○日本自治創造学会 研究大会2014

 

 期   日 平成2652223

 会   場 明治大学アカデミーコモン棟(東京都千代田区)

 統一テーマ 『変わる地域社会、変わる自治体・地方議会』

プログラム ・会長 見える議会、分かる議会~参加型議会への展望~

        講演      本会会長・明治大学名誉教授 中邨 章氏

       ・講演 消費税アップと地方財政の行方

                   北海道大学大学院教授 宮脇 淳氏

       ・講演 国家戦略特区による地域経済の再生へ

          内閣官房地域活性化統合事務局統括参事官 藤原 豊氏

       ・講演 公有財産老朽化への対応

                   東洋大学大学院教授 根本祐二氏

       ・パネルディスカッション 変わる地方・変わる地方議会

         パネリ  流山市議会議長        海老原功一氏

         ス ト  太田市長            清水聖義氏

              慶應義塾大学教授        曽根泰教氏

              日本経済新聞編集委員兼論説委員 谷 隆徳氏

         コーディネーター     中央大学教授 佐々木信夫氏

 

       ・講演 ICTの活用による地方経済の活性化

                    総務省地域政策課長 猿渡知之氏

       ・講演 アベノミクスと日本経済のこれから

                      慶応大学教授 小林慶一郎氏  

       ・講演 地方議員の必須条件・変わる地方議会

           本会理事長、地方自立政策研究所理事長 穂坂邦夫氏

       ・講演 教育委員会改革と首長・議会の役割

                   東京大学大学院准教授 村上祐介氏

       ・激論 東京一極集中と分権

                        佐賀県知事 古川 康氏 

       ・激論 東京一極集中の必要性と日本の将来

                  明治大学専門職大学院長 市川宏雄氏

 

※以下、文責は内田にあります。

 

1.見える議会、分かる議会~参加型議会への展望~

                本会会長・明治大学名誉教授 中邨 章氏

 

○議会改革の展開

 ①基本条例制定②報告会開催③議員間討議④反問権⑤議事録公開⑥通年議会

○議員間討議の意義と限界

 809市中136市が実施(19.2%)。形式改善の方法として①ディベート方式~

課題の設定②立論③論点確認④質疑応答⑤終論⑥圧倒的資料にもとづく論議

○議会改革を改革する

 反問権806市中146市が採用(18.0%)。大きなシンクタンクを持つ首長、理

論武装する議員

 議事録公開(検索システム)の導入

 本会議630市(77.9%) 委員会240市(20.7%)

 「住民目線」の議事録…参照、実例の補足、簡易議事録の発行

○議員報酬と定数

 市民は「報酬下げろ」「定数削減」限界なし。

 優秀な人は議員になりたがらない。

 米国の地方行政府と日本は全く異なる。米国では①Rubbish(ごみ)Road

(道路)Rate(税徴収)の〝3R〟とZoning(用途地域の指定)に尽きる。

日本のような地方制度はどこにもない。日本の地方議員の活動量と幅は世界

一。「下げろ」「減らせ」では監視できない。

地方議員は個人商店。選挙も自前。所得保障がないから立候補しない、できな

い。制度を「議会」として考えなければならない。

 市議会議員実数は20123人、県、町村合計で32000人。

 811市平均の定数は24.8人。

○報酬と定数の連動

 犬山市の例で試算。現在定数20名。年収総額590万円。

 ×20人=11800万円

 これを上限に報酬を800万円にアップすると、

 議員数は14.8名となる。(5)

 4常任委員会制度の下なら、8委員×4委員会=32人がベスト。

○議会人になることへの壁と勇気

 ①議員のリクルート。40歳で参加を促進。現在はすごく低い。

 ②増やすにはサラリーマンとの兼業・兼職を緩和する。

 ③「職業としての政治」の定着

 ④所得保障

 ⑤退職保障、年金制度見直し

 ⑥女性議員の増加 で豊かで安定した人材の確保を

○議会人の努力は評価されない

 背景①参加アクセスの不足

    ・選挙のあり方

・直接請求は実は「間接請求」で時間と労力の壁。

・陳情と請願も「シキイが高い」「〝お上〟の思想」

 →「住民要求」「住民要望」としてはどうか。

・どこに行けば聞いてもらえるかが不明確

 背景②議会審議の不思議

    ・法109条「常任委員会」は必要なのか。必置ではない。

    ・全員協議会や代表者会議での決定に問題

    ・常任委員会→読会制にもどす?

