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○C・S(市民満足度)の向上事業             愛知県碧南市

 

1.視察意図

 

 C・Sとは本来カスタマー・サティスファクション(Customer Satisfaction)。顧客の満足度という意味です。

 これを碧南市では「シティズンズ・サティスファクション」つまり市民の満足度と読み替えて、C・Sと呼んでいます。現市長が出馬に当たり、マニフェストに掲げました。

 こんにち、自治体の行政が国の下請けでなく市民目線、市民のためにあることが当たり前に語られていますが、行政に携わる職員各人の「心の中」はどうでしょうか。

 私も議員の前には公務員でした。リアルに、それは分っているつもりです。

 時代の変遷を、先にキャッチする人と、人を見て右へ倣えをする人、そしてそれでも動かない人、と、それぞれかも知れません。でも、それは公務員マインドの話にとどまらず、そのまま市民の幸不幸にかかわるのです。

 碧南市の取り組むC・Sは重要と、視察に行かせていただきました。

 

2.碧南「C・S」の取組み概要

 

@市長登場

 ・市長は経営コンサル畑。中小企業診断士。「費用対効果」を追求する人。「ま

  ずやってみよう」が身上。HPも「大好き」で大いに「露出する人」。C・

  Sを言い続け、職員の意識改革を狙う。H20就任。議員経験者。

 ・職員研修といえば人事課が所管するのが通常。しかし碧南市では秘書情報

  課が所管する。つまり市長直結。

 ・職員と市民に向け、「繰り返し訴える」ことが大事。

 ・職員研修の場では必ず市長が冒頭に講話を1030分。

 

AC・Sのメニュー

 スタート年には違いがありますが、ここではすべてを網羅します。 

 ・C・Sミーティング

  市長と職員との対話の場。職員の意識を市長が知り、市長の人となりを職

  員が知る好機。181時間。上司は同席せず、発現し易い場作り。

 ・C・Sメール

  職員からの提案をメールで。H20190件、H21212件、H22448件、

  H23577件。このように職員提案が上昇するきっかけとなったメール制度。

  市長は職員からの提案がないなど「民間ではありえない」。

  年末に提案に対する表彰を行う(御用納めのとき)。同時に、たくさんの提

  案を出した部署も顕彰する(団体賞)。つまらないものでもバカにしない、

  批判しない。アイデアを上司や人事担当を経由しないで行うのがポイント。

  市長からも「○○からこんな提案があった」ということを上司も聴かされ

  ない。

 ・C・Sメッセージ

  市長から職員へ毎月1回、市政運営に関する市長の考えを伝える。これま

  でに35回。

 ・幹部会C・Sスピーチ

  毎月1回、部長が輪番で幹部会にて、自由なテーマで3分スピーチ。説明

  能力を高め、幹部としての指導力を養成。テーマは仕事に限らない。

 ・C・Sコラム「敬天愛人」

  広報にて市民向け、市長のコラム。「敬天愛人」とは西郷隆盛の言葉。800

  字。

 ・C・S地区ミーティング

  毎年910月、市内6地区で開催。市長、副市長、教育長、全部長か出席。

  市民誰でも参加できる。各種団体役員には別に案内状。多くは市長自らが

  答える。原則として持ち帰らず、現地で即答する。幹部の意識変革に。

 ・C・Sコメント

  月1回、職員へ市長がメール配信。問題を共有化する目的。「市民の負託で

  市役所は存在している」が市長の口ぐせ。市長の思いを全職員が知ること

  でブレない、リアルタイム化を目指す。職員数1400570人が臨時職員だ

  が、その分け隔てなく、市民に満足を届けることが必要。分け隔てない研

  修をすることが大切。

 ・C・Sランチミーティング

  幹部会は通例8時半からだが年に2回、11時開会とし、昼休みを利用して

  ミーティングを行う。弁当自前。

 ・C・S碧南データBOX

  HPで市長自ら、市の素晴らしさを発信する。歴史、産業、人物など。

 ・C・S向上研修

  前記はゼロ予算で実施するものだがこれだけは予算づけあり。

  ○C・S講演会

   年3回、部課長会議の後の1時間半。希望者参加可。時事テーマなど。

  ○C・Sマナー講習会

   臨時職員対象の講習会。市民から見れば正規職員、臨時職員の区別はな

   い。市長講話、臨時職員の身分や服務の話、応対や客とのコミュニケー

   ションなどの研修を行う。

  ○段取り能力向上研修

   H22年度単年度で終了

  ○C・Sマナートレーナー養成研修

   各職場にマナートレーナーを配置する。30人程度。毎年増やす。

  ○説明能力向上研修

   前記「段取り能力」研修を改良して実施。




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3.感想

 

 市役所に届く「官庁速報」という情報誌があります。そこに何度も紹介された市長。またいただいた資料にはそれだけでなく、各紙に紹介された記事も添付されていました。その中から、中日新聞22721日付の記事をここにも一部、紹介します。ランチミーティングの模様です。

 「部長級職員から、増えている職員の心の病や若手職員の育成、一部の市民からの不当要求、限られた予算の中での事業仕分けの必要性、ゲリラ豪雨への対策といった市政の課題について意見が出された」

 これを読むと、そういうシステムを作るだけではだめなので、それに耳を傾け、活かしてくれるトップの存在があれがこその、このシステムなのだろうと想像できます。まことに、リーダーを選ぶとは、市民の生活そのものに大きく影響することであるのを、ここで強く実感します。

 もう一つ。「時事通信」に載せられたものもここに紹介します。

 コンサル時代は「従業員の家庭や生活を犠牲にすることなく、常に新たな発想を付加して、社会貢献ができる経営を目指した」。民間の視点から、公務員については「改革のスピードが遅い。良いと思うことは次の日からでもやればいいのに、『検討します』と言う。苦情が来ることを恐れ、理屈付けをする。安全策ばかり優先する。ハラがすわっていない。やってみて駄目だったらまた改革すればいいのに」。

 さらに。

 「役所の場合、労働条件は保証されているし、大きな格差を付ける理由付けが難しい。したがってコミュニケーションが大事だ」

 市長が部下と対話する機会を設ければいい、というのではないと思います。市民との対話も同様で、その場面を通じて市民が安心する、市民の声が届く、そういう場面にしなければ、ただの「アリバイ作り」に終わってしまいます。

 現行の地方自治の制度下、首長は一人。そして議員が市民から選ばれます。してみると、一人の首長をどうコントロールするかも、議員たちに担わされているということになります。

 いま、3月議会の真っ最中。予算の決め方も重要ですが、900人に及ぶ市職員、さらに上述のとおり、丸亀市が抱える臨時職員についても確かに市民からは「誰が正職員、誰が臨時職員」などは分らないし、また市民には区分の意味のないことで、「満足度」こそがすべてです。

 市民から見て、市長の選択肢は限られています。

 ならば、選ばれた市長が誰であれ、その人にちゃんを意見を言える議員こそが大事と、そういう結論になるでしょう。いや、言うだけならば誰でも言えるが、言うことを聞かせていく、そこにこそ、私たちの技量が試されているでしょう。

 碧南市民の声を、私は聞いてみたいものです。

 そして丸亀市民から、「議会はよく市長をコントロールしている」と評価していただけるまでにならねばならないと、そのように感じた次第です。

 市民のために働こう、という自覚が市職員に徹底したとき、職員自ら、515分の就業終了から3040分程度、市役所周辺の雑草とりが始められたとお聞きしました。公務員に時間外手当はつきものですが、そうではない発想が、ここには定着しつつあるのでした。 

 

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