○福井市の市民協働政策/コンビニでの証明書交付 福井県福井市
Ⅰ市民協働政策
1.視察意図
福井市では市民との協働推進体制が充実。
基本条例を制定し、協働推進委員会・推進会議を設置。強力な体制を確立し、市民活動への助成制度や支援センターの設置、市民活動基金制度など、各方面で充実した取り組み状況が同市HPからも伺われます。
そこでその具体的な内容やこれまでの進め方について教えていただくことにしました。
2.「市民協働の推進及び非営利公益市民活動の促進に関する条例」制定
H14スタートの総合計画で「市民と行政の連携・協働と市民参画のまちづくり」を標榜。これに基づきH16にこの条例を制定。基本理念を定めた。
条例では市民、活動団体、事業者、市の役割を明らかにし、市の施策を定めて、多様な価値観を認めあう豊かな地域社会創出を目指す。
そのポイントは
①協働の推進と非営利公益市民活動の促進
②上記4者の役割の明確化
③市の施策を明示
・市民協働事業の推進及び評価→「協働に向けたミーティング事業」
市の施策で、市民協働によって効果が高まるものを活動団体から募集し、
「企画の段階から市民とテーブルを囲む」ことでより良い施策に。
「いっしょに創り上げ、役割分担する」。
まず庁内でテーマ募集。推進委員会も同席して協議。協働事業として打ち
立てる。市民から提案が来ることもある。
市と市民とが、お互いに「姿を見せる」、「接する場を多く持つ」「ともに
創り上げる」ことに力点を置いた地道な活動。
職員も土日返上。これを〝苦〟と思うか〝財産〟と思うか。職員の役所人
生にとって必ずプラスになる。
「事業委託」ではない。
スケジュール的には、10~12月に提案取りまとめ→1月、団体に募集→
2月、団体から提案が出る→3月、ミーティング実施→事業化方針を定め、
予算がついているものから事業スタート→5月、市長プレゼンを経て事業
スタート。「市長プレゼン」は「市長査定」とは異なる。市長に対面して
市と市民とが並列に向かい合うレイアウトで、内容の公益性、妥当性、緊
急性や優先順位、実現実行可能性、執行体制、有効性、継続性を市長に向
かってプレゼンする。
ミーティングの基本コンセプトは〝お見合い〟。
ミーティングの視点は現状把握や相互理解、目的の共有、協働する意義、
手段の検討、役割分担、その他、である。
推進委員会からも助言を行う。
これまでに実現した例:中心市街地まちづくりセンター運営事業、多文化
共生プログラム、小学校における「命の教育」など。「役所発」「市民発」。
採用件数は年度により2~5件で推移。26年度では12の提案、8件が採
用された。
・市民と職員の意識醸成→「各種セミナー実施」
・環境整備→「基金助成金制度」(後述)
・施設整備→「NPO支援センター」
市が直営。H21年設置。
市民組織の相談・アドバイス、ネットワークづくり、情報の収集・発信な
どの支援を行い、活動を活発化することを目的とする。
平日9~21時、土日9~17時開館。月曜休館。スタッフ4人。
貸し出しに供する施設はないので、登録制を採らない。団体情報はセンタ
ーのホームページに掲載。
来館者数 年間1100~1800人で推移。
「つながろっさ運動」で、来る人を迎える体制から職員が出向く姿勢に。
人と人のつながりができないと、成り立たない。
・その他
④市民活動促進基金の設置
「ふくい市民活動基金」を16年度に設置。市内に事務所を有する非営利公
益市民活動団体(NPO法人、市民活動・ボラ団体、地域活動団体など)を対
象に、年度内2月までに完了する公益的な事業に対して基金から助成する。
上限10万円、1団体1事業への助成は最多で3回まで。
書類審査と公開プレゼンテーションを開催し、審査は市民協働推進委員
会が審査し、市長が決定。
審査の視点は、公益性、活動の特性としての専門性、先駆性、独創性、柔
軟性、自立・継続性、開放・協働性、客観・現実性の角度から。
運営は、3月下旬から事業募集、4月に前年度事業の成果発表会、5月に
審査・決定、6月から事業実施、翌年2月末までに事業終了という流れ。
