○「令和時代における自治体・議会の役割を考える」セミナー
1.
概要
日時 2019年10月11日 10〜13時、14〜17時
会場 東京都内のセミナー会場
講師 慶応大学法学部教授 小林良彰氏
2.
受講意図
さまざまなメディアによく登場される氏。特に選挙分析で著名であり、夏の参院選選挙の分析も今回のセミナー中で語られます。巨視的に、国の動き全体を眺めて、これからの自治体と地方議会の針路を考えたいと思いました。
3.
概要(午前)
(1) 自治体を取り巻く経済環境
○地方自治体の重要性。地方財政白書H30年度版で、中央政府の最終支出は22兆円、地方政府は58兆5千億円。執行しているのは圧倒的に地方だ。
○公務員の数では、自衛隊を含む国家公務員が58.3万人、地方公務員は274.4万人。こちらも圧倒的だが、一方で、人口370万人の横浜市と178人の青ヶ島村とを、同じ1つの地方政府で回すのは難しい。
○日本の冷蔵庫はインドで売れない。なぜなら日本の冷蔵庫には「鍵」がないから。インドではメイドが「つまみ食い」をするから冷蔵庫に鍵が必要。韓国製が売れる。インドネシアではオートバイの8割が日本製。手ごろに買える値段だから。このように日本が世界のどこで「売る」のか、手詰まりな状況。人口増の国と連携しないと生き残れない。それはインド、インドネシア、マレーシアで、ここで売れるものを日本は作らないと勝負できない。
○日本は良いものを作る。サムスンは「売れるもの」を作る。ハイエンド、ミディアムエンド、ローエンドを作り分けず、日本は社長が理系であることもあって「良いもの」を追究するが、壊れないものよりも、壊れても買い替えるから手ごろな値段のものを買うことを、日本のメーカーは読み落としている。
○1人の子どもを育てるのに、地方で4000万円必要。地方がこれだけのお金をかけて子を育て、やがて東京に行き、納税する。東京から還流はなく、地方に戻るのは3割程度。また歳を取ったら地方に戻り、ここからまた地方の財政の負担になる。東京は“丸儲け”だ。地方は出国税や入国税を取ったらどうだろうかと思う。
○GDP比較で、アメリカ15兆7千億ドルに対してEU16兆1千億ドル、アセアン3兆1千億ドル。ただしイギリスがEUから抜けるとアメリカと逆転。経済力が落ちると世界から無視される、との危機感がアメリカ、トランプにある。
○人口比較で、アメリカ3億2千万人に対してEU5億人、そしてアセアン6億人。アセアン諸国をいかにターゲットにするかが課題。
○安倍政権の運営は、憲法、社会保障など社会争点を後に、景気、雇用など生活争点を先行させている。社会争点は対立争点であり、国民の関心なく、生活争点は合意争点であり、国民の関心が高い。官僚をいて与党が有利にことを運ぶ。
○アベノミクス「新・三本の矢」は、目標はあるが達成への政策はあるのか?
@GDP600兆円へ、法人実効税率20%台に引き下げ?→そう簡単ではない。
A出生率1.8%へ、50万人分の保育施設整備?→答えがない。
B介護離職セロへ、50万人分の介護施設整備?→誰が作るのか。
○東大入学で日比谷「開成高校」。都立高をグループ化し、平等にしようとしたが失敗。これまでの「滑り止め」が第一志望になった。
○国の一般会計歳出を1990年度と2018年度で比較すると、交付税、その他は変化なく、社会保障費が3倍増、国債費が1.5倍増になっていることがわかる。つまりサービスは増えず、借金が増えている。
○人口ピラミッドを見れば、あと2年で団塊世代が75歳、後期高齢へ。今の制度だと医療負担が3割から1割へ。その分公的負担が増え、皆、病院に行き始める。
○私の母が90歳で手術をした。55万円かかったが、つまり450万円を国が負担しているということだ。
○生産年齢人口が減るということは、消費が落ち込むことを意味する。高齢者はモノを買わない。
○財政赤字の現状は、まず国債780兆円、借入金63兆円、政府短期証券199兆円、財政投融資101兆円、地方の債務が191兆円。合計1144兆円。1997年は433兆円だった。またこれ以外に公務員退職金債務800兆円、年金債務500兆円がある。
