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〇自治体総合フェア2023 セミナー聴講記録

 



   令和5年5月1719日 東京ビッグサイト

 

   聴講項目

   ①デジタル庁をめぐる最近の動きとマイナンバーカード利用の最新動向

       デジタル庁 統括官付参事官 上仮屋 尚氏

   DX時代に求められるリスキリングと自治体の在り方

       ㈱MAIA      執行役員 森山 譲治氏

       (一社)グラミン日本 理事長  百野 公裕氏

   ③デジ田構想で地方創生を実現できるか

       (一社)地域活性化センター 理事長 椎川 忍氏

   ④オープンイノベーションを成功させる自治体組織のつくりかた

       (一社)官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子氏

   ⑤自治体DXの推進について 総務省自治行政局 地域情報化企画室長

   ⑥自治体DX その先にあるものとは

            ~今こそ問われる「自治体の存在意義」~

       行政システム㈱行政システム総研 顧問 榎並 利博氏

   ICTを活用したフレイル予防事業にチャレンジ!

            ~東京都府中市が進める官民協働の取組~

       経済産業省関東経済産業局 次世代産業課長

       府中市福祉保健部高齢者支援課 担当者

       エーテンラボ㈱ 代表取締役CEO 長坂 剛氏

   ⑧ウィズコロナ時代の自治体経営

            ~強い財政をつくる人・組織とは~

       千葉県佐倉市 財政部財政課長 塩浜 克也氏

       兵庫県川西市 副市長     松木 茂弘氏

       静岡県裾野市 副市長     及川 涼介氏

       神奈川県横浜市 行政イノベーション推進部長 安住 秀子氏

       (公財)日本生産性本部「ガバナンス」編集長 千葉 茂明氏

   ⑨自治体が直面するDX課題とソリューションビジネスのあり方

       ㈱時事通信社解説委員     武部 隆氏

   ⑩首長LIVE「首長に聞く!これからの官民共創まちづくり」

       静岡県磐田市長        草地 博昭氏

       埼玉県和光市長        柴崎 光子氏

       コーディネート ㈱地方創生テクノロジーラボ 新井一真氏

以下、文責は内田にあります。

 

①デジタル庁をめぐる最近の動きとマイナンバーカード利用の最新動向

       デジタル庁 統括官付参事官 上仮屋 尚氏

 

〇現在、参議院で審議中。①国家資格のデジタル化。50項目へ拡大し、戸籍を取らなくていいシステムに②住基③1歳未満は顔写真が不要に。出生届から即使えるようにし、保険証廃止、マイナンバーカードを持たない人には「確認証」で対応④海外でも使える⑤フリガナの問題⑥年金では口座の登録が課題、以上のことが審議のさなかにある。

〇デジタル時代のパスポートともされる。オンラインで本人確認する。マイナンバーカードの登録は4/30時点で申請76.7%、交付は69.8%。施設入所者と子どもが進んでいない。4人に1人に行きわたったと認識している。

〇3つの柱。①市役所に行かなくていい。転出では市役所に行かなくていい。転入もスムーズに。子育て介護の手続きは31項目。これらも市役所に行かなくてもプッシュ式で済むようになる。②市民カード化。1枚で市民サービスを受けられる。図書館、避難所受付、印鑑登録など一括で。暗証番号を打たなくてよくなる。交付後も使いやすくする。ICチップの空き領域を活用する。カードアプリは自治体ごとでなく国一括となる。③健康保険証としての利用。R6年度末目指す。カードを持たない人対策を進める。

〇マイナンバーカード利活用シーンを393団体561サービスにまで拡大。ヨコ展開を進める。民間活用では440社。スマホに入れればカードを持ち歩かなくて済む。マイナポータル→APIで自分のキーとして使うことになる。

〇マイナポータルハッカソン募集中。

Q:アンドロイドは進んでいるがiフォンは進んでない。A:アップルに働きかけ中。岸田総理がアップルCEOに申し入れた。

Q:電子証明書の失効のことで。手続きで市役所窓口が混んでおり業務に支障。結婚、転入などに支障。A:住所が変わったとき、戸籍は全国どこでも対応可。マイナンバーだけは統合端末があるところでないとできない(本庁)。更新の時は窓口負担の改善をよろしくお願いする。

Q:誤交付の問題。A:すべて富士通ジャパンのシステムに因がある。

Q:スケジュールの遅れ。A:補助金を出して進めてきたが、標準化の遅れに今後しっかり取り組みたい。自治体からの派遣ももらい協力をお願いしたい。



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DX時代に求められるリスキリングと自治体の在り方

       ㈱MAIA      執行役員 森山 譲治氏

       (一社)グラミン日本 理事長  百野 公裕氏

 

〇就職合格率70%に対して就労率は77%。働き方がさまざまになってきた。

〇リスキリング導入した自治体の例。R4、愛媛県、鹿児島市、糸満市。R5、沖縄市、佐久市、東村山市など。

〇連携の3パターン。①連携協定タイプ、受講者負担、自己投資②自治体負担タイプ、タダだと離脱者が出る③一部自治体負担タイプ。8090%が市の広報を見てきている。市広報が最も信頼されていることを物語る。