    ・法120条「会議規則」の全国一律の不思議。質疑通告と闊達な論議

     →歳費と規模に見合った制度を作るべき。

 背景③大選挙区制の問題

    ・責任の不明確。有権者の無責任。定数50人に80人立候補では、ま

るでダーツだ。議員はライバルであり、みんなが〝敵〟である現状

    ・中選挙区制の検討

    ・大選挙区を数個の選挙区に分けてはどうか。

○関心を呼ぶ議会への道

 ①関心度を高く

  ・陳情・請願からの脱却

  ・「どこに持って行けばいいのか」の解決

  ・議会審議の工夫。議題配布、託児所、車いす、議事の解説

 ②これから落とせない住民向けの施策

  ・安全安心 ・高齢社会対応 ・地域経済活性化

○これからの議員像

 ①国・首長に立ち向かう議員

 ②“Look Around”外部志向の強い議員

 ③ICTを駆使できる議員

 ④勉強する議員、族を目指す議員

 ⑤若さを保つ議員、女性・子どもに優しい議員

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2.消費税アップと地方財政の行方

                   北海道大学大学院教授 宮脇 淳氏

 

○消費税増税の基本スキーム

 ・社会保障目的税化

 ・2015.1010%引き上げで、

  国6.28 地方3.72(地方消費税2.2、地方交付税1.52)

  増税額地方分10兆円(地方消費税2.7兆、地方交付税4.1)

 ・社会保障改革への税源は、

  増税額13.5兆を社会保障の充実へ2.7兆、同安定へ10.8

○消費税増税と行政コスト

 ・上下水道等公営企業の支出は増税分だけ増加

 ・文化会館、スポーツ施設の使用料、バス料金はゼロベースで見直しを

  コミバス100円、コスト3000円だと今でも2900円の赤字で走っている

が、このままだとコストは3150円になるはず。割引をなくすなどで合わせ

ないといけない。

 ・公共サービスの外部化について、委託料を見直す必要がある。

 ・その他の手数料、使用料も見直す必要がある。

○地域間配分の問題

 ・大都市圏では65歳以上が増え続けるが、地方都市では横ばいか、2020

からは減り始める。

 ・そこで地方間で差異が生じ、国と地方の問題ではなく地方と地方の問題と

  なる。〝自治体間対立〟〝自治体間連担(れんたん)〟。

 ・ナショナルミニマムを維持するために国でなく地方が手当てすることに。

 ・もうこれ以上高齢者にお金を回せない。

 ・札幌市は活況である。しかし財政力は弱い。地域資源がなく、消費はあるが

所得がない。北海道がよくならないと札幌は一人で生きていけない、という

事態にあって、地方消費税・交付税につき、地方から声を上げていくこと。

○地域元気創造事業、3500

 ・地方交付税の中に、「成果指標」的要素が入った。

 ・財政調達と財源保障が地方交付税の役割。そこに政策誘導的なものが入って

  きた。

 ・来年度から、国税化された地方法人税がこれに使われることになる。

 ・補助金と異なり、交付金は基準が不明確。これで「霞ヶ関通い」が増える。

 ・権力行使の基準を不明確にしておくのがポイントだ。

 ・成果指標を入れることで、交付税の主旨が変質していく。

 

 

3.国家戦略特区による地域経済の再生へ

          内閣官房地域活性化統合事務局統括参事官 藤原 豊氏

 

○「構造改革特区」と「国家戦略特区」

 ・構造改革特区は自治体からの提案ありき。なかなか実現せず。〝疲れた〟感

が漂う。国家戦略特区は国が加工することもあり得るもの。

 ・国家戦略特区の検討経緯 2013.4.17 アベノミクス戦略特区構想に地域活

性化担当大臣・竹中氏が呼応し、検討スタート。~12月、特区法成立。

 ・ミッションは「世界一ビジネスのしやすい環境」をつくること。

 ・ビジョンは「大胆な規制改革」と「イノベーション」。

 ・特色として、総理主導、スピード感、トップダウン。また国、自治体、民間

が一体となり、ワンストップでアクション。

○改革拠点

 ・安倍総理3/28指示。「やる気に満ちあふれた自治体である『新潟市』、兵庫

県の『養父市』、『福岡市』は、農業や雇用といった岩盤規制分野の『改革拠

点』として、農地流動化や、ベンチャー・創業支援を協力に推し進める突破

口」

 