○日本の「ウリ」は新幹線と原発だった。しかし中国に「パク」られ、インドネシアとマレーシアで市場を失った。中国と仲の悪いインドに期待が持てるか、と期待。
○2008年、リーマンショックでどの国も公共事業、財政出動を行ったが、それが収まるとどの国も手じまいしたのに、日本だけはやり続けている。
○日本国債の格付けは、AAA最優秀のドイツ、スイス、シンガポール、AA+のアメリカ、フィンランド、香港、AAのイギリス、フランス、ベルギー、韓国、AA-のチェコ、エストニアにも遅れ、A+の評価。中国、アイルランドと同格。国債を発行しすぎ。
○世界経済の現状。韓国はクレジット決済、中国はスマホ決済。露天商までペイペイだ。ホームレスに恵むお金もスマホで。全部、国が分かっている。すると反政府の動きをすると警察が来るが、中国人にとってみると不自由でも安全が良い、となり、反乱は起きない。
○世界経済はアメリカの「一人勝ち」。人口を維持しているのはアメリカとロシア。エネルギーではシェールガスでエネルギー輸出国になり、ノースダコダ、モンタナなど過疎地で採れて、そこがよくなる。人工知能でも米中が覇権を争う。
○欧州は高い失業率と少子高齢化に伸び悩む。
○中国は過剰投資。製造業、特に製鉄で投資をし過ぎ、3分の1が稼働せず。不動産は売れず、ゴーストタウンに。かつての「一人っ子政策」を止めたものの、人口は戻らない。13億人中金持ちは1億人で、インフラでは北京〜上海のグリーン車が8000円と格安だが、誰も乗らない。ものすごい国家管理を敷き、IPアドレスも国家が管理、Gメール使えない。メール内容は国が把握している。
○以上のことから、これからのパートナーはアセアンだ。陸のアジア、シンガポール、マレーシア、タイは中国寄り。癌になっても薬がない。羽田空港のマツモトキヨシではこの国の人々がロキソニンを「爆買い」して、母国で売る。地方の高齢者に福祉制度なし。そこでかつてキリスト教が助け合い組織を作った。ローマカソリックが手を伸ばす。
○海のアジア、フィリピン、ベトナム、インドネシアは日本寄り?
○中国の統治組織は、国→省→市→県。中国に二つの誤解がある。@中国13億中、共産党員は8000万人だ。A国籍が二つある。父によって決まり、都市の父の子は都市戸籍に、農村の父の子は農村戸籍に入る。農村の子は出稼ぎ。学校には入れない。年金は県単位。中国では土地は買えない。マンションは投機の対象だが、下降気味。
○これらのことから、上記「海のアジア」の国々で売れるモノを作って日本は生き残るべきだ。「良いもの」を作っていてはダメなのだ。
○世界の中の日本経済。トランプは法人税を35%から15%に下げ、外国から「帰ってこい」と呼びかけている。サウジアラビアは国民の3分の1が公務員だ。油のほかに売るものがない。ベトナムはストライキの国。各国は市場を中国からベトナムへ、ミャンマーへ移す。ここは独裁国家で組合がない。企業には都合がいい。ヨーロッパの経済はひどい。イギリスはさらにひどい。イギリスを見限り、脱出する人も。日本はヨーロッパでもモノを売ることができない。
○リーマンショック以降の日本の政治経済。民主党政権の時代、経済に不案内で、打つべき手を打たなかった。老後の不安のために消費が低迷。輸出が日本経済をけん引してきた。売る相手を変えながら、欧米からアジアへ、中国からベトナムやインドへと。マネーが大幅に増加してもGDPは増えず。企業が内部留保をして投資に回さない。これでは困る。今ではバブル期を上回る有効求人倍率になっている。地元で人材確保することが課題だ。
○当てになるのは息子でなく娘だ。娘を地元に留めておけば、公的支出も減る。
○理工系の若者を呼び戻すのに成功した福井県。これを17県が真似をした。福井県には公務員系の大学がない。なぜ福井に戻らないのかとアンケートを取ると、男子は「大会社がない」、女子は「都会じゃない」と答える。福井に留めるために行政学部が必要だ。
(2) 配分:政治で何を決めるべきなのか?
