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○セミナー「住民とのコミュニケーション 対話と受発信力の向上」

 

 平成3041920日 全国市町村国際文化研究所

 京都造形芸術大学副学長 成人教育学博士 本間正人氏

 

1.    受講意図

 

 議員としてまず、住民とのコミュニケーション力、対話力は生命線とも言える能力。しかもこれからは市役所職員も「何かご用ですか」という待ち受けの態度を脱却して住民のもとに飛び出し、積極的に対話とコミュニケーションでまちづくりを進めていく世。職員の育成は行政内部で行われるべきことではありますが、行政のあらゆる部門、私たちが市民と接し、課題に直面し、行政につないだ時に「そんな対応では」という残念な場面にも直面します。そのことから、このチャンスに「住民とのコミュニケーション」について、おさらいし、また市役所の皆さんにお伝えしたいと思い、受講しました。

 

2.    セミナーの概要

 

「JIAM」と略称される全国市町村国際文化研究所(滋賀県)での1泊研

修。1日目は13時から17時まで。2日目は925分から昼食をはさんで1410分まで。対象は全国の市区町村議会議員。前後左右の席の議員と時には挨拶、対話の進め方の実習を交えながら、テンポよく、ユニークな語り口で話を進めていく。講師のペースに乗せられながら、長いと感じない2日間、濃密な講義が展開されました。

 

3.    講義・演習T(1日目)

 

○「教育学」から「学習学」へ。

 ホモ・ディスケンス。人間は学び続ける存在である。

 講師はホワイトボードにいきなりグラフを描き始める。

 横軸はゼロ歳から100歳の時間の流れ。縦軸は24時間。つまりこの横長長方形は人生の時間全部である。

 その中で「教育」に使われる時間はどれだれか。講師がちいさな図形を描き加える。100年の横軸の中では数歳から高々23歳まで。縦軸では朝起きて夕方までのこれまたわずかな区間でしかない。小中高大と進むにつれて、1日の学習時間は階段式に狭くなっていく。生涯の年間と1日の時間において、教育に使われる時間はたったこれだけ、と氏は指摘。その上で、この図形の右端が「最終学歴」と呼ばれるものだが、ここから先、これに対置する概念として「最新学習歴」というものが据えられるべきだ。

 クルマの運転よりも、子育ては難しい。昔なら多子で3人目、4人目、5人目と、親は「手を抜く」のがうまくなった。少子化の今、子育て能力の向上については上達しにくい。だから「我が子」から「みんなの子」へと考えを変えていくことだ。

 これからは「最終学歴」を死語に。日々「学習歴更新」の人生を歩むべきだ。

○コミュニケーションが大事なことは言うまでもないが、学校にその教科はない(今では一部の高校にある)。そこで講師が会場の115人の議員に手を挙げさせる。「英語がニガテ」「英語がキライ」という人は? ほとんどの人が挙手。「ならば学校は何をやってるんだ? この状態を、これからの小学校でやってくれるな!」と言いたい、と。

 ところで「英語がニガテ」とは言うが「日本がニガテ」とは言わない。それは教育でなく、学習するからである。

 ここでホワイトボードに、「本」と書き、縦に1.2.3.…と書いていく。

「どう読みますか?」いっぽん、にほん、さんぼん、よんほん、ごほん…。「ぽん」だったり「ほん」だったり「ぼん」だったり。これは外国人には難しい。

次に「泊」と書く。同様に、いっぱく、にはく、さんぱく、よんぱく…これはますます難しい。

 1から数えると「いち、に、さん、、ご、ろく、しち、はち…」なのに、10から数えると「じゅう、きゅう、はち、なな、ろく、ご、よん…」と変わる。英語も「教えよう」と思うな。いっしょに学ぼうとすることだ。

○Eラーニング。スマホにはたくさんの勉強道具が入っている。これまでの紙の教科書ではもう教えられない。最終学歴をもって勉強は終わり、でなく、「最新学習歴」を更新する意識を高めていこう。

