○ヒューマンキャピタル2014東京
2014.7.16~18 東京国際フォーラム(有楽町)
メインテーマ:人事・組織戦略は「守り」から「攻め」へ!
1.視察意図
初めてこの催しを知り、参加しました。上記のメインテーマに魅力を感じまして。
巨大な東京国際フォーラムも初体験でした。各社が関連の書籍やソフト、オフィス製品などを展示するブースが会場いっぱいに展開され、その4隅に設けられたセミナー会場で、タイムテーブルに沿い、複数の講演・セミナーが同時開催されています。
内容は人事・組織戦略。主に民間企業を対象としたものですが、会社の発展を住民満足に置き換えれば、人をどう育て、仕事をしてもらうかのテーマは公務員にも大いに参考になります。
視察レポートを書くにあたり、「ここまで披瀝していいのか」という迷いがあります。しかし私の立場からは公費を支出しての出張であり、市民に報告することが責務です。あまり具体名の出るようなものまではここには書かないこととし、これからの公務員の人事と人材育成という観点から参考になる部分を抽出して紹介します。ご了承ください。
2.講演①ジョンソン・エンド・ジョンソンのグローバル人材戦略
講師:ジョンソン・エンド・ジョンソン代表取締役社長 日色 保氏
○この会社はヘルスケアで世界一を誇る企業。
○企業の継続的成長のためには主体的に考え、変革を起こすリーダーが求められている。
○ルールブックがどんどん書き換えられる時代である。
○変わりゆく顧客をしっかり洞察(インサイト)することだ。社内と社外のネットワークが大事。
○そのために人材育成こそ最優先だ。
○「これを読め」では伝わらない。対話(ダイアログ)ができるよう、決めつけないでぼかしておく。
○業績評価とリーダーシップ評価とを半々にする。
○人材育成は研修プログラムが10%、コーチングとメンタリングが20%、あとの70%はOJTだ。現場で、「やったことのないことをやらせることがいちばん人を育てる」。
○キリンの首は長い。高いところの実に届く。上司は「彼にはまだ早い」「彼には経験がない」「失敗したらどうするんだ」を乗り越えることだ。そうすればキリンの首は伸びる。
○リーダーは育つものでなく育てるものだ。「居心地がいいです」という場所からひっぺがす。そうすることで人は育つ。
○ダイバーシティ&インクルージョン。女性のリーダーシップ、だけを強調するのでなく、多様性を受け入れること。二つがそろってこそ機能する。
○J&J社の人材開発。学びと能力開発の文化を推進する。人を育てないことは許さない。
人材育成は「責任」。社の責任であり、自分の責任である、と自覚。
○自分の“市場価値”を考えよ。
○「がんばれよ」だけでは何も起こらない。エンパワメントしないといけない。
○マネージャーの一番の評価項目は「人を育てたのか」という点だ。
○「人事」とは「ひとごと」ではない。
○マネージャーとリーダーは、180度違う。
マネージャー…地位・権力…管理する・ものごとを変えない
リーダー …役割・責任…変化をドライブする
○「勘定」より「感情」。千円もらうより「よくやったね」と言われるほうが人はうれしい。
○組織の問題は「人間」のうち「人」よりも「間」に生じる。例:「部長が悪い」「課長のせいだ」「オレは悪くない」…トップとミドル、ミドルと現場、古参と新参、本部と店の“間”で、問題は起きる。「人」そのもので起きるのではない。そう考えたほうが問題発見と解決が早い。大切なのはコミュニケーションだ。
○これからのマーケティングは顧客以上に社員のモチベーションをマーケティングせよ。
○オヤジたちの時代は「食べるために働いた」「食べさせるために働いた」。エンゲル係数が5割の時代だった。今は2割の豊かな時代。モチベーションが多様化。「うまいものが食べたい」「出世したい」よりも「人のためになりたい」「ほめられたい」。カネとポストでは導けない。「給料上げるよ」だけでは喜ばない。
○すべての顧客のニーズに応えようとすると先行きが見えなくなり、忙しいだけになり、社員が疲弊し、会社は潰れる。顧客のニーズは無限に多様化、複雑化するが会社は有限だ。そこで社の「強み」を磨き、ほかを「やめる」ことだ。
○新たな“言葉”を創り出す。イヌイット族は雪を70種類に分ける。厳しい自然環境に生き抜くには、雪を70種類の言葉で表現しなければならない。そのように、新しい言葉を作り、言葉を細かくして表現していく。日本では「ちょうちょ」と「蛾」は分類するが、フランス語では同じ「パピヨン」なのだ。クレーム対応会社では、われわれがひとくくりに「クレーム」と呼んでいるものも30種類に分類して対応する。細かいモノサシを持つことだ。
例えば「ウチは営業が弱い」というとき、「営業のどこが」弱いのかを分析できない。何が問題なのかのモノサシを持つことだ。
○“臨界点”を超えるまで継続せよ。20人の会社。活気がない、あいさつがない。そこで社長があいさつ運動を始めた。月曜日には社長1人だった。火曜日には3人、水曜日には6人になった。そして金曜日には20人に。翌週月曜日、21人目の新入社員は最初からあいさつを。6人の水曜日が臨界点だった。多くの人は日和見の人。様子を見ている人。“初期設定”がみんな違う。「みんながやるならボクもやる」というところまで継続せよ。
3.講演②リーダーは生まれついてのもの…と考えるのは経営の怠慢、
システムティックな育て方がある!
