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○市庁舎整備等特別委員会視察2013

 

茨城県土浦市

 

1.あらまし

 

○新築なら80億、用地を含めば120億。既存建物選択へと決断した。

○検討に30年。市街地再開発と切っても切れない市役所立地との考え。そこにイトーヨーカドーの撤収があり、大きくこの建物利用へと舵を切った。「駅前が真っ暗になる」

○前の庁舎はS38年築。これまでに増改築6回、分庁舎化2回。市民からも「もう限界」「そろそろ建て替えを」との意見が多くなっていた。そこへ大震災で気運が高まった。(議場シャンデリアが落下し3月議会で使用できず)

○建設場所の選定には紆余曲折あり。

 @第一段階は敷地の広さ・形状、防災拠点としての安全性ほか9の視点から、

7候補を4つに絞る。3段階方式、絶対評価。

 A第二段階では費用、期間、利便性、市街地への貢献の4の視点から、4候補

2つに絞る。4段階方式、相対評価。

B最終は利便性(どこからでも便利)、まちづくりへの貢献性(イトーヨーカ

ドーを意識)、経済性(収入見込めない将来負担)、迅速性(新築よりも早

く)の4視点から市長判断。

○バブコメで反響はあったが反対はなし。「既存施設で耐震性は大丈夫?」との声あり。

○「人を回す」ことに力点をおき選定。ランドマークとしての市庁舎を市民は願望。

○オープンハウスという手法で市民意見を聞いた。職員がまちなかに出かけてパネル展示を前に通行市民に声かけする方法。500人超の市民に声をかけ234件の意見を得た。パブコメではマニアックな意見、人が集中。市民のナマの声を聴けた。障がい者団体など各種団体へも説明会。ほかに市民アンケート3000人、来庁者へのアンケート。

○公募委員。委員は17名構成。学経2、議員4、団体9、公募2

○議会とのかかわり。最初の審議会メンバーに議員4名が所属。その後議会で特別委員会を設置。メンバー8人の中にその4人が入っている。特別委員会の開催はH234回、H245回開催。ほかに視察1回。全協での説明も多数。→議会はさほどに主導権を握っていなかった印象。

○H24に基本構想の策定をしながら同時に基本計画を進めた。H25実施設計。

 

2.新庁舎のコンセプト

 

○既存建物6階建てのうち地下〜地上4階までを取得。ただし地下1階には生鮮食料品、12階にも商業施設を導入する。

1階に市民総合窓口、福祉総合窓口(福祉関連4課を統合)を置き「迷わない、動かない」市役所に。

 

3.感想

 

○旧庁舎への不満は市民に浸透しており、そこに大震災を受けたので「ムダ」などの批判はなかった。結果的に大震災を追い風としている印象。

○まちなか、商店街にどう配慮するのかの議論は、丸亀市でもどこかできちんとしておかなければならない。そうしないといつまでも反論がくすぶり続けると思われる。

○市民を巻き込んだ庁舎整備への気運盛り上げが欠かせないと思われる。

 

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東京都青梅市

 

1.      あらまし

 

○旧庁舎は築49年。7分庁舎で市民は迷惑していた。

○建築場所は、種々候補を検討するも旧庁舎の駐車場敷地に建て、跡地を新庁舎の駐車場、イベント広場とすることに決定。

○H2年に着想、5年に基本構想、6年に基本設計。168億円の構造。しかしH7年、頓挫。救急救命センター整備を優先。H12、作るかどうかの検討委員会を3年がかり。H17年からやり直しスタート。(再スタートからは6年かかっている)

○業者選定での工夫点として、プロポーザル方式の利点を生かした。コンペ方式だと完成図面で比較することになり、後々の変更が不可。プロポーザルに6社、完成図面でなく各社の工夫を示した図面でプレゼンを行う。結果はそのとおりにはならない。これにより各社の良いところが浮き彫りになった。

○分離発注。5項目それぞれにJV。制限付き一般競争入札。

○市民に対しワークショップやパブコメ行わず。基本構想段階で市民説明会を開催し、そこでの意見をプロポーザルに反映。次に基本設計段階でも市民説明会を開催、実施設計段階でも同様に開催。→あくまで市役所が主導の印象。