スタート当初に700万円を市が拠出。この10年で800万円余の寄附、
平成25年度までで述べ102団体に対し1700万円余の助成。地域振興基金
から拠出し、この基金から取り崩さなかった年度もある。現在は市費での〝
継ぎ足し〟が難しい状況。市内事業者への寄附依頼、「福井市消費者まつり」
での募金活動を行っている。
最近の助成事例:
認知症サポーター養成講座、親子で学ぶ救命法と救急法、防犯実践塾、出
前人形劇・上映会、県産そば粉消費拡大事業、エコ意識調査、まちなかベン
チ制作・設置事業、高齢者への演芸会、プランター花いっぱい事業、えほん
ワークショップ、小学生体力テスト大会、不登校・ひきこもり子育て支援学
習会、エコファミリー表彰事業、創作童話集の発刊、登山道整備プロジェク
ト、コーラス定期演奏会、自然派パパママの料理教室と食育事業、猫の避妊・
去勢啓発、AED講習会、野外での科学実験教室、チャリティクリスマスパ
ーティ、起業家体験講座、上手に老いるコツ講座、地域の母親つながり事業、
多文化共生サポート事業、減らしますレジ袋事業、夏休み親子自然体験、街
の発明展、療育相談会、あかりアートワークショップ、犬猫里親探し事業、
わくわくバスツアー、葬儀・仏事の勉強会、ボランティア朗読会、ゴミ減量・
資源化活動、山車制作、節水実証実験
⑤協働推進委員会の設置(後述)
3.協働推進体制の実際
①市民協働推進委員会
→条例に基づく市の附属機関として、調査、審議を行い、市長に意見を述べ
る。受け身の活動にとどまらず、政策のブラッシュアップ、基盤強化、レ
ベルアップを検討する。委員会として、活動報告会を開催する。
→委員10名。公募委員、活動団体関係者、事業者、学識経験者など。任期
2年。
②市民協働推進会議
→市長をトップとした庁内組織。部局ごとに市民協働調整員、所属ごとに市
民協働推進員を置く。
4.感想
条例前文に、こうありました。
…市民と行政が連携・協働し、共に責任を担う市民参画によるまちづくりが求められており…団体などが行う非営利な公益活動への期待が高まってきています…活動が活性化することで、市民ニーズへのきめ細かな対応がなされ…たすけあいの心が育まれ、市民の自治意識の醸成にもつながります…
H16年の制定まで、まず14年、市に「NPO支援室」を設置。また同年「市協働のまちづくり研究会」を設置して市民と行政がテーブルについて検討する場ができました。研究会メンバー構成は市民10人、職員16人。
15年に入ると同研究会が市長に研究報告を。また「協働のまちづくり市民フォーラム」を開催。続いて「協働のルール策定委員会」を設置。こちらは市民12人に職員4人の構成。同年秋には策定委員会が市長に提言。バブコメを実施。
16年3月に条例が議決されるという、まさに市民と協働の姿での条例制定。協働のルールを市役所側で勝手に決めた、という印象を残しては、実効のある制度は実現できないということでしょう。
福井市の市民活動は昭和20年代から盛ん。現在49地区49公民館+中央公民館で50館体制。とても盛んに活動が行われていると伺いました。戦前、どこにも「隣組」というものはあったでしょうが、それが自発的自立的な互助組織として維持、発展していった先に、こうした現在の市民活動、市との協働が花開いているというべきなのだと思います。
「市役所が何でもやる」という時代の洗礼?を受けて、次に「市民の時代です」と、いわば〝揺り戻し〟にさらされたとき、気がつけば市民の互助性はすっかり引き潮に連れ去られて消えていた、という場合に、市役所がまず、これからは国県の指示待ちでなく、市民のほうに向き合い、自分のシゴトを自覚する、リセットするという作業から、ものごとが始められなくてはなりません。福井市の場合、それは引き潮に連れ去られることなく、厳然と市民活動意識が息づいていたのだろう、そこに違いを感じます。今日の発展のひとつの背景を認めます。
が、それはそれとして、同じ国・県の指導体制のもとで市役所というところは業務をしてきたわけで、市役所、並びに市職員が気持ちをリセットしなければならないことは、全国どことも同じなのだろうと思います。