○「コミュニケーション」でいちばんは「聴く」ことだ。中国の王様が政治を司ることを「聴政」という。天の声を聞く、人の語を聴く、ということ。「广」とは建物。「廳」の字は、王様が素直な心で声を聞く建物、との意だ。これを転じて「庁舎」とは、人の語を聴く建物のことだ。「国の省庁」というが、「省」とは「かえりみてはぶく」というのだから、悪い冗談のようだ(笑)。

○「聴く力」が人間力だ。心が通い合う、徳の高い人とは、人の言うことをよく聞く人のことだ。

○アクティブラーニングとは、主体的で対話的な深い学びをすること。赤ちゃんは生まれながらのアクティブラーナーだ。

○コミュニケーションの3つの機能@「理解を増やす」。

ここで席の前後の人同士が向かい合い、一人はただニヤニヤしている。一方がそれを観察して、彼が何を好きか想像し、言い当てる、という実験。人相、容貌、風体からその人を探る。この体験をしたうえで、講師。

二つの重なる円。左の重ならない部分は「先入観、固定観念、思い込み」。右の重ならない部分は「未知」。そして中央の重なる部分が「理解」である。向かい合い、にやにやしている人をみて「こんな人かな」と考える。でも答えてもらうと意外な面もあって、相手の理解を「修正」する。こうして「彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」。孫子、2000年前の英知だ。そこで、コミュニケーションとは「理解を増やす」ということだ。「相手を知る」ことが大事で、それが「自分を知る」ことでもある。

○A「人間関係に影響を与える」。

 「言語」コミュニケーション < 「非言語」コミュニケーション

 「言語」は言葉の内容。「非言語」は伝え方。距離、視線(アイコンタクト)、表情、動作、声など。緩急、滑舌、高低、大小、ゆっくりか速いか、ジェスチャー、トーンなど。「言語」は「何を言うか」であり「非言語」は「どう言うか」。議員にとって「住民」とは、自分の支持者になりがちだが、そうでない人、誰の話を聞いているか、声なき声を聞いているか、これは日本民主主義の大きな課題だ。

例えば説明会の席上で壇上に並ぶとき。上から目線ではダメ。カウンターも低くすべき。これによって心理的距離感はずいぶん違ってくる。「偉そう」では話が進まない。知らない所に出かけて行ってインタビューすることが大事、民主主義の根幹だ。殿様がお忍びで出かけたイメージで、「支持者」以外の人にインタビューしよう。

三木武夫の「膝詰め談判」の話。相手の膝をたたきながら「頼むよ」と言うと、相手は断りにくくなる。仏頂面で「I’m fine Thankyou」と言って何が伝わるか。テレビの会見で「遺憾に存じます」と言っているのは「オレのせいじゃない」と言っているようなもの。ホモサピエンスは150万年。言語は数万年。字は数千年。「非言語」こそ大事だ。笑顔、目、口口元を意識。「口角(こうかく)」を上げることを意識。眉間の皴、への字の口を修正するのはエネルギーが要る。イーウー体操のススメ。人目に付かない所で素敵な笑顔を心がけよう。

 

<休憩>

 

○B「信頼関係を築く」。

 ここで実践。二人でペアになり、目を閉じて、もう一人の案内で館内を歩いてみる「ブラインドウォーク」。安全、時間、感じるという要素を意識し、6分で交代。前半3分は手を触れて案内。後半3分は手を離して声だけで案内。信頼関係が大事。

 「ブラインドエクササイズ」は、相手とビジョンを共有する意義がある。議員の日常もこうあるべき。いま、どこにいるのかの「現状」とどこへ行こうとしているのかの「目標」を共有できて人はすごく安心。今の日本にはそれが見えない。国会はスキャンダルの追及で終わり、100兆円の予算を議論しない。

 この体験をしてみての感想を4人グループで語り合う。手を離しての案内で「斜め前方」では何度斜めなのかわからない。「1時の方向」などと具体的に。「もうちょっと右」ではカニ歩きになってしまう。「段差があります」ではどの程度の段差かわからず不安である。「5m先に5段の階段があります」。急でなく「予告」が大切。相手に合わせて表現を変える。言葉には多義性がある。霞が関では必要かもしれないが()、あいまいを排せ。わかりやすさが時代の趨勢だ。「住みよいまちづくり」「豊かな暮らし」「地域の活性化」…といっても人によって違う。具体的であることが大事だ。

