○放課後児童クラブ・「赤ちゃんの駅」事業             埼玉県春日部市

 

1.視察の意図

少子化が大きな課題とされている今、国の施策としての児童手当・子ども手当てといった方策とは別に、地方自治体が独自に取り組むさまざまな工夫が、全国にあります。

インターネット等で調べた埼玉県春日部市の取り組みは先進的でありましたので、東京にセミナーで参加する機会に、同市まで視察に足を伸ばした次第です。

 

2.放課後児童クラブの概要

準備いただいた資料に従い、説明をしていただきましたので、順次ポイントを記します。

24小学校区に22箇所30クラブ。(2校は農村部の小規模校で、要望少ない)

・保育時間は、学校のある日は放課後から6時半まで。学校が休みの日は午前8時から

 6時半まで

・休室日は日曜、祝祭日、年末年始。お盆も開いている。

・保育料は一人月額8000円。プラスおやつ代1500円。

 この金額はH10から上げていない。県下では5000円〜13000円の幅。民間の場合は

 18500円というケースもある。

・新1年生も4月1日から利用できる。

・低額所得者減免あり、傷害保険あり。

H10、公設公営、市社会福祉協議会を指定管理者としてスタート。対象は1〜3年を原

 則としながら、小学6年生までを受け入れ可能とした。今も高学年児童が増加傾向に

 ある。定員オーバーになると、高学年から退室してもらう。

・定員の1割増まで受入れを認め、今は待機なし。

・余裕教室やプレハブ建物で運営。

・県に運営基準あり、H19、一人当たり1.65u。これにより、1教室を2教室に。これ

 も今年度に完了予定。

・課題として、大規模クラブの解消、保育面積の確保が困難、待機児童発生への心配が

 ある。

・午後7時まで開いてほしいとの要望がある。(東京都は7時)

・公設を基本としながら待機児童発生を防ぐため民間へもH22から補助金を出して対応

 することとした。保育所の空き教室、民間アパート活用のNPO法人を活用。

・埼玉県、市社協も力を入れて取り組んでいる。研修を行い、市公営施設と同水準を確

 保しながら運営している。

・障がい児研修も年1回実施。今後は障がい児対応、障がい児ではないがボーダーにい

 る児童を受け入れることに課題。

・特記事項として、運営は教育委員会がやっているのではない。福祉健康部保育課が担

 当。教育委員会側からは「空き教室がない」と言ってくる。そういう場合はトップダ

 ウンが功を奏する。

・高学年を受け入れることのメリットは、高学年の子が低学年の子の面倒を見てくれる

 こと。反対にデメリットは、乱暴な子への対応。

 

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3.「赤ちゃんの駅」事業の概要

春日部市は「クレヨンしんちゃん」の漫画家、臼井儀人さんの出身地。それをフルに活用して、市内に設置された「赤ちゃんの駅」にはしんちゃんファミリーをあしらった楽しいポスターが。


 

市役所庁舎も率先して「駅」に名乗り。ここは市役所の一角です。

授乳室を完備させ、いつも授乳ができるよう、ポットにお湯が沸いています。

 

 以下、説明いただいた順に記述します。

・外出中に授乳やオムツ替えなどで立ち寄れる施設を「赤ちゃんの駅」として指定。公

 表し、利用してもらいつつ、社会全体で子育て家庭を支える意識を高める。併せて、

 市のイメージアップを期待する。

H20、市内110ヶ所を調査。「開放受け入れ可能」と回答のあった46施設からスター

 ト。現在は52施設。市庁舎、公民館、児童館など公共施設31、民間保育園、ショッ

 ピングモールなど民間施設2110箇所は身障施設兼用。空いている部屋で対応して

 もらっている。

 ・県下で4番目に取り組んだ。現在県下で14市が取り組む。

・内容は、@授乳の場の提供 Aオムツ替えの場の提供 のいずれかが整備され、市が

 定めるガイドラインに沿った運用をしてもらう。ガイドラインの内容は、スペースが

 仕切られていて外部の目を気にしないで授乳できる、衛生面に配慮する、など。

・周知は広報紙、HP、子育て支援マップ(後述)、子育て支援メールなどで行う。

21年度利用実績。オムツ6800件、授乳1400件。使用済みオムツを置いて帰るので、

 民間ショッピングモールなどではこれが有料事業ごみになり、負担に。

・今後、民間協力施設をいかに増やしていくかが課題。

 

