○市民活動センター「つどえ~る」の運営と活動 岡山県井原市
1.視察意図
何年もの間、議会で「市民活動センター」設置を訴えてまいりました。一時は「来年度予算化」というところまでいったのですが、実らず、今日に至っています。
ただ最近、いくらハコモノを整備しようと、誰も使わない、寄り付かない、そういうことになるかも知れないと危惧を抱くようになりました。時代の流れはその後も「地方創生」の世となり、市民活動センターこそがほんとうの意味の「市役所」になる、と言えば極端ですが、市民が主役のまちづくりの時代が来た、あるいは来させなければならないのに、そうはならない、この現実に、忸怩たる思いです。
私から言わせていただくなら井原市のこうした活動はもはや自治体の〝標準装備〟。全国の中でとりたてて抜きん出ているとも言えないものとも言えますが、それを丸亀市が言う資格はありません。
丸亀市が〝標準装備〟のレベルに追いつくために、日帰りエリアで目覚しい活動をされる同市を訪問し、まさに現場の市民の皆様に教えを請いました。
玄関を入ったところ
奥にミーティングスペースが
2.設置に至る経緯
○H15、市がNPO講座を開催。翌年にはNPO団体が誕生。
○H17、1市2町が合併。新市建設計画の柱に「協働」を掲げた。その目玉として拠点施設を整備することに。前年度に予算化し、金融機関の施設を土地・建物ごと購入・整備。7800万円。同年4/1オープン。
○オープン当初は市職員3名常駐し市民活動を支援。もと銀行という設計が開放的な空間で使い勝手がよかった。
○H17から19までの3年間、市直営。市市民生活課が所管(現在は協働推進課)。
○H20から指定管理者制度に。委託料年額5452000円。市行革大綱集中改革プランに基づく。
○H23~27の5年間、委託料年額697万円。利用者も増えてきたことにより増額。前期3年間の経費削減、利用者増に高い評価が寄せられた。(人件費1人分を上乗せ)
3.運営についての詳細
○市民活動センター設置条例、同施行規則に根拠。
○鉄骨2階建、敷地面積923㎡、延床面積470㎡、駐車場33台分。
○1階に事務室、オープンスペース、育児ルームほか。2階に会議室(30名)。
○月曜日、祝日、年末年始休館。9~21時開館。会議室のみ有料。
○印刷機は利用枚数に応じて有料。ほかにプロジェクター、スクリーン、A2拡大カラープリンター、コピー機など。
○主な業務
①情報の収集、提供。情報誌を年4回以上発行、情報コーナー、HPの作成・
運用やメルマガ、掲示板の活用。
②団体の相談や連携。団体設立や運営に関する相談受付や情報提供。団体のネ
ットワークづくり、団体の登録・管理。
③講座等の実施。啓発講座や人材養成講座。
④コミュニティビジネスの普及促進・団体調整。
⑤男女共同参画、国際交流に関すること。
○現在の登録団体は31、未登録も含め60団体が常時使っている。
○運営経費は、市直営当時年額1400万円から700万円へ。
○利用状況を月平均の推移で比較。H17、11件134人。H22、108件609人、H25、213件796人。オープン当初からは5倍の伸びとなっている。
○パソコン教室に力を入れている。雑談のなかから交流が生まれている。
○駅前通りに立地。利便性が高く、駅を降りる市外の人も利用。
○課題は、年間9000人の利用は人口の2割であり、まだまだ利用率が低い。登録団体31中NPOは7団体。市内には13団体あり、登録促進が望まれる。
○今後、利用者、利用団体同士の交流、連携をさらに目指したい。人材育成、協働まちづくりにつながる講座をさらに強化するため、コーディネーターが必要。また建物は1991年築であり、今後の老朽化対策も課題である。
4.感想
発行している「つどえ~る通信」をいただきました。B4版白黒2ページ。中国新聞に折り込みをして発行しているのだそうです。大学教授を招いての講演会、やさい塾、写真コンテスト、リーダー養成研修会など多彩な事業展開が紹介されています。
視察当日は関わるスタッフの皆様に歓迎していただきました。町内の有志、勤めを終えられた元気なOBの皆さん。わきあいあいと、活動にいそしんでおられました。
かつて全国にたくさんの市民活動センターを訪問しました。立派な新築の施設に入って子育て支援センターも併設、というところもあれば市役所敷地内のもと駐車場の建物を活用しているケースもありました。ここ井原市はどちらかといえば地味でこじんまりした印象ですが、大上段でなく、こうして〝人〟が見えている、肩を張らない運営で、息が長いものが続けていけるのだろうと思いました。
話は飛びますが、議会事務局に視察報告をしたあと、自分のHP用にこうしてレポートをまとめているのは1年余を経過した27年7月。たまたま先日、丸亀市に「よしもと新喜劇」が来て公演がにぎわいましたが、その翌週のテレビのよしもとにここ井原市の市長とご当地キャラクター『田中(でんちゅう)くん』が登場。「星のまち」など市を強くアピールしていました。
次世代のまちづくりへ。冒頭にも述べたとおり、市民活動の舞台づくりはもはや遅きに失した〝標準装備〟です。ようやく丸亀市においても新庁舎建設の構想の中に市民活動スペースが盛り込まれようとしており、大いに関心のあるところ。ようやく来たかの感ですが、井原市をはじめこれまでの視察成果も踏まえ、作ればこと足れり、でなく、使い勝手、市民のニーズ、行政との連携のしやすさやベストの運営形態など、これから油断なく、より良いものを目指して勉強し提言してまいります。