 世の中は「バリアフリー」どころか「バリアフル」だ。介助の声だけが心の支えなのに、聞こえなくなったら不安だ。問題があるときだけコミュニケーションではビクビクしていなければならない。それではクリエイティティビティを発揮できない。何でもないときにもコミュニケーションを取ろう。上司からの「それでいい」の一言が部下の安心を呼ぶ。部下を呼びつけ、目を合わせないまま、書類と話している上司がいる。傍若無人だ。傍若無人とは、傍らに人無きが如し。乱暴非礼なことだ。トランプのツイッターに部下のチェックなし。スペルミスあり。“not”の一言で戦争は起こる。家庭でも、妻の話を聞くのにテレビに向いて、新聞を開いて聞くな。同様に、議員も選挙のときだけでなく、何もない時にもコミュニケーションを取ろう。「聴く力」が議員力だ。神様が遣わしてくれた最良のトレーニングパートナー、それが「妻」だ!! 

離婚は性格の不一致というが、それよりも微妙なライフスタイルの違いではないか。ここで「目玉焼きアンケート」。あなたは目玉焼きをどのように食べるか? 食べない、何もつけない、ソース、しょうゆ、ポン酢、塩、胡椒、マヨネーズ…とたくさんの声。タバスコまで。少子化の時代、結婚率も出生率も上げることは難しいが、共同生活アドバイスは教育していいのではないか。こういうことこそ「学校で教えてくれる」べきなのに。

 ティーチングとコーチング。

 ティーチングとは誰にでも一律に「5m」と伝えること。

 コーチングとは、Aさんには「12歩」Bさんには「10歩」Cさんには「8歩」と伝える。前者は画一的教育、ウ社は相手に合わせて変える個別指導。相手に合わせてカスタマイズし、今の相手に合わせてバージョンアップしよう。

○言語には多義性があるので、ビジュアルに表、グラフ、イラスト、マップ、絵、写真、動画、実物、実演などを多用しよう。今は文字離れが著しい。自治体もマンガで。熊本の全壊半壊もマンガを用いていた。分かりやすくする努力をした結果、便利度が増し、生命の安全にもつながる。

 

<休憩>

 

○「うなずく」ことで、ポンプのように相手の水を引き出すことができる。「アクティブリスニング」とは、あいづち、うなずき、くりかえし。相手をサポートする能動的なエネルギーの注ぎ方が必要。あいづちは「は」行だ(「ひ」を除く)。はあ、ふうん、へえ〜、ほう、で共感を得られる。うなずきは首の上下運動だ。これがインドだと横運動となる。くりかえしは相手の言うことをリピート。これはなかなか男にはできないが、やっておくと世の中、まるくおさまるのだ。

○ここに男女差というものがある。「共感欲求」の女性、「有能性の証明欲求」の男性。男は戦で「オレは有能だ、強い」と誇示したい特性。かつて「できる」とは戦に強いことだったが20世紀は「問題解決能力」がそれだ。テレビを見ている夫にダラダラと今日の出来事を語る妻。「結論を言え」と返す夫(笑)。特に女性には「共感」で接することだ。

○「あいづち」の松竹梅。上司が部下に「元気出せ」⇒これで元気が出た人はいない。親が子に「勉強しなさい」⇒勉強するフリをするだけ。ゲームに興じているのに「やめろと言われても…」と西城秀樹の心地。それよりも「へえ〜おもしろい」と反応することだ。これが「承認」。

