなら政策を間違える。かつて自治省からイタリアに出張したときにイタリアの役人から聞いた話。イタリアには3つのウソがあるから気を付けろ。①政治家のウソ②女性のウソ③統計のウソ。日本には③だけはないと胸を張っていたのに。「統計の日」に標語を募集する。今年の標語は「この国の確かな選択支える統計」。まったくその通りだ。

○統計改ざんは国が悪いが、書き換えの指示をしたのは都道府県。47すべてで行われた。違法をやめられなかった。内部通報制度があるのに機能しなかった。虚しい。実行犯は県だ。教唆したのは国。県のほうが罪が重い。2000年まで続いた「機関委任事務」ては、知事は大臣の部下。議会は関与できなかった。これが「自治事務」と「法定受託事務」となり、議会の関与も含めての自治となった。だから監視の責任は議会にもある。国の問題ではない。分権改革の効果が見えない。「全部一度にオーバーホール」は無理だが、分解して点検するのが議会の仕事だ。

○改正自治法962項。法定受託事務を条例で決めることができる。これが議会の関与だ。辺野古の問題では、知事の許可は962項によって「議会の同意を必須」としておけば、こんな混乱はなかった。知事が交代して一転、埋め立ては取り消し。こんなことにはならなかった。平成26年、国が「それはできませんよ」と通知を出した。しかし法令に基づかない通知は命令でなく「助言」に過ぎない。従わない判断もあった。

○次は千代田区のもめごと。区道、神田警察署通りにある街路樹32本中30本を切るかどうか。「地方の課題は地方で決める」。これがうまくいってないから、原理的解決になってしまった。議会が切ると決めた。だから切った、とは言いづらい。それは議会できちんと議論をしてないからだ。切るか切らないか、揉めるから議論しないまま、「腹落ち」してないまま決めたから「勝手に決めた」となる。この例のように、日本の議会は表決までに市民の意見、専門家の意見を入れるしくみがない。それなくして「会派で決めました」。反対のほうも「しょうがない。相手にも一理ある」。これが合意形成になっている。議会は決定機関としての説明責任を果たせ。裁判官は相手の意見を聞く。原告、被告のほか鑑定人、証人の意見も聞く。だから信用されるし、正しさがある。議会もそれをやるべきだ。議会報告会は議会のあとでやる。それもいいけれど、決める前に声を聴こう。

○教員不足2500人の問題。担任がいないクラスも発生という事態に。国は2500人と言ってるが、現場は「そんなもんじゃない」。市立の小学校に担任が足りないのは市の教委の責任だ。県職員ではあるが、責任は市にある。でも、先生から上がった教育長は県教委にモノが言いにくい。独自配置もやるべきだ。誰も責任を取らない国。将来が危うい。ちゃんとその責任を取れる人を選んだのか? 選んだ責任は議会にある。

 

 

11. 感想

 

冒頭の北川氏あいさつ「議会は監視機能、との感覚から脱して」から最後の登壇者片山氏「議会は表決までに市民の意見、専門家の意見を入れよ」まで、これからの地方議会を方向付ける多彩で濃厚な論説が展開されました。江藤氏、土屋氏、廣瀬氏と斯界のオールスターが登場。彼らが貫く論旨を背骨として、そこから広がるあばら骨のように、リアル、リモートの両方でで参加された先進地からの事例発表がそれを肉付けしました。さらに現在のデジタル大臣からのビデオメッセージ、「Z世代に届く発信を地方議員も!」と呼びかける最先端を走るデジタル発信の担い手からのアドバイス。コロナで制約された2年を経て久方ぶりの上京でしたが、「戻るのではない、進めるのだ」との廣瀬氏の言及のとおり、帰りの新幹線が地元へと私の背中を押すようでした。

2000年、地方分権の大改革。ちょうどその年に私は議員となりました。それから片山氏が知事であった鳥取へ、「自立塾」を主催した氏のもとへ学びに通ったことも思い出されます。22年余。今もご健在でこうして力ある論を唱えられているが、「地方議会改革が進まんなあ」というため息を押し隠しての登壇なのではと推し量ります。かつて日比谷公会堂での北川氏のセミナーに参加したことがありました。「地方議員の皆さん、東京へは陳情に来ずに勉強に来てください」と叫ばれていた。その声をよそに会場を退出する人がいた。「どこへ行くの?」「国に陳情に」。そんなワンシーンも忘れられません。以来今日まで、議会改革の波、議会基本条例の制定の動きは盛り上がったが、1700の自治体議会のうち3400は積極的、それ以外は沈滞、との冷徹な調査結果が物語るとおり、わが丸亀市議会の議会改革の進展度も「一服感」か、というのが正直な感想です。かつて議会改革特別委員長を買って出た私がすでに期のうえでは最長となる。その私が現職でいながら「一服感か」などと言っていてはいけない、そうは思うのですが、コロナの向こうに次の山を登攀、というときに、選挙のたびに議員メンバーは変わる。また「一」から声掛けか、との思いがあり、自分を叱咤する勢いにも不安があります。議会報告会ひとつの開催にしても、工夫を凝らし、次から次へと試行錯誤をしてきました。アイデアならいくらでも出るがそれを実現するまでの議会内の合意形成が大変。全国で、この「熱量」で改革度の差がつくのだろうなあ、とわかりつつ、いま懸案の「委員会の見える化」、これひとつを取り上げても、前に押し出す勢いが自分に足りない、それを思います。

ベテランの私がそんなありさまではしかし誰が丸亀市議会の改革を担うか。「議会だより」の内容も高校生との語らいも、20年前となら今昔の感。これまでの自信を追い風にして、ここからのさらなる革新にしっかり取り組んでまいりたい。鷹栖町の議長さんからいただいたクリアファイルの副読本風のガイドブックがここにあります。すべてのプログラムを終えて再び登壇した北川氏が語りました。「鷹栖町議会のパンフレット。できないことはありません。叱られながら作りましょう!」と私たちにエールを。「地方は議会から変える」。この大会宣言を心に響かせながら、Z世代を含むすべての住民を取り残さないことを視野に、議会の認知度と満足度を向上させるべく、持てる力を注いでまいりたい。



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