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〇北海道立文書(もんじょ)                   北海道札幌市

 

1.視察意図

ここのところ、市に対して私は「市民活動センター」の設置を、そして同僚福部議員は「文書館」の設置を、それぞれ繰り返し提案するようになりました。

丸亀市の友好都市である北海道京極町を訪問することとなり、それではと、札幌市内にある2施設、まず午前には道立文書(もんじょ)館を、同日午後には札幌市の市民活動サポートセンターを視察させていただくことにしました。

文書館は道立であり、またサポートセンターも巨大な札幌という都市にある施設ですから、もとより比較追随することはできません。が、いうなれば「本格的なものとはこういうものだ」という高い理想も、この目で見ておくことも意味があるのではないでしょうか。

圧倒される規模の文書館でしたが、以下に説明いただいたことを抄録したいと思います。

なおそのような主旨から、館の成り立ちなどあまり丸亀市に参考にならないことについては、割愛させていただきます。

 

2.道立文書館の概要

重要文化財・北海道庁旧本庁舎、いわゆる「赤れんが庁舎」が北海道立文書館になっている。

道の歴史に関する文書や記録などを収集し保存するとともに、資料を利用していただくための施設として昭和60年に設置。

〇収集・保存 公文書、私文書、記録などを体系的に収集、保存

〇利用サービスと展示 閲覧、複写、相談、常設展示

〇刊行 目録、史料集、研究紀要などを発行

〇その他 解説、研修会開催など

開館時間は845分〜17時、日曜祝日第3木曜休館

 

日本の文書館は昭和30年代に必要性が説かれ、地方公共団体が設置するようになった。

昭和34年、山口県が初設置。都道府県ベースで現在30。北海道は10番目。ちなみに札幌市の文書館が来年7月に開館予定。

根拠法令は公文書館法(昭和62年法律第115)、北海道立文書館条例。

 

閲覧対象所蔵資料数は公文書6万、私文書4.2万、刊行物16.4万、合計26.8万点。

 

閲覧室の利用状況は年間開館日数283日、利用者2582人、月平均215人。

展示室は年末年始を除く359日、利用者数は把握していない。

 

主な業務は資料の受入、整理、館報「赤れんが」刊行のほか普及事業として、「赤れんが夜学校」「開拓使文書を読む」「古文書解読講座」「古文書教室」「文書にふれよう夏休み子ども歴史教室」「文書館利用講座」などの講座や研修会、特別展を開催。

 

その他、ボランティア事業として元職員、公募の方々が資料補修、目録作成に従事。博

物館実習生の受入、市町村開催行事への講師派遣、見学、職業体験への対応など行う。

 

職員には国の開催する公文書館研修を受講させる。専門家3人、歴史学を学んだ人が2人いる。

 

文書の保存は文書館のほか図書館、博物館の3館が分担している。道全体の総合文書管理システム≠ノ基づき分別が行われ、これに従って文書館に文書が引き継がれる。

文書として保存するか捨てるかの選別は、文書を作ったところがするのでなく文書館が行う。

 

3.感想

「赤れんが庁舎」といえば立派な観光地。年末年始以外は毎日オープンしている展示室には明らかに文書を調べに来たのではない、いでたちの方々があふれていました。

いただいた館発行の機関誌「赤れんが」を開いてみると、こんなことが書かれてあります。

…昨年23年に公文書管理法が全面施行された。そのポイントは、

@現用・非現用を通じた統一的な公文書管理

A移管制度の改善

Bコンプライアンスの推進

C第三者機関の設置と国立公文書館の機能強化

D特定歴史公文書等の利用促進

ほかに、地方公共団体に対しても文書の適正管理に関する努力義務規定が設けられ()「この法律は日本社会を変える可能性を秘めている」という評価は決して大げさでない。

以上のような記述です(要旨)

また、東日本大震災で文書が水損するという経験を経て、バックアップを含めた公文書管理の重要性も浮き彫りとなっている、ともありました。(H24.3月号巻頭言)

重要な仕事であり、使命であると理解できますが、一方、未来にどんな価値があるのかを今の時点で選別判定しなければならないという、漠とした印象も否めません。私の性分からすれば、何でも取っておきたい、けれどもスペースがない、と悩むことになりそうです。本文の最後に書いたとおり、それを選別するプロ≠フ存在が大事で、これはおととし、三豊市に誕生した文書館を早速見学させていただいたおりに、その専門スタッフからも聞かせていただいたことと重なりました。

ハコモノを作ればそれでいい、というものではないことは、冒頭の話に戻りますが、私の唱える市民活動センターも同じです。

そこに常駐し、その文書の作成者が残せと言っても捨てる、捨てろと言っても残す、そしてトータルな未来人のための資料≠的確に保存、整理していくプロフェッショナルがいるところ、それが「文書館」なのです。

同僚議員は館の設置を声高く叫んでおりますが、議員間でもその温度はまだ沸騰しているとは言えない状況です。市当局の心を動かすにも、これから議会内で、温度を高めていくことがまず必要ではないでしょうか。

未来に残すのは橋や道路や学校だけでなく、人びとが暮らした証しである「文書」そのものも、大きな価値を持つものです。現在は過去となり、それを未来に遺していく。まるでタイムカプセルのような、ロマンチックな営みにも思えてきました。

「文書館って、倉庫でしょ?」といった認識から、まずは大いに脱却してまいりたい。このたびの研修成果は、そこに大きく貢献できると思います。


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