困難かも知れませんが、この道しか、道はありません。
今春から始まる「地域担当職員」制度を軌道に乗せながら、先日第一回を成功させた「まちづくり夢カフェ」などを充実させ、市民活動の盛り上がりを期す、この道しかありません。
私たちも議会人の立場で協働のパイプとなっていく使命と責任があります。議会という立ち位置もそれ自体、難しい課題を含んでいますが、それを昇華させながら、スムーズな協働のあり方を、丸亀市でも模索し、実現してまいりたい。
1.サービスの概要
○これまでの経緯
住基カード導入時に設置した2台の証明書自動交付機が26年9月に2回
目の更新時期。外国人住民にも対応するようになり、改修には多額の費用が必
要とされる。マイナンバー制度の時代も近づくが民主党時代に先行きが不透
明になった。このことは考慮せず、住民の利便のため、コンビニ交付サービス
を決定した。また背景に、これまでのセブン=イレブンに加えて大手他3社も
参入することがわかっており、市内全域でサービスをカバーできることが見
込まれる。
行政の簡素化、データのクラウド化で「添付書類」の簡素化が進むものの、
まだ完全に添付書類がゼロになる時代は遠いと判断している。
26年5月に業者選定、7月に稼動した。
○サービスの内容
①住民票の写し、印鑑証明書、所得課税証明書 各1通300円
→窓口交付と同じ設定。自動交付機では200円であった。
なお制度の普及のためにコンビニでの交付を窓口よりも安く設定して
いる市もある。
→戸籍を交付する市もあるが、法務省との関係で、対象としなかった。
→コンビニへの手数料は1通123円。
②午前6時30分から午後11時まで。(年末年始やメンテ時除く)
③セブン=イレブン、ローソン、サークルKサンクス、今秋からファミマ。
市内130店舗と県内300店舗。
→市外・県外の店からの取り寄せも8~9%ある。学生など。
○費用対効果
今後、毎年2%程度、コンビニでの交付が増えていくと見込む。証明書発行
に特化した人件費で比較し、将来的には職員2~3名の削減につながる(現在
14名)
○今後の展望
個人番号カードの普及が見込まれる。同カードの無料交付が示されたこと
で、これからのコンビニ交付の利便性はますます高くなる。広報が重要である。
個人番号カード制となれば戸籍証明書の発行もスムーズとなることが見込
まれる。メニューの追加を検討する。
2.感想
自動交付機の更新時期に迫られ、コストと住民サービスを勘案し、コンビニ交付に踏み切ったとのことです。福井市が全国89番目で、視察日現在、90の自治体がこのサービスを行っているそうです。
マイナンバー制度は以前から導入が議論されながら、民主党政権時代に混沌とし、また一方で住基カードの普及はとどまり、国の混乱ぶりを露呈した感があります。クラウドコンピューティングの時代になり、住民が合併によって遠くになってしまった市役所まで行かなくても済むサービスは今日的に大変重要で、まさしくコンビニがあらゆる意味で〝コンビニエンス〟な存在となっていくのが今の潮流と言えましょう。
稼動コストは、利用自治体が増えれば増えるほどシステム利用料が安くなります。一方でサイバーテロや個人情報漏洩などセキュリティへの不安が国民に浸透しており、漠然とした不安もこれから解消していかなければならない課題としてあるのかも知れません。
楽観や拙速を避けつつも、日進月歩のネット時代に、人件費というコスト比較だけでなく、測定は難しいが市役所から遠い住民、とくに高齢化時代にあって「足がない」弱者のために、検討を避けられないサービス課題であろうと思います。
福井市ではサービス開始に先駆け大々的にPRしたことはもちろん、スタートした昨年7月7日、市長が先頭になってコンビニの店先でテープカットのセレモニーに臨み、マスコットキャラクターとともにマスコミのカメラに囲まれている光景を視察でお示しいただきました。
国の動向も見据えつつ、丸亀市でも機を逃すことなく、サービス導入への検討を進めることだと思いました。