 

4.公有財産老朽化への対応        東洋大学大学院教授 根本祐二氏

 

○同氏の著『朽ちるインフラ』を参照。〝朽ちる〟ことに今さら気づいた日本。

○放っとけば50年。2020年には橋を1万本建てなければならないが、年に1

千本分しか予算はない。橋の統廃合が必要に。他から予算を持ってくることも

できない。すべてがピラミッド(=一斉にピークを迎える)だから。

○バブル期、国に促されて「建てろ、作れ」のオンパレード。年次を横にした更

新需要のグラフは高いピラミッドを描くが、財政上、実際の更新予算は底辺の

広い、高さの低いピラミッドとならざるを得ない。無理に借金すれば財政破綻。

お金をかけない道を模索するしかない。

○かつてアメリカ1930年のニューディールで建設ラッシュ。50年経ち、更新

ラッシュ。アメリカは増税で対応した。日本はインフラを縮小するか増税で対

処するか。この二つしか道はない。

○〝飲みたきゃ自分の金で飲め〟

○予算不足4割の今、聖域はない。手をつけてないところに手をつける必要。

○公共施設の「3階層マネジメント」

 1層「広域化」。他自治体と分担する。庁舎、病院、博物館・美術館、中央図

書館、文化ホール、大型体育施設

 2層「多機能化」。ひとつのハコモノを建て、テナントとして入る。学校、児

童館、幼稚園・保育所、老人福祉施設、公民館、地区図書館

 3層「ソフト化」。民間施設を利用し費用を補助。公営住宅は民間アパート借

り上げ家賃補助へ(バウチャー)。集会所、公営住宅

○「広域化」

 病院企業団。人口30万人でないと持たない。掛川市立総合病院と袋井市立袋

井市民病院が統合した例(2013)

○「多機能化」

 市川市立第七中学校。校舎、給食室、公会堂、保育所をPFIで複合施設経営。

 埼玉県宮代町の議場、公民館、集会施設を兼用した例。〝議会終わればカラオ

ケ大会!!〟。これで住民が議会を身近に感じるようになる。

 岩手県で公民合築「オガール紫波」。公立図書館は集会施設。レストラン、居

酒屋、病院と合築。

 豊島区役所。PFIで庁舎、店舗、事務所、共同住宅、駐車場。

○「ソフト化」

 民間施設の公的利用。三重県津市「猪の倉温泉」。民営化した施設を公的にも

利用。

 恵庭市「まちじゅう図書館」。28箇所の図書室。役所はお金をかけず、民間は

客を増やせる。〝蕎麦屋にバスケ本〟。

○その後の処方箋

 奈良県養徳学者整備事業。賃貸マンション収入で公共施設を建て替え。

 南魚沼市、名張市のヤマト運輸センターへ合併後の公共施設転用。議場には窓

なし、天井高く、段差あり。でも業務に差し支えなし。

○土木インフラの処方箋

 道路に穴が開いてからではなく穴が開かないようにして、長持ちさせる。

 北海道清里町道路保全事業は地元企業で。

 東京都府中市ではけやき並木通り周辺地区の道路等を包括管理委託。〝地元

企業が競争に勝てるような仕事の出し方〟を。

○市民参加

 埼玉県鶴ヶ島市では学校・公民館合築設計にワークショップ。建築学科の学生

が設計し周辺住民が投票する。

 埼玉県宮代町〝あったらいいなこんな場所〟。公共施設再編のため、無作為抽

出による市民参加のワークショップ。

○市民自治

 〝できることは自分で〟。長野県下条村生活道路舗装事業。機材を村が支給し、

工事は住民が実施する。

○アンケートに見る市民意識の実態

 武蔵野市、習志野市、松江市、高萩市で調査。お金のない中、公共施設を縮小

することに、利用者は反対するが納税者は違う。公的施設のための「特別増税」

は〝まっぴら〟。

○まとめ

 ①日に日に確実に問題は深刻化

 ②特に、土木インフラの精査が必要

 ③今までと同じ発想では問題は解決しない

 ④この機会に、まちづくりそのものの姿を考えよう

 ⑤公共施設等総合管理計画は絶好の機会

 ⑥利用者に迎合しない、市民の真意を聞く耳を持つ

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5.パネルディスカッション 変わる地方・変わる地方議会

 