〇目的に2パターン。①福祉的目的。シングルマザー支援、介護支援②経済的目的。所得向上、人口流出防止。

〇ターゲットを明確に。年代、家族構成、現在の就労状況を明確にすること。

〇成功へ、自治体に期待すること。①中期計画を立てる。単年度予算では実験で終わりがち。②広報と集客が連携する。チラシは有効で安心される。③地場企業への就労あっせん。④女子コミュニティ形成で結束、呼び込み、ブランド力も。

〇大事なのはパートナーである。タレント採用パートナー、アウトリーチ(呼びかけ)パートナーでリスキリングの推進を。

 


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③デジ田構想で地方創生を実現できるか

       (一社)地域活性化センター 理事長 椎川 忍氏

 

〇これまでの「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局」は「デジタル田園都市国家構想実現会議事務局」へ衣替え。前者は根拠法令があったが後者はない。総理の命で「地方創生」と「デジタル」をひとつにした。法律がない「デジ田」が法律のある「まち・ひと・しごと」の代表になっていいのか?法整備すべきである。法体系から、地方創生が上位概念である。デジタルはそのための手法だ。

〇日本のデジタル化が遅れたのは、国土が狭くて人口密度が高く、高齢社会だからだ。しかし避けて通れない。スマホとマイナンバーカードだけで暮らせるようにしてほしい。しかし現在の75歳の人がそう思っているのか?地下鉄の回数券は今も紙だ。財布にはたくさんのポイントカードが入っている。スマホに全部入れてほしい。

〇「地方創生」と「地域活性化」とは何が違うのか? 後者は「今いる人が元気で希望を持てる」こと。前者は900の自治体が「消滅」してしまわないこと。

3代先まで元気、しかも持続できる地方を創ること。そのために、①全国津々浦々に「デジタル人材」を確保することだ。地域おこし協力隊は本人が住民票を移す必要があるが、こちらは必要ない。「デジ田応援団」を大量に育てることだ。②財源。国で1千億では限界がある。県にまとめて交付せよ。交付金をもらった市だけに届くのでなく小規模自治体にもゆきわたるようにすべきだ。

〇デジタルで何をするのか? ・移住者を獲得する ・関係人口を醸成する ・出生率を上げる ・1次産業のAI化 ・経済循環など。

〇地域活性化センターでは、「自治体育成パッケージプログラム」という人材育成事業を展開している。カネを残すのは下、モノを残すのは中、そしてヒトを残すのが上(後藤新平)。人生百年、65歳定年後、人を育てる。そのことを否定する首長はいないが、それをやっている人は少ない。

〇地域の各界にイノベーターを育成することこそ喫緊の課題だ。

 

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④オープンイノベーションを成功させる自治体組織のつくりかた

       (一社)官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子氏

 

〇市役所は、資源がないのに仕事は増えている。そこで市役所以外の活力を生かそうとするのがオープンイノベーションだ。外にリソースを求める新しいまちづくりのあり方だ。

〇東日本大震災で市営プールが壊滅。市長は「取り壊そう」と決断。しかし水泳連盟が「待った」。計画、開発を官民共創で。民間コンサルタントを活用。

〇「課題解決」という言葉で議事録を検索してみる。20年前にはヒットゼロ。10年前だと2~3件のヒット。令和になって頻出するようになった。和光市では、課題解決のために専門外部人材と庁内「エース級」の職員でチームを編成した。課題解決は通常、総務企画の部署に置く。しかしこれでは他の課との連携が取りにくい。市長の力量により、市長が強いと直轄に置く。すると他の課は「見て見ぬふり」になる。一長一短だ。

〇課題解決ができない背景。マッチングがうまくいかない、企業の見つけ方が分からない。実証実験止まりで課題解決までいかない。そもそも庁内に仕組みを回せる人がいない。役所の自前主義はしんどい。公務員には「損益分岐点」の肌感覚がない。外部の人に公務員はホンネを語れない。そこで外部組織である任意団体がそれを担う仕組みへ。

〇ここで動画にて西条市の玉井市長が登場。西条市は移住No1のまち。魅力は水、まつり、石鎚山。これに留まらず「若者がチャレンジできるまち」をウリに。2016、市長に初当選。「ICTを活用したスマートシティ西条」を掲げた。これを基礎に、「公民連携で新たな共助サービス」を展開。また庁内組織を再編成。企画戦略部門とデジタル部門を結合させ、共助の時代を見据えた一般社団法人「西条市SDGs推進協議会」を設立し、市内外を問わず、多くの企業、各種団体と共に公民連携のまちづくりを推進。ここに市職員を送り込んだ。「西条市SDGsパートナー」として募集し、その中から市の課題に取り組む「事業推進ワーキンググループ」を設置した。現在、約500の企業・団体が加入している。さらに㈱地域ITベンチャーを設立。これが成功したのは、民間に「踏み込んでやってくれる」会社があったから。本気のパートナーがいたのが成功の元だ。市の担当課は「未来共創課」。