講師:人材アジア代表取締役社長 岡村 進氏
○生命保険会社で国内勤務20年、その後海外勤務へ。振り返ると日本の人事は「やさしい」。
海外に行きたくなかったが、海外経験は自分を豊かにしてくれた。人事の「日本的な良さ」をどう生かすべきか、考え続けた20年だった。
○47歳で外資系会社の社長に就任。「自分で決める」人生に。うれしく、また苦しい道。
グローバル時代の日本が負う苦労。これまでの日本の「背中を見せる経営」は失敗。〝グローバル仕様〟への自己変革が迫られた。
○その会社には50カ国の人たちが集まる。単一性が強く、移民の少ない日本人として、困惑。これに対して移民の多い欧州の人々にはこれへの免疫性が強い。世界の中の日本ということを意識しないと、20年後には間違いなく、日本は貧しい国になる。海外勤務で海外を体験するのではなく、日本の中で働きつつ、世界感覚で勤務をすることだ。
○〝クビを斬る〟ノウハウこそグローバル企業の要素。斬れない、年功序列、パワハラ、目的を特定しての雇用ができない、これらがグローバル化を阻む。プロの怒り方、動かし方、適切な給与の払い方、専門性重視の〝とがった〟人材採用が重要。
○ある日、勤務中に出張の切符の手配に出かけた。上位の社長から「お前にはリーダーとしての給与を払っている。雑用に時間を使うな。そのために秘書を雇っている」と叱責。燃える目標、逃さない目標を付与すること。リーダーはそれにふさわしい仕事だけやらねばならない。
○シンガポールで社長として赴任した。初日、赴任時の1分間スピーチで何を語るべきか。
社員が聞きたいのは、この社長が自分を高めてくれる人なのか、助けてくれる人なのか、良いことをしてくれる人なのか、ということ。プロの心に届くメッセージを出すのがリーダーの役割。
○戦場で生き残るのは紳士淑女ではない。決まらない中で決める力を持つ、自身の勝ちパターンを確立した人材だ。
○羊が4匹いる、というような平和な日本。モノカルチャーな世界。アメリカはライオンありゾウありキリンありという世界。羊のままでは食われる。グローバルという〝郷〟に従え。
○リーダー成長の4段階。①無知の知②多様性の認識③管理の手法は迎合か圧迫か④シナジー効果の創出。異なる価値観を持つ人材と協働することでシナジー効果を生み出す。こういう人材が日本にはいない。
○高額の金を支払ってもシニアマネジメントにプレゼンテーションのコーチを付けよ。話をできないなら社長を辞めよ。プレゼンコーチをリーダーみんなに付けるべき。
○限られた時間で〝得るもの〟のみプレゼンせよ。あとはメールで。
○人材育成の流れ。①世の中の最終共通言語は〝数字〟と認識②営業の現場で人間力、コミュニケーション力、ネットワーク力を身に付ける③海外または〝修羅場〟プロジェクトで究極の自他認識、胆力を身に付ける④本部で大局観をつかむ⑤30後半から40前半に人、モノ、金の三権を掌握、活用する⑤マネジメントとしてさまざまな展開が可能となる。
○滅私奉公型の人材は変革できない人材であり、罪である。変える、変わる、点火型人材。
○「若手が育たない」と社長は嘆くが若手と飲んでみると危機感を持ってないことがわかる。
○人材育成は資格を取得させることよりも市場価値が付く腕の磨き方に力点を。
○<世の中はどう変わるか、との読み>×<自分の履歴書>=<次にやるべきこと>
○自分の将来価値を高めるストーリー①自己認識…修羅場で己がわかる。かつてはやさしかった、謙虚だったと思っても、単に逃げていたのかもしれない②自分の換金価値③修羅場に飛び込め④本部より現場⑤海外出向を歓迎。
○グローバル研修とは、〝稼ぐ力〟の向上研修。日々の業務でテストされ続ける。個々人から変革心を引き出すのがリーダーだ。
4.講演③相互にハッピーな新・部下操縦法
講師:㈱ファーストキャリア代表取締役社長 若鍋 孝司氏
○結論は「人材育成は最初が肝心」
○ファーストキャリア、最初の3年が重要。学生から社会人へ。この3年間で人は「何をするとお金がもらえるのか」「役に立つのか」「存在を許されるのか」を覚える。この3年間で「考え方」「使う言葉」が習慣化されていく。よほどの刺激がなければ、その後それは変わらない。
○社員の6割が「なじむ」、2割が「行動だけ従う」、2割が「辞める」。言うべきことも言わなくなる。言われたことだけやっとこう、という人間になる。
○行動は、教えられてできるものではない。〝考え方〟の共有にポイントがある。考え方になじませるのであって行動になじませるのではない。
○2014年新入社員の傾向。大切と思う人のために頑張る。なすべきことを学生時代にやれてない。〝わかる〟と〝できる〟の違いが分かっていない…一言で言うと「成長しにくいアマチュアボーラー」。経験の〝幅〟は狭く、左のガーター:「どうせ私はダメ」と自虐的に。右のガーター:「ブラックだから合わせておこう」と他責的に。ゴールは見えている「気がする」が、近いところしか見えていない。
○経験学習サイクルが円滑に回るようにすること。そして経験から学習することを習慣化させること。「素直でまじめ」「協調性がある」「意欲が高い」今年の新入社員。しかし「自分なりに発想」しており「達成イメージがわかない」「経験したことがないものへの対応」「異質な価値観への適応」が弱い。表面的な対応や行動に終わる傾向。
○「会社の未来」と「自分の未来」を結びつける。
○プロジェクトワークは多数だと経験が薄くなる。個人に光を。3人単位が適当。
○個人活動×チーム活動×指導者とのコミュニケーション。トレーナー、講師が大事。
○裏切れない先輩から、軸の通った「腹落ち感」のあるインプット。これが新入社員の変化・成長に重要な要素となる。
○本人の適性、資質を無視して目標を立てられると、悲惨である。「目標」「あり方」「やり方」をアジャストさせる。
5.講演④最高のリーダーを昇進前から育てる唯一の方法
リーダーシップ×フォロワーシップ早期デュアル教育の薦め
講師:㈱リ・カレント代表取締役 石橋 真氏
○最強のリーダーシップのためには最良のフォロワーシップを訓練せよ。リーダーになる前にフォロワーシップ訓練が必要。
○組織成果はリーダーシップやチームワークよりフォロワーシップが大きく貢献。しかし評価されにくい。
○山中教授の受賞の陰に35歳の高橋さんという隠されたフォロワーあり。若いうちから山中教授が育てた人。
○リーダーシップ×フォロワーシップ=チームワーク
○「協働」と「共育」の組織文化の創造
○最初のフォロワーになるのは勇気が要る。最初のフォロワーが1人のバカをリーダーにする。リーダーはフォロワーを大切にしよう。
○フォロワーなくしてムーブメントなし。
○リーダーとフォロワーの役割区分
リーダー フォロワー
・役割 模範 補佐
・方向 ビジョン示す 翻訳し具体化
・焦点 決定する 提言する(健全に批判する)
・人 影響を与える 貢献する
・結果 責任を負う 当事者になる
○フォロワーは協働者であるべきなのに従属者になっていないか。
○フォロワーがプレイヤーになったらまとまりがなくなる。
○入社3~4年目から課長まで、階層ごとに手を打っていく。
○社長が30分~1時間も方針を語るが、社員の耳には入っていない。「また演説かよ」と飲んでの悪口にされるパターン。若い時代からプレ・リーダーシップの訓練が必要。「自分が課長ならこうする」「部下のフォロワーシップを引き出す」。社員は上司を選べない。
○研修をしただけではダメ。実績の人を評価し処遇すること。人材が甦る。
○上司の不足、不得手を補佐するのがフォロワー。
○上司への提言・提案は上位者視点から。1つでなくオプションも入れ、さらに優先順位をつけて提言するのがベスト。
6.講演⑤真のリーダーになるための「課長塾」基礎講座
~リーダーとしての自分の〝スタイル〟を知る
講師:日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター 中村竜二氏
○リーダーとしての自分を知ることが大切。
「エリートコーチ」はチームを世界トップクラスに導き、グローバルに活躍。一方「グッドコーチ」は国内で勝てても世界で勝てないドメスチックな活躍。そのターニングポイントは、「自分は自分を徹底的に見つめている」かどうかである。
○「ダニング・ブルーガー効果」。自分の力を高く評価しているか、自己採点すると、6~7点でそこそこと思っている人は伸びない。3~4点でまだまだと思っている人が伸びる。
○リーダーは意識的に自分を見つめること。部下と組織に気を取られてちゃんと自分のことがわかってないことがある。セルフタイムマネジメント。いろいろな方法で自分を見ることがリーダーには大切。
○自分は早稲田大学ラグビー主将を経験。現在、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター、「教える人をコーチする」という立場にあるが、能力もなくリーダーになった。能力が低くてもリーダーは可能。スキルではなくスタイルを大切にしている。偉人の真似はできないが凡人の話なら「再現性」がある。そのために、スタイルが大切。マネジメントとは、再現性を組織に生み出すこと。マネジメントとは、〝他者に頑張ってもらうこと〟。
○What何をやったか、よりもHowどうやってやったのか、が大事。さらにWhyなぜやったのか、が大事である。そしてHowとWhyに再現性がある。
○5つの問いかけ。
①自分はリーダーに向いているか?