○流山市議会「見られる議会から見たくなる議会への変革」

 ・役選人事の議会内オープン化・ICT推進決議・スマートフォン電子採決・議

場にプロジェクターとスクリーン・議会フェイスブック・議員と事務局員に

タブレット端末・議会広報広聴サポーター・議会報告会にファシリテーター

と磁気ループ・議員定数で参考人招致、意見交換会、アンケート、公聴会

 ・議会報告会

  年2回、5月と11月、市内4会場。

  班編成は7人以内で4班構成。常任委員会ごと。

  周知方法は市広報、議会報、HP、自治会回覧、各議員のパンフ配布、FB

ツイッターによる。

希望があれば一時保育、手話、要約筆記、聴覚障がい者のための磁気ループ

=音声増幅器も準備

報告会での意見交換はテーマを決める。例:エコセンターの諸課題について、

高齢者福祉センターの整備状況について、商店街の現状、農業、働くママ、

開催会場の地域に特化したテーマやフリーディスカッションも。

 ・これまでに議員提案条例は4本。うち3本は議会報告会で市民から出た意

見を参考に作った。

○太田市清水市長

 ・「県議から市長になって忙しさ10倍、楽しさ100倍」

 ・これまで県議時代の質問も市長答弁もノー原稿。職員が書いてくれたら型に

はまる。議員からイヤミを言われればイヤミで答える。市長当選前、21

建ての市庁舎建設に共産党以外全員賛成。すでに着工していたが113億を

85億に。使い残した鉄管も売りに出して決着。トラックを自宅に突っ込ま

れたこともある。迫力ある人生だ。

 ・大津でのいじめ自殺に思う。なんで大津市長が頭を下げるのか。県教育長で

はないのか。市長が頭を下げるのなら市長に権限を。教員人事権も。

 ・議員は財政力指数とか聞きたがるが、それでまちは変わらない。政策が作れ

るような議員に。自分たちの資産をどう使うのかを議論したほうがよい。

○慶応大学、曽根教授

 ・特区は徳川時代の長崎の出島だ。これではダメ。今は開国の時だ。

 ・市民からの個別の要望を、議会事務局を使ってもっと政策にすべきだ。

 ・市民からの意見聴取の手法として、藤沢市の総合計画、札幌市の「雪と私た

ちのくらし」が参考になる。

 ・「二元代表制」という言葉は使わないほうが良い。フランスやチュニジアの

「デュアルシステム」=大統領+首相の、日本は変種だ。

 ・議会の強味は「議決権」の行使だ。これに議員は自覚的でない。首長が原案

を出すと、多数派でなくてもなんとなく通ってしまう。

 ・地方議会の論点はよくわからない。

 ・地方選挙は個人選挙だ。

 ・大津市議会は大学と連携、いじめを契機に、事務局も動員し、討論を通じて

課題を明らかにした。

 ・東京五輪は最大の問題ではない。高齢化こそ大問題だ。

 ・地方議会の「立法権」は「集団的自衛権」と同じだ。〝持ってるけれども使

わない〟

 ・議会の集団プレー。議長選以外は集団で動こうとしない。

 ・教科書は全国一律がいいのか。引っ越したら教科書が変わるのはいいのか。

教育水準、給付水準にはミニマムが必要であり、そのことと多様性との「割

り切り」が難しい。

○日経新聞編集委員、論説委員、谷氏

 ・日経グローカルで1998年から改革度調査を実施。以来、議会は圧倒的に変

わった。

 ・「消滅自治体」の報道をチャンスにして、これからは「撤退戦略」を。人口

半減社会の行政サービスを考えるきっかけだ。長期計画が今こそ必要だ。

「良いことをたくさん」ではない計画を。

 ・第4次一括法が明日、参院で可決され、成立する。議会の課題は、①住民か

ら見えない、わからない②住民が誰に投票したらいいのかわからない。制度

改革が必要③地域の争点がわからない。

 ・国政の影響を受ける地方選挙。

 ・地方議員の役割は変わった。「声を吸い上げる」ことの上に「課題を発信す

る」仕事、「マイナスをどう抑えるのか」が議員の仕事だ。

 ・自治法は規律密度が高い。キライだ。地方議員を子ども扱いしている。議員

は国から付与された資格ではない。

○中央大学 佐々木教授

 ・地方議会はⅢ期。

  Ⅰ明治憲法下「首長の諮問機関」

  Ⅱ戦後「機関委任事務のもと、形式的な議事機関」