〇前橋市の例。市と民間が共同出資して「めぶくグラウンド㈱」を設立した。マイナンバーカードを使った「めぶくID」でデータ連携基盤を運用。市民サービスの充実を実現した。前橋市の担当課は「未来政策課」。このようにしてプラットフォームで市が「稼ぐ」ことを発想する。デジタル&ファイナンス活用による未来型政策協議会を立ち上げた。このように、形式は任意団体、法人とさまざまだが外部組織を作って市と連携する姿が増加中。

〇大村市、園田市長がオンラインで登壇。2期目の47歳。大村市は長崎県下で唯一の人口増。高齢化率は県下で一番低い。背景には自衛隊3部隊があること、病院が充実していること、そしてボート発祥の地であることがあげられる。しかし人口増により、自治会加入率ではワーストとなっている。そのコミュニティの希薄化をデジタルで補う。そのために官民連携組織「CONNECT」設立。市役所はコロナの中でも「前例踏襲」だった。「デジタル」の旗を振って2年になるが成果は見えない。何をどうすればいいかわからぬまま。デジタルによる未来の計画を策定する。これがこれからの柱だ。今、困っていることを洗い出し、それをデジタルで解決できるかを模索していく。大風呂敷でなく、この作業をすることだ。大村市では各課が困っていることを企画政策に持ち寄り、既存の組織で困っていることを一つの政策に作り上げた。それが「CONNECT」だ。法人を作る意味は役所の「財源にべったり」を脱することにある。「役所まる抱え」を脱し、新たなサービス作りを目指す。そして官民がWin=Winに。アプリ作成に民の力は不可欠。外の人といかに組むかを頭に置いた。民間企業は「儲ける」だけではない。CSRSDGsに貢献してもらい、社会に還元してもらう。そのために企業もまちづくりに乗っかってもらう。そこに企業の持続可能性があり、企業価値がある。つまり、企業の人々に「行政の中にもビジネスチャンスがありますよ」ということに気付いてもらうことが重要。

〇大村、西条の両市長共通の弁。「官はひとたび取り込むと、民にリリースしようとしない」「民との共創はこれからのトレンド」「交付金を使い、何かを整備して一丁上がりでなく、交付金を使って稼ぐことだ」「デジタルで課題解決、さらに稼ぐのだ」「人がいない、と言われるが、一人に来てもらうよりも東京にいる一人をシェアすることを考えよう」。愛媛では県が特命担当官を設置し、県下市町村の相談に乗っている。デジタル人材5人を県下20の市町でシェアしていることになる。福山市を中心に近隣市町が人材をシェアしている例がある。市職員はどうあるべきか。「あなたはIT担当です」で、その一人にデジタルの仕事が集中しがち。あとの人は「関係ない」となる。全員体制になっていくのがこれからの流れだ。民間から見て市役所職員のデジタル意識は全く低い。これからは皆がAIに関わる時代だ。全員が「自分ごと」としないといけない時代だ。行政職員への「評価表」を変えていくことが欠かせない。これまでは失敗しないことが評価された。しかしこれからは挑戦して失敗したことが、挑戦しなかったことより評価されるようにしなければならない。民間との人事交流は大事。LINEがうまい。組織は職員からは変えられない。首長を「口説く」ことだ。民間ならアライアンス。トップマネジメントの領域だ。市長が腹をくくることが大事だ。そもそも、議員から、職員からの提案を採用して成功したら、それらはすべて「首長のお手柄」になるのだ。ここが市長の「おいしい」ところだ。「自治体間で課題を共有して、仕組みも共有しましょう」。ゲームチェンジの時代である今は「何をやるかより、どうやるか」だ。民間と付き合わないと市職員は良くならない。


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⑤自治体DXの推進について 総務省自治行政局 地域情報化企画室長

 

〇これから20年、人口減少、働き手不足が続く。公務員も1020%減と見込まれる中でいかに乗り切るか。ここにDXの意義がある。

0次:アナログ時代

1次:デジタイゼーション…ツールのデジタル化の時代

2次:デジタライゼーション…プロセスのデジタル化の時代

3次:デジタルトランスフォーメーション…変革へ新たなモデル。申請自体が要らなくなる時代へ。ICTは労務本位、DXは住民本位ということ。

〇これからの国の行程表。必ずしも人間がやらなくても良い仕事をDX活用で。そのためにシステム統一、標準化へ。自動化と新たなサービス創生。

DXでできた時間を何に使うか。フロントヤード(窓口)における創意工夫が求められる。北見市の「窓口支援システム」が先進事例として脚光。

〇デジタル人材の輩出。230万人創り、偏在を解消。国は地財措置を創設、120130名のアドバイザーを派遣へ。デジタル人材シェアリングの愛媛の事例など、総務省HP「参考事例集」に掲載。伴走型「人材確保支援事業」をまもなく通知予定。手を挙げていただきたい。

DXはひとつの課が担うのでなくR5からは各課が推進する形に。滋賀県の職員育成で「推進チャレンジャー」を各課に置いた。他に東京都、鹿屋市、金沢市、真岡市、大分市など参照されたい。資格取得を支援するのは東村山市、佐倉市、郡山市など。