②自分はリーダーという立場が好きか?
③自分は自分自身を好きか?
④自分は自分をよく知っているか?
⑤自分はリーダーとしてより成長したいか?
これは川下から川上への発想。自己肯定感があり、自分を信じ、自分が好き。これでリーダーとして伸びられる。スキルトレーニングを徹底しても伸びない。スキルトレーニングをせず自分のことを問いかけ続けると、業績が伸びる。
○問題解決の手法は二つしかない。「まとめる」ことと「分ける」こと。
天才だと、分けてはならない。早稲田ラグビー部で天才選手に「取る」「投げる」を分けて練習するとわからなくなる。凡人ならば分けること。違いは何か。
「差異」の「差」は、ギャップがあり、優劣がある。「異」は優劣がない。これを埋めようとするとリーダーは失敗する。リーダーは「ステレオタイプとどう戦うか」だ。
○スキル:「専門性」がある。良し悪し。ナンバーワン。「点」で存在する。
スタイル:「一貫性」がある。有る無し。オンリーワン。「線」で存在する。
○スタイルとは、逆境にも通用するもの。スタイルがないことこそリーダーの欠点である。上になればなるほど、スタイルは出しにくくなる。
○ラグビーには1軍から6軍まである。「オレはルーキーなのになぜ3軍なのか」と疑問。スキルが優れていてもスタイルがない人は勝てない。相手が弱いときには勝ち、相手が強いときには引く。逆境に面してリーダーが育つ。
○普段はリーダーに感謝しない。逆境のとき、皆はリーダーを見る。「何をしてくれるのか」と。「聞くよりも発すること」。
○学びの原則①人の記憶は「インプット」よりも「アウトプット」②人の学習は「成功体験」より「失敗体験」③発見をさせないのは無知でなく、知っていると錯覚すること。
7.講演⑥「オズの魔法使い」から学ぶ社員育成術
~社員が主体的に動く組織の創り方
講師:DOORインタナショナルジャパン支社長 黒川二郎氏
○『オズの魔法使い』。ドロシーは竜巻で魔法の国に。そこから帰還するために苦労するという話。エメラルドシティにオズの魔法使いがいて、帰る方法を教えてくれる、と聞き、魔法使いを探して旅を続ける。登場する「わらのかかし」は「脳がない」のでどうしたらいいのかわからない。「ブリキのきこり」は心がない。ライオンは勇気がない、のだが、彼らと旅を続けるうち、オズに力があったのではなく、「自分に力が備わっていた」「あなたはもう解決できている」という境地に至る。この物語を通じ、心、勇気、解決方法は「すべて自分の中にあった」と気づくことを示す。
○会社は、問題の解決策が欲しい。しかし解決策を外に求めてはならない。解決策は内にある。
○主体的に動く。明確な成果の定義から始まる。成果が明確でないと進まない。
「成果が明確にされ、理解されていますか」と1000人に聞くと、「はい」14%、「いいえ」86%。
○行動が成果にはっきり結びついているか? 実際の行動と取るべき行動との間に「アカンタビリティギャップ」がある。自分は行動している、というだけでは、成果に届かない。これを意識し、現実を見つめ、当事者意識に立ち、行動に移す。
○〝ラインより下〟の考え方。「成り行きを見よう」「混乱している」「教えて欲しい」「私の仕事ではない」「他人のせいだ」などの意識で仕事をしている。人は3歳から言い訳をし始める。誰かが教えたわけでもないのに。
○〝ラインより上〟に行くための16のベストプラクティスがある。
○「なぜ前進できないのか」その障害を特定する「LIFTメソッドによるコーチング」。Listen、Identify、Facilitate、Test。成果に対して「ほかに何かできることがありますか?」と解決策を導く質問(紹介のみ)。
○ヒルトンホテルのbefore&after。従来、言われたことをやるのみだった社員をトレーニング。「あなたの仕事は何ですか?」と聞かれて数値目標、成果目標を明確に返事ができるように。自分の仕事と目標とを関連付けて仕事に臨むようになり、ホテルの評価は向上した。
○思考と感情、行動と結果に完全なアカンタビリティを引き受ける場合にのみ、〝自分の運命を管理することができる〟
○社員が主体的に動く組織を作るには、①明確な成果設定②アカンタビリティステップのライン〝上〟で多くの時間を取る、ことだ。
8.講演⑦「とりあえずダイバーシティ」からの脱却3つのカギ
~仕組みに魂を吹き込む『タブーマネジメント』
講師:㈱キャリエーラ代表取締役 藤井佐和子氏
○女性活躍推進が進まない3つのポイント
①制度、仕組み…産休、有給制度はバッチリ。なのに、使われてない。
②女性の育成…意識は高いが、管理職の理解がない。
③会社、上司の意識…優秀な人を雇用しながら管理職が使えてない。
○女性管理職割合の国際比較。2010年比較で、アメリカ43.0、フランス38.7、イギリス35.7、イタリア32.8、スウェーデン31.2、ドイツ29.9、日本10.6、韓国10.1。
○なぜ女性管理職を増やす必要があるのか。
①将来的な人手不足の解消。少子化の中の経営戦略。女性の中から人材を発掘。
②多様性のニーズに応える。消費は女性が主体。女性の発想が会社に入ってい
るか。
○トヨタの販売店。来店した夫婦。ふつう主人にこちらの名刺を渡すが、ここでは夫婦に。「決める」のは奥さんだから。決定権の74%は「妻」。
○女性管理職育成が進まない理由
①トップが「必要ない」と、動かない。
②中堅管理職が理解しない。
③○○年までに○%と目標はあるが、「そのつもり」で育てていない。
○管理職の現状
①自分異なる部下が増えた。男同士なら通じるものも通じない。
②プレイングマネージャーも多い。部下の育成にまで手が回らない。
③部下育成の経験がない。バブルから氷河期に転落した世代。役職あって部下
なしというケースも。
○「多様な部下」とは外国人、性別、雇用形態、障がい者、価値観、世代、ライフイベントの違い。
○管理職の変化が進まない理由~「オレの背中を見て育て」の時代ではない。
①残業する=組織への貢献という意識が強く、評価に影響
②変化が苦手
③女性が登用されると自分が危うくなるという意識
④関わるのが苦手。「あとは任せた」と逃げる、女性が怖くて関わりたくない、
つい甘やかす、など。
○「オレのやるとおりやれ」「見てりゃわかるだろ」では育成できない。女性が辞めていく。すると若い男性も辞めていく。
○制度に関する課題
①産休、育休、時短取得者は増えたが、倫理観が欠落している。
②50代で男女とも「介護」のタイミングに。実家が遠く、辞めようかと悩む。
③イクメンが増えづらい。早く帰宅する部下に対し、時代の変化を理解できな
い上司。
④「あいつはよくやっている」と、会社への貢献度で人を評価する。
⑤残業代を当てにしている人もいる。
○仕事の平均時間国際比較で日本はダントツ。
○解決への10のヒント
①ジョブローテーションに女性も例外なく、を会社の決定事項とする。上司の
思惑で「せっかく仕事を覚えた人を失いたくない」という風土を一掃。