○人手不足でも賃金が上がらない。高齢者が働くから賃金が上がらない。
○アメリカの赤字の原因はアメリカの品が悪いから売れないのだ。自身のアメリカ暮らしを語りつつ、トヨタターセルとフォードの品質比較。フォードを使ってみて、「雨漏り」「極寒の中、窓ガラスが突然、落ちる」「バックミラーが走行中に落ちた」などの経験談。日本製の優秀さ。日本の小さなクルマに乗って大学に出勤。学生たちは大きなクルマを並べている。馬鹿にされるが、こちらが優秀。
○日本は、子どもに対して手当てをしなかった。フランスはV字回復を果たした。日本では高齢者の高齢化が続く。75歳以上が65歳以上より増えれば、介護施設、後期高齢者への手当で莫大な負担へ。借金に全面依存の日本の社会保障。550兆円足りない。増税か、年金を下げるしか方法はない。年金支給開始を67歳にする案。日本の平均寿命は80.1歳で世界一なのに、年金受給開始65歳は世界で一番早い。しかも受給期間が長い。
○時給に換算すると、正規社員は4000円、派遣社員は2000円、バイトは1000円だ。
○政治家のやることは「配分」である。
○「配分」についての考え方。
・リバタリアン(自由主義)自分の稼ぎは自分のもの、と考える。アメリカには交付税も文科省もない(例外的にアラスカとハワイのみ交付税がある)。教育はすべて自力で。風邪で通院も30万円。デトロイトは零下30度、1学級80人のクラス。プリンストンは1学級15人、寮費500万円を支払える大金持ち。それでもかまわないのがアメリカの社会だ。
・コミュニタリアン(共同体主義)人の痛みは自分の痛み、と考える。ただし全体主義とは異なり、個人の自由や権利が共同体の犠牲になってもいいとは考えていない。
○大学の国内・国外比較。日本では大学で研究を「好きな人がやるもの」とされ、残業も時間18円、との計算もある。
(3) 自治体への再配分
ここで午前の部は時間切れ。膨大な資料が添付されている。
4.
概要(午後)
(1) 令和元年参議院議員選挙の分析
ここでは党派別の分析も行われていますがレポート上は省略します。
○若い人ほど自民。公明党は30代が落ち込むのが課題。立憲民主党の支持層は学生運動の世代。中高校生時代に民主党政権だった人たちは自民支持に。民主政権時、2つの問題があった。@外交、特にアメリカ、アジアに対して。A財政、ドル80円を放置していた。また官僚の使い方が違っていた。政治主導の名の下で、大臣、副大臣、政務官の3人では会議にならなかった。そこで後ろに事務方が控えるようになった。その点、安倍首相は「協力する者を競争させる」。官邸主導だ。
○世代別の憲法改正への投票行動。若い人ほど、改憲に抵抗がない。
○参院選で重視された政策は、景気、年金医療、財政、外交、教育、消費税、の順。憲法改正には関心がほぼない。
○公明党の支持者歩留まり率が下がりつつある。それは「れいわ」に流れている。特に30代の生活が苦しい世代で、「れいわ」に流れている。公明党に投票した人の中にも「生活は不安」という割合が多い。
○自民が勝ったのは外交の安定。「安倍一人舞台」。日本人の韓国に対する好き嫌いでは80%が「嫌い」。韓国への強い態度が、安倍政権を支えている。
○いまの若者に「革新」は通じない。今のままか改革か、で判断する。日本維新の会は、自分では「革新」と言っているが若者には「保守」に見える。イデオロギーが転換したためだ。
○自民はなぜこんなに支持が保つのか。それは野党の言うべきことを先取りしてきたからだ。自公は違うほうがいい。野党が言うべきことを与党内の公明党が言っているから、与党の支持が保たれている。
(2) 政治・行政の役割
○政治におけるテーマ。@決定:多様な民意からどうやって社会的決定を導き出すのが正しいのか? A配分:どのような基準で個々の個人・地域・国へどの程度、配分するのが正しいのか? どこに引っ越しても同レベルの教育やサービスを受けられるようにすること。
○個人の選好は、自由。けれども社会の決定は、一つ。一人で決める=独裁制、数人で決める=寡頭制、多数で決める=多数決制、2/3で決める=2/3決制、全員で決める=全員一致制。
○以下、政治の学問的考究。プラトン『国家』。哲人王の支配。「哲学者が王となるか、王が哲学するのでなければ、国や人類にとって不幸となる」。
○最優秀者支配の国=ポリス、軍人支配の国、富者支配の国=金権政治、民衆支配の国=民主制、自由と平等が行動原理で各自の自由行動による無統制な社会、最悪者支配の国=下等な人間による独裁。