〇マイナンバーカードの普及で「住民票添付」不要に。しくみ、安全対策、利用の仕方、拡大手法などこれから。国会審議中の保険証廃止を進める。それにより良い医療、一時払い不要、入力手間軽減のメリットが。

〇ほかに代理交付の整備見直し、郵便局の活用なども視野。母子手帳、バスの高齢者・障害者割引、自治体マイナポイントへと拡大が考えられる。

〇デジ田の活用。北九州市が生産性向上で優勝、飛騨市が「さるぼぼ」で準優勝、ほかに長崎県のローカル5Gで離島医療、前橋市の公共交通でローカル5G、伊那市のドローンで買い物「ゆうあいマーケット」、山梨市のスマート農業などなど事例を参照されたい。


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⑥自治体DX その先にあるものとは~今こそ問われる「自治体の存在意義」~

            

          行政システム㈱行政システム総研 顧問 榎並利博氏

 

〇総務省が取り組む「自治体戦略2040構想」。その構想遂行のために標準化と効率化が進められているが、コロナに突入し、局面は激変。政府は強引でありかたくなな印象。法で強制し5年の期間で達成しようとするのはあまりにも短い。自治体からは「間に合わない」「財源が足りない」の声、ベンダーが撤退する動きもある。すでに期限まで3年を切ったにもかかわらず、政府はいまだにゴールが見通せていない。真意は別にあるのか?

〇日本の債務残高はG7の中でダントツ、世界176か国の中でも176位。ちなみに175位はギリシャ。年間GDP259%にのぼる。社会保障費は130兆円でGDP23.2%。団塊世代が全員後期高齢者に入り、税の伸びはわずかとなり、歳出は爆発的、2倍になる。赤字国債をもってしても財源は足りない。

〇第33次地方制度調査会での議論で、行政課題を一体化させ、システムを統一化、共通化させることにする。これと多様性、イノベーションとは対置する。

〇国と地方との役割分担の見直しが行われる。

〇デジタル人材はどこの民間にもいない。そこで自治体の役割は①多様性を尊重する地方自治イノベーション②役割分担の見直し③DX人材の確保、となる。

〇マイナンバーカードが普及しても、それをコンビニで使えない例、あるのに所得証明が必要な例がある。

ChatGPTに「正しく答えさせる」ための技術を身に付ける「プロンプトエンジニアリング」が脚光を浴びている。

〇先進事例として福岡市。量子コンピュータでコロナ患者の搬送ルート最適化で実用化済み。越前市の「デジタルツインえちぜん」ではバーチャルな町をオープンデータとして公開している。このように面白く、ムダかも知れないがトライすることが必要だ。NFT山古志村住民会議。「デジタルアートNishikigoiNFT」を発行。桜川市のふるさと納税。デジタル空間上のDAOは民主主義を体感させる。

〇住民の不安に寄り添う施策がますます重要になる。潜在的バイアスへの市民の不安に対処することが求められる。

〇世界全体では18%の仕事が自動化される。先進国が影響を受け、2425%の影響を受けるとされる。今の仕事の半数以上は1940年には存在していなかった。この80年間にできたものだ。この先もこうしたことが急速に続いていく。


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ICTを活用したフレイル予防事業にチャレンジ!

            ~東京都府中市が進める官民協働の取組~

         経済産業省関東経済産業局 次世代産業課長

         府中市福祉保健部高齢者支援課 担当者

         エーテンラボ㈱ 代表取締役CEO 長坂 剛氏

 

〇関東経済産業局地域経済部次世代産業課から説明。地域課題に取り組む自治体職員へ「こんなお悩みはありませんか?」何をしたら良いかわからない、官民連携が企業HPだけではわからない、予算がない、企業へのアプローチの仕方がわからない、などなど。これに答えるべく、当方ではニーズピッチ、課題整理からマッチング先の選定、実証協議まで伴走支援をしている。コンセプトは「共創」。

〇太子町、西東京市、八王子市などの予算、補助金の活用事例を紹介。

〇自治体職員に聞くガバメントピッチのメリット。課題の見える化、言語化。これには自治体にノウハウがない。企業の柔軟な発想を取り入れられる。多くの企業と接点。企業との対話で新たな気づき。解決策が柔軟に模索できる。専門家を入れてブラッシュアップし、マッチングにつなげる、など。ここで、この後に続くエーテンラボと府中市のコラボが紹介される。

〇府中市役所平沢氏。府中市は新宿から20分、人口約26万人。

〇コロナで、フレイル予防が市の行政課題に。そこで関東経済産業局の「ガバメントピッチ」を活用した。「市民どうしがつながる」を重点にした取組み。習慣化アプリ「みんチャレ」を活用した提案を選定した。25社から提案をいただいた中から。「三日坊主防止アプリ」とも呼ばれる「みんチャレ」。5人1組でチーム参加、写真と共に今日の歩数を報告、コインを貯めて社会貢献活動に寄付、という仕組み。社会貢献へのインセンティブを働かせる。フードバンクへの寄付は高齢者に大好評。散歩途中で見かけた花の画像を送信など励まし合いで「3日坊主」を防ぐ。リアル茶話会も開催。高齢者が「ひろめ隊」を結成し、市内学生がファシリテーターを務めたりして刺激し合う。