②他部署との交流、勉強会、工場見学などを人事主導で。メール社会で、よそ
のことが見えてない組織。人脈も情報量も広く。「母が要介護なのです」といった事情を知る。セクハラが怖くて聞けない上司。
③チーム全体が情報共有、上司は情報を抱えない。
④社内決裁、稟議を減らして17時帰社。
⑤メンター制度導入。上司が忙しくてかまっていられない、を逃げ道にしない。
⑥評価者研修の見直し。「あいつはよくやっている」残業時間で評価するな。
⑦男女ペアのツートップマネジャー制に。女性は「上に立ちたい」よりも「サ
ポートしたい」。
⑧転勤の見直し。
⑨男性の育休。資生堂は100%達成。
⑩残業を何が何でも減らすメッセージと残業代の代わりとなるものを付与。
残業をなくしたチームにはボーナス、で成功例。
9.講演⑧「組織を熱くする変革リーダーづくり」3つの法則
講師:小倉広事務所代表 小倉 広氏
リ・カレント代表取締役 石橋 真氏
○「組織を熱くする変革リーダーづくり」3つの法則とは、
①突出力
・負け犬根性を払拭
・大胆な目標を掲げる(試してみよう)
・使命感を抱く(「何のため」を常に確認)
②巻き込み力
・現場で率先垂範
・可能性を思考する
・一体感を作る
③共振力
・執念を背中で見せる
・現場で感動を共有する
・小さな祝勝会を行う
○1998年4月から1999年3月末までの金融不況。地銀信金が連鎖倒産、成長は対前年比マイナス60%という中、無力感、責任転嫁、大手は伸び、中小は下がることからの被害者意識、現実逃避、自己正当化が蔓延。会社に採用も社員教育もなくなった。
こんな最中に出会った㈱ひらまつの平松宏之氏の言葉に人生を転換。レストランウェディングの世界で、一代でビジネススタイルを確立。びっくりの90分の講義が人生を変えた。
「人生かけて仕事で勝負せよ」「乗っかかってるだけではないのか」この言葉に「正気を取り戻した」。そして「半年じゅうに全国トップを取る」と発奮。
「自分の市場価値は?」と問う自分に。
「なぜ買ってもらえなかったのか」を徹底して教えてもらうために客回り。
「今までの自分を断ち切る」
○負け犬根性=ネガティブエネルギーを「這い上がる力」で転換、未来への意思=ポジティブエネルギーへ。そのために修羅場をくぐる。
○戦略とは、選択と集中(差別化)。組織とは、想いとナレッジ(知識)共有。
○不況業種との取引を復活。中堅証券をあえて選択。地べたをはいずる営業。新商品開発。業界向けプロモーションで「修羅場をくぐる」。
○変革リーダーを生み出す組織とは、
・新しいチャレンジが面白い、という組織文化
・「お前は何がしたいんだ」と問われる社風
・意見を持たないと生きていけない環境が人を育てる
・社内報で成功モデルを紹介…毎週が「プロジェクトX」
○リーダーシップとは、志、エモーショナル、感情。
マネジメントは、しくみ・システム、理性。だから「しくみからやると失敗」
○リーダーのやるべきことは、指示や命令でなく、フォロワーの情熱に火をつけること。
○最後は「人」。自分のやりたいことでなく、メンバーのやりたいことをフォローしていくリーダーに。
10.講演⑨共感型リーダーシップを問う
「花子とアン~NHK朝ドラ原案者に聞く東洋英和の人材育成」
パネリスト:オリックス シニア・チェアマン 宮内義彦氏
科学史家、東京大学、国際基督教大学名誉教授
村上陽一郎氏
作家 村岡理恵氏
モデレータ:日経ビジネスアソシエ編集長 泉恵理子氏
〇宮内氏は東洋英和の理事、評議員。村上氏は東洋英和の学長、村岡氏は花子の孫、ドラマの原案者。
〇花子は昭和43年没。生涯、女性の人材育成に捧げる。終生、着物で通した。が、読書するのは洋物。和魂洋才の人。アグレッシブ、まっすぐな人。番組中では受け身、おっとりと描かれているが。仕事と家庭の両立を半世紀前にやり遂げた人。
〇ドラマにもあった「Go to bed!」。これは赤毛のアンにも登場する言葉。お仕置き、「目を閉じて反省せよ」の意味。ブラックマン先生は絶対君主的な先生だったが、印象に残る言葉、心に刺さる言葉を残した、と回想。「最上のものはなおあとに来たる」「実力をつけなさい」と。
〇登場する白蓮も花子も、時代の“例外”同志だった。ちょうど今日の放映で登場する「白蓮事件」。2度目の政略結婚、炭鉱では成り上がり者、大スキャンダルに。ここから歌人としても名を成す。宮崎の駆け落ちすることに。新聞一面に夫への絶縁状、主人も反駁を掲載した。
〇当時、女性に文筆の仕事はなかった。そこからラジオ番組JOAK子どもニュースのパーソナリティを、開戦前日、12/7まで務めた。「全国の小さな皆様、ごきげんよう」で始まり「ごきげんよう、さようなら」で終わる。一躍流行語に。
〇来日したヘレンケラーの通訳も務めた。翻訳は数知れず。
〇S27.5.10初版「赤毛のアン」。読者の多くは女性。アンに力を与えられていく。男性社会の日本。ビジネスの中でのヒントに。
〇女性の人材教育。安倍政権でもこれが言われて目標設定されている。トヨタでは女性管理職3倍化を発表した。かつて寺子屋は男女共学だった。明治時代の小学校も共学だった。が、女性活躍の環境に恵まれなかった。そこでミッション系の学校が大きな役割を果たした。
〇1982年。オリックスは大卒女性を総合職として採用した。当時は大学の商学部学生400人中女性は2人、英文科は女性が大部分という時代。創立当初、知られてない中小企業に男性の人材は来てくれなかった。中間採用もしたが、来てくれない。そこで女性を登用することに。営業を女性にやってもらったら、客が反発、「ウチをバカにしている」と。そこで女性社員は男性よりも頑張らなければ認められなかった。苦しかったが楽しかった、と回想。今、オリックスに女性は4割。女性に頑張ってもらわないと、オリックスは潰れる。
〇スタンフォード大学のケリー・マクゴニガル『成果を上げる教室』に「最も良いリーダー像は自分の幸福も大事にする人である。自分の健康や幸せを捨てるようなリーダーには、ほかのメンバーにも同じことを要求する」。
〇カリスマ型のリーダー。それは部下が共感しているからこそ引っ張られるのだ。両方の兼ね合いだろう。共感型、カリスマ型、両方を併せ持つこと。
〇「City upon a hill」=山の上の街は、隠れることができない。イエスの「光と塩」に出てくる。歴代アメリカ大統領が好む言葉。アメリカは世界にとって「隠れることのないリーダー」、との自負。自ら光を放っていれば、おのずからコンパッション=共感を得られるだろう。共感を得なければ、リーダーはあり得ない。リーダーは自ら輝きを放つ人。
〇「チームプレー」という言葉が好まれる日本社会は共感型。日本は若草山。アメリカはカリスマ型、富士山型。共感型の欠陥は、「同好会的」になること。勝てないと意味がない。体育会的なチームでないといけない。