○アリストテレス『政治学』。人間の目的=幸福。「人間は自然においてポリス的な動物である」。
○マキャベリ『君主論』。政治学を神学や倫理学と切り離して独立。性悪説を前提として考えられる政治形態は君主制と共和制。「政治において美徳の行使は役に立たない。目的達成のためには、道徳的に悪とされる手段も正当化される」。
○ホッブズ『リヴァイアサン』。自然権:各人が生命を維持するために欲するままに自己の力を用いる自由。
○ロック『統治論』。「自然権の享受を確実にするため、各人が契約で共同社会を作る。共同社会が統治機関を設立して権力を信託する」。
○ルソー『社会契約論』。自然状態で各人が持っていた善性や自由が社会では失われ、不平等と悪徳がはびこる。そこで新しい契約が必要。「各人は一般意志(公共の利益を目指し、誤りを犯さない)に服従する義務がある」。「各人は道徳的人格を持つ市民となり、法に従うことで自由になる」。
○ベンサム『道徳、立法の諸原理序説』。功利性の原理:全ての行動の善悪は、その結果が利害関係者の幸福を増大させるか否かで判断されるべき(功利主義)。政治の目的は「最大多数の最大幸福」。
○ミル『自由論』。快楽主義的人間観を修正。功利性の原理は継承しつつ、快楽の間に質的差異を認める。
○ここからは「決定方式」について。多数決原理の問題点。定数の不均衡において、本当に多数決なのかが問題となる。日米における定数不均衡の事例を検証。「有権者」の比較でなく「人口」で比較すべき、との説。イギリスは有権者登録の数で比較する。基準財政需要額で決めるべき、との説も。正しい多数決に基づいてこそ。
○多数決の多数決は多数決なのか? 多数決を2回やると、間違いが出る。例として、AかBかを選択させる。小選挙区制で有権者の選好は9対16でBが多数であったのに、小選挙区制で選ばれた議員が再び選好することでAが3、Bが2と逆転する。国民の多数決はBだったのに、代議士として選ばれた人に任せることでAが選ばれてしまった。こういうプロセスがあり得る。
○これを比例代表制で行った場合、同じく有権者の選好はBであるが、比例代表ドント式で選ばれた議員だとそのまま2対3と反映され、国の決定はBとなる。
○法の下の平等。定数不均衡がない(それより良い区割りがない)ことと、不自然な区割り(ゲリマンダー)を作らないことで実現する。区割り見直しが与党主導であることで都合の良い区割りにすることがある。
○「勝者がすべてを持っていく」。それがアメリカだ。アメリカでは金メダルしか喜ばれない。
○選挙制度を考える。サイズ、議席決定方法、投票方法。
○アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、スウェーデン、ドイツ、イタリアの選挙制度。オーストラリアは義務制。罰金は5000円。
○議会制度の比較。議院内閣制と大統領制。二院制と一院制。公選制と任命制。
○政治における男女共同参画。基本認識と諸外国の現状。強制クォータの韓国。ほかにベルギー、ブラジル、アルゼンチン、フランス、ルワンダの例。ドイツは「自発的クォータ」。日本の状況分析。
○提言。
@新人候補者でも当選できるよう候補者へ公的助成。お金を貸出し、票数が一定に達しなかったときは返金してもらう。インドでは電話代やFAX代を国が負担。誰もが立候補できる。
A国会法74〜76条を改正し、通告なしで質問を可能に。
B選挙告示期間の延長。参院選17日、衆院選12日、知事17日、政令市長14日は世界でも極めて短い。氏名の連呼で終わってしまう。
C女性議員比率を高めるための方策。議会招集権を議長に付与、閉会中の委員会活動制約撤廃、議会内部機関の設置自由化、附属機関の設置を認める、議会費の予算執行権を付与、議長の議会棟の管理権を付与、決算不認定の場合の首長の対応措置を義務付け。これら地方自治法改正案はGHQが手を入れなかったもので、戦前を引っ張っているものだ。
(3) 民主主義における有権者の支持
○権力に関する政治理論の二大潮流、「パワーエリート論」と「ポリアーキー論」。
以降、詳細な政治理論が展開される。資料参照。
○大統領+首相=総統。ナチズムを分析。民主主義的に独裁者になった。1929年の世界恐慌、景気悪化で与党の外交が弱腰。ナチス党大躍進に企業が驚く。共産党だけではダメ、となり、ナチスに献金が始まった。1932年ナチス第1党、翌年ヒットラー首相誕生。共産議員への弾圧。1934年ヒンデンブルク大統領死去で大統領と首相の職務を合体。総統に。国民投票で90%の承認。国民は情緒的。
○この後も学問的なデモクラシー論が続く。資料参照。
5.