〇3年間やってきての課題は、講師の確保、参加者の確保、財源の確保。これらそれぞれに対策を講じつつある。

〇この取り組みで厚労省第10回「健康寿命をのばそう!アワード」で優良賞。

〇エーテンラボ㈱社長。ヘルスケア数々あれど「続かない」のが悩み。そこに「行動変容」を起こすことがテーマの「みんチャレ」。

〇上記府中市の説明に補足。町で見かけた景色のアップロードは「今日の写真しか送れない」のがポイントになっている。貯めたポイントを寄付することで幸福度が向上。「ガマン」から「楽しい」へ転換。「みんな頑張っている。自分も」「今日は何の写真を送ろうかな」と意欲的に。ちょっとした努力も褒め合い、やりがいに。糖尿病患者、予備軍の歩数達成数が2倍に。健康づくりに直結。NHKなど各メディアで取り上げられている。

〇人は自分から行動を起こすと幸せになれる。

〇エーテンラボの会社概要(省略)。自治体との協働で効果がある、楽しい、臨床エビデンス、利用者の高い評価、自治体の意見を聞いてサービス品質向上、最短1か月での導入など一気通貫、6つのメリット。提供領域を拡大中。現在276自治体が参加している。


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⑧ウィズコロナ時代の自治体経営~強い財政をつくる人・組織とは~

    

       千葉県佐倉市 財政部財政課長 塩浜 克也氏

       兵庫県川西市 副市長     松木 茂弘氏

       静岡県裾野市 副市長     及川 涼介氏

       神奈川県横浜市 行政イノベーション推進部長 安住 秀子氏

       (公財)日本生産性本部「ガバナンス」編集長 千葉 茂明氏

 

〇佐倉市。物価高騰はウクライナ戦争が原因ではない。産業構造の変化によるものだ。自治体では経常経費の増大が生じている。庁内の知識・能力・経験の集結が求められている。財源的リソースと人的リソースをいかに活用していくかが問われている。自治体は国の縦割りをそのまま受け入れている「総合行政主体」である。デパートやコンビニと異なる。

〇財政とは配分であり、財務とはやりくりである、と松下圭一氏。自治体間の財政競争の時代だ。流山市は4つの事業を上手に運用・実施している。政策法務から見て具体的な事業実施をしている。職員が「アタマに汗をかく」場面だ。

〇強い財政とは「柔軟性=しなやかさ」と「計画性=したたかさ」だ。漫然としたルーチンを一擲せよ、と鎌田要人氏。パラダイムシフトとは「世代交代」だ。

〇職員は「財政に行くと現場を忘れる」。現場はフロントだ。そこがPDCAを回すことが大切だ。現場の緊張感を保つためにプロセスシートを活用。PDCAC(チェック)は現場がやるべし。それで現場は強くなる。それをサポートするのが財政だ。アタマの固い財政と人事がまず変われ(川西市副市長)

〇財政の「政」はまつりごとだ。それに必要なのは「合理性」と「納得性」だ(佐倉市財政課長)

〇持続可能な財政を脅かすのは①国②首長と議員という公選職だ(「ガバナンス」元編集長)。ある自治体の財政解説の文章で地方交付税のことを「親からの小遣い」と説明している広報にあぜんとした()

〇横浜市「行政運営の基本方針」2002.9で強い人づくり組織づくりを目指す。民間が社会課題を逆提案してくるようになった。市はこれを財政で受けて立つ。そういう時代が来つつある(横浜市イノベーション担当部長)

〇予算査定は「審査」か「枠配分」か。モチベーションの低い職員を乗り越える工夫を。市民に喜んでもらえる財政をやっていこう。そのためにモチベーションを上げよう。川西市も枠配分をしているが、どちらにせよ「何をエビデンスにしているか」が大事。「成果を住民に返す」ことを忘れた財政ではいけない。

〇民間経験者の職員採用、途中採用に注目。民間で5年経験、3334歳までとしている。私も民間経験者だ(佐倉市)。それにより役所の「血が変わる」。公務員に刺激になる。

〇良い組織とは? 首長と議会の緊張あるバランス。市長には人事と予算権がある。明石市長は年に10回以上の人事異動を行った。予算には議会に責任があることを発信すると良い。三重県では首長の前に議会が予算方針を示す。横浜市にも議会が作る財政規律がある。

〇総合計画も議会が議決し「議会にも責任があるよ」とすべきだ。大津市議会のミッションロードマップを参照。


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⑨自治体が直面するDX課題とソリューションビジネスのあり方

       ㈱時事通信社解説委員     武部 隆氏

 

〇お役所には「人件費」の概念がない。公務員給与は古代律令制から、労働ではなく「階位」への身分給であったが今もそれは変わらない。

〇出世したがる、ということは、給与アップを狙っているというのでなく、権力を狙う、のでもなく、ただ「見下ろせるのがうれしい」との心理。これで1500年。だから「働き方改革」はできない。

〇お役所の財政システムには「労働量」という概念が存在しない。行政が外部に発注するときも「仕事をトータルで任せる」のが原則だ。追加が生じても事業費は議会で議決された予算の域を出ない。民間だと多重下請けでコストを下げないと利益が確保できない。システム系トラブルの根源はここにある。

