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〇牧瀬稔セミナー1「人口減少に勝ち抜く戦略」     東京都内

 

 令和5年1031日 午前10時〜午後0時30分 新宿区内

 

.牧瀬稔氏のプロフィール

 

〇法政大学大学院人間社会研究科博士課程修了。博士(人間福祉)

〇横須賀市役所、日本都市センター、地域開発研究所を経て、現在、関東学院大学法学部地域創生学科に勤務。

〇読売広告社、JTBNTTドコモ、ベネッセ等民間企業のアドバイザー。

〇北上市、日光市、ひたちなか市、東大和市、新宿区、加賀市、焼津市、西条市、太子町議会などで政策アドバイザー。

 

.セミナー概要

 

〇まち・ひと・しごと創生法の目的は@人口減少克服A地域活性化、である。

〇人口シミュレーション。(平成261227日創生本部)

201312730万人

2060 8674万人

2110 4286万人

これを、206010194万人、21109026万人に維持していくことが目標。

〇第1期地方創生を総括する。自治体同士の連携が掲げられているが、それは進まず、競争が起きている。

〇地方議会で「地方創生」に関する質問が出された回数を見ると、2015年に一気に突出(5056)したあと、緩やかに減っていく。トーンダウンが見られる。

2015年4月3日安倍総理が官邸で「本年は地方創生元年です」と。結果はどうか。「元年」は「残念」となり、「癌年」、「怨念」、「観念」となっていないか。
〇過去、何度も国の言われるままに躍ってしまい、その結果、自治体衰退、自治体崩壊に進んでしまった事例がたくさんあるのではないか。

〇「コンサルに食われる自治体」と5/11付「東洋経済」。「コンサルが行政を支配している」「4つのコンサルが食い散らしている」とも。

〇ドラッカー「利潤最大化が企業経営の目的ではない」。重要なことは「企業を10年、100年と持続的に経営することである」。そして持続的経営のためには「顧客の創造」が目的になる。「経営の目的は顧客の創造である」。自治体に置き換えれば、「顧客」とは「住民」である。

〇住民の創造、まず自然増。これは「出生数の増加」と「死亡数の減少」である。

〇出生数の増加のために@「もう1子以上」多く産んでもらうA独身者に結婚してもらう(国調の「有配偶者率」をチェック)。自然増の視点には、

・出生数増加にa既婚者を対象にした施策、b独身者を対象にした施策

・死亡者減少にa高齢者を対象にした施策、b高齢者外を対象にした施策

が考えられる。

〇しかし自然増施策には限界がある。

 合計特殊出生率「1.20」で考えると、

 第1世代、男100人、女100人 × 1.20 = 120

 第2世代、男 60人、女 60人 × 1.20 =  72

 1世代で半減してしまうというシミュレーションになる。脅威。これでは年金を支えることも困難に。東大和市では、1.40から1.67に改善した例がある(2023

)

〇独身女性は東京へ。結婚したのち、埼玉などへ移る傾向がある。

〇たとえ数年のうちに人口置換水準2.07を達成したとしても、その人たちが結婚期に入るまでは、人口は減少し続ける。2〜30年のスパンが必要。しかし政治家の任期は4年。本気で取り組まれない傾向がある。

〇ひとつの自治体が2.07を達成したとしても、永久に留まってくれる保証はない。

〇外国人労働者増にも限界がある。2040年へ、日本の労働力人口は1400万人減少。その1割も外国人に期待するのは難しいとされる。外国人が日本を選んでくれない実情がある。日本の外国人時給は1033円、ニュージーランドは3800円。スイスは6000円で世界最高額。