○財政措置。基金はすでに117億円に達していたが、借入限度38億はいっぱいに借り、基金を50億円だけ使うことにした。残りは学校耐震などにも活用。起債は20年償還。

○議会との関係。基本構想確定までに議会特別委員会を12回開催。基本設計確定までに同11回開催。市民とのやりとりよりも議会とのやりとりに主力。

○市民との関係。市民説明会3回(3日間)開催。5060人程度が参加。意見としては市民の休める場所、授乳室などの要望があった。ワークショップを開催する手法もあるが、デメリットもある。市民の声とともに職員の声も重視した。

○庁内組織。部長らで新庁舎建設検討委員会。課長レベルでの検討会。職員による4部会を設置。

○建設後の反省点。駐車場の位置の関係で、正門でなく通用門から入る人が多い。サインが見づらい。(カウンターなどに後で追加)

 

2.新庁舎のコンセプト

 

○建設コストよりもライフサイクル(維持管理)コストを重視。

例:A社提案…建設80億、維持管理210

B社提案…建設60億、維持管理300億…A社に決定。

7階建ての本庁舎と4階建ての議会棟。1階は共用部分。

○市民来訪多い窓口を1階に集約。

○白杖認識音声誘導、トイレ内音声案内などバリアフリー。

○窓口ではフラッシュライトで呼び出し。

○全階に多目的トイレ。

○免震構造。3.11で震度4に対し数センチの揺れでおさまる。

○年中1114℃の地熱利用。太陽光は、当時は効率高くなく、30kw発電で家庭8軒分程度。プール3個分の専用水槽で使用総量の43%をまかなう雨水再利用。自然換気システム「ナイトパージ」で夜間に換気し、春と秋はエアコン不使用。屋上緑化、明るさセンサーなど環境配慮。初期投資が必要でも、何年間でペイできるという計算のもと、効率的な投資をした。

○外構の緑地化でヒートアイランド対応。既存施設の素材の再利用。姉妹交流都市から贈られた樹木の植樹など。

 

3.感想

 

○技術の進歩は速く、太陽光発電は数年前から格段に高効率となったが、ほんの数年前の青梅市の新築当時ではまだ中心的な採用とならなかった。年次を追って新しい技術の採用が進むが、できるだけ先を見越したものを研究する必要。

○数か所の候補地があるも急激に市の中枢部、人の住まいが東に移っていくという状況の中、前の敷地の駐車場部分に新築したことは、市民の納得のいく決定であった。前の建物の土地を新たに駐車場、イベント広場、緑の空間、災害時の避難場所としたことは大いに市民に評価されている。

○その駐車場の一角に、非常時の電源トランスがある。庁舎機能がマヒしないような手配がされていた。

○土日、夜間の駐車場は有料となる。これも参考にすべき。

○職場での飲み物はこぼすとパソコン、書類に影響するためキャップ付きの器に限ることにしたという。ペーパーレスを徹底し、答弁資料もデータで。こうしたソフト面での考慮も建物建築とともに重要な視点である。

○外観はきわめてシンプルな印象だが、窓を開けられ、バルコニーに出られる設計は、今後のエコ、メンテナンス、災害対策に納得の配慮である。タイル張りでメンテ費用を安く抑える配慮も。

○よく見られる吹き抜けフロアは空調効率が悪いので採用しなかったとのこと。

87%の来庁市民が1階のフロアで用事が済ませられる。また全体の7割が市民課への用向きであることも事前に調査した。

○ちなみに窓口業務は全部民間委託とのこと。市職員があれもこれもではなく、委託プロパーを接客に専念することで好評を得ているなど、庁舎建設に付随して市民の満足度に気を配ることが重要。ただし、その手法については「議会が市民の窓口」と考える姿勢が印象的であった。

 

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山梨県甲府市

 

1.あらまし

 