〇公務員時代の「職位」は退職後の人生も左右する。先日の、国交省次官が民間人事に介入した案件。「天下り」は、天下った人が「仕事を取ってくる人」だからこそ天下れるのだ。職位が低い人は仕事を取ってこれない。大物OBは現役人事に強い影響力を持つ。だから民間に天下る。民間企業の場合、経営者も報酬に見合った「労働量」が期待される。これほどに官民の「働き方」には違いがある。

〇地方財政の仕組み。地方交付税なしで財政運営可能な「不交付団体」は1765団体中67団体、3.7%。ほとんどの自治体は自身の財源で賄えず、個別団体の財政実態とは関係なく「国が決めた単位費用をベースに決まる」。

〇家計に例えると、人件費は削れないという大前提がある。福井市で豪雪。除雪費が財政圧迫したので職員給料を10%カットが検討されたが、「組合が猛反発」ということがあった(2018)。「信じ難い提案だ。こんなことをやっていたら雨や雪、台風のたびに給料がカットされる」。かように人件費は削れない。従って、天候や災害で自治体財政が破たんすることはない。福井市は前言撤回。しかし福井市がデタラメをやっていたのではなく、地方財政システムに問題があるのだ。

そこに総務省が気付いた。

〇自治体DXの本来の目的は「十分に管理できていない支出をどう減らすか」にある。

〇自治体DXの重要取組事項は①自治体情報システムの標準化・共通化②マイナンバーカードの普及促進③行政手続きのオンライン化④AIRPAの利用促進⑤テレワークの推進⑥セキュリティー対策の徹底。非公式だがこの中で、総務省の考える優先度では超高①、高②⑥、中③④、低⑤である。この優先度に基づいて、国からのお金は降りてくる。今取り組むべきは「標準化・共通化」だが、そのシステム費はベンダーの言い値で決まる。自治体のシステム投資は経常経費に取り込まれ、しかも業務別に細分化されるので予算の中で目立ちにくい。ベンダーは利益確保のため、必要以上のスペックを進める傾向がある。

〇さらに「クラウド化」がシステム経費増嵩に拍車をかける。導入コストが抑えられる、拡張性に優れる、情報共有が容易、メンテナンスが不要、運用コストも削減できる、どこででも仕事ができる、セキュリティーが強固、災害に強い、などのうたい文句で。すると小さな自治体では、住民一人当たりのコストが高くなる。大企業の方が中小企業よりコストが安い、などはあり得ない。ここに、システムの全国標準化の理由がある。共同利用で、皆で作れば安くつく。そのようなことはあり得ない。ここに政府の進める「システム標準化」の問題点がある。損をするような標準化を引き受けるベンダーはいない。自らの首を絞めることになるからだ。ベンダーは人口別、分野別に「住み分け」して寡占している。富士通、NEC、日立の寡占状態。性質上、先行投資のリスクが高くて中小ベンチャーは参入しにくい。しかもシステム移行は2026年3月末までに完了しなければならないスケジュールが示されている。

〇もとは税金だから競争が起きにくい。「労働量」の概念がないから役所は値上げも受け入れるしかない。5/15付官庁速報に出たが、自治体の共同利用意向は4%しかない。標準化への移行作業を引き受ける業者はいない。すでに国の意向は破たんしているがやめることはない。法律を作ったから。自治体DXは自治体の政策でなく国の政策である。

〇そこでどう対応すべきか。職員は、わからないことが起きるとベンダーに聞く。これほど交渉力や知識がない。ベンダーと交渉できる最低限の知識を職員が身に付けることだ。身に付けた担当者が首長や幹部に情報を伝えるように努力することだ。市長や副市長はこの事情を知らないありさまだ。

〇公務員が「労働量」の概念を理解することだ。1500年の概念を変えることはできないが、仕事には労働量があることを理解しなければ、自治体はずっとブラック企業であり続ける。


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⑩首長LIVE「首長に聞く!これからの官民共創まちづくり」

       静岡県磐田市長        草地 博昭氏

       埼玉県和光市長        柴崎 光子氏

       コーディネート ㈱地方創生テクノロジーラボ 新井一真氏

 

〇草地市長は8年間議員を務めて市長に。磐田市では市内56年生3500人をジュビロの試合に招待。授業の一環として。シビックプライドを醸成している。

〇なぜ公民連携か。①課題解決に、デジタルによる新しい技術が必要になってきた。さっそく仕様書を作って発注することになるがその前にまず、公民が連携することが大事。ここから「ヨコ展開」することだ。②金がない中で優先順位を決める。カネがない以上に、説明責任が求められている。それができないから慎重になってしまう。③住民のお困りごとを解決するために、お金を使うには入札ルールがあるが、まず公民で実績を作ることだ。民にとってお金になることは民間とマッチングする。洗濯機、テレビなど電化製品が消費者に喜ばれるように、民間に活躍してもらう。可視化されてないことを注視し、その課題解決が民間にとって儲かるか儲からないかはわからない。そこを踏まえてうまく契約をし、実証実験から始める。