  Ⅲ2000年改革後「実質的な立法機関」

 ・Ⅱ期には議会は脇役。しかしⅢ期で自治事務8割、法定受託事務2割のす

べてが審議・立法の対象に。ここからは「霞ヶ関に責任を取る」から「住民

に責任を取る」政治に。首長と議会は対等。

 ・合議制の強味。

①「民意を鏡のように反映する」フォーラムとしての機能。→住民自治

  ②議会は団体意思の決定者。議会審議と合意形成で地域にまとまりと方向

性を与えるコーディネーターとして機能。→団体自治

  ③監視者として執行機関牽制の機能

 ・問題点

  ①「組織としての議会」が住民の前に顔を現さない。住民と対話しているの

   は首長ではないか。

  ②未だに議会が「首長の諮問機関」と錯覚しているフシがある。

  ③一元代表制の国会をモデルにしてはいけない。地方議会はミニ国会では

ない。二元代表制の本当の意味を考えるべき。

  ④住民参加の輪の中に議会の存在基盤があるという認識がない。議事堂が

議会であると思っている。

  ⑤議会改革には二面ある。行政改革としての議会改革はスリム化。量的改革。

一方で政治改革としての議会改革は議会の質を高めること。質的改革。

  

 

6.ICTの活用による地方経済の活性化  総務省地域政策課長 猿渡知之氏

 

○自治体とICT

 ・自治体の経営最適化のため、「自治体クラウド」の推進

 ・経済活性化のため、「社会クラウド」の推進

○保険料・税収の現状は、社会保険料収入が頭打ちの中、社会保障給付費は極め

て高い伸びを示している。

○経済政策の方向性は、製造業を中心にグローバル企業の競争力強化と、地域密

着型の企業立ち上げによる「ローカル・イノベーション」である。これを省庁

〝横串〟で支援する。

○自治体情報化の流れ。1960代の大型コンピュータ→1970代のホストコンピ

ュータ→1990代のクライアント・サーバ→2000代のWebシステム=クラウ

ドの時代

○クラウド時代の特徴は、「所有から利用へ」。共同化・集約化。

ICT活用による自治体経営最適化

 ①内部効率向上へ、バックオフィス連携。ルーティンワークはPCが。そのた

めにできるだけ業務を標準化。共通の情報処理システムを構築してコスト

縮減。

 ②PaaS基盤の導入で、システム管理、メンテ、障害対応は事業者へ委任。こ

れで自治体は実質的に裁量権を拡大する。

 ③端末パソコンの仮想化で端末をシンクライアント化。携帯端末も活用。

 ④クラウドによる業務改革。徴税、給食費徴収、上下水道滞納徴収など債権一

本化。重複しない機能。

○公共施設のオープン・リノベーション。市役所、図書館、美術館など、公共が

建てて管理をするならコストになる。民間の経営とすれば利益を生む。

 

 

7.アベノミクスと日本経済のこれから     慶応大学教授 小林慶一郎氏  

 

○アベノミクスの効果と課題。民間消費が伸びているのは良いことだがこの先、

公共需要の息切れが心配。

○デフレ脱却後の出口。これまでは円高・デフレ。日本国債は安全と魅力的だっ

たが、円安とインフレが起き、低金利のままなら、国債を売って海外資産を買

う動きが出る。金利はいま0.6%。これを4%にしないと計算が合わない。こ

の先の出口が不安定である。

○経済再建に必要なコスト。純負債の名目GDP比で、日本はイタリアよりマシ

だったが逆転。最悪に。

○米経済学者Hansenらによる試算では、日本経済に必要な消費税は35%と示

された。ここから35%に達するまで、恒久的な増税が必要。

○経済学者Braunらの試算によると、これからの日本経済の建て直しは、①2

のインフレ率を実現②高齢者医療費窓口負担を20%に③年金給付の「半額保

証」を外す④政府の経常経費を1%削減する→これらにより、消費税は段階的

32%まで引き上げ、その後17%まで引き下げる。

○これからの新しい政治哲学。先送りを作らない。世代を越える政策課題を作ら

ない。現在の世代で始末をつけるべき問題として、財政再建と社会保障、地球

温暖化、原発が喫緊。

 

 

8.地方議員の必須条件・変わる地方議会

           本会理事長、地方自立政策研究所理事長 穂坂邦夫氏

 

