1.視察の概要と視察意図
平成30年5月14日 9:30~11:30。
視察会場には市担当者のほか、地元ケーブルテレビからも局長が同席。
市政を市民にPRするのに職員自らが外注でなく制作に携わる。この積極的な取り組みが、どのようにして生まれたのか、実際はどのように運営され、どんな成果が出ているのかを視察させていただきました。
2.視察の概要
○地元ケーブルテレビ会社「ACN」と提携し、市の広報番組「上天草市役所
からのお知らせ」を制作、放送する。
○番組はコマーシャルを含む15分番組、完全パッケージ式。
○ACNは2チャンネルを保有。
・「あ~ぶるチャンネル①」は地域密着の趣味・娯楽・教養番組。
・「同②」は生活に役立つ公共・行政・交通情報で編成。こちらで放送。
○ACNは上天草市と天草市の2市をカバーしている。加入率は、
・天草市が26000世帯、加入はその3~4割。
・上天草市が5000世帯、加入はその1割。地形と電波の事情から全市域
には届いていない。
○平成26年1月から放送開始、今年4月時点でこれまで100番組収録。
ケーブルテレビ側からの求めに応じて市が情報提供する携帯をとる。
○行政から市民へのイチオシ情報や制度、注意喚起や強化週間・月間などの
PRにテレビを活用。
○番組(コマーシャルを除くと実質8分の尺)には市職員が出演。民間に関連す
る情報であっても必ず市職員が出演する。ビジュアルで説明することで紙
媒体よりも市民にわかりやすく伝えることができる。
○月2本の収録。所管の総務課から庁内各課に個別に出演と情報提供を依頼
する。断られることもあるが、根気強く依頼する。
○番組出演のために大きな負担を各課にかけることはない。
○放送は1日に5回。
・毎時00分、天草市の番組
・15分、上天草市の番組
・30分、県の番組 で1時間を構成
○この再放送ののち、Youtube仕様に変換してネットで流す。
○視聴者の反響
・画像、イラスト、テロップを交えた放送でイベントへの興味が湧いた。
・紙では1回限りだがテレビでは繰り返して放送してくれるのは良い。
・何気なくテレビをつけて知ったイベントにも実際に出向いてみた。
・市の情報を知る機会が少ないので、テレビで市への魅力を感じた。
・今春、市に就職した若手職員も登場。自己紹介が楽しく、好感。
・選挙のお知らせは分かりやすく参考になる。
○課題
・内容企画から放送まで約10日のラグがあり、ニュースのようにはいかな
い。
・収録場所は松島庁舎だが局や他の庁舎との距離もあり、毎週更新が困難。
・スポンサーなしの番組でコスト削減のため手の込んだ編集は無理。
3.感想
丸亀市も近隣町と提携、地元ケーブルテレビ会社が議会中継を行い、多度津町やまんのう町の方から「質問していたね」と声を掛けられることがあります。
旧丸亀市と飯山、綾歌の両町が合併するときには、それまで各家庭にあったいわゆる「有線放送」はお悔やみ情報も自動的に受け取ることができ、暮らしのなかに溶け込んでした、ということでケーブル加入について議論もありました。その後も加入率が伸び悩んでいると伺っています。
魅力がないチャンネルは見ることが少なく、これだけエンタテイメントが多角的に展開されるテレビ業界でなかなかメジャー局に対抗することはできない。さらにテレビの時代も全盛を過ぎて、若者を中心にテレビの前にいることも少なくなっている、そんな背景の中、ケーブルテレビは防災、ローカルな話題提供、地元のお店などの情報で勝負していくしかありません。もっと議会中継が面白くなれば、という意見もあるかも知れません。
ひとつには、このような状況で今も市から出資が続く地元ケーブルテレビをもっと有用に、お役立ちできるチャンネルにしたいという願いがあります。議会も本会議だけでなく委員会も中継へ、ということも協議していますが、「テレビが入る」だけでかなりのコスト。世の移りを反映して「委員会はネットで」という議論もあります。
そうではあってもテレビで、知っている人が出ている、身近な議員が発言している、そして市役所の情報をリアルに紹介してくれている、そのような姿にもっていけないものか、と思います。
一方で、市の広報メディアは紙の「広報まるがめ」を中心にネット上でHPほか各種SNSで双方向の情報交換、また市政への参加も行われていますが、情報が多角的・重層的に流されていくことは理想にかなっていると思います。
肝心なのはそこに市役所職員が一枚かんでいるというところです。自分の日々携わる業務について熱心に、懇切にカメラの前で市民に語ることは、職員各人にとっても良い経験なのではないかと私は考えます。
ここで、Youtubeで流れている上天草市の広報番組を見てみたいと思います。
秋に行われるウォーキンクイベントの案内、来年の成人式、生ごみ処理機購入助成金、サッカー場完成、認知症サポーター情報、災害対策情報など、多彩な情報を数分ずつ、担当職員が慣れない口調ですが、一生懸命カメラに向かってアピールしている姿がたくさんアーカイブされています。
思わず微笑んだのはこの春、新規採用された16人の職員が勢ぞろいし、それぞれに抱負を語る4/16付けの番組。ここまでどんな青春を過ごしてきたのか、これからどんな市職員暮らしを送っていくのか。小さなガッツポーズにエールを送らずにいられません。同市役所HPから動画チャンネルに進むと見られます。おおむね、若い職員が出演しているようです。
視察に伺い、出演した担当者たちの感想を伺う機会はありませんでしたが、市内一円へ自分の顔もデビューしたかと思うとひとつのかんがいがあるのではと思います。昔、小さなネームプレートでしたが、今は首から吊るすスタイルへ。上天草市ではその上に、テレビデビューもしているということ。職務への意識もますます高まるのではないでしょうか。
私には、それが一番の効用と思われます。
カメラの前、市民の前、人と接して仕事をしているという意識を常に持つこと、また「見たよ」という励ましもあれば、「もっとはきはきと」などアドバイスをもらうこともあるかも知れません。
市民と接することこそ市役所職員のこれからのあり方の第一と私は思います。口下手、役所用語、前例以上のことは考えない。こんな職員像がいつまでも続いては、役所は止まってしまう。だからこそ、市役所職員が市民の前にデビューする、そんな同市のこの取り組みに、私は魅力を感じます。
どんな手法で進めるかは検討するとして、まず職員が飛び出す、こんな取り組みを、市役所として始めることは意義深いと思いました。