〇磐田市の官民連携実績。①関東経済産業局プラットフォームRIDCの活用。企業及び支援機関等17団体と市職員8部門17課が参加。市では気付けない視点、行政課題の再認識など成果。②自治体CONNECTの活用。首都圏に磐田市をアピールすることをテーマに㈱地方創生テクノロジーラボと連携。③公民連携ディスクの設置。民間事業者が相談する窓口、市の持つ課題を整理する機能、公民連携の情報蓄積。担当部署とつなぎ、アイデアを民間から募集するワンストップ窓口として機能。ここから静岡ブルーレヴズ㈱とのパートナー協定が生まれ、スポーツを活用したまちづくりが推進できた。④民間複業人材の活用。行政特有の同一性のワナによる固定観念からの脱却。ダブルワーク(複業)を希望する人材を専門的に扱っている会社と協定締結、こうした人材を活用しての課題解決を進めた。ふるさと納税アドバイザー、シティプロモーションアドバイザー、Webページ改善アドバイザーとして活躍してもらった。⑤企業版ふるさと納税の活用。これは企業にメリットあり。⑥首都圏連携コーディネート事業。公用車のスマート管理など。

〇官民連携の行政側の仕組み。48月に新規事業の提案。9月、当初予算編成開始、10月、予算要求、121月、予算査定、3月、成立。提案は早く。市の準備した連携手法は、指定管理者制度、広告掲載、ネーミングライツ、PFI。これにより市民、企業や大学、行政の3者がWin-Win-Winに。

〇課題として、職員がちゃんと「腹落ち」しているか。職員は目の前の市民を支線に置いているが市長は全国レベルの視野を。両者にギャップがあり、職員が「腹落ち」していないことがある。市長が自分の「思い」だけで走り、失敗したこともある。職員が動きやすいように配慮することが大切。課題はどう発見し、どう優先順位をつけるか。言語化するかどうかだ。職員はいろいろなところへ出て行って勉強をしてくれ、と投げかけている。

〇和光市の官民共創のまちづくり。公民連携施設「わぴあ」。プールが老朽化、漏水に至ったことをきっかけに、民間資金・ノウハウの活用、すべての施設を一体的に整備するPPPを導入。官民連携による複合施設として整備。その特徴は①運営に主眼をおいたPFI。民間マネジメントチームが牽引し賑わい創出。②市民参加。市民を巻き込みワークショップを行いながらゆっくり時間をかけて市民参加を醸成。③地元連携。地元事業者や非営利団体をまとめたコレクティブインパクト・リストを導入。異なる立場を超えて強みを互いに出し合い、持ち寄る仕組みを構築。

〇和光版MaaS。自動運転サービスの導入事業。来年実用化を目指す。

〇事業参入の条件設定で苦労したのは行政と事業者の思いが合わないこと。サウンディングを30社実施。丁寧に時間をかけて擦り合わせた。

〇ここからディスカッション。①官民共創が地域に与える影響や効果は? (磐田)市が解決できないものが解決できる。職員の刺激になり、モチベーション向上につながる。職員は目の前のことで忙しい。官民連携でやりたいことがかなえられた。(和光)市だけでできないことが民のノウハウでできた。賑わう場所、集う場所ができた。市がサウンディングしてひとつの方向に向けた。職員は目の前のことで一日の仕事を終わっている。人が減って仕事がさらに増えている。(磐田)仕事は20%増え、人は10%減っている。社会の課題は、それに取り組むみんなが集まり、公民連携で解決する。自治会が抱える課題は公民連携で、市役所を窓口として解決に臨むことだ。「官民」とは自治体と民間、「公民」とは自治会など市民と自治体という意味だ。

〇②「官」側、「民」側でそれぞれ大事だと思うポイントは? (磐田)「官」は課題の見える化ができてない。うまく言葉にできない。公平性の確保が必要。リソース(人材)確保が難しい。「民」は自治体の仕組みを知らない。よく知った上で提案のやりとりを進めるべきだ。こちらも「言語化」ができてないので辛抱強く、粘り強くやることだ。市職員は3年で異動するし、「課題の言語化」が苦手な職員も多い。取り組みの優先順位をどうするかで苦労している職員も多い。市長の所信表明を見るとわかる。時間がかかるのは会議があるからだ。市長の独断専行ができないしくみになっているからだ。(和光)「わぴあ」が他のところで成功するとは限らない。ニーズに基づいていることが肝要だ。ニーズをていねいに話し合い、官民双方の「いいとこどり」ができるように擦り合わせが大事。行政は会計年度で動く。それを踏まえ、次年度へ粘り強く取り組むことだ。

〇③今後の民間との協業で鍵になってくる産業や協力形態は? (和光)自動化。人が足りないことだ。災害時の民間ノウハウからの協力はこれからの課題。(磐田)人でなくてもできることはどんどん企業のリソースを使って解決する。脱炭素、世界の食糧不足をどう補うか。課題はまた挑戦テーマでもある。入札になったら「汗のかき損」になるのか。連携協定のメリットは優先的に話ができること、市民に説明がつくことだ。

