〇キートス「荷物のいらない保育園」
1.視察の概要
令和4年10月7日
千葉市内で13園を運営する㈱ハイフライヤーズ保育運営本部を訪問
同本部長 創立者 日向美奈子氏、同総括主任 濱野順帆氏ほか
2.視察の詳細と感想
13園の中の1園を訪問。園内を回って説明を聞き、その後車で移動。運営本部で詳細をお聞きした。
〇創立者自身の体験が原点。子育てしながら、保育所に通わせるために子どもの世話を後回しにして明日の登園の準備をしなければならないことに課題を感じた。同様に園でも、持ち物チェックほかさまざまな作業に手を取られ、子どもに向き合う時間が制限される。
〇そこで夫婦で相談し、「荷物のいらない保育園」設立を決意。「どこよりも親子が長く手をつないでいられる保育園に」がモットー。キートスチャンネルの動画を視聴。感動的。その実現のために必要なのがサブスク。当初行政から「ぜいたくだ」と認められなかったが、今では国の方針でも「利用者間で差が生まれないのなら可」とされた。
〇サブスク導入で、保育料を追加徴収するのでは意味がない。保護者の負担増を求めず実現。13園が比較的近くにあることで配送にスケールメリットが生かせる。また園内服については、クールビズで昨今、クリーニング業界は厳しい経営を迫られている。そこでクリーニング業者と提携して実現。
〇毎日の荷物はオムツ、お尻拭き、食事用エプロン、タオル、歯ブラシなど。これらと布団をサブスクに。歯ブラシは使い捨て。環境に配慮し、今年度からプラスティック製をやめ、竹製に切り替えた。
〇アンケートの結果、「子どもと向き合う時間が増えた」が95%。保護者の声。「そこまでやれるのか驚いています」「知り合いのママに会うとびっくりされます」「気持ちに余裕ができました」「布団がないので歩いて登園できる」「夫とタスクを押し付け合うこともなくなりました」「洗濯物も減り、子に関わる時間がとても増えた」「混んでいるバスに乗るのが楽になった。立っていられるし、乗り降りが楽」。
〇園職員へのアンケートでも、87%が子どもと向き合う時間が増えたと回答。
職員の声。「荷物チェックで子どもから呼ばれても「待っててね」とすぐに対応できなかったが今は余裕ができた」「今日はママが抱っこしてくれたと喜んでいる。荷物がないことは子にとってもうれしいこと」「自分の子は荷物のいる園に通うのでここがうらやましい」「子どもとお話、遊ぶことが増えた」「階段で親子が手をつなげるようになって安心」「一時預かりの子の親はここが「手ぶら」と知って驚いている」。
〇保護者の負担なしでこのシステムを維持できる要因として、職員の採用コストをかけないことが大きい。TikTokで常に園のようすを発信し、ライブで質問に答えたりする。全国から応募があり、来春もほとんどが県外から。職員アパートの家賃も負担ゼロにしているので実質の給与水準は高い。以前は全国にリクルートを展開していたので約3千万円かかっていたがゼロに。これでサブスクを維持できている。TikTokで実際に出演している職員とも面談。動画も視聴。
園の方針に共感し、TikTokを見た中学生からも将来はここで働きたいとのメッセージが届いた。
園内服は種類に分けてストックされている
年長さんになると好みも出てくる。豊富な種類とサイズを準備
エプロン、歯ブラシは使い捨て
洗濯物は色分けした袋に投げ入れてクリーニングに出す。
毎日朝夕、持ち物チェックをする表
私も子育て時代からはるかに時間が経ちました。そう言うと昔は子育てに時間を割いていたかのようですが、申し訳ない、育児は妻任せでした。今なら通用しません。そういうわけで子どもが一日にどれくらいオムツを替えるのかの知識もない。お恥ずかしい視察訪問でした。
民間の強みやフレックスさを生かしている面、経営者の優れたセンスも要因ではありますが、子育ての環境がより改善されることに文句を言う人はいません。親がラク、ということでなく子育ての「質」の向上が図れるとなれば時代の要請と言えるのではないでしょうか。「子の健康チェックのためオムツは持ち帰り」との岩盤のような「常識」も「自園処理」へ方向転換。この勢いで、ぜひサブスクのメリットを保育の環境に実現していきたい。研究を深めます。