〇人材育成①。人的ネットワークの重要性。花子はバックボーンのない中ですごい人脈を築いた人。他人が持ち、自分が持たない自分に足りないと卑屈になるものだが、そうならないことが花子の特徴。人脈の広さが視野を広げ、活躍分野を広げることになった。自らの能力を生かせる場を、周囲が提供してくれた。
〇自分より劣った人と交わるな。「こいつにはとてもかなわない」という友が大切。啄木の「…妻と親しむ」という句にあるように、自分の限界を知りそれを打ち破るために、友が必要。
〇自分と異なる枠組みで育ってきた人とはなかなかうまくいかない。それをどう理解するか=“他者理解”が人生に必要。この人との出会い、この書物との出会いを連続しながら、上を向いて歩くのが人生。
〇「均質からの脱却」。1980年。工業化で世界のリーダーに。良質、大量生産の時代に、人もレベルの高い均質の人が必要だった。「同期の桜」の時代。しかしここからは、知識集約型の社会。チャンピオンになるには、均質でなく“キープ・ミクスド”、混成部隊を作ること。男女、外国人、老若、理系文系。いろいろなタレントが混じり、各々の専門性、感性をかき回して生まれる。ここにダイバーシティの意義がある。今、日本の教育は社会の要請、企業の要請に合致したものになってない。
〇そのために、個々人が何かに興味を持つこと。知らないことを知りたい、この人と付き合いたい、ネットワークを広げたい、という思いを、ずっとバックグラウンドに持ち、生きることだ。その長い集積が、ネットワークの差を生む。そこで教育に、「新しいことをやりたい、知りたい」という要素を入れるべきだ。今の日本「外国に行きたくない」若者が多いが、考えられないこと。日本は70億の中の2%でしかないのだ。
〇人材育成②。グローバル人材の「英語力」。海外経験と英語力とは別。学ぶ意欲があれば国内でも英語は学べる。2%の日本語、10億の中国語。残念ながら、英語を学ばねばならない。英語を学ばなければ人生、ものすごく狭くしてしまう。
世界はアメリカ語で動いているという現実を受け入れざるを得ない。
〇ほかの言語を学ぶということをコミュニケーションの道具とは思っていない。世界を知るときの共通の枠組みである。言葉が違うと受け取り方にも差がある。100%の翻訳があるなら、それは翻訳ではない。レ・ミゼラブルを「ああ無情」としたのは翻訳でなく“翻案”だ。外国の文化を日本語で理解しようとするのでなく「とつくにの話」であることを感じさせなければ翻訳ではない。英語を学ぶということは「言葉」を学ぶということではない。
〇花子はともかく本を読んだ。明けても暮れても図書室で、蔵書をほとんど読み尽くした。たくさんの人々の中でなぜ花子だけが? それはものすごい“絶対量”であり、こういうことが何事にも必要なのだ。
〇人材育成③。グローバル人材の「教養」。プラトンから孔子まで、山に籠って勉強し「何とか自分を高めたい」と願う。それはなぜか。人を引っ張れるだけの深さ、人間性を持ちたい、との欲望がある。これに従い、人は勉強をする。
〇海外の経営者と比べると、日本の経営者は儲けばかり。外国の人は音楽や哲学を語る、と言われるが、昨今、それは逆になっているかも。今、海外は儲けばかりではないか。
〇教養はなぜ必要か。専門化され、「深堀り」され尽くしている現代。そこにひたすら沈潜するという力学が働いている。自分の「領域」の枠組みを極めた人が専門家だ。でも専門バカにならず、人の枠組みを理解できることが必要だ。特に理系と文系。企業にも学問にも今「教養科」が必要とされている。
〇良い教育を受け、たくさん本を読み、花子は教養を備えられた。時代に求められる存在となった。日本人として“語彙”をしっかり持っていた。外国人に対応していけたのは、しっかりとした日本人としての教養があったからだ。
11.講演⑩真のリーダーになるための「課長塾」基礎講座
「部下を本気にできる上司 できない上司」
㈱エンパワーリング代表取締役 上村光典氏
○自身の体験記。20代でベンチャー企業に就職、25歳で部下70人と大活躍。
しかし壁が立ちはだかる。部下が言うことを聞いてくれない。「もっと人間のことを勉強しなさい、と言われた。商品の勉強だけではなく、人間の勉強を、と。
そこで心理カウンセラー、江藤信之氏に教えを受けた。
○エンパワーの人vsディスパワーの人
エンとは「与える」、ディスとは「奪う」
エンパワーな人は人や組織に活力を与え、ディスパワーの人は活力を奪う。
「話す気も失せてしまう」人。
○人間というシステムは、思考、感情、言動行動、で成り立っている。無意識のうちに、気づかずに、この思考、感情、言動行動のパターンを行っており、そこにエンパワーなパターンとディスパワーなパターンとがある。
○部下を本気にできる上司になるために、その無意識を意識化することが大切である。知っただけでは何の役にも立たない。役立たせるためには、「自分はどうなのか」を問わなければならない。自問自答、内省せよ。玉川大教授、田中博氏「知性を磨く」を参照。無意識の意識化すなわち“気づき”が要諦。上司なら誰でもみんなのやる気を高めたいと“アタマでは”考える。でも行動は“真逆”をやっている。
○エンパワーリングとは、「自らが力の源泉」となって、メンバーの意欲・能力・自立心を引き出し、組織力を拡大すること。自らの“本気力”で人と組織の“本気力”を高めること。
○高度情報化社会とは、方法論はすべて揃っている社会。なのに成果の出ない組織と出る組織があるのか。例えばメタボ予防を達成する人としない人がいる。それは本気かどうかにかかっている。自らやろう、みんなでやろう、本気でやろうとの“本気力”という土台が必要だ。
○その「本気」も、言うだけでは精神論だ。「本気力」の3種類。
①対「自分」本気力:
・自尊力…自分や自分の仕事への自信、誇り
・自立力…他人や会社に依存せず、自分のスペシャリティーやプロフェッシ
ョナルを磨き、自立している
・自己責任力…「自分ゴトとして捉えているか」を常に意識。事象を人のせ
いにせず、自分の成長の糧に
・構え力…状況や相手によって揺れ動かない力
エンパワーな人はいつも自己責任型。自分に原因がなかったか、自分が何を
なすべきかを考える。ディスパワーな人はいつも他責型。自分以外に責任が
あると考え、他人が何をなすべきかを考える。「主語を“自分”に」。
②対「仕事」本気力:
・ミッション力…仕事の意義や価値を問い続け、使命感を持つ
・ビジョン力…予測不能の未来へも理想の姿描き、発信
・パッション力…乗り越えることに喜びを感じる
・アクション力…率先垂範の行動
③対「人間」本気力:
・感謝力…メンバーの価値を認め、感謝
・尊敬力…メンバーの価値を認め、尊敬
・信頼力…メンバーの可能性を信頼
・コミュニケーション力…主体的にコミュニケーション・スキルを使う
12.講演⑪クリエイティブな解決策を短時間で生み出す「合意形成」
㈱ラーニングプロセス代表取締役 矢吹博和氏
○㈱ラーニングプロセスが提唱する会議での「合意形成」の仕方。メインとなる手法は「視覚会議」というもの。
