〇「ドローンネイティブシティプロジェクト」 広島県府中市
令和5年8月2日 9時 府中市役所
1.視察意図
同市HPに、ドローンに関する積極的な取り組みを見つけました。「ドローンネイティブシティプロジェクト」「ドローンワンストップ窓口」「ドローンコミュニティ」そして「ドローンフェス」。これらの記載から、府中市が町を挙げてドローンを活用したまちづくりや施策に挑んでいることを知りました。
丸亀市では私の知人が個人として愛好しており、免許や教室も持ち、観光やまちづくりへの熱心な提言、市への協力も行っています。テレビ番組を見ていても、明らかに最近の撮影にはドローンが多用されており、観光だけでなく災害など多面での活躍が見込まれます。府中市を訪れ、全庁的にどんな取り組みがなされているのか視察しました。
2.視察の詳細
〇これまでの経緯。府中市は百年企業も多い「ものづくりのまち」。H30、航空大学誘致の動きやドローンを作る会などの動きがあり、物資輸送でのドローン活用の議論が始まる。市内にはドローンやラジコン関連の企業(部品を作っているなど)が数社あることが判明。R2、民間事業者で全国初「地表150m以上におけるドローン自動飛行」。中国電力が送電線の間を通る実証をして注目された。ここから、市役所は「できない」でなく「断らないようにしよう」との気風が生まれる。R4、集落環境調査、鳥獣生息状況調査にドローンを初活用。
〇ドローンイベントの開催。R4、ドローンフェス初開催。社会受容性を高めるため。操縦体験や企業展示。日本で最も知名度の高いドローンレース「JDL」を誘致。リーグ戦。市内の寺院「釈迦院」住職がドローン精通者でマイクロドローンレースを開催。
〇ドローンを用いたプログラミング教育。公立小中学校で実施。授業で義務化になったのを機に。3次元でリアル。子どもたちが高い興味。触ることで気付き、学び、協力し合って解決という意欲の高まる授業になっている。
〇ドローンワンストップ窓口。外部委託。相談を「受ける」だけでなくプッシュ型で営業を仕掛ける。行政では限界アリ、ソフトバンク、KDDI、セブンイレブンも巻き込んで展開。実証実験から社会実装、営業ベースへと発展。外部委託には「デジ田交付金」を活用。ドローンは成長産業として注目され始めたばかり。「ドローンの街」を目指すことになった。
〇ドローンコミュニティ。地域課題の共有やその解決方法などを協議、情報交換、意見交換する場で、コミュニティを通じて解決の仕組みや製品の構築を目指す。上記ワンストップ窓口とセットで推進。R4、国家ライセンス化を機に加入促進イベントもWEB上で開催。
〇成果。市内で3件の実証実験が行われた。市内施設(総合体育館)をドローン国家試験の試験場として誘致した。平日の利用が少ない時間帯を活用。ドローンコミュニティイベントに約40名が参加。コミュニティには150名以上が参加している。ドローンフェスに約2000人が参加。今年も9/17に開催予定。なお橋梁点検にドローンを活用したが、これは市民からの「アイデアソン」から誕生した。
〇課題。市民のドローンに対する理解がまだまだ。ドローンによる地域の課題解決もこれから取り組む。そのために地域住民と語らい、課題をヒヤリングしていく。広域的に連携することが必要で、市単独では限界がある。成果が上げにくい。フェスティバルに参加した市民からは好評だったが、音がしていて心配の声もあがる。
3.感想
余談の中で、市長は民間の出身、JCの出身であって民間とのパイプ、意識が高いとのことでした。これは大きな「強み」ではないでしょうか。官民の門戸を広く、そして近隣自治体との交流も太く。これからはそれが心がけられなければならないと強く感じます。
視察の後、9月議会でこのことについて質問し、そのあらましを自分の新聞に掲載し配布したところ、さっそく「丸亀市でもドローンコミュニティの発足を」との極めて詳細で建設的な提言をまとめてくださった識者が現れ、市長へ直接のプレゼンテーションはかないませんでしたが担当部長と担当者につなげました。こういう市民からのお知恵をどこまで真摯に受け止め、生かしていくかがこれからの行政の手腕であり、求められる力量であると思います。私が市長や副市長なら、こちらから日程を合わせてこのご意見を拝聴するところですが。市民からのご意見を下にも置かない、後回しにしない。そこにこれからの行政が問われる”品質”があると確信します。
あるテレビの番組で、思いがけず府中市が取り上げられていました。全国各地の、地方が自分の強みを生かして盛り上がっているのをレポートした内容で、例えば盛岡市では、行政が旧街道に容赦なく広い道をつけようとしたのを地元民が反対。いまではその風情がインバウンドを呼び込んでいる、というのもありました。一人ひとりの市民に、都市計画のビジョンを求めることはできないでしょう。しかし地元愛は行政に優ります。それを乱暴に「まちづくりは行政が」という時代ではないのです。ここ府中市もこの番組中に紹介されて、ここも古くは街道筋。そこに残った古民家のたたずまいが観光客を呼び寄せるだけでなく、地元方々が「自費で」古民家を回収し、そこに、伝来の剣道でインバウンド客を惹き付ける、そんな取り組みが画面に描き出されました。これでこそ、官民連携、というより官が民を支えるまちづくり、の理想形だと思います。
その府中市が、温故知新さながらにドローンによるまちづくりに挑戦する。実際にこのまちを歩いてみての印象は、取り立てて目立つスポットもないまちに過ぎません。けれども民間出身の市長の頭脳から発して、さまざまなルート、アイデアが交錯し、新たなまちづくりに挑戦しようとしている姿は魅力的でした。
さらに。2回目のドローンフェスが9月17日に開催予定と聞き、それはちょうど9月定例会の最中であり、躊躇しましたが議長に率直に相談し、特別にお許しを得て日帰りでこのフェスを見に再び府中市を訪れました。それはそのすぐ後、丸亀市でも10月にフェスを開催予定と知っていたからでもあります。9月17日に訪れ、ドローンレース開催に携わる方にこの10月丸亀開催のことを話題にしたところ、「知ってますよ」とのことでした。街角や市のチラシなどで見かけないなあとの心配も杞憂で、丸亀会場も賑わっていましたが、ともにこれからの展開、そして単にレースや体験イベントに終わらせない工夫がこれから求められます。まちづくり、との観点から、今後の柔軟で大胆な展開を強く望みたいところです。
余談ですが前日は三次市を視察し、日程と列車の便の都合でその夕方、府中市に入り、一泊しました。道中は単線で便の少ない福塩線という名の路線でした。長いトンネルがあり、まさに備後の山中を貫通する路線。「三次市から福塩線できました」と言うと職員の方が「よく来れましたね。しょっちゅう不通になるので」とのことでした。栄えた往時の街道の風情が偲ばれますが、それとともに、こうして「新しきを知る」市の勢いに感服。地方創生といっても国からのカネを消化するのが政策ではない。そう教わった心地がしました。わがまちの魅力やにぎわいはわが市民が作る。その気概や機運を醸成してこそ行政の使命が果たされるのだと思います。