○「ほめ活かし、ほめ育て」の三箇条。@事実をほめるAタイミングよくほめるB心を込めてほめる。

○質問のスキルを「ヒーローインタビュー」で考察。これはコンピューターにはできないことだ。@創造力。ゼロから1を生み出す作業だ。A人間関係を構築する。B感動・発見。これを開発することを京都造形大のミッションとしている。これらを得るために、インタビューは興味、好奇心をフルに発揮する、映像が浮かぶように質問する、などがポイント。これをもとに臨席の人同士でヒーローインタビューを体験してみる。結果、親近感が高まった人は?  の問いに全員が挙手。学校教育ではこういうことを全然やらない。人間関係の近さは空間の近さではない。コミュニケーションによるのだ。コミュニケーションはハートtoハートで行う。ポジションtoポジションでやると「立場」が心の鎧になっている。親子だって立場が違う。これを脱ぎ捨て、気持ちでつながることだ。スポーツ選手にはその体験がいっぱいあるから、採用で重宝がられる。子どもたちは友だちの家に遊びに行ってもゲームばかりしてコミュニケーションがない。今は、コミュニケーション力は自然には身につかない。ヒーローインタビューというように“ヒーロー”というゆえんは、「いつか」「その人なりに」この人はヒーローになる、との思いでコーチングすることだ。わが造形大学に学んだ96歳の高松の人がいた。陶芸科を卒業していま、高松で陶芸教室を開いている。いつか、この人もヒーローになる、という思いでコーチングすることだ。

AさんBさんCさん。それぞれの持ち味がある。ABC村にも持ち味がある。それを伸ばすのが日本の未来だ。

○やる気グラフ。グラフ横軸は23歳で社会に出てから現在(62歳)までの時間軸。縦軸は0%から100%まで、ここまでの人生それぞれの場面での「やる気」を振り返り、線で辿ってゆく。私の場合、23歳坂出市役所就職時点で100%をスタートに、管財課3年間は受け身の仕事で40%に凋落。総務課に配属され、議会対応にやる気と創意を発揮できてそこそこ回復。1988年、瀬戸大橋博での活躍で一気に80%に。平成5年、東四国国体に向け、不休の日々は90%。終えて税務課、後半の係長時代は大活躍で90%を維持。思いがけずインターハイ事務局に配属となり、国体経験も買われたと思って意気に感じて90%と連続ハイテンション。終わって議会議員に立候補。ふたたび100%のエンジン全開。以降、小波で自己評価80%台を驀進中、という表を完成させた。グラフ作成をステップ1として、ステップ2は「やる気が出るきっかけとなったのは誰のどんなことばだったでしょうか?の問いに答える。私は@議会質問を見たある知人、この人は人にお世辞を言う人物ではないが、この人が他者に「他の議員とまったく違う」と絶賛してくれた、そのことをその他者から耳にしたこと。A支援団体から「支援者が胸を張れる候補者になれ」と激励指導されたこと。を挙げた。

ステップ3はセルフコーチング。自分が「やる気」を出すために、自らどんなことができるでしょうか?との問いに答える。私の回答。「“御用聞き”が地方議員の実態だが、少しでも民主主義の質を高めて見せたい」と言い聞かせる。と回答した。

○対面の位置にも配慮する。正面対面型だと対立、けんか腰となる。インタビューは90度に座る「徹子の部屋」方式で。

○誰にもある「使途不明時間」。人は何かと「時間がない」と言うが、そんなことはない。円グラフに1週間を描く。7分の5は出勤だ。7分の1は休日出勤があるかも知れない。しかしあと7分の1ある。24時間×7=168時間で円グラフを描いてみる。睡眠も取るとして、168分の40は「使途不明時間」だ。中学生なら168分の30だ。1日に3時間ゲームをし、5時間はネットをやっている。学校の先生は学校にいる時間の生徒にしか関われない。そうでなく、これからの先生は中学生の時間の大部分である「使途不明時間」に関わるべきだ。塾では、「個別指導型」が生き残っている。今の日本の学校は「中教室」モデルで、機能不全に陥っている。

○“ノミュニケーション”では、上司が部下に自慢話が通例だが、逆に、部下の成功を聴いてあげるのが理想であり、それでこそ「有能性の証明」だ。

○ヒーローインタビューのあと、今度は90秒で「他者紹介」を体験。やった後「元気がでましたか?」の問いに全員が挙手。よかったね、すごいね、と言われて元気が出るのだ。これが日本の資源だ。