4.感想

資料としていただいた5月号の「広報かすかべ」。その特集記事は「日本一幸せに子育てできるまちを目指して」という見出しです。これは市長の公約とのこと。

「赤ちゃんの駅」の表示ポスターにも登場した「クレヨンしんちゃん」も登場。見出しには、

「次世代の社会を担うすべての子どもが健やかに生まれ、かつ育成される環境の整備を図るため、児童福祉、母子保健、学校教育、生活安全の各分野の事業を総合的に推進するため」に、「次世代育成支援行動計画 後記計画」を策定した、と。

ちなみに担当セクションの名は「こども家庭課」。ここを軸に、なかなか市長部局と教育委員会その他庁内各セクションが連携しにくい行政の構造の中、思い切った取り組みが行われているという印象です。

計画の骨子が紹介されており、重点施策1には、

〇児童館の整備

〇地域子育て支援協議会の充実

〇地域子育て支援拠点の整備

とあり、同2には、

〇放課後児童クラブの整備

が出てきます。広報を1ページめくると、市が埼玉県が認定する「地域子育て応援タウン」に認定されました、との記事もありました。

これにより、13中学校区に子育て拠点、子育て支援協議会を設立、相談窓口を設置など、一段と体制強化が図られるとのことです。

また広報紙のバックナンバーも拝見しました。

9年12月号には「かすかびあんJr.未来会議」という記事があり、これは子どもたちによるシンポジウム。9年10月号には「ベビーエンゼルのつどい」の記事。また「行動計画」に関し、その取り組み状況を発表するのに紙面が大きく割かれています。後期計画策定への呼びかけも。こうして見ると、キャッチフレーズだけに終らない、子育てに本腰を入れた春日部市の横顔が見えていると思います。

これも資料としていただいた「かすかべ みんなの 子育て応援マップ」。

オールカラーの手に取りやすいサイズ。インデックスがあり、保育所・幼稚園について、

放課後児童クラブ・一時預かりサービスについて、児童館・子育て支援センター・子育てサロンについて、の見出しを対応した見開きページがめくれるというしくみ。さらに展開すると全面市内地図が出てきて、大きな子育て支援マップになっています。市役所の機構でなく子どもに起点を置いた配慮が伺われます。

学童保育は教育委員会ではなく市長部局が所轄していること、また社会福祉協議会を指定管理者として運営していることがポイントです。「学校敷地を使うのだから教育委員会所轄がスムーズ」との考えには、私は賛成できません。そもそも「教育」ではないからであり、市の運営する事業に市立小学校を使うのであり、県職員たる先生方の指揮監督と「ねじれ」が生じるだろうからです。

「赤ちゃんの駅」については、香川県が本格的に取り組む方向が示されました。とはいえ、最前線である市役所も県と連携して、その具体的で強力な推進へ、一翼を担わなければならないと思います。

 行政が金銭面で子育て援助をするということにとどまらず、このようにこまかく生活上のバックアップをすることに注目が集まるようになりました。行政が予算措置をしていればいいのでなく、大変にわずらわしい面もあるでしょうが民間や市民の方々に呼びかけ、連携していくのは、行政の主要なこれからの事務事業です。冒頭に述べたとおり、市長の「肝いり」で、まちづくりや市のイメージアップ、シティセールスの一環という多面的な考察から、施策が考案、実施されなければならないと、あらためて感じました。

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