令和6年11月12日 午前10時〜11時30分
1.視察意図
分かりやすい広報、親しまれ役に立つ広報、という命題は今に始まったことではありません。しかし市民との協働が言われる今日、「広報に載せてあります」「HPに出してあります」ではすまない、「どうやって読んでもらうか」「使ってもらえるか」さらに「参加してもらえるか」がこれまでになく重要、と言われてすでに久しくなります。
丸亀市も大いに努力を重ねられています。今後の参考にしていただき、ただ先進事例を「真似」するだけでは結局すぐに追い抜かれてしまう、独自の意欲や工夫をするための刺激になってくれればと、全国コンクール特選を受賞した鴨川市に、担当者を訪ねました。
2.視察の詳細
〇全国広報コンクール特選を勝ち取ったスタッフとは? それはいかにも人懐こい若い二人の女性。「取材先のおばあちゃんを笑顔にするワザを持っている」と自認。
〇HPリニューアルまでの経緯。平成26年11月に見直しを行った。デザイン劣化、機能面の劣化、情報の見つけにくさ、迅速な対応ができない、CMS(コンテンツマネジメントシステム)は時間がかかる、LINEの未導入などが課題に。令和元年9〜10月に3度、台風や豪雨に見舞われた。続いてコロナ禍。迅速な対応ができないことが致命的と知った。令和3年8月、CMSをLGWANに構築、LINE開設、CMSとLINEの連携へ。
〇令和2年12月、業者選定、3年2月、業務委託契約、ページデザインの構築、データ移行、各課担当者への説明会を実施。令和3年8月、リニューアルオープン、9月にLINE開設。
〇リニューアルのコンセプトは「多くの意見を取り入れる」。そのため市民、閲覧者、市職員にアンケートを実施。
〇セールスポイント@平常時は緑、緊急時は赤の帯表示にするA「お役所感」をやめる。「つまらなさそう」な表紙から「観光の市」へB落ち着いたトーンの上に、視認性を挙げる工夫C検索ボタンをフローティングに(ふわふわといつでも検索ボタンが右に浮いている)D「皆さんが主役」であるために「市民時計」「かもがわに住む人」を設けたEフォトバンクの導入。申請を要せずダウンロードが可能Fドローンと360度パノラマビューで「来てみたくなる」コンテンツの導入
〇心掛けた点@LINEにプッシュ通知Aその場で、スマホで、探せる便利さBCMSとLINEの連携で職員の「二度手間」解消C「市民目線」を大切にするため、民間のHPを参考にし、楽しいものをふんだんに盛り込んだDより多くの市民を登場させるE住んでいる人の活動は説得力があるF身近な人を紹介することで「毎日開きたくなる」サイトに
〇内外の声@予防接種など、LINEでの通知は便利Aさまざまな取り組みが紹介されていて「自分も頑張ろう」と思えるB移住のきっかけにC「市民時計」に誰が載っているか楽しみ。近所のお子さんが出ていると話題に
〇苦労と課題。従来「〇〇のお知らせ」「〇〇事業について」といったわかりづらいタイトルをやめた。安心・安全メールの内容がトップページにしか掲載されない、という課題を改善。独自のマニュアルを共有し、こちらから各課に意見、修正依頼をかけるようにした。
〇今後の展開。閲覧者には、動画配信サービスを利用してもらう、利用者アンケートで改善を図る、地域住民を巻き込む企画、インフルエンサーの活用。職員には、新聞紙面、近隣自治体のサイトを意識してもらう、定期的な研修会を持って情報発信の重要性を周知する。
〇各課が所管のページをWord感覚で更新している。
〇システム使用料は月8万円、年間100万円。職員への研修は年1回、業者が開催。
〇女性、4〜50代の人がよく見てくれている。
3.感想
お役所独自のタイトルの付け方。別紙「伝わる〜ページタイトルの付け方」から、具体例を紹介します。
「台風9号について」
これでは中身の想像がつかず、読む気になれない。これを、
「台風9号が発生 沿岸部は風雨注意」と。
昨今、14字でしたか、ウェブのニュース見出しはとても気持ちを引きます。「何だろう?」ついついサイトを見てしまい、仕事の前に時間を食われてしまう経験をどなたもお持ちでしょう。「台風9号について」では誰も読もうとしません。
もう一つ。
「「おかあさんといっしょ」の中止について」
これだと中身を読むまで要旨がわからない。そこで、
「【中止】8月2日開催の「おかあさんといっしょ」」に。
これなら忙しい人も本文を読まなくて事が足ります。
ほかにもマニュアルには、2行にわたる長いタイトル、文章だけで長々と説明している、結論がわからない、などのNG例示もあり、心当たりを刺される感じ。対して「伝わるポイント」も例示していて実践的です。
視察の時間が流れ、ふと雑談を交わしました。
奇しくも、先日視察に伺った坂井市。こちらは越前織で有名ですが、これを全国に知ってもらおうと、坂井市が企画したのが「越前織ネックストラップコンテスト」。「一筆啓上」で名をはせた坂井市。こちらも短い句で賞を競います。受賞作は実際に織物にしてくれる。鴨川市に来て、視察に応対してくださったこの女性職員が、まさにそのコンテストで大賞に輝いた。首から、その「作品」が懸けられているのでした。
一足早く、春が来る。 かもがわ
千葉県の東、太平洋に面した「安房小湊」。まさにどこよりも早く、春が来るというにふさわしい地。この職員が、まさにHP特選という春を呼んでいるのではなかろうか。そんな心地になりました。カリカリになって仕事をしている、賞を狙っている、という風はみじんもなく、彼女は仕事をとことん楽しんでいる、そんな風情を感じました。公務員のお仕事も万事、こうであれたらと思います。
ひとつひとつの工夫点は参考にしてくだされはいい。ただ、公務員というありがたき人生の場面で、このように楽しみ、市民の歓びがわが喜びと仕事に向かう、そんな彼女の姿こそ、視察に値するものだったと、深く感じ入ったのでした。