○マスコミはバッドニュースばかりだ。議員はグッドニュースの循環に努めてほしい。日本人は「謙譲の美徳」を言うが、そこに議員はインタビューをして、意見を吸い上げ、グッドニュースを掘り下げ、発表し、その循環に努めてほしい。それでこそ「地域議員」だ。今回学んだ「ヒーローインタビュー」と「他者紹介」の二つを組み合わせ、それぞれのベストプラクティス共有を目指そう。

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4.    講義・演習U(2日目)

 

○人間は「忘れる」のではなく「思い出しにくくなる」のだ。そこで「復習」を繰り返すことが必要だ。「エビングハウスの忘却曲線」の解説。記憶が下降線をたどるのを、「復習」、「また復習」で線を上に引き上げ、また下がるのをまた引き上げるという曲線。※このことを学校では教えてくれない、と講師の口ぐせ。

○そこで昨日の講義内容を「復習」する。@コミュニケーションの3機能Aブラインド・ウォークB傾聴とヒーローインタビューC全体の印象。以上を4人のグループになって語り合う。

○学生の2極化。勉強する子としない子と。「最終学歴」が当てにならない日本。

松下幸之助は小学校中退。でも「学習更新歴」は終身。「人間は磨けば光るダイヤモンドの原石だ」「ダイヤモンドを磨けるのはダイヤモンドのみ」。人を磨くのはface to faceheart to heart。ティーチなら、ネットでいくらでもできる。

○切磋琢磨。この語は2500年前の「大学」にある。「切」のこぎりで切る。「磋」

やすりで研ぐ。「琢」鑿ではつる。「磨」砥の粉でつるつるにする。中国ではヒスイ、メノウ、水晶などを「切磋琢磨」してきた。このことからお互いに刺激し合い、学び合い、能力を伸ばし、人間性を高めることを言う。石を喩えに、人間の内なる可能性を引き出すという東洋の思想だ。西洋ではこれを「コーチング」という。

○「大学」の冒頭の言葉。「大学の道は明徳に在り」。朝青龍の名は「朝青龍明徳」という。これを英語で表現すれば「develop」。見えないものを見えるようにすること。その逆は「envelop」。封筒。見えるものを見えないようにする。Developは「現像」。見えないものを見えるようにすること。「開発」とも訳するが、開発というよりも「徳を明らかにする」こと。「ひとりひとりの可能性を引き出す」「地域の可能性を引き出す」。これが「明徳」だ。

○聞いただけなら忘れるが、話すと身につく。これを「ラーニングbyティーチング」という。

○「市政報告会をやっていますか?」の質問に会場で多くの人の手が挙がる。議員が話してオワリ、ではもったいない。ヒーローインタビューをしてみよう。「まつりごと」とは聴くこと。「聴政」。聴くと、聴衆は二極化する。引く人と大演説を始める人と。市政報告会に誰も来なくなっては元も子もないが、聴くことによって参加者の満足度は高まる。そこでの意見を否定しない、「勉強になりました」と受け止める。「受け止める」と「受け入れる」は異なる。そこが日本人のヘタクソなところ。ダイヤローグ=問答では、聴きあうこと、否定しない。多様性を楽しむ、自分の意見を言う、の3要件が必要。自分の意見を言うことがニガテ、というのは練習不足だ。箸が使える、車を運転できるようになるように、自分の意見を言うことは練習で可能だ。そのことも学校教育で教えない。

○「さて、議会は何色でしょうか?」と講師が質問。会場115人のうち、「灰色」が約半分。しかし「虹色」とか「透明」とか、みんないろいろ。同様に市民もいろいろ。力を持ち寄り、多様性を大切にしていこう。

○「幸せを感じる食べ物は?」お揚げ、寿司、キャベツ、マンゴー、と次々に。答えている人たちの幸せそうな顔。報告会は楽しくないことばかりだ。ミーティングは盛り上がるのに、報告会だけは盛り下がる。

