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○ケーブルテレビ自主製作事業            大分県国東市

 

1.    視察意図

 

 丸亀市においても公的財源を投資しているケーブルテレビジョンがあります。

 市が直営形態に近い形で運営しているのが国東市であり、その積極的な取り組みのメリットと課題を学び、本市での参考にしようと視察しました。

 

2.    視察概要

 

H183月に安岐町と合併して現在の国東市になった。安岐町がH17年度、総務省補助事業として着手。合併後も引き継がれた。国東市の一部未整備地域についても今後、農水省の補助事業として継続整備。

○視聴世帯は約12000世帯で全体の約9割。

○サービス内容

①市が自主放送する番組と地上波放送を受信できる「基本サービス」。加入者

7割が加入。市が直営。

②ネットサーヒス③STB多チャンネルサービス④ケーブルプラス電話サービ

ス…これらは大分ケーブルテレコム㈱が実施。

○市の自主放送内容。情報レストラン2系統、アーカイブ、シティトピックス(文字放送)、おしらせ横丁(視聴者投稿掲示板)、データ放送(市の回覧板)

○使用料、月額630円。大分ケーブルテレコム㈱が徴収業務を行う。H22より番組制作も同社が請け負う。同社から常駐社員5名。市の機構では企画課情報推進班に職員4名。官民いっしょに番組づくり。

○自主製作番組は年間127本。「アユ放流」「園芸フェア」「畜産品評会」「夏祭り」「卓球は元気の源」「少年の船」「成人式」「川遊びフェスタ」「日食観察会」「出初式」「書初め大会」「詩吟ざんまい」「復活やぶさめ」「中学校職場体験」など。地域から「コスモスを撮りに来てくれ」など要望もある。

630円は視聴料というより「維持管理料」である。

○チャンネルは国東市自主放送、大分市自主放送、NHK、各民放など。大分はもともと、ケーブルテレビの盛んな地域である。電波事情が悪いという背景もある。

○自主放送チャンネルの番組表。1日に同じ番組を4回放送。飽きられる。イベントを放送しても同じ人が何度も出てくる。1年目だけは見てくれる傾向。

○自主製作番組「小さな山里の大きな挑戦~介護が限界集落を救う」がH22年全国広報コンクール総務大臣賞を受賞。

 

3.    感想

 

ケーブルテレビの事業を市が直営で行う。その背景には、この地域の電波事情の悪さという背景がありました。一般放送を受信するにも困難をきたす地域の事情から、それならばさらに自主製作の番組との相乗りで、市民サービスを充実させるとの意図があったようです。

 使用料の徴収は公共料金ではないので民間テレビ会社に委託。やがて「その道のプロ」であるテレビ会社に製作も委託することになり、現在に至っているとのことです。その結果、市の行政組織にもケーブルテレビ担当が置かれ、ここの職員とテレビ会社の社員とがコラボして番組制作に当たっているというところがユニークでした。

 ただちに丸亀市で参考になるものではありませんでしたが、「マンネリに陥らず、なんとか市民に見ていただこう」との情熱が市職員にも脈打ち、市内で活躍する市民の姿やイベントなどを積極的に取材している姿は立派です。年間127本の自主製作番組。この取り組み自体が、市民と行政を強く結びつける機能を果たしているのではないでしょうか。視聴世帯は市全体の9割。これは前述の電波事情が背景になければ実現が難しい数値です。でもそれを逆手に取った戦術はすばらしいと思います。

 丸亀市でもケーブルテレビ加入率の「頭打ち」が悩ましいところです。しかし議会の中継をはじめ、今ではなくてはならない存在です。多度津町、まんのう町の住民から「質問しよったね」と声がかかります。これからの運営で、近隣市町との連携も大きな課題であり、行政を飛び越えて、ケーブルテレビ会社がそれを先行してくれていることも、これから大きな広域施策の好素材と見ていくべきではないでしょうか。

 これを参考に、ケーブルテレビに可能なことを自由で柔らかな発想で、考えてまいりたい。


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