レポートTOP

○まいばら協働提案事業制度             滋賀県米原市

 

1.視察意図

 

 私の愛読月刊誌「公職研」1月号で、米原市のこの取り組みが紹介されているのを読みました。

 いつもこの月刊誌を読了するのが次の議会への準備の頃。1月号を3月議会間近に読みましたが、寄稿された同志社大学、今川 晃教授の、次の言葉に強く共鳴しました。

 「市の仕事の仕方を変えていけることが、市民が自治体政府を創造することであり、何よりも優れた行政改革だと思う」

 丸亀市においても同趣旨の制度が試みられているものの、なかなか実効あるものとして定着していません。ここに紹介した教授の言葉の高邁なる理想を光源として、どのように丸亀市が取り組めばよいのか、勉強させてもらうことにしました。

 

2.制度創設までの経緯

 

 米原市は丸亀市と同様、平成17年に近隣町と合併。2月と10月の2段階に分けての合併であった。

 その際、市民協働の機運が高まっていた。合併前から「新・米原市のまちづくり基本条例をつくる会」が発足しており、新市の50年、100年先を見据えたまちづくりを、市民が自覚していた。

 「つくる会」の答申を受けて、平成189月に自治基本条例を制定。検討会の構成は顧問の大学教授のほかはすべて公募市民28名。職員ワーキンググループ17名。全体会13回、グループワーク延べ22回の開催を経た。

 条例を完成させたのがゴールではなく、「これから育てていくもの」との意識が高く、推進状況を常にチェックする体制として「推進委員会」を設置。強固な実働体制をしく(条例28条に基づく)

 推進委員会は公募3名を含む12委員で構成、任期2年。年2回開催し、検証結果を市長に意見書として提出する。この意見書の中から、共同提案事業制度が生まれた。

 

3.まいばら協働提案事業制度の詳細

 

○同事業実施要綱に基づき運用。

 

○市民による公益活動の専門性、柔軟性等の特性を生かした事業の提案を公募し、地域課題の効果的かつ効率的な解決方法の探究と市行政への住民参加の促進を図り、市民と市が協働により住みよいまちづくりの実現を目指す、と同要綱に謳われる。

 

○募集→市民からの提案→公開プレゼンによる審査→採用の場合は次年度に予算化→実施→成果報告会 という流れ。

 

○募集は

①市民からの自由提案型

②行政テーマ設定型 の二通りで行う。

②では、これまで市が直轄で実施してきたものにつき、スタイルを変えるとい

うものもある。

 

○所管課は政策調整課市民協働推進室。審査の前段階の事前審査として、室だけでなく、その事業の直接所管となる課も交え、市民と3者で打ち合わせを行う。その結果市民提案に部分修正を行う場合もある。

 

○審査は前出の今川教授を含む学識経験者2名、市民委員4名、自治基本条例推進委員会メンバー2名、職員2名で構成。各旧町から選出される。

 

○審査基準として公共性、具体性、協働性、実現性、発展性の角度。詳細10項目で各5段階評価、150点満点による採点。

 

○採用した場合の事業費は、人件費、謝礼、原材料費、消耗品費、印刷製本費、保険料、通信運搬費、リース料など。市の負担は1事業1年度について100万円を上限。

 

○事業提案は3年継続できる。ただし毎年プレゼンを行い申請する。

 

24年度事業の例

 ・まいばらフリーペーパーによるタウン情報「まいスキッ!」発刊

 ・Myばらプロジェクトによる「Myばらで米原のまちづくり」

 ・米原IT推進部による「伊吹山テレビ文字放送情報のオンライン化」

 ・伊吹の天窓実行委員会による「伊吹の天窓」(里おこしイベント)

 

○行政テーマ型では、毎年4月に各課に募集をかける。このことで役所側にも協働の意識が高まる。テーマの例

 ・認知症徘徊SOSネットワーク事業

 ・買い物弱者支援事業

 ・シンボルキャラクター活用事業

 ・まいばら体操の普及

 ・らくらく生活交通調査企画事業

 など。各提案課から「概要書」を提出してもらう。

 