○「後援会だより」を作っている人は? の問いに、会場約8割が挙手。「家族を犠牲にして、皆さん配ってますね()」。文字は少なく、文字は大きく、ビジュアルは多く。いまどき小学校の教科書だってカラーだ。長い文は読めない。お手本は商品カタログ? ジャパネット通販生活を参考に。他人の力を借りよう。地域の大学生に聴く。いろんなことを教えてくれる。若い力を借りよう。「ニューズレター」というタイトルも新鮮。市民の声、写真を入れよう。市民の俳句、写真、絵、イラスト…協力者を増やそう。大勢の人を巻き込もう。送りつけて終わりでなくアンケートを取ろう。「どうしたらよくなる?」中核メンバーにアイデアや意見をもらおう。

○ホームページの目的とは何か。作ったら見に来る、はあり得ない。調べものの役に立つだけでよい。プロフィル、政策的な立場、写真、事務所連絡先と地図。

○フェイスブックは何のためか。知っている人とつながる、個性を出す。HPは知らない人が見るもの。FBは長い記事を読んでもらえない。自分らしさを前面に、花、鉄道、盆栽、サッカー…などでつながる。自分が書くだけではダメ。人から「いいね」とコメントをもらう。5000人が上限。「おはようございます」「今日も頑張ります」はNG。価値がない。「それ、ちがうんじゃない?」もNG。「え!歌舞伎が好きなんですね」と個性を出し、つながるツールに。

○ツイッターは140字制限。藤村正宏「“3つのF”が価値になる」(日経出版社)を参照。悪口、誹謗、中傷はNG。「バカ発見器」のようなもので、誰かが魚拓(コピペ)を取っているから、世界中にバカをさらけて取り消せない。

○動画は1分以内。よっぽど面白くないと見てもらえない。一番は犬、猫だ。

○「怪しいアプリをシェアしないこと」が大事。「性格テスト」など。個人情報を抜かれまくる。

FBは仲間しか見てないから票は増えない。face to faceに勝るものはない。国会議員なら効果的だろう。ポスターではわからない人格も出せる。そして会ったこともない人に投票しようという気持ちにさせる。有効だ。

○市政報告会の参加者が減っていくとお悩みの方。ゲストを呼ぶとゲストが客を連れて来てくれる。ゲストと「徹子の部屋」をやることだ。

SNSは投票行動、得票につながるのか。例えば「格差の是正」とのテーマを設ける。インテリ向けだ。本のプレビューを11本シェアしてコメントするなど。「いつも新しい情報があるぜ」と人を引き付けることができる。顔が見えることが一番だ。

○街頭演説。多摩市では26人全議員が街頭をやっている。各自工夫。ボードを掲げ、ビジュアルを心がけている。「出生率1.11.05に下がりました」など。声の良さ、歯切れの良さはいいが、名前が聞こえないのは最悪。これが一番大事なのに。冒頭の1回しか言ってない例がある。通行人に聞こえるのは2030秒。「ああ誰かやっているな」で終わってしまう。「ただいま823分、○○○○です」「傘を忘れないで」など。出生率よりも今日の温度、明日の天気、ただいま何時、市民に伝えたい行政情報、イベント、訓練、お祭り情報などがいい。

○演説でのポイント。マクロの話題もいいがミクロの話題、住民に刺さるネタを。出生率を語るなら、それで私たちが何かできることにつなげて話す。「ナビタイム」は月額300円。「○○分発の電車が空いています」など、「何ができるか」を考えよう。近隣には挨拶を。それがさわやかならファンになってくれる。駅前の店の人は議員を見ている。口コミはコワい。名前を呼びかけ、自分の名を覚えてもらう。店員は「田中さん、ありがとうございます」と言われて初めて○○議員、と覚えてくれる。自分に関係のない演説はノイズだ。関係ある内容で初めてメッセージになる。宣伝カーから「○○4丁目の皆さんおはようございます、○○でございます」と誰かに呼びかけないとノイズである。女性ならウグイスでも男性ならカラスだ。「ご支援ありがとうございます」よりも「素敵な笑顔でのご支援ありがとうございます」。誰もやってないことを工夫。シンボルカラーは記憶に残る。かつて海部大臣は水玉ネクタイ。シンボルマスコットも効果的。