○変わる地方議会

 ①社会環境激変と住民意識の変化。その中で、議会の使命は監視機能だけでは

ない。この15年で議会に求められるものは変容している。

 ②議会はオンブズマンから脱却せよ。エリートの自覚を持て。

 ③住民が求める議会・議員の役割は「前例を変える・自治体を変える」こと。

  →志木市長時代、「議会がもっと変わってくれたら」と、何度も思ったこと

がある。

○地方議員7つの必須条件

 ①長期戦略力と短期戦略力「両立させる2つの力」。裏づけのある夢を持て。

未来図を作れ。同時に現実課題を解決。

 ②プレゼンス力と提案力「個性を活かす」。演説がうまいだけでは務まらない。

「人柄」が力。黙っていないで住民に発信を。

 ③職員コミュニケーション力「職員の立場を理解する」。職員を味方に。質問

には職員が「通信簿」をつける。

 ④会派マネジメント力「議員の特徴と十分な意見交換」。会派内で議論を十分

すれば、分裂はない。相手を尊重しないから分裂する。

 ⑤議会交渉力「損して得を取る」。全部を通そうとするな。①だけ通して②③

は譲れ。

 ⑥政治環境洞察力「必ず変わる中央政治」。

 ⑦選挙常勝力「ビジョンと心と行動力。モノでは心は動かない。大きなビジョ

ンと小回りを。即日決着こそ常勝力。ビジョンがあれば、人はついてくる。

○議員個々人が要求や提案をする時代から、議会内で議論し、青写真を描く時代、

そしてそれを住民に示す時代だ。

○議会意思がバラバラだから、政策議会ができない。

○「こんなことをやっています」と、住民に開示する義務が、議会にはある。

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9.教育委員会改革と首長・議会の役割   東京大学大学院准教授 村上祐介氏

 

2000年に教育委員会廃止議論があった。逆に機能強化の議論もあり、その間

で揺れた10年が続いた。安倍政権となり、これを議論できる政治環境が整っ

た。そこに大津市でのいじめ事件。それは制度見直しへの〝引き金〟となった。

○その後の経緯。2013.4教育再生実行会議第二次提言。同512中教審教育制

度分科会で審議。教育長を責任者にする方向。教育長独任制は現行法上不可能。

首長を執行機関とする案、教委を執行機関とする案。同12中教審答申。決定

権を首長に与える案と教委に与える案の両論併記で〝政治にゲタ〟。2014.3

与党合意成立。同4法案提出。

○改正案の概要

 ①現行の教育委員長と教育長を一本化した新「教育長」創設、首長が議会同意

を得て任命。新「教育長」の任期は3年に短縮。

 ②首長と教委で「総合教育会議」新設。首長が主催。重点的に講ずべき措置、

緊急措置について協議・調整を行う。決定権はない。

 ③首長が教育の振興に関する施策の大綱を策定する。詳細はまだ判明しない。

 ④児童の生命・身体への被害の拡大を防止する必要がある場合に、文科大臣が

教委に指示できることを法定。

○改正案の課題

 ①「責任明確化」と「政治的中立性・安定性・継続性」を両立

 ②首長・教育長の権限が強化

 ③「大綱」「総合教育会議」はまだあいまい→自治体間の差異拡大か。

○個別の論点

 ①「大綱」とは何か。総合教育会議との調整はあるが最終権限は市長に。

  →議会や教委によるチェックが必要ではないのか。

 ②「総合教育会議」の運用。年に何回やるのか。調整がつかなかったらどうな

るのか。緊急事態に対処できるのか。

 ③新「教育長」について。これまで教育委員会が教育長を指揮監督できていた

が、これができなくなる。教委からの勧告権限など必要では。

○首長、議員への期待

 ①円滑な運用、実りある議論を。首長は自らビジョンを示せ。

 ②議会による教育行政への適切なチェック機能の強化を。新教育長候補者は議会で所信表明や質疑応答などで丁寧な人事同意を。(日銀総裁方式)

 

 

10.東京一極集中と分権              佐賀県知事 古川 康氏 

 