○セミナーでは冒頭に参加者各自に「作文」を求められる。まずキーワードが「会議目的の共有」「リラックス」「時間管理」など6つ提示され、その中から好きなものを選び、これを使って「会議運営のあるべき姿とは、」で始まり「…である」で終わる文章を作るように促される。
○「クリエイティブな解決策を短時間で生み出す鍵。それは「合意形成」にあった」というのがセミナーの結論。例えば「売上向上」といったテーマについて、「どうするか?」“How”を考えることになる。ここでアイデアブレストを行うが、評価基準がないことで、結局無難な結論に落ち着く。これではブレストをやった意味がない。
○そこでここで提案される「クリエイティブ解決策」とは、まずゴールを決めること。トップが一人で決めるのでなく、全員が納得できるゴールを握る。ストーリーからテーマへ。テーマからアイデアへ。いきなりアイデアを考えるところから始めない。まずゴールを握っておく。論点を絞る。これで全員が納得感を得られる。評価軸ができる。
○例として、会議運営を改善したい、とする。部長の話が長い。全員が集まらない。決めてもコロコロ変わる。状態はわかるが、責任者に悪いから思っていても言えない。こういう場合、まずゴールが何なのかを考える。そこに向かって(セミナー冒頭に行ったように)全員がキーワードを駆使しながら作文をする。結果としてはだいたい同じ内容になる。これで理想が取れる。そこから論点整理すると「会議目的を共有する」「短時間で終わる」「新しい価値を生み出す」といった結論が得られ、会議でなくてもメールで済ませられることを省くなどの結果が導き出される。ファシリテーターの力量に頼らず、合意形成を導ける。これが提案の「視覚会議」のしくみ。「いかに多様なメンバーで合意形成するか」「トップ頼りではない」を実現。
13.講演⑫企業成長に必要不可欠な女性活躍推進
「キーワードに踊らされずに社員を導く成功のポイント」
リンクアンドモチベーション
モチベーションマネジメントカンパニー執行役カンパニー長 川内正直氏
○女性活躍推進における日本企業の現状は厳しい。安倍総理が強く発信している。公務員で26%を30%超へ。それでも世界レベルで最低。企業では、管理職、とくに取締役に最低1人は女性を置くよう要望している。
○就業者の中で管理的職業従事者の割合は日本が11.2%、世界の最低水準。
○1986年に雇用平等法が整備された。85年から09年へ、働く女性は増えているが出産退職する女性は増加している。結果として働き続ける女性は変化していない。
○いわゆる「リーダーパイプライン」に女性が少ない。制度導入だけでは女性活躍は進まない。組織の捉え方が重要である。組織は要素還元できない「協働システム」である。組織の血流はコミュニケーションである。組織の問題は「人」ではなく「間」に生じる。
○女性が“当たり前に”活躍する風土を作る「組織風土変革施策」が必要。制度があるとかないとか、あの人がいいとか悪いとかではない。
○何で女性活躍推進は必要か。多様な視点、女性の時代に対応、優秀な人材確保…。目的を明確にすることが大切。目的なき施策には納得感がなく、納得感がなければ人は動かない。女性を取り巻く関係者全員の変化が必要だ。
○キリンの実例。多様性推進は福利厚生などではなく経営戦略そのものである。お客様のベストパートナーとして女性を起用。技術力を活用した価値創造、深い洞察力に基づく仮説構築、現場力。多様性推進派組織力強化につながる。脱“同質化”でイノベーションが生まれる。CSV(Creating Shared Value)、社会の課題解決が会社の成長につながる。優秀な要員確保と今いる人材のパフォーマンス向上。(後出)
○何をすればよいのか。社内の理解が薄く活用しづらい、その雰囲気がなくならない。これを変えていくのがポイント。「不可能の証明」ロールモデルはない。男性からの逆差別、さらに溝が生じる場合も。そこで
≪制度≫□産休・育休制度
□雇用・勤務形態の多様化
□管理職登用制度
≪採用育成≫
□優勝人材の確保に向けた採用活動強化
□女性自身の意識改革・スキル強化
□管理職・男性の意識改革・スキル強化
≪コミュニケーション≫
□目的・施策の認知・共感・浸透
□社員間の信頼インフラ整備
□女性ネットワークの構築 (スライド画面より)
○どのようにすればよいのか~組織風土改革のステップ
≪Unfreeze(解凍)≫
相互不信を解く、過去の慣性を解く、期待感の醸成⇒「確かに必要だ!」
≪Change(変化)≫
方向性の掲示、方針の浸透、共感・納得を醸成⇒「こうすればいいんだ!」
≪Refreeze(再凍結)≫
制度化の促進、具体的事例の創出、変化感の実感⇒「効果は確かにある!」
これを上から順にやっていく(スライド上では「左から」)。
○Unfreeze(解凍)施策を手厚く行うことが風土改革の大切なポイント。
○女性側の意識改革では、
・未来への不安⇒不確実な未来を切り開く勇気を持たせる。「先々の心配より
も1歩目を」
・負い目、悔しさ⇒全力の形はライフステージによって変わる。時間の長さで
はない。他人と比べない。
・あきらめ⇒能動的な働きかけで信頼関係を構築する。
このことがポイント。
○キャリア論
≪クライム(山登り)型キャリア≫ゴールを明確に⇒道程を明確に⇒予定通り
に登る
≪リバー(ラフティング)型キャリア≫自分のフェアウェィを決める⇒事象の
最適解を歩む⇒良いキャリアを歩んでいる(先はわからない)と考える。
○男性向けの意識改革の手法(特に男性上司)
・総論賛成、各論反対⇒経営戦略としての理解
・距離感に対する不安⇒女性の葛藤を理解させコミュニケーション機会を創
出(なるほど、こう踏み込めばいいんだな)
・概念の未認知、スキル未熟⇒ジェンダーではなく個人マネジメントである
との理解で、タイプごとに合わせてのマネジメントが大事と意識
○コミュニケーションで信頼形成。「自分の固まった思い込みの“正解”にはめ込むな」。過去のモデルにこだわらず、新しいデザインを作るとの意識を持つ。
○親の介護をしている男性上司も同様である。
○「キリンウィメンズネットワーク」=KWNの設立例。
社の“本気度”を示すためにキックオフイベントを開催。「半歩でいいから前へ」をテーマに。活動は「ダイバーシティの意味を考える」「女性の“キャリア観”を考える」「ロールモデルを紹介する」「社長からの応援メッセージ」。毎年持続し、発信。ウィメンズカレッジ創設に至った。
○東芝の例。30代前後の女性を対象。すでに「推進室」はあった。そこに意識の高い本人+上司の推薦という形で人選。30人で構成。クライム型キャリアからリバー型キャリアへとステップアップ。活動は「会社の方向性を学ぶ」「女性としての葛藤を学ぶ」「リバー型キャリアを学ぶ」「自身のキャリアを考える」。ロールモデル効果で実例を見る。マッサージ効果で不安を語る。セーフティネット効果で「失敗しても大丈夫」と考える。一気に全体の底上げを狙わない。
