議会改革・松本市
1.条例制定の背景と経過
H19 議会改革の検討のため松本市議会ステップアップ検討委員会を設置
⇒議長選挙にあたっての所信表明で議会改革を標榜。議長に就任。
⇒議会と議員の行動指針の明確化を図る。
⇒議会運営委員会メンバーがそのまま委員を構成。非公開から公開へ。
H21.4.30まで、同検討委員会が月2回程度、全41回の会合を開催。
視察やセミナー参加も。
H21.1〜 執行機関からの意見聴取、パブコメを実施、条例案文を議員協議会で
協議
H21.3 全会一致で可決、4月施行。
ステップアップ検討委員会で協議した事項と決定事項
1 移動委員会の開催⇒開催を決定
2 議会だよりのあり方⇒だより編集委員会を設置、発行を決定
3 議会運営委員会の公開、各委員協議会会議録の公開⇒公開を決定
4 議長と社会福祉協議会会長兼務の是非⇒就任を辞退
5 文書発送の効率化⇒メール通知方式を決定
6 委員会のあり方⇒1日2委員会開催を決定
7 市民との対話⇒議会基本条例を設置する中で実施
8 一般質問の方法⇒現行どおり
9 議会基本条例の制定⇒制定
10 議員定数のあり方⇒当委員会では検討しない
2.検討手順
@他自治体の内容の検討
A条例枠組みイメージ作成
⇒各会派の意見を持ち寄る
⇒「何が問題か」「何に取り組むか」を整理
B条例たたき台作成
⇒各会派の意見を持ち寄る
⇒自由討議、議会報告会、反問権、政策立案・提言など論点を整理
⇒会派に持ち帰り、全員が納得するという手法を取る
C条例素案作成(41回中30回頃から)
⇒ここでパブリックコメントを実施、1ヶ月間実施し、34意見あり
⇒執行機関側の意見を聞く
D条例成案、上程
E最終日、全会一致で可決成立
※検討委員会は自由公開、傍聴者には資料を貸与、会議結果、会議資料、会
議録をHPで公開
3.推進組織の設置
○議員一人ひとりが責任と自覚持ち推進
○条例制定に伴い、ステップアップは解散、同時に推進組織として4部会を設
置。自ら企画・立案、運営
《政策部会》 《広報部会》 《交流部会》
この3部会の振興を調整する機関として、《進行管理部会》
※これらの部会は企画立案、検討の組織であり、内容は議会運営委員会で協
議・決定される。実行は全議員が取り組む。
※広報部会は議会からの発信を担当し、交流部会は市民からの意見を受け止
めることを担当する。
※全議員が上記3つの部会のうちの一つに所属、月1回会合
※進行管理部会は正副議長と会派代表7名で構成、それに3つの部会の正副
部会長も出席する。2ヶ月に1回会合
4.制定後の取組み事項
○政策部会
・請願、陳情の趣旨説明の導入
⇒委員会で5分程度、説明の機会を保障。質疑。
・移動委員会
地域住民に関心高い議題についてはその地区で委員会を開催、住民が傍聴
⇒高い評価を得ている
・常任委員会ごとにテーマを設定し全議員で「政策討論会」
⇒これを政策提言に高めていく。市長へ「提言書」
・議員研修の充実
⇒前期・後期の2回、部会でテーマを決め、研修を行う
⇒初当選議員研修会を6月議会のあと、議運主催で開催する
○広報部会
・地元ケーブルテレビで「委員会レポート」の放送(60分番組)
⇒内容は委員会審査の内容、直近の議会活動など
・議会報告会
⇒議会の仕組み、基本条例の取り組み、定例議会の審議結果報告
⇒参加者からの議会に対する意見・提言をもらう
⇒開催実績
H21 2/10 議員全員で開催 120名出席
H22 4/14.15 市内東部と西部2班で実施
6/7 市役所で実施、90名出席、全議員、「定数について」
10/23.24 4班で合併地区4箇所で実施
⇒平日夜、土日の昼開催など試みた
○交流部会
・各種団体との意見交換
⇒各種団体との意見交換。町会連合会、まちづくり団体、農業委員などと
テーマを決めて実施
・市民交流会議「松本市議会ステップアップ市民会議」
⇒委員15人、公募含む、任期1年、年4回開催、無報酬
⇒22年度実績を踏まえ、23年度は任期2年、委員は20人以内、検討項目
の設定や分科会の設置も考えている