○安倍内閣発足後の地方分権改革

 ・2013.12NPOやボランティアが安価に移動を手伝うことが地方に移譲さ

れ、タクシーと競合することになった。施設から地域への流れの中で、移動

手段確保は大切だ。

 ・これまでの特区ではない「手挙げ方式」である「提案募集方式」を決定。

  「一律をやめる」。

 ・分権改革が進んでいるのに市民に実感がないのは、住民がやってほしいこと

に手がついていないから。

○岩盤規制の農地制度改革

 ・邪魔のナンバーワンは土地利用規制。自分たちの土地の使い道を自分たちで

決められないフラストレーション。例えば好立地の工業団地が完売したの

で隣接農地に団地拡張しようと市が企図→しかし農水省は優良農地確保の

見地から「大臣協議が必要」と。協議とは名ばかりの実質規制→その長期協

議は民間企業にもロスタイムであり、地域づくりの最大の障壁である。

2014農地法見直し議論が本格化へ。

 ・農地総量確保に国の目標あり。しかし市町村にはない。国と地方が協議する

仕組みにすべき。

 ・農地転用権限。4ha以上は国、未満は県が権限。これをすべて市に移譲すべ

きである。

○道州制への挑戦

 ・東京に行かないと解決しないというあり方そのものを変える必要がある。

  東京一極集中は排除すべき。

 ・しかし1993「地方分権国会決議」後も東京一極集中は続く。

 ・九州の合計特殊出生率は高い。九州の若者が東京に行けば、子どもを生まず、

ますます少子化が進む。

 ・「ふるさとでも夢が叶う」という姿に。

  

 

11.東京一極集中の必要性と日本の将来 明治大学専門職大学院長 市川宏雄氏

 

○東京一極集中は、〝必要〟ではなく〝必然〟だ。是非を問うのはナンセンス。

○「変わる状況、変わらぬ国民意識と旧制度」。

○長期にわたる人口減少のもと、グローバリセーションは進む。経済構造の変化

の中、どうやって生きていくのか。一極集中は必然。

○人口減少。日本創生会議によると2040年、1800の市区町村のうち896が消

滅の危機。うち523が人口1万人割れ。国土交通省によると2050年、全国

18万地点のうち60%が人口半減、20%が消滅とされる。

○今までの国家運営の仕組みは、都市と地方が持ちつ持たれつの依存関係にあ

った。バブル崩壊で仕組みが破綻。21世紀に入り、国家運営におけるアジャ

ストの必要が生じている。都市の復活による税収増を見込む。「東京が稼げは

全国が良くなる」

○世界の都市の総合ランキングで東京は4(ロンドン、ニューヨーク、パリに

次ぐ)。後ろから追いつかれる。強味をたくさん持たないと勝ち残れない。

○日本再興へ、

・世界を惹きつける地域資源で地域社会が稼ぐ。

 ・世界を惹きつける地域資源ブランドを成長の糧に、誇り高い地域社会。

 ・農林水産物や食品、6次産業、コンテンツ・文化等の日本ブランド

 ・「一極集中が悪い」とされた時代を超えていくことだ。

 

 

12.感想

 

 今回の研修を通じ、いちばん印象に残った言葉といえば、穂坂氏のこの言葉でした。

 …志木市長時代、「議会がもっと変わってくれたら」と、何度も思ったことがある…。

 丸亀市の梶市長の思いを聞いてみたい。こんな思いを抱いているのか、と。

 市長も百人百様。議会もさることながら市長もまた市民へのメッセージ不足、発信不足。そう思えます。マスコミを通じての発信だけが発信ではないでしょう。イベントで顔を合わせたときのちょっとした会話からも、さまざまなニュアンスを感じ取るのが人間関係。その意味でも、市長と議会とが対話するチャンスに欠けている、その思いがあります。それを「舞台裏のかけひき」などと言われるのであれば、私たちは本会議や委員会といった公式の場で、今以上、はるかに今を凌駕する対話の場面と能力を持たねばなりません。

どこまでも。不足しているのは対話です。でもより本質的に、もっと不足しているのは、対話する能力なのではないかと、思います。そこを切り開いていくのが政治家なのだろう、そう思います。しかし。穂坂氏が資料に添付された「ほさか邦夫ブログ」中のこの一説に、厳しい現実をつきつけられます。いわく、「(機関委任事務の時代に)議会は多くの事務・事業に関与できない状態が続いたため、住民は永い間の実体験から議会は無用な存在であるといまでも錯覚しています」

私は思うのですが、人間が作った橋や道路も経年で朽ちる。人間が作った地方制度、地方議員というものもまた、朽ちる。更新しなければ命に及ぶことになる。そうは言えなくないでしょうか。言葉は不適切かも知れませんが、たまたまその橋の上にいた人が崩落の被害にあうのよりはるかに、議会の崩落は全市民を崩落させる、そうは言えないのでしょうか。

