○刈谷市民ボランティア活動支援センター 愛知県刈谷市
1.視察の意図
魚屋さんが魚の鮮度を見分けるように、といっては失礼かも知れませんが、ホームページを拝見すると、うまく機能し、成功している市民活動センターを、私は見分けられるようになった気がします。
議会基本条例プラス総合計画という「二度おいしい」フォーラムが刈谷市で開催されると知り、ならばと同市の市民活動センターも訪問させていただこう、との企図。私の「見立て」は、まちがっていませんでした。いな。「感想」でも触れましょうが、地方の時代に市役所がやることはと聞かれて、「市民活動の舞台づくり以外に何をするの?」という確信までも、このセンターは私に与えてくださいました。
2.活動の概要
わざわざ私ひとりのために資料を準備いただきました。
資料に沿い、記述していきます。
○NPO愛知ネット…この組織がセンターの指定管理者をしている。同センターのほか安城市、大府
市、豊橋市でも。ほかに愛知県青年の家の指定管理も。防災・災害救援を
メインミッションとする法人。
○センター開設の背景…01年、市議会議員の一般質問が発端。
スポーツや福祉など各部門の情報がバラバラだ。ボラ情報の一元化、
活性化を、との提案。
時代の背景として、第6次の市総合計画は「市民参加の時代」を謳った。
ボランティア経験者を00年29.7%から12年40%へ、との目標を掲げる。
その具体的手法として、センターを設置へ。
→設置の目的と目標がとても明瞭!常に「40%」が念頭にある。
○センター設置へ…03年10月、もと倉庫を改装して開設。220u、平屋建て
開館は10時〜21時、日曜は17時。休館は月曜、年末年始。
スタッフ6名が常駐2名で交代勤務。フルタイムは2名。
イベント時増員。
スタートから05年3月までは業務委託の形態。その後は指定管理。
指定管理者制度ではセンターの運営のほか建物、備品の管理も業務範囲
に。そのため融通がきくメリットがあり、またやりがいも持てる。
一方、指定管理者制度では4年間で実績を出さないと「次がない」。
「40%」の数値目標のほか、「災害のときに救出率が多いまち」を目指す。
○利用実績…
1年間データのあるH16と21を比較
総来館者数6260→11986、相談件数227→742、そのうちマッチング件数49→86、
団体登録数179→319、個人登録者数(土日くらいなら参加できるという方)33→150
若い人、女性が多い傾向。「子育ての合間の時間をボランティアに使いたい」と若い母。
※ボランティア参加へ、「つなぎをつけてあげる、いっしょに行ってあげる」ことで実績を伸ば
す。
※数値目標にこだわることは大切だ。甘えが出たりするから。
※センターのカウンターに座って客を待つ、という姿勢でなく「プラスα」の活動を心がけ。
○施設の装備…談話室 18席×2部屋、イベント時はワンフロアに。
印刷室には印刷機、紙折り機、帳合機、製本機など
その他、パソコン、情報チラシ棚
※室内は手作りの雰囲気、こだわりの「赤ちょうちん」、敷居を低くという心意気を忘れない。
高級レストランのような敷居の高さを排して。
※最初の2年は「市民に愛される」、次の3年は「市民に信頼される」、その後は「市民に頼ら
れる」そんなセンターを目指す。
○会員登録…市在住、在勤、在学の団体または個人で、ボラ活動に関わること。
ボラ活動を「受けたい側」の施設団体も加入。これにより「マッチング活動」。
同窓会、同年(クラス)会、老人会なと親睦団体でもボラやればOK。
※「厄年グループ」というのもあり。昔の老人グループは親睦旅行。今の老人グループは
子どもの「見守り」
※クラス会でも「飲み会の会費の残りでボラ活動、など。
※ボランティアさんを生み出すのが仕事。敷居をどこまでも低く。接着剤に。
※会則不要、2人以上ならOK。これからやろうとしている人、OK。
○業務の詳細…
・施設貸出し業務 プロジェクター、ノートパソコン、レーザーポインター、スポットライト、
ビンゴマシン、ハンドベル、防災かるた、スタッフコート、サンタ衣装、
クリスマスツリーまで多種多様
印刷機無料、談話室無料。
※「利用者は情報を運んできてくれるコウノトリ」
・情報収集、発信業務 紙媒体も重視。60代女性のパワーは紙媒体に支えられる。
情報誌「ぼらっち」年4回
ネット上の情報「元気365」、メルマガ配信、チラシもネット掲載
※インタビュー記事の「ひと工夫」。投稿、寄稿はそのまま載せるしかないが、インタビュー
ならばこちらの思いも込められる。
・相談業務 マッチング活動…活動へ安心して参加できるよう、背中を押す、手を引いて
あげる
同行ボランティア…スタッフも非番の時に一緒にボラ参加
・人材育成、交流業務 「名古屋に行かなくても聴ける」をコンセプト
車座集会 年5回以上、NPO精通者を招く
スキルアップ講座 年5回以上(10年は7回)、技術向上の講座
○センターのサービスの充実
・情報誌を自治会長、公民館長に送付
・「利用者さんの声」ポストを設置し要望を聴く。スタッフが代って書いて投函することも。
→クレームを書いて投函するくらいなら二度と来ない、という心理に配慮。
・寄贈による品物(スタッフが無償でもらってきたり)で貸し出し物品を増やす(前述の品々)。
・市役所担当課との円滑なコミュニケーション(市民協働部市民協働課)
・サービス向上へ、スタッフがスキルアップ。ボランティアコーディネーター検定を受検。