○Unfreezeは一気に、手厚く。Changeはじわじわと。人はまずコア層があり、その周囲にフォロワー層があり、その外側に40%を占める「レイトフォロワー層」という構成になっている。4割のレイト層が臨界点を超えるまで、しんどいが旗を振る続けること。
14.講演⑬東京ディズニーリゾートにおける人材育成
「人が楽しく働く為に私たちが大切にしていること」
オリエンタルランド マーケティング本部マーケティング推進部
セミナーグループ マネジメント アソシエイト 上斗目智恵子氏
同 チーフリーディングスタッフ 矢田 優子氏
○ディズニーアカデミーがやっていることを紹介。
テーマパーク事業の実績で培ってきた「ホスピタリティマインド(おもてなしの心)」「人材育成」のノウハウをもとに、ディズニー独自の考え方を紹介し、ビジネス等に役立ててもらうことをコンセプトにしている。
学生向け、企業向けのプログラム、インストラクター育成を行っている。
キャストサービスの実践とキャスト育成の手法。
2005年から、従業員育成セミナーのプログラムを行っている。
○今日は、キャストのモチベーション維持向上のために何をしているのかをお話する。
○ウォルトの「親と子が共に楽しめる」との価値観。これをキャスト全員が共有。
○ゲストが幸せな気持ちで帰ってもらえる。来て良かった、また来たい、ハピネス。これが目指す方向であり、キャスト全員のゴール。全員がこのゴールに向かうために優先順位を持たせた判断基準を体得。
①S安全 ②C礼儀 ③Sショウ ④E効率
○行動基準を示すマニュアルは一冊もない。自ら考え行動する。
○2万人中18000人がパート、バイト。その人々が「働くことが楽しい」、それを支えるのがコミュニケーション活動。
○相手を褒める心を育てる。相手を褒めるには相手をよく見てないと褒めようがない。ざっくりでなく具体的に褒められるとなおうれしい。そのためにコミュニケーション活動が大切。
○ファイブスタープログラム。上司が部下を褒めるツールとして5つの星を与えていく。SCSEができていると上司が認めると、役員から「良かったよ」の褒めの星。
○スピリットオブTDR。仲間同士が褒める行動。無記名の「褒めカード」が本人に届く。
○サンクスデー。閉園の後の時刻、キャストのための貸し切り感謝デーを年1回。
これを運営するのは会長、社長と全役員。開催の1か月前から幹部がトレーニングをする。
○サービスアワードピン。記念品、勤続年数に対応したピンバッジを付与。仕事に誇りを。
○「褒めカード」の裏面はパーティの招待状になっている。開演前、閉園後にお客さんとして出席できる。「上司が見てくれていた」「ここで働いてよかった」との思いが湧く。モチベーションと帰属意識の向上。
○職場では、上司に相談する時間はなく一人で判断しなければならない場面が多い。新人は不安。しかし上司が見ていて褒めることで自信を持ち、成功体験を得る。これの積み重ねが、キャスト育成に貢献する。
○キャストAさんの声。商品店舗でキャストをしていてスーパーバイザーに昇進した。今までになかった労務、予算、安全衛生などの仕事に忙殺。かつての同僚からの「忙しいのね、顔をみないね」の声にショック。ここでアドバイスを受け、「ファイブスターをやってみては」と言われる。実践してみて、部下を褒めることの難しさを痛感した。褒めたらこれだけ喜ぶということに肌感覚で気づいた。これにより、上司として勇気が湧いた。キャストとのコミュニケーション力の大切さを知った。
○褒めてほしいのは部下だけではない。ベテランも褒めてほしいのだと知る。
○「I have idea」。アイデア募集制度。キャストからのアイデアによりブリューハイヨーレストランでのあいさつは「こんにちは」から「こんばんは」に変更した。これはSCSE3つめ「ショウ」の向上に貢献した。提案にはもれなく「ありがとう」と言葉をかけ、そのうち採用されたものにはパーティ席上で授賞式も催す。これにより帰属意識が向上し、「ここで働いてよかった」につながる。ゲストサービス向上にもつながる。
○ポップコーン現場でのアイデア。紙の箱いっぱいに山盛りにしたいが、そうするとアトラクションではコーンがこぼれるからよくない。「フタをしてよ」との声もあり、お願いが違っていた。そこで閉じられる箱を考案。採用された。最前線だからこそのアイデアだ。「採用されてうれしい」の声。ここで①会社側の思いは「キャストの意識改革」。喜んでもらうためにどうしたらいいのか、の思考で働くキャストを育てる。②キャスト同士では意見を出し合う風土を醸成。チームで頑張る職場、個人で出しにくいアイデアもチームでより良いアイデアとして結実。発案により、会話も進む。
○カヌーレース。キャストが今年は150のチームを組み、パークのアトラクションでタイムレースを実施。
○Cast Cafe。キャスト同士が互いに知らない話題交換で視野を広げる。
○語学と手話講座。習得した人にピンを。
○ES調査から見えた3つの要素。
①認められる、褒められる
②成長を感じる
③職場が楽しい
そのために、①誰のためにやっているのか?②ゴール(価値観)は?③達成しているのか(効果)? を確認し、改善を重ね、止める施策もある。
15.感想
ここまですべての講演録を振り返り、印象深いものを書き残しておきます。
講演①ジョンソン・エンド・ジョンソンのグローバル人材戦略
○企業の継続的成長のためには主体的に考え、変革を起こすリーダーが求められている。
○ルールブックがどんどん書き換えられる時代である。
○変わりゆく顧客をしっかり洞察(インサイト)することだ。社内と社外のネットワークが大事。
○そのために人材育成こそ最優先だ。
○人材育成は研修プログラムが10%、コーチングとメンタリングが20%、あとの70%はOJTだ。現場で、「やったことのないことをやらせることがいちばん人を育てる」。
○キリンの首は長い。高いところの実に届く。上司は「彼にはまだ早い」「彼には経験がない」「失敗したらどうするんだ」を乗り越えることだ。そうすればキリンの首は伸びる。
○リーダーは育つものでなく育てるものだ。「居心地がいいです」という場所からひっぺがす。そうすることで人は育つ。
○マネージャーの一番の評価項目は「人を育てたのか」という点だ。
○「人事」とは「ひとごと」ではない。
○これからのマーケティングは顧客以上に社員のモチベーションをマーケティングせよ。
○オヤジたちの時代は「食べるために働いた」「食べさせるために働いた」。エンゲル係数が5割の時代だった。今は2割の豊かな時代。モチベーションが多様化。「うまいものが食べたい」「出世したい」よりも「人のためになりたい」「ほめられたい」。カネとポストでは導けない。「給料上げるよ」だけでは喜ばない。
講演②リーダーは生まれついてのもの…と考えるのは経営の怠慢、
システムティックな育て方がある!
