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○保育所運営を社会福祉協議会に委託                      愛知県碧南市


1.視察の意図

丸亀市でも現在、保育所の民営化方針が打ち出され、それに基づき民営化が進められいますが、なかでも今回、市社会福祉協議会への委託というスタイルが検討され、その方向で進んでいます(社協方式)。
市内で民間保育所を経営する団体は多くありますが、打診の結果民営化を引き受けてくれる団体がなかったため、今回初めて、社会福祉協議会が保育所運営に乗り出すという形になります。
他市において前例があるとはいえ丸亀市にとって初の試みであり、失敗や不手際は許されないことから、慎重論も議会で出されています。
そこでこのたび、議員有志で先行都市愛知県碧南市に伺い、これまでの導入手法やポイント、メリットなどについてさまざま教えていただきました。

2.碧南市における保育所の概要

公立保育園10園のうち、5園を民間に移管する方針。民間保育園は4園あり、民営化により、公立5園、社協を含む民間9園となる。
平成17年度に移管方針を決定。18年度、議会に説明。19年、パブリックコメント実施。保育所廃止条例を上程。社会福祉協議会理事会・評議委員会が承認。市と社協で覚書締結、広報で入園案内、20年、国・県への諸手続き(財産処分)を提出。4月、受け入れ開始。
平成20年度にまず2園。続いて21〜23年度、各年度1園ずつを移管した。

3.移管の目的と効果

行政改革の推進の一環として職員減員の必要。
臨時職員が常勤職員に占める割合では近隣市の中でトップクラス。臨時職員がクラス担任をするなど、課題解決の必要もあった。また臨時職員は突然退職するという一面があり、保育サービスが不安定に。
5園移管により、クラス担任は100%正規職員に。民営化し、そこで正規採用されることで、全体に正規職員化が進み、これにより国庫からの補助を得られる。
碧南市は「不交付団体」。16年度から、公立保育園への国の補助がストップ。一気に補助財源を失った。これに対し民間保育園への国の補助は存続。したがって社協への民営化で財源が確保できることになる。
5園移管完了時点で、失った補助財源以上の財源が得られる見込み。
臨時保育士でなく正規職員採用待遇となるため、安定した保育士の確保が可能になる。これにより、保育の質の向上も見込んでいる。

4.社会福祉協議会を選定した理由

○法人の設立趣旨がそもそも社会福祉。福祉の担い手である。
○市のさまざまな福祉部門と連携が取れており、スムーズに移管ができる。
○保育所運営方針は社協役員すなわちさまざまな市民の代表が携わり決定。市民の意見を反映。
○保育の継続性。これまでの保育士が突然交代することなく、継続的に移行。ベテラン臨時保育士も正規保育士となることで保育水準も向上。
○公有財産(土地は無償貸与、建物は無償譲渡)を継承するには最適な相手である。

5.移管についての基本方針

○いきなり保育士が入れ替えにならないよう、3分の1ずつ交代していく。安定するまで、市の保育士を派遣。園長、副園長2、ベテラン保育士1の計4名。
○保育内容についても現行を維持。
○保育の質の確保。クラス担任を正規化、公立と共同の研修事業、「主任児童専門員」による巡回指導、助言を行う、県の補助基準で求められる「福祉サービス第三者評価」を5年に1度受けること、などにより保育の質を高めていく。

6.5園をどのように選定したか

○同一小学校区に公立保育園が2つあるもの
○小学校区内に幼稚園があるもの
○規模が大きいところ
以上の基準で5園を選定。うち2園はこれまでにない「0.1歳児保育」もスタートさせる。

7.その他

○移管と同時に「地域子育て支援センター事業」をスタートさせ、セットでサービスの向上。保育園に通わない子や母も集える場所を確保する。社協への移管ならではのサービス向上策である。
○収支ではプラスマイナスゼロ。保育の継続性に配慮すれば、それほど経済効果が出ない。ただし「公立指向」は強く、保育の安心感という数字に出ない良さが望める。
○利用者への説明会は1回のみだったが反対はゼロ。ただしパブリックコメントには反対意見1、同一者から廃止しない「請願」提出、同一者から「住民監査請求」があった(棄却)。
○財産処分に際しては県の認可申請が必要、定款の変更も必要となる。

8.感想

民営化に、にわかに拍車がかかったのは交付税措置の上で公立保育園への国の補助を失ったことだと拝察します。これはたまったものではありません。だからといって、市内の民間営業者は比較的小規模のもので、広く事業を拡張することを受け入れる意向はなし。ここから福祉協議会がにわかに脚光を浴びることになったようです。
しかしいくら福祉の拠点法人とはいえ、これまで「保育所経営」などやったことがないのですから、当初は戸惑いや不安もあったことと思います。それがちょうど、今の丸亀市の置かれている状況です。
利用者の抱く不安は、最小限に抑えることができたようです。実際の移行もスムーズに行き、計画通り、市職員の減、そして臨時の正規化というプランも着実に数字に出てきています。
さあ、丸亀市ではどうでしょうか。議員の一部からは民営化に対して強い警戒感もあり、特に社会福祉協議会が相手であることに抵抗を言う人もいます。サービスが低下しないのか、「武士の商法」ではないが素人に任せてうまくいくのか。こういった声が出るのは当然で、これに対して誠実に説明と対応をしていくことが欠かせません。
丸亀市でもすでに「民間からは申し出がない」というステップにまで来ました。碧南市が試みた乳児保育の拡張、「地域子育て支援センター事業」についても、丸亀市の社協も、同様ではないがファミリーサポートセンターのスタートなど、総合的な子育て支援がセットで進められることがメリットです。
これらをスムーズに運び、利用者に積極的かつ誠実に啓発、アピールをしていくことに、実は行政がこれまであまり得てていないという思いがあり、理由もないが漠然と不安も抱いています。これが杞憂に帰するよう、私どももよく見守ってまいりたいと思います。


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