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〇副市長2人制など市の組織について          釧路市

 

  令和6年5月14日 午前9時30分〜11

 

1.視察意図

 

 時代の転換期。

 世の中で、それを最も自覚しづらい、また対応が後手になる、それが行政というものの抱える宿命、というのが大げさなら、傾向性、ということにならないでしょうか。

 かつて、市役所三役と言えば市長、助役、収入役を指しました。収入役は会計責任者と姿を変え、助役は副市長に。その副市長の責務とは何なのか。これまで議会の一員として理事者の姿を見させていただき、十全にその職責が果たせているのか。申し訳ない言い方になりますが、そこに疑義を感じています。

 丸亀市議会では、市長が特別職の任命に必要な議会の承認手続きの上で、全員協議会の席上、予定されている人物から所信表明を披瀝いただくことにしました。実はこれ自体、「なんでそうなったの?」との素直な疑問に、ここでは答えるもはばかる経緯がありました。よってここには書きません。

 人物的に問題がある、ということならば任命責任、承認責任がまず問われてしかるべきでしょう。ここでは、そういう個別のことではなく、広く特別職たる副市長が、ほんらいどうした使命を果たさなければならないのか、ここにたち帰り、必要ならば複数の副市長、また行政職員以外からの人選もあり得る、こうした問題の所在に端を発して、「2人副市長制」を導入している網走市を視察させていただくことにしました。併せて、同市が採用している「自治体戦略担当部長」という部長職の職責内容についても伺うことにしました。


2.視察の詳細

【2人副市長制】

〇地方自治法により、H18までは助役の人数は原則1人とし、条例で増員可とのしくみになっていた。H18自治法改正で、収入役が廃止、市長のトップマネジメントの補完体制は副市長に一元化となった。そして副市長の定数規定は条例に委ねられた。

〇釧路市では、すでにそれ以前、昭和24年に「助役定数条例」により、定数を2名と定めた。かなり古い時代のことだが、調べたところ、その時々の行政課題に迅速かつ的確に対処するには、2人体制が必要と判断された。しかしその後、市長の判断で1名の時代もあった。

〇現行副市長定数条例に移り、副市長の定数は2名と定め、以降、合併も経たが常に2名体制が続き、今日に至る。

〇現行の2名体制における業務の分担。

 秋里副市長:総合政策部、財政部、市民環境部、福祉部、産業振興部の観光部門以外、消防本部及び消防署、阿寒町・音別町に置く行政センター。会計管理者、教育委員会、選挙管理委員会、農業委員会。

 吉田副市長:総務部、こども保険部、産業振興部の観光部門、水産港湾空港部、住宅都市部、都市整備部、釧路総合病院。上下水道部、監査委員、公平委員会、議会。

 ただし、議会に付議する事項など重要なものは2名で合議する。

 固定的なものでなく、得意を生かし、相談して変更している。

〇1人である場合と比較しての効果や実績。H22年、市政運営に都市経営の視点を取り入れる必要を認め、釧路公立大学との共同研究として「釧路市都市経営戦略会議」を設置。ここで取りまとめられた提言書をもとに、都市経営戦略プランを策定した経緯がある。

〇市長のトップマネジメント強化の必要性。市役所改革プランの実現へ、「市長を補完する組織の強化のためには、副市長への権限委任を速やかに実施すべき」との判断。H18自治法改正で副市長の職務に「長の命を受け政策及び企画をつかさどること」が追加された。これに基づき、市長に代わって副市長が執行する業務を定め、副市長の下で業務を執行する仕組みを構築した。

〇課題@市税、国保料などの収納率向上で各課の取り扱いが一元化されてない。対応として、1人の副市長の専決事項と定め、財務、税務、法務、企画部門が連携し、市長直属のプロジェクトチームを編成。公債権、私債権にわたり未収金対策を講じた。

〇課題A公共施設老朽化で大規模修繕へ多額が必要。対応として、公有資産管理に係る仕組みの構築に関することを1人の副市長の専決事項と定め、一元管理を行う公有資産マネジメント手法によるデータベースを構築、全庁的な体制で取り組むこととした。

〇成果。以上2つの事務を副市長に権限委任したことで、市長の意向を踏まえた迅速な政策判断が可能になった。市長へ政策形成執務の集中を図り、トップマネジメント機能を強化することができた。

【自治体戦略担当部長】

〇令和3年4月、総合政策部に参事として設置。

〇部長職とした理由。シティプロモーションの事業は、ふるさと納税、長期滞在、移住促進、ワーケーション、UIJターンなど、総合政策部や産業振興部をはじめ複数の部で展開しており、これらを総合的に調整し戦略的に推進していく必要がある。また、釧路市の魅力を全国発信することを目指すためにも、部長職とした。

〇実際の部長の業務。地方創生関係で、企業版ふるさと納税、シティプロモーション関係で、ふるさと納税とワーケーションに関すること。その他、「北前船寄港地フォーラム」関係業務を担う。

3.感想

 縦割りの打破。私も「ヨコグシ」という言葉を何度も用い、それを促してきたつもりですが、今なお、その手ごたえを感じません。

 例えば建設中の市民会館。その運営は、文化はもとより教育にも福祉にもまちづくりにも関連します。今春から「重層的支援体制」がスタートしますが、これにしても教育と福祉のきわめて多岐にわたる事務分掌となります。市民福祉向上という大目的達成のために、行政職員の心と目線が市民の方を向いているか、国の方を向いているか、などと意地の悪い指摘を繰り返してきましたが、私にはとうてい、前者であると認めることができません。縦割りをどう打破し、「ヨコグシ」を実現するか。たとえ副市長が1人でも、また戦略担当部長を置かなくても、さらりと実現できることではある。そのようにも思います。またある自治体では「副市長を置かない」条例を定めたところもあると伺いました。人数ではなく、その自覚であり資質であり、またトップのまさにマネジメント力。側近選びはその一丁目一番地でありましょう。通常、私の知る限り、市長が選挙で交代すれば副市長は誰に言われるまでもなく職を辞する。これが理の当然と理解していましたが、前任の副市長は任期満了まで勤め上げられました。現市長がどんな存念であられたのか、そこは私にも不明のままです。

 こういう経緯も含めての、今回の視察でありました。これから、私にできることはありません。復命書にこのことを明記し、記録に残させていただきます。

        

       



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