4人で1グループになり1分間スピーチの練習。@「小学校5年生になって」やってみよう。「利権」とか「執行部」とか、わからない。5年生にわかることはオトナにもわかる。これはすごいトレーニングになる。

○A「5年生にもわかる」1分間スピーチをやってみよう。A80歳の人を味方に付ける1分間スピーチをやってみよう。免許返納の話題、家族が頼りの「足」、蓑輪町では「無料バス」を走らせている。大きな声でゆっくりと。「横文字」はNG。C家族の人に「これからもよろしく」と、味方につける1分間スピーチをやってみよう。議員本人よりも家族は大変なのだ。演説にならないようにする。家族へのプレゼントは買収にならない。

○このように、演説もトレーニングをやったほうがいい。何かを伝えるためには練習を欠かせない。

 

<休憩>

 

○「やる気グラフ」。社会人1年生から現在までのヨコ時間軸に、タテには0から100%まで、これまでの人生の「やる気」を記していく。志も高かった1年生。職場で頑張ったがマンネリも、という曲線を描いていく。そして議員に立候補で再びやる気は急上昇。しかし議員の実態に失望して低迷、などなど。ずっと100%維持、という人はまずいない。こういう内容なら、HPに載せても見てくれる。イラストなど入れて楽しく。「委員長になりました」なんて誰も関心がない。

○グループに分かれて「自分のやる気グラフ」を語りあう。ある議員は一級建築士。妻の病死、会社の取締役辞任、地域世話役を仰せつかり、今は議員に、という人生。またある人は遊園地に勤務していたが低い給料。保険業に転身し、高い収入を得るようになったが、でも疑問も芽生えた。そこから議員に立候補した。

○アイデンティティ・ポートフォリオ。自分のアイデンティティを20個列挙し、そこからベスト5を選び、その重要度を円グラフに書く。グループ4人それぞれ見比べて感想を述べあう。「人間2人寄れば、共通点と相違点がある」。しかし対立関係では、その「相違点」だけが見えている。戦争は武力の前に「あいつは違う」の思いから始まる。みんな違い、みんな持ち味がある。相違点とは多様性だ。そこから相乗効果を引き出せ。バラバラではなくビジョンの共有を。市役所だけが決めるのでなく、人の和を。

○これからもさらに「最終学習歴」の更新を!

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5.    感想

 

長いレポートになりましたので、書き進めながら特に印象に残ったことをコ

ピーペーストしておきましたので、そこから振り返りたいと思います。

「教育学」から「学習学」へ、の序説のテーマに強く共感。社会教育から生

涯学習へ、行政のしくみもあり方も変化しているが、まだまだそれが標準的な意識となってないと常々私は感じています。人生は長い。学校だけが「学び」の場所でないことは誰にも明らかで、国も文化芸術やスポーツを従来の教育委員会組織から市長部局へと移行できる旨制度改正し、丸亀市でもいち早くそれを実行しましたが、必ずしもそれが滑らかに運用されてないように感じるのは、運用する人びとの理解がそこに届かないからではないのかと思っています。議会でも、もうあと「一人」となった模様ですが、文化スポーツは教育委員会に戻せとの70歳代、もと市職員の議員がおられるが、セミナーで聴講したここのところをぜひお伝えしたい。私の思いは、教育委員会は「学校教育委員会」とするべきで、そこにも制度化されたように市長が「総合教育会議」の名のもとにしっかりと関与していく。それが、日本の最後最大の「中央集権制度」とされる教育委員会のいわばマイナスの面を改善していくためのあり方なのではないのか。そのように常日頃から私は考えてきました。それについて、私は今回のセミナーで意を強くしました。氏の講義は終始一貫、「最終学歴」でなく「最終学習歴」を強調、そして「これは学校では教えてくれない。このことをこそ教えるべきなのに」との論調に貫かれていました。まさに議員という仕事は日々、学習歴の更新が求められる、いや、議員には限らないのだろうと思います。

