○自治体総合フェア2012講演レポートD
パネルディスカッション「復興再生に向けて 今すべきことは何か」
パネリスト
岩手県商工労働観光部商工企画室長 桐田 教男氏
三陸鉄道株式会社旅客サービス課長 赤沼 嘉典氏
赤武酒造株式会社代表取締役 古舘 秀峰氏
コーディネータ
特定非営利法人危機管理対策機構理事 細坪 信二氏
2012.5.25 東京ビッグサイト
以下、私が受講したメモから抜粋します。文責は内田にあります。
○三陸鉄道は常に赤字。そこに3.11。鉄道喪失、仕事はなくなった。
田老地区ではM29、S8、H23と3回、全滅している。
被災レールを切断して1個5万円で販売。すぐ完売。
被災地ガイドを始めた。
○赤武酒造は大槌町にある。1200人、町の10人に1人が死亡。
津波がくるとは思ったがあんなにひどいとは。まちなかの蔵にまでは来ないと思った。
波は見ていない。土ぼこり、土煙だけが見え、電柱や屋根が動いてきた。
酒造りをやれるわけがないと思った。被災した3社中2社が復興を表明したが「ウチだ
けは無理。やれるわけない」と思った。やめるに際し「これまでのお客さんにあいさつ
せよ」と叱咤され、回れば「やるんだべ? いつできる? できたらすぐに持って来い」
の声。ファミレスに家族で食事に出かけても、明るい妻まで下を向いて沈黙の食卓。顔
色も青く、黒く。
HPを立ち上げた。大槌ありての赤武酒造だ。DVDを作製。ホワイトボードに願いを
書く運動。今、声を出さねば何も始まらない、と。
○三陸鉄道は常日頃の訓練のおかげで被害者ゼロ。常に、頼みの電力と通信が途絶えたと
きを考えなければならない。
何がほしかったか。時間がほしい。忘れてほしくない。もう一人、自分がほしい。笑顔
がほしい…欲しいものは「モノ」ではなかった。
駅ができ、レールが復旧しても、町の復興がなければ誰もいない、誰も乗らない。
三陸鉄道のガイドではあの「釜石の奇跡」の話を紹介している。
復旧ではビジネスは成り立たない。復興ビジネス。お金はリターンするもの。儲かる仕
組みなくしてまちづくりはあり得ない。
そのために多様な英知が必要。
テレビでではなく現地を見ることが必要。
○富士通グループは訓練40回。3.11で、すぐに対応できた。BCPのポイントはすぐ体
が動くこと。
BCP計画あって訓練なしの場合、対応できず。対応できたところは訓練あり。
○TOTOは原発事故により工場に入れなくなった。
九州の工場に生産を移せばよいが、地元民をリストラすることになる。そこで茨城工場
を立ち上げた。1ヵ月後には運転開始。
ファインセラミックスも被災。客に迷惑をかけられない。特許を捨ててでも中国の工場
を稼働。
自治体BCPとは庁舎崩壊を前提とするもの。
「復興」というビジネスが要求されている。まちの復興は5年がかりでも、企業の復興
は今すぐに。
「お互いさまBC連携ネットワーク」の提唱。困ったときのために日頃、取引先との事
業継続性の信頼性を確保しておくこと。タイ洪水ではほとんど日本企業ばかりが被害を
受けたが、このお互いさま成功モデルともなった。
市町には災害応援協定はあるが、庁舎喪失を想定したBC協定はない。
受講しての感想
これを書いているのはセミナー受講から大きく隔たり、2013年の12月。1年半が経ちました。
パネルディスカッションに登場した三陸鉄道は今や全国の注目の的。NHKの「朝ドラ」あまちゃん≠ェ大ヒットし、今年の流行語には番組中の「じぇじぇじぇ」も選ばれました。いつもの朝ドラの反響以上に、今回は「あまロス症候群」なる言葉も登場し、ドラマが終わったので胸に空虚感が漂うほどの大人気でありました。もう最終回も近くになって世間の話題の高さに私も「参入」。最終回ではあの三陸鉄道が部分的に再開。喜びと感動がいっぱいの場面が、今も脳裏に残っています。
こうしてこのタイミングで、去年の春のセミナーを思い起こすのと感慨深いものがあります。登壇された方々は今、どのように活躍されておられるでしょうか。
鉄道も、企業も、それぞれに被災。鉄道で被害者が出なかったこと、企業がいち早く立ち上がれたこと、そこには常の備えがあったことを、強く学びます。
丸亀市役所ではちょうど今、データのバックアップのために免震構造の消防庁舎にデータをつなぐことが議会で報告されているところ。一方であの3.11のショックは少しずつ、市民の意識から遠のいているのかという気配がします。
でも潮が引いた後に、シビアに体制だけはしっかりと設立、そして存続させなければなりません。南海トラフの被害想定に、太平洋沿岸ではもう「間に合わない。あきらめた」という声も聞かれるようで、対照的に瀬戸内側では意識が盛り上がらない、そんな実状にあるのではないでしょうか。その実状の上で、どこまでもシビアに、行政が「そのとき」のための手配をしておかなくてはなりません。市民の危機感覚への警鐘、啓発も含めて。
去年の比べて今年の、地元の防災訓練への参加者が減っていたのが心配です。
同じ規模の災害に同じ大きさの被災をしていたのでは知恵がありません。不幸です。