〇民間へのメッセージを。(和光)ともかくたくさん話をしたい。(磐田)市民のためになっているのかを問う。今の市民、将来の市民が幸せなのかが評価軸だ。話はどんどん聴きたい。理解できるまで説明できるのかを常に問う。これを前提にして、民間の皆さん、どうぞご提案してください。


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感想

 

 3日間にわたる「自治体総合フェア」。これまで何回か参加しました。会場を埋め尽くすブース展示をセミナーとセミナーの間を縫うように見て歩き、どっさりと重たい資料が荷物になっていきます。この開催パターンは毎回同じですが、取り上げられるテーマは年々、最先端のものになり、それにふさわしい展示とセミナーがめまぐるしく繰り広げられます。2023年、今回最大の関心はやはりDX。何でも安易に「X」を付けられて、ついて行く身はやっとの思い。そして今回、自分以上に、この国の地方自治体という制度そのものが、DXの時代にそもそもマッチングしていないのだ、ということを掘り起こして気づかされ、いやそれでも、最後に聴講した磐田市、和光市の両市長の話に象徴されるように、懸命に先を見ている、住民を見ている、企業を見ている、そして事業を展開し予算を執行して成果を出している、そんな姿がまぶしく印象に残りました。

 それにしても失礼ながら、国のお役人さんを招いてのレクチャーは細かな字をびっしり詰め込んだスライド資料にまずうんざり。音楽に例えたら高低も強弱もない単調な通奏低音で、知っとかなければ前に進めないから聴講を選択するが、それでどうなの? と終わってため息をつく。かたや、研究者、ジャーナリストたちの話は切込みが鋭くて話に引き込まれる。対談形式のものもありましたが、通り一遍の部下が準備した現行に目を落としながらの首長などおらず、「時間が足らん」と言いたげな人たちばかり。とくに、こういう場面ではモデレーターと呼ばれる進行役が、このまことにタイトな時分の中で登壇者に平等に、聴衆を飽きさせず本質をえぐり、しかもうまく着地させるその手腕に聞き惚れるものもありました。そこにも「時代性」、自治体に見舞う「時代の嵐」を感じずにいられません。

 私自身、かつてのいわゆる「昭和の公務員」。民間事業者が登壇したらつい「儲けの話か」と身構えてしまう、遺物のような感覚を脱しきれない脳の持ち主です。議員という立場から悟り済ましたことを言っているが、実は「公務員的発想」は私も身からそぎ落とせぬまま、口だけで見聞きしたことをしゃべっているにすぎない面があります。「公務員は目の前の市民のことを考え、毎日懸命に仕事をしている」。だからDXだ官民協働だと議会でハッパをかけられてもねえ、という心情がよくわかる。ここに登壇する担当課長、部長、副市長、首長のごとく、1つ聞いたら3つ返事が返ってくるようなやりとりを行いたいものだ。なんで丸亀市役所には先進の「戦略」とか「デジタル」とかいった名を冠した部署がなく「庶務課」なんだろう。常日頃のうっぷんが東京のビッグサイトでぶちまけられる、そんな気持ちで帰りの飛行機に乗ります。しかしこうして感想を書きながら、そこには無理からぬ事情があるのだ、と考え直す。ただ、それで終われば進歩もない。「職員も上京して研修を受ければ?」「いまどきならオンラインだよ」で終わらせない。トクトクとしたり顔で演説を垂れても市役所職員の仕事っぷりが変わるわけではない。3日目に、「太古の律令政治から、公務員とは労働給でなく官位給なのです」と諭され、なるほどそうか。こんにちのDXや官民協働がぎこちないその背景はよく理解できた。問題はだからどうするか。これを聴講した「私が」どう振る舞うのかの問題なのだ、と心を整理します。

 昔は丸亀駅に「北口」はなかった。今では立派な「えきチカ」なのに捨て置かれたまま。コミュニティバスも失礼ながらバスだけに「迷走」を重ね、実証実験に住民が「乗ってこない」ありさま。市民協働というテーマは、「マルタス」という「仏」は作ったが「タマシイ」は入っているのか。仕事は20%増え、人は10%減っている、という深刻な磐田市長の指摘に震撼しながら、次の旗振りをできない市役所はどこにいく?そして市民は?との思いに気持ちが塞がれます。

 さらに、国は合理的な政策遂行のために各自治体固有のシステムを標準化すると、一見まともなことを言うがそれはものごとの条理上、もともと失敗している、という指摘。でもやめられない、法律を作ったから、との絶望的な指摘。国からにわかに「DXだ」と指示され交付金を付けられて、あたふたしながらシステム標準化におっかなびっくりで取り組む。わからないからベンダーに聞く。ベンダーはといえば営利のために美辞麗句で余計な予算まで付けさせる。そういう仕組みを市長と副市長は知らされてない、と。ついでに「議会も」と言うべきでしょうか。だから公務員はきちっと学ぼう。そして町に出かけてキーマンと合おう。企業もビジネスチャンスが公務の中にこそあるから、そんな公務員、議員と認識しての会計年度を意識した気長いお付き合いを。そういうことだろうと思います。待ったなしのDX時代の地方自治体を、私なりに動かしてまいりたい。


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