われわれは漫然と出馬してはならない。市民も同様に、厳しく判定の義務と責任を負う。ヘタに選んでヘタな仕事をさせる。藪医者に命をゆだねることほど危ういことはない。そのことに気づくことこそ、今回の研修会で共有されるべき結論でなかったのか。そのように思っています。

変わる地方議会、というテーマについて考えると、市民は、自分の飼っている馬のように議員を監視し、飼育していなければ、民主主義は野生化、つまり退化するのではないか。そんなことさえ、今、思います。

 話は変わります。

 教育委員会改革についての東大、村上准教授の講演が、私にとっては今回の研修で最もインパクトのあるものでした。

 「政治が教育に参入することは罪悪なのか」「法律で禁じられているのか」「そもそも、それでいいのか」。

 政治教育、という言葉は戦前を想起させますので、「政治参加教育」と、私は自分で言葉を設けました。教育への政治の介入で戦争が始まった、というのは事実だが、それで教育から政治を排除するなら、日本はもう一度、世界に負けるのではないのか。戦争に負けて、教育から政治を排除するということをこれからも永遠の国是とすることで、どこか、大きな瑕疵を、日本政治はこれからも負うのではないのか。

 私がこう書くことで「戦前回帰だ」とレッテルを貼られるなら、私たちはもう「戦争反対」という四文字熟語のもとで、道徳も、政治も宗教も子息に伝授してはならないという呪縛の中で人間教育をしなくてはいけないのか。それに反論すればそれはすぐさま〝軍国化〟を意味するという、偏狭なイデオロギーの下でいなければならないのか。そんな思いにかられます。

 私は講演が終わって迷わず、質問タイムで手を挙げました。「今の日本で、子どもたちに政治参加を教えることは法律上、制限されているのか」と。

 准教授の答えは明快で、法律上どこにもそれは書いてない。むしろ個人的には、議員さんたちがどんどん学校に赴くべきだと思う。政治上、偏った発言が心配されるなら、学校のほうでそれを調整すればよい、と。

 このお答えに、溜飲が下がりました。ほんとうに、あやまたず、自分の「参政権」を行使するという、ごく当然の民主主義人としての振る舞いさえ、いまの日本は敗戦のトラウマから、実現できていない。私には、准教授の言説やこれまでのこの国の航路を見て、そのように思わざるを得ませんでした。

 「民衆が、しっかり政治を監視する」

 これこそが民主主義の第一原理であり、最後の原理です。

 殺戮の果てに到達したこの統治形式を、真に住民のためたらしめるためには、住民が〝オマカセ〟であることこそ、元凶だったのです。

 市民活動が、市民活動側から天然発生的に起きてくるのではないということを、私は、長年「市民活動支援センターの建設を」と唱えたひとりとして、いま痛烈に思っています。ドイツナチスに対するフランス人民のレジスタンスのように市民が勃興しなければ、ハコモノなどは提唱した私の〝失政〟とすら、なることでしょう。市役所が、ハコモノをではなく市民活動をつくるときが来ている、それが私の思いであり、このたびの研修で私が確かめた結論でもあります。

 「議会がもっとかわってくれたら」

 このフレーズを、私は一日に何度も反芻したい。市民は、議会がもっとかわってくれたら、という「気づき」にさえ至っていない。私はあえてそう申したいが、いかがでしょうか。

 「地方議会はミニ国会ではない」

 この言葉もありましたが、国民の幾人が、このことを理解されているでしょう。

 そしてパネルディスカッション中のこの一言。

 「議員は、国から付与された資格ではない」。

 さらに、この一言。

 「利用者に迎合しない、市民の真意を聞く耳を持つ」

  迎合。私たちは当選するための〝一票〟のために、〝迎合〟しているでしょうか。ここに、すべての要因と、同時に閉塞からの〝脱出口〟があると思います。

 政治家が選挙民に迎合しない。

 およそ、現実味のない言葉のように思えてなりませんが、時代を乗り切り、次世代に活路を拓く道筋は、地方議員制度と議員の意識改革、これ以外はないと思われます。

 議会の内側にいる、数少ない一人として、今回の研修で得た知見はこの上ない価値でした。でもどのように、これを丸亀市議会での共通認識、そして〝標準装備〟にしていくか。暗澹たる行く先に、サーチライトを照らすような研修でありました。

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