○今年5月に完成。最新の設備、甲府らしさの表現、膨大な検討準備資料、理論構築に圧倒される。

○H18年に総合計画策定。その中に新庁舎建設を盛り込む。「6年かかる」との認識。総合計画の市民向け説明の場で、市長が自ら庁舎建設に言及。

○H19市長選挙。6年かかるということは必ず“政治的洗礼”を受けなければならないことを考慮。市長が「市民に愛され親しまれる市庁舎の建設」をマニフェストに掲げる。

○H19基本方針策定、副市長を本部長とする庁内「推進本部」を設置、議会に特別委員会設置。国との予算折衝。建設位置決定。

○H20基本構想策定、仮庁舎移転への準備開始。

○H21基本計画策定、H22基本設計完了、仮庁舎移転、旧庁舎解体。

○H23実施設計完了、建設着手。

○H25新庁舎への移転、落成式典、5/7業務開始。

○候補地選定での基準は@市民利便性A市所有地B敷地の高度利用C市の中核をなす。結果、現在地と、廃校跡地の2か所に。それ以前、市政100周年記念事業として企画したシティホール構想は商店街が反対し議会の2/3議決を得られなかった経緯がある。なお候補地選定資料として詳細な資料を恵与いただいた。その審査基準の中で、市の上位計画との整合性が図られている。

2候補地の評点を厳格に数値化。揺るぎない理論構築がなされている。

○市民アンケート2500人。市役所への用向きの76.6%は「戸籍・住民票」、来庁交通手段は60.8%が自動車、など詳細な調査。

○市民意見の反映。上記総合計画説明会、市民アンケートのほか庁舎市民会議、フィールドワークの実施、パブコメ、有識者委員会、新庁舎建設に関する懇話会、障がい者団体ほか諸団体との意見交換や説明会、市民ワークショップ、設計者選定公開プレゼンテーションど。

○議会とのかかわり。視察など除く実質議論を29回開催。議員は各自の後援会組織でも庁舎建設を説明、出前講座など実施。

○基本設計時ポスター掲出、広報、HPのほか現場見学会実施。気運高める。

○「庁舎建設」に特化した市民への説明会では「反対」が多くなる。「まちづくり説明会」というスタンスでの開催で市民意見を聴くことがポイント。

○発注方式。本体工事は一括発注、外構工事は市内企業参加のみに限定した発注方式。これで諸経費が圧縮できる。90億の工事。一般的なルールから例外扱いとした。

○市役所の引っ越しは年末年始かGWしかできない。工期厳守。

○市庁舎建設は税金の再配分事業である。このことを念頭に、総合評価において各企業から「地域貢献をどう実現するのか」を業者から提案してもらう。結果、69億中6割は市内の業者にお金が支出された。市内貢献に高い評点を付ける。

 

2.新庁舎のコンセプト

 

○甲府らしさ。ぶどう棚イメージした太陽光発電。中心街の活性化に寄与する賑わいの機能持つよう設計。ロゴマークにもドットを用い、ぶどう、宝石などイメージ。8時から21時半では庁内通路を開放。11400人の集客効果。市有林材(天然材)を多用。

○おもてなし。総合案内人を1階に、フロアマネージャーを2階に配置。

○環境配慮。太陽光で「発電する庁舎」で全使用量の1割をまかなう。地中熱、屋上緑化、自然採光・自然通風。27.4%省エネの「環境配慮型庁舎」。1階フロア床暖房。照明人感センサー、ペアガラス、敷地内緑化30%など。

○免震構造57か所。

○総合窓口システム。119業務を終結させ「書かせない・歩かせない・迷わせない」市役所を実現。

○対面式議場。

○災害対策拠点

 

3.感想

 

○コンビニや郵便局のある市役所。通路は夜も開放し、まちなかの市民の通りとなっている。まさに市民目線を徹底した設計思想。ハード面だけでなく、「市民を待たせない」ことに配慮した「総合窓口システム」。まさに「市役所は世につれ」の感がある。

○財政計画では合併特例債55億を活用。未来の人も負担するものだから、市民意見をていねいに受けた、とのこと。

○人口は19万人。丸亀市と規模は異なるが、その設計思想を大いに参考にしたい。

 

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