→昨年、3級に5人全員合格。今年、2級を1人が取得。
○その他
・地元企業が率先してボランティアに取り組む風土がある。
例:刈谷トヨタでは社内にボランティアセンターを設置、デンソー、アイシンも続く。
企業は寄付で貢献するだけでなく、社員も汗を流して参加する、という環境にある。
ネット上のボランティア情報サイトも当初は企業の手によってできた。
・かりや市民ボランティア活動情報サイト
登録会員のサイト。会員各自のHPでもあり、それぞれがイベントのPRなどできる。
またそれへの参加申し込みもサイト内でできる(会員同士)。
「受け付けました」と相互にケータイメールに知らせることもできる。
3.感想
訪問した当日も、談話室のスペースはイスなど撤去されて広いフロアになっていて、これからまさに前述の「スキルアップ講座」が開かれようという日でした。
偶然にもこの日の講師は少林寺拳法の方。多度津町ももちろんよくご存知で、話に花が咲きました。
こうして、あらゆる知恵と人脈を駆使してさまざまな講師を招き、関心のある方に参加いただく。そこから地道に、ボランティア人口を増やしていこうという、ほんとうに頭の下がる取組みを、センターのスタッフは実践しておられました。ちなみにこの拳法のインストラクターさんもある企業のボランティアの一員。
建物の中は、まず中央にど〜んとクリスマスツリーがあり、「お貸しします」の札。前述のとおり、誰もが敷居の低いムードの中で寄りやすいよう、工夫をされています。その心遣いは、ご意見ボックスに投稿するくらいならもう二度と来ない、という訪問者の心理までよく把握しておられ、スタッフが代って投稿するという配慮にしみじみと表れています。私も議員として、ときには「市役所○○課に行けばいいですよ」で終わりそうな相談ごとでも、「一緒に行ってあげましょう」と行動することがあります。こまやかな配慮、そして笑顔や声かけが、この活動を支えているのだと感じました。
一方、市役所側の窓口は市民協働部市民協働課。市は市の業務としてこのセンターやスタッフと接しているわけですが、市役所職員もとても熱心、コミュニケーションもスムーズだとのこと。ここがまたもう一つのポイントだろうと思います。市役所が冷めていたり、「あなたがやるなら市役所も動く」などという体勢では、この活動は長続きしないでしょう。下請け感がないからこそ、ボランティアスタッフは活動できるのだと思います。
ご準備いただいたレジメの最後にまとめとして、このセンターの特徴が箇条書きしてありました。これ自体、もう感動ものですが。
@設置の狙いをしっかり持っている。A良い道具(情報サイト)を持っている。Bスタッフのスキルアップに挑戦している。C活動の場所でなく、相談、会議の場、人材育成の場。D印刷、談話室が無料。E行政も情熱的。F行政と団体の協働に力を入れている。以上。
私の問題意識から読み解くところ、EとFで市役所がアクションを起こせば、丸亀市にだって市民活動の波は盛り上がる、いや、そうしなければならない、そのことを視察先で、ほとんどしんみりするほどに、感じ入ってしまうのです。
「情報を持ち寄ってくれる、皆さんはコウノトリ」
「私たちは接着剤」「ボランティアを増やす導き手」…こうした言葉が、脳裏を離れません。
後日、スタッフの方からメールもいただき、さらに郵送で最新号の「ぼらっち」ほか情報紙やチラシを届けていただきました。その封筒に印刷されたキャッチフレーズにあらためて感慨を深めました。
「ボランティアのコンビニ」。まさに、立ち寄ればここに何でも揃っているという気概。
「109BOX」。ジュークボックスとは、開館時間が10時から夜9時までであることにひっかけた愛称。
あらゆる世代の老若男女が、気軽に立ち寄れる、そして日常は嬉々として活動にいそしみ、いざという場面では「救出者がいちばん多いまち」を目指していく。ここにこそ、地域分権の時代の「あたりまえの」住民のスタイルがあると思いました。次世代の「あたりまえ」に、市役所が気づくかどうか。そこが自治体間競争の分かれ目。丸亀市にだって、ここで応接してくださったスタッフの方のように、情熱を注いでくださる方はきっといるはずと思いました。人材発掘、そして市民のステージをセットすることこそ、まず一番の、市役所のミッションであるはずと、今回もまたその気持ちを強くしました。
ここにお邪魔したのは11月末でしたがこれを書いているのは翌年の3月も終わり近くです。今月11日、東北では未曾有の地震と津波災害、加えて原発事故があり、日本中、世界中がその影響を受けるとともに、復興へ、誰しもが注目しています。
3月議会の前、市民活動に関する質問を準備する段でひとつ、いじわるな川柳を質問の中に入れようかと考え浮かんだことがありました。「市役所が ひとりぼっちで まちづくり」というのです。
入れなくてよかったかも知れません。私の質問登壇の6日後に、この災害が発生しました。冗談を言っている場合ではなくなったのです。
これらを思うにつけ、絶望の渕でこらえる被災者の皆さんたちに私たちが何をできるかと考えて、救援の手はもちろんのことながら、私たちは私たちのまちで、粛々と、ボランティアのネットワークを作ってゆこう、と、そのように学んでいくことがまた、大切なのではないかと、強く感じている次第です。
大変お忙しい中を私のために時間を割いてくださったセンターの皆様に、御礼の意味でも丸亀市で、ご教示の内容を一つずつ、実現させてまいりたい。