○滅私奉公型の人材は変革できない人材であり、罪である。変える、変わる、点火型人材。
講演⑤真のリーダーになるための「課長塾」基礎講座
~リーダーとしての自分の〝スタイル〟を知る
○「エリートコーチ」はチームを世界トップクラスに導き、グローバルに活躍。一方「グッドコーチ」は国内で勝てても世界で勝てないドメスチックな活躍。そのターニングポイントは、「自分は自分を徹底的に見つめている」かどうかである。
○「ダニング・ブルーガー効果」。自分の力を高く評価しているか、自己採点すると、6~7点でそこそこと思っている人は伸びない。3~4点でまだまだと思っている人が伸びる。
○マネジメントとは、〝他者に頑張ってもらうこと〟。
○What何をやったか、よりもHowどうやってやったのか、が大事。さらにWhyなぜやったのか、が大事である。そしてHowとWhyに再現性がある。
講演⑥「オズの魔法使い」から学ぶ社員育成術
~社員が主体的に動く組織の創り方
○人は3歳から言い訳をし始める。誰かが教えたわけでもないのに。
講演⑧「組織を熱くする変革リーダーづくり」3つの法則
○リーダーのやるべきことは、指示や命令でなく、フォロワーの情熱に火をつけること。
講演⑨共感型リーダーシップを問う
「花子とアン~NHK朝ドラ原案者に聞く東洋英和の人材育成」
〇日本は70億の中の2%でしかないのだ。
講演⑬東京ディズニーリゾートにおける人材育成
「人が楽しく働く為に私たちが大切にしていること」
○行動基準を示すマニュアルは一冊もない。自ら考え行動する。
○2万人中18000人がパート、バイト。その人々が「働くことが楽しい」、それを支えるのがコミュニケーション活動。
○相手を褒める心を育てる。相手を褒めるには相手をよく見てないと褒めようがない。ざっくりでなく具体的に褒められるとなおうれしい。そのためにコミュニケーション活動が大切。
○ファイブスタープログラム。上司が部下を褒めるツールとして5つの星を与えていく。SCSEができていると上司が認めると、役員から「良かったよ」の褒めの星。
○スピリットオブTDR。仲間同士が褒める行動。無記名の「褒めカード」が本人に届く。
○サービスアワードピン。記念品、勤続年数に対応したピンバッジを付与。仕事に誇りを。
○職場では、上司に相談する時間はなく一人で判断しなければならない場面が多い。新人は不安。しかし上司が見ていて褒めることで自信を持ち、成功体験を得る。これの積み重ねが、キャスト育成に貢献する。
○ポップコーン現場でのアイデア。紙の箱いっぱいに山盛りにしたいが、そうするとアトラクションではコーンがこぼれるからよくない。「フタをしてよ」との声もあり、お願いが違っていた。そこで閉じられる箱を考案。採用された。最前線だからこそのアイデアだ。「採用されてうれしい」の声。ここで①会社側の思いは「キャストの意識改革」。喜んでもらうためにどうしたらいいのか、の思考で働くキャストを育てる。②キャスト同士では意見を出し合う風土を醸成。チームで頑張る職場、個人で出しにくいアイデアもチームでより良いアイデアとして結実。発案により、会話も進む。
○ES調査から見えた3つの要素。
①認められる、褒められる
②成長を感じる
③職場が楽しい
そのために、①誰のためにやっているのか?②ゴール(価値観)は?③達成しているのか(効果)? を確認し、改善を重ね、止める施策もある。
ヒューマンキャピタルという催しに初めて出席。改めてそのサブタイトルを見ると「企業の人事・組織戦略・人材関連サービスのための専門イベント」とありました。「企業の」とありますが、これを「公務員の」とすると内容はがらりと変わる。一昔前ならそうだったかも知れませんが、今はこの「企業の」を公務員が追随していく世、だと思います。「満足度」を追究し、職員、社員自らのQOLが追究される時代に、ディズニーのあの人材育成が公務員生活と“無縁”であるとは思えません。
公務員も達成感を追究し、自らを高めるために議論し、モチベーションを高めるためのトレーニングを受ける必要がある。企業はそれに必死。ある意味で人材こそが社運を決める。この必死さが公務の現場にあれば、鬼に金棒、ではないでしょうか。
まちづくりは自治体の仕事、と考える人はもう少ない。地方創生は、職員が意識を変え、働き方を変え、役所の庁舎からまちに飛び出して市民と交わり共に知恵を絞り、汗を絞る、そこにしか見いだせないと、そう気づいた自治体が生き残る、そう断じて差し支えないのだと思います。
もとより、民間手法がそっくり公務員に当てはめられないことは自明。しかしその大前提を振りかざしてそこに壁を設けている以上、公務員側にはおそらくこの先、成長や改革の株は見込めない。この“壁”は公務員が自らの安逸のために無意識に築く砦の壁なのかも知れない。「景気が悪いのは自分のせいではない」というのを百歩譲って認めたとしても、「税収が悪いのは自分のせいではない」とは言ってはならない。毎日のルーティンに終始しているかも知れないある市役所職員の脳裏に、どこまでの高い意識があり、行動しているのか、これがまちづくりを牽引し、あるいは足止めすることになると言っていいのではないでしょうか。
この催しで体験した民間企業の火花の散るような人材戦略を公務員の世界に取り入れ、活用する意欲を、これからあらゆる場面で、私が発信してまいりたい。