○自治体総合フェア2012講演レポートB

「クラウド&スマートフォンの『スマート・デマンド交通システム』から

 地域生活支援システムへの展開」  福島大学経済経営学類教授 奥山 修司

                        2012.5.24 東京ビッグサイト

 

以下、私が受講したメモから抜粋します。文責は内田にあります。

 

@デマンド交通の現状とあり方

・「まんじゅうも買いに行けない」、自由に出歩けない高齢者

・自由を満喫するイナカ≠フ老後暮らしには「おばあちゃんのための車」が必要。

 それがデマンド交通とするなら、「1時間に1便」を守る必要がある。

・タクシーの5分の1なら使う。1300円なら使う。まちなかは100円で、郊外は300

 円で、という設定

A福島県伊達市保原町「ほばらまちなかタクシー」

 ・小型バス3台、ジャンボ2台で運行、1150人が利用

・死亡者が把握できない。人口比117.2%。亡くなっているのが掌握できない。

8089歳で8割が女性客。人口の15.8%に過ぎないがヘビーユーザーである。限られ

 た人がものすごく使うという傾向にある。このことで事業として回転する。

・「公共交通」という言い方をするのは行政だけ。「公共」だが利用者は偏るものである

 ことを知る。

・ある日突然、「外出」できなくなる。あるいは「しなく」なる。

・次の「ヘビーユーザー」を再生しなければデマンドは成立しない。

・利用しなくなって1年で亡くなる、または子のところや施設へ引っ越す。

・出かける理由を作ること、行き先作りに挑戦しなければならない。

・「サイレント支持」。いつかは自分も利用するから、と支持する層がある。

・赤字1500万円、病院の広告収入で200万円補い、1300万円の赤字で走らせる。

B「デマンド」はサービスの束≠フ一つ

・行政サービスの束の一つと考えなければ、財政的に切られる。

・利用者3000人の束=B月1000円預かり、誰の力も借りずに高齢者の出したお金で

 バスを走らせよう、とのシステム構築

C町田市相原地区

・どれだけ高齢者の外出ニーズがあるのかを真に調査してから乗り出す。

・バス会社丸投げや無調査で取りかかってはならない。

・しかし外出以外のニーズも多い。「みんなに迷惑をかけたくない」との思いもある。

 他のニーズを探り、サービスの束≠フ一つとして構成する。

・朝の利用が7割。病院、次いで買い物。昼はガラガラ。そこで昼のニーズを「創出」

・「共食」サービスを創設。「配食」とは異なる。個人宅に食事を届けるのでなく、「外出

 していっしょに食べよう」という場を作る。みんなで食べるためには、移動しなけれ

 ばならない。

・終生、土いじりをしたい、というニーズもある。 

 

受講しての感想

 

先日(201310月)、コミュニティバスとともに「ミニバス」を走らせる熊本県宇土市を視察しました。コミュニティバスだけではニーズをカバーできないことから始めたミニバス。高齢社会となり、山間部の住民の足がない、合併により、辺地となった地域に交通機関がない、との背景が、どこの地域にも見られます。

この講義で話された、ニーズを調査する、ことからさらに「ニーズを創出する」という取り組みは、これまでの発想を破るもので、なるほどと思います。それには市役所の中で、バス担当部局が高齢者担当部局と連携することが何よりの前提となるでしょう。これこそが、これからの行政のしくみに必要なことだと思います。

丸亀市でも合併前の「ぐるっと」の愛称から一般的な「コミュニティバス」と名称変更し、さまざまに試行しながらダイヤ改正、ルート改正を試みています。将来的には定住自立圏域での共同運行も考えていかなければならないですが、現状はこのとても必要なことが自治体を超えることで非常に困難を伴うと聞いています。

そこに必要なのはどこまでも市民のニーズに叶うということ。「ニーズの創出」という柔軟にして積極果敢な戦略に刺激を受け、今後の行政展開への参考にしたいと思います。

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