⇒100字程度のレポートを書いてもらって審査
⇒23年度は8月に募集、9月に初会合の予定
※後述の「感想」に関連記事
⇒まず本会議や委員会を傍聴してもらい、意見をいただく。それに回答
5.松本市議会の情報公開
○徹底的に「透明性」を追求
○閲覧制度
・議員協議会、委員協議会の会議録及び資料
・行政視察報告書
・政務調査費収支報告書
・議長交際費、議会食糧費
○HPで公表
・議長交際費、議会食糧費
・政務調査費収支報告書
・市民会議の結果及び資料
○会議の中継
・本会議はケーブルテレビ行政チャンネルで中継、ロビーで放送、翌日、ネ
ットで録画配信
・当初予算説明会、決算特別委員会をネットで録画配信
6.感想
視察に伺った同日同時刻、当市では国連軍縮会議が開催され、24カ国から90名の参加者を迎えているという、そのような真っ只中での視察でありました。よりにもよって、との思いで、委員長として汗顔です。このようなご多忙のさなか、よく丸亀市の視察を受け入れてくださったと、この場であらためて感謝申し上げます。
早稲田大学マニフェスト研究会が実施している議会改革度ランキング。その2010年版において、みごとトップに輝いたのが松本市。8月25日の飯田市視察がまず決定を見、それからの工程を考えるのに、この輝ける松本市を視察先に入れないわけにはいきませんでした。それにしても、知らない、というのは強いです。
視察を終え、率直な感想は、「なるほど、1位ということの意味がわかった」。
議会基本条例制定にどのように苦心したか、というあたりはサラリと説明を終え、「今、どのように取り組んでいるか」に、ご説明の本体部分がありました。そしてその内容たるや、それこそ当たり前のごとく、活発に市民に発信し、市民に飛び込む、そのような議会と議員の姿がありありと見えてくるものでした。
ちなみに、恵与いただいた資料の中の「議会だより」をめくってみます。
・視察結果報告
・「市民の声を議会に反映〜『ステップアップ市民会議レポート』
・「市民の皆様からの意見・提言を随時募集しています」
そして12月号の議会だよりですが、もうすでに「2月定例会の予定」も。
・「常任委員会レポート」として、例えば総務委員会では「入札のあり方」を
テーマに研究中、視察内容もこれについてのもので報告も付いています。
本文で紹介したとおり、これが核となって全議員により「政策討論会」が
行われ、その集約として市長に「提言書」が出される、という活発な内容
です。
・今年4月号では1ページ全面を割いて、ステップアップ市民会議において
発言のあった市民委員からの提言とこれに対する市議会の取り組みが一覧
表で掲げられています。一例を紹介します。
提言:傍聴用資料は会議時のみの貸与ではなく、持ち帰りできるように。
答え:作成部数に限りのあるもの以外は、持ち帰りできるようにしました。
・再度になりますが、この4月号「だより」で、6月定例会の日程がもう掲げ
られています。
・閉じてみてもう一度驚き。裏表紙のページ全面で「議会報告会開催」の大
アピール。テーマと会場図。「お気軽にご参加下さい」と呼びかけています。
やる気満々の松本市。議会をこう変えよう、という戦略会議を視察したとい
うより、ブルペンを飛び出して試合を展開している、まさに「試合中」の松本
市議会に接しました。
とりわけ「移動委員会」の取組みは、松本市議会のフットワークの軽さ、「本気度」を感じさせるものです。地域ならではの課題を抱える住民たちが、議員を迎える気持ちが想像されます。私たち議員は市民からの声があればすぐに現場に走るのは当然ですが、あくまでそれは議員個人として。このように、「議会が来てくれた」という姿勢こそ、市民と議会を近づける最大の効果ももたらすにちがいありません。
こういう取組みを視察させていただくと、まさしく、私たちの議会基本条例制定は「ゴールではなくスタートだ」という感を新たにします。
来年3月定例会の最終日をゴールと描くのではなく、その向こうに、「議会を待っている住民」「議会に満足してくれる市民」の笑顔を、思い浮かべて、改革に取り組みたいと思います。