感想
後半の政治理論、統治理論、また民主主義論などは高度に学問的で、私の資料へのメモ書入れもなく、傾聴した、というにとどまってしまいました。
午前のセミナーの残り時間もわずかになった時に、講師は「あれっ、もう1時ですか」と慌てたご様子。私も、レジメの残りの分量を考えて心配していたところでした。午後に、午前の「積み残し」を少々、語っておられました。
台風接近などの影響で参加予定者が急きょ激減。会場を小さな部屋に縮小し、さらに午後はますます参加者が減り、最後には先生と記念撮影をするという変則的な様子になりましたが、それには関係なく、まことに熱心でエネルギッシュ、淀むことない講師のお話が続きました。
レポートを書きながら、印象深かったところを振り返ります。
○1人の子どもを育てるのに、地方で4000万円必要。地方がこれだけのお金をかけて子を育て、やがて東京に行き、納税する。東京から還流はなく、地方に戻るのは3割程度。また歳を取ったら地方に戻り、ここからまた地方の財政の負担になる。東京は“丸儲け”だ。地方は出国税や入国税を取ったらどうだろうかと思う。
東京から帰り、次に臨んだ催しの挨拶の場で、この話題を使わせていただきました。地方と東京都の格差。いくら頑張っても地方の努力でどうなるというものではないことに思い至る。政治が間違えば、間違っているという明解な理解もないままに、国民は大迷惑をこうむる。こういうことだと思います。
○あと2年で団塊世代が75歳、後期高齢へ。今の制度だと医療負担が3割から1割へ。その分公的負担が増え、皆、病院に行き始める…私の母が90歳で手術をした。55万円かかったが、つまり450万円を国が負担しているということだ。
深刻な将来への課題と不安が沸き起こります。政治家はその場しのぎ、次の選挙での「票田」ありきの政策に傾く。講師は警鐘を鳴らすが、良き処方箋が示されるわけではありません。
○ものすごい国家管理を敷き、IPアドレスも国家が管理、Gメール使えない。メール内容は国が把握している。
このセミナー参加後、その月末には中国、姉妹都市を訪問する機会を得ました。いま流行の翻訳機も携えて。その操作を覚える時に世界共通のルールの中で中国のみ、「Gメールは使えない」などの特別な事情を体感しました。
○福井に留めるために行政学部が必要だ。
まさに、「国の指示待ち」でない、地方に政治の要諦の分かる人物が必要であることを教わります。
○借金に全面依存の日本の社会保障。増税か、年金を下げるしか方法はない。年金支給開始を67歳にする案。日本の平均寿命は80.1歳で世界一なのに、年金受給開始65歳は世界で一番早い。しかも受給期間が長い。
そこから目を反らす政治家の集団であっては破滅を待つのみ。現在の政治手法の延長に解決策はなく、地道に、若者の政治参加を促すなど、利害を優先しない潔癖の有権者を生んでいくことが、王道なのではと考えました。
○ルソー『社会契約論』。自然状態で各人が持っていた善性や自由が社会では失われ、不平等と悪徳がはびこる。そこで新しい契約が必要。「各人は一般意志(公共の利益を目指し、誤りを犯さない)に服従する義務がある」。「各人は道徳的人格を持つ市民となり、法に従うことで自由になる」。
○ベンサム『道徳、立法の諸原理序説』。功利性の原理:全ての行動の善悪は、その結果が利害関係者の幸福を増大させるか否かで判断されるべき(功利主義)。政治の目的は「最大多数の最大幸福」。
社会科で習った、あれは受験用でしかなかったとは言え、ここでこうした思想家の名をおさらいするとは感慨深いものがあります。誰もが、この世を幸せに送りたい。人間という存在の不可思議さとやっかいさ。人間、また人間社会というものを悲観的に見たり、楽観的に考えたり。さまざまな先哲が頭を悩ましたが、今、この状態なのは、「一筋縄ではいかない」人の世の複雑さを物語っています。永遠におそらく、そうなのでしょう。ここに述べられたさまざまな課題を、その時、その時代の民衆と政治家が、解決へ悪戦苦闘するしかない、それが、いわば結論なのだろうと思います。
その上で、現場の中、生活者の目線で働き、考え、仕組みを動かしていくという、これまたやっかいで困難な使命を与えられているのが、託されているのが地方議員である私たちであると、そう思い至ります。
世界を見る視点を持ちつつ、日常の市民の暮らしの中へ。難しいが、やりがいのある仕事。気分を現場に持ち直して、セミナーでの成果も語り、生かしてまいりたいと思います。