25年度は11事業提案あり、6事業が採択。

 

3年の継続事業。期間が終わると助成がなくなるから完結しなければならない。その後別形態で発展持続する場合もある。

 

4.感想

 

 ご恵与いただいた「まいスキッ!」の冊子。創刊準備号からすべてをいただきました。題字は地元高校の書道部が担当。発行は年4号。「あまいばら」「やまいばら」「うまいばら」などと毎号、市民の関心をかき立てるようなキャッチフレーズとともに、美しい表紙の写真が光っています。

 編集しているのはこのグループを率いる、それぞれ農業者、デザイン事務所に勤める方など。市の広報とは異なる切り口で米原の魅力を発見、発信していこうというコンセプト。なるほど、これこそ協働というにふさわしい取り組み。しかし持続は簡単ではないでしょう。

 どこまでも市民の継続的なエネルギー、ふるさとを愛し汗を流したいという心がこの事業を支えていて、これからのまちづくりのあり方、行政の施策の方向性として先進性のあるものと思います。

 丸亀市と同じく平成17年に合併。しかしそのとき、米原市では市役所と市民の双方に、「これからのまちづくり」について大きな「気づき」があったのだろうと思います。自治基本条例は、丸亀市でも制定を見ています。議会で審議をした記憶もあります。期限到来による見直しも議論されました。が、この米原市のようには、市民との協働が進んでいないというのが実情です。

 自治基本条例を制定することがゴールなのではない。その認識も、おそらく両市とも同じだったでしょう。でも結果が異なる。その分析をしなくてはなりません。推進具合をきちんとチェックするシステムが米原市には整っていました。そして具体的な意見書が市長に提出されるというしくみ。行政は動かざるを得ない。これでこそ、ルールを作ったことになると思います。

 そしてまた行政のほうも、担当1課があくせくするのではなく、全庁、全部署が「うちの所管ですね」と乗り出してくるしくみ。担当の室は各担当課と市民との橋渡しをスマートに行い、サイクルがきれいに回っているという印象を強く受けました。

 根性論、精神論で「市役所がんばれ」「市民の民度が低い」などと言っている段階を脱し、それではどうするのか、そこでこの米原市の取り組みは大いに参考にさせていただけると感じました。

 また市民からの自由な提案と市からのテーマ提案という「二本立て」であることも、いわゆる「ネタ切れ」「提案なし」に陥らないための大きな工夫点ではないでしょうか。

 これら頂戴した資料を手に取り、市民の皆さんが「市役所職員と話がしやすい」、そう感じて嬉々として、これらの作業に汗を流しておられるのではと想像します。米原市のルールをそのまま真似してもうまくいかないのかも知れませんが、こういうシカケが必要なのだと、納得できる教えをいただいた心地です。

 なおいただいた資料には、地域職員担当制度に関する職員ガイドもありました。わが丸亀市でも新年度から試みようとしているものです。こちらもぜひとも、実りをあげていただきたいと思っている、ちょうどタイムリーなものでした。

今春、新年度スタートと同時に機構改革で誕生する「市民活動推進課」。その成功のためにも、米原市での研修の成果を丸亀市で訴えてまいります。

最後に、自治基本条例とともに定められた、同条例推進のための「職員心得」というものもいただきましたので、項目のみ、紹介させていただきます。

1.まちづくりの主役は市民。どんな仕事も、その先に市民がいることを忘れません。

2.市民とともに力を合わせて築くまち。自分の立場で、今できることから始めます。

3.目の前の変革を恐れず、次代に責任の持てる行動を実践します。

4.違いは豊かさ。互いに認めあうことから始めます。

5.お互いの気づきは情報から、対話を心がけ、まちづくりに活かします。

「仕組み」と「心得」。両輪ががっちりかみ合う丸亀市を目指してまいりたい。


レポートTOP