対話で「うなずく」ことは、「ポンプのように相手の水を引き出すことだ」と

は心に残る言葉でした。忘れたくないと思います。私もたぶん、これが身についているとは思うが、この美しい表現でますます自分の「聴く力」、アクティブリスニングのスキルをアップさせたいと思いました。

「妻こそ、神様が遣わしてくれた最良のトレーニングパートナー」とは至言。41グループになり、「小学5年生になったつもりで」「5年生に語るつもりで」「70歳に語るつもりで」そして最後「家族に語るように」との4種のスピーチは、長年生きていて、気づかないこと、当たり前と思うのに気づかないことの多いこと、そしてこうしてそれを見出す手立てがあることを見せてくれました。「気づく」。この忘れやすくて大切な姿勢を、謙虚に持ち続けたい。

「伝えない女」「察しない男」と、男女の特性を見事に表現した話がありました。台所での会話。「鍋を見といて」と妻。すると言葉通り、じっと鍋を見ているだけの夫。笑い話ですが、ここに端的に男女差が見えている。こんなことも分かった上で、男性、女性それぞれとの接し方を、とのアドバイス。わが家庭に照らし、日々の活動に思いを巡らせて心当たり、手ごたえ十分。

人それぞれに持ち味があるように、ABC村にもそれぞれの持ち味が

ある。それを伸ばすのが日本の未来だ。「すごいね」「よかったね」と言われて元気が出る。これが日本の資源だ。まさしく、それしかなく、そしてくよくよしていても始まらない。そこへのプロセスとして、氏の大学も学生を育てるし、各職域で、「人」という財産を最大に伸ばすための手立て、スキルが必要と、あらためてこの、「褒め方」とか「あいさつの仕方」といった“学び”が必要なのだ、と、心に整理がつきました。

 議員として住民との接し方のアイテムの一つに「後援会だより」がありますが、場内に質問。「これを作っている人は?」に、会場約8割が挙手したのは驚きの光景でした。ここに集う人たちの意識の高さに驚き、自分も突出はしていない、と自戒もしました。

「切磋琢磨」の字義を教わる。のこぎりで切る⇒やすりで研ぐ⇒鑿ではつる⇒砥の粉でつるつるに。切ってオワリにしてないか、つるつるになるまで執念を持って。教える「ティーチング」から気づかせる「コーチング」へ。市役所に持ち帰り、ぜひ伝えたい内容も満載でした。そして何より、自分自身を磨きたい。

そして「何かを伝えるためには練習を」。まさに自身を磨くことこそ議員活動、そのようにあらためて思いました。

 さて、全国から100人余りが参集。それは偶然のメンバー揃えであり、隣の席の人もさっきまで赤の他人だった。この人と知り合うために来たのではなく、もし講義の内容がこのようなグループワークでなかったら、あいさつだけでまた全国に帰るにすぎなかったのだと思うと、こういう出会いの機会を常々、あたら捨てているのかとその残念さもったいなさに気づかされました。「やる気グラフ」を照れながらもグループの人に説明している。あとの3人は淡々と語るが、人生波乱万丈、私が一番「苦労不足」なのは認めるとして、味のある人生、苦も楽も今は笑える半生だったのだとしんみりとさえしてしまいました。そして生きることと出会うことの大切さ、貴重さを改めて学ばせていただきました。まさに「最終学習歴」の更新、それにぴったりの2日間の研修。

 うとうとさせるすき間も与えない、アクセントとユーモアと「なるほど」「へえ〜」という驚き、納得に満ち満ちた講義。これらを「座学」として忘れ去るのでなく、まさに「エビングハウスの忘却曲線」を意識しながら、ここに記したことを反復学習して「忘れにくく」する抵抗をしてまいりたい。

 「聴く力」こそ議員力。ポンプで水を汲み出すように「あいづち」のポンプで市民の心の泉を汲みだす。街頭演説もミニ新聞も議員現役最後の日までやり続けながら、今日よりも明日、優れた議員へ、自己をトレーニングしてまいりたい。

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