〇社会増。「一定期間における転入・転出に伴う人口の動き」と定義できる。

〇住民とは「既存住民」と「潜在住民」。「既存」の「転出」を抑制し「潜在」の「転入」を促進するしかない。

〇親は子に「ここには未来がないから戻って来るな」と。親が「戻って来いよ」と言える町に。そのためには「家を買わせる」ことがポイント。

〇転入増加に取り組むT市、N市の事例。住民基本台帳をデータ・ベース化し、引っ越してくる地域を絞り込む。その地域の駅などにポスターを貼るなどして転入を促し、タウン誌に住宅情報を掲載する。転出した人への動機のアンケート調査を実施した市もある。国調で、仕事で来る人の住所地がわかる。ここをターゲットにこの町に住むように誘う。「戸田市に住もう」のネット広告。グーグル検索から現在はSNSで。入ってきた人に聞くと「いいらしい」「人から聞いて」という動機が多かった。シティプロモーションの成果として「人口増の多い市町村」「増加率の高い市町村」ランキングが国調に出ている。いずれにも戸田市がランクインしている。

〇定住者の分類

 持ち家の人と借家の人

 持ち家のうち、独身者と既婚者

 既婚者の内訳として、DINKs(共働きで子どもなし)DEWKs(共働きで子あり)SINKs(夫のみ働く)SEWKs(妻のみ働く)。寝屋川市はこのうちDEWKsにターゲットを絞り、条例まで作って成功。

〇浜田市は母子家庭を集め、刑務所を誘致した。服役者は、税金は払わないが人口には入るので交付税にカウントされる。そして「逃げない!」市長のアイデアである。

〇西条市は教育改革で学力向上。「子育てなら西条市」と人気。人口増。移住者の8割が若者、子育て世代。

〇「明石に住もう」キャンペーン。市外の人にプレミアム商品券、市内の「紹介者」にもクオカードプレゼント。

〇神戸市は明石の駅に掲示「家どこ? と聞かれたら「神戸」と答えたい」。

〇小田原市はクロネコヤマトと提携、荷物の箱に「小田原のチカラ」。藤沢市はペットボトルに出身のわたせせいぞうのイラスト。富士市は運送協会と提携、車両ボディにラッピング宣伝を掲載し全国を走ってもらう。「うちは自然がウリです」といくら叫んでも訴求効果がない。

〇ターゲットを「絞る」ことの重要性。例えば「子育て世代を狙う」ではダメ。012歳、というように。

〇女性雑誌も、明解にターゲットを絞っている。

〇セグメント化不特定多数の顧客を、共通の消費者属性を持った集団に分類すること。ターゲット化どの顧客層(セグメント)を標的市場にするかを決めること。

〇自治体におけるシティプロモーション。1986、福岡市が「シティセールス担当課長」を配置。1999年、和歌山市に「シティプロモーション推進課」。熱海市、戸田市、八王子市などの定義。これからは「営業」マインドが必須。役所にも、職員各人にも求められる。

〇シティプロモーションとは「売り込み」である。「誰」に売り込むのか。どこにいるのか。どういうメディアを見ているのか。この「誰」をしっかりと把握。

〇箕面市「営業課」福井県「ブランド営業課」武雄市「営業部」。この「営業部」には、「わたしたちの新幹線課」「いのしし課」「お住もう課」「お結び課」「フェイスブック・シティ課」がある。ほかに高槻市「営業広報室」三浦市「営業開発課」。流山市「マーケティング課」横手市「マーケティング推進課」氷見市「商工観光・マーケティング・おもてなしブランド課」。

〇モノを買う時のプロセス「AIDMA(アイドマ)」。Attention認知、Interest関心、Desire欲求、Memory記憶、Action購買行動。この最初のA。認知を大きくすることが大事。これを大きくすれば最後のAも大きくなる。

〇富山県のシティプロモーション。山手線利用者は600万人。2週間のラッピング車両の費用は3000万円。「認知度がなければ始まらない」。

〇「一番であること」「初めてであること」が大事。

〇今日の自治体のシティプロモーションは、ブランドが構築されていない状態でのセールス・プロモーションとなっている。その結果、多くの自治体が目標を達成できずにいる。

〇ブランド。語源は牛の「焼き印(burned)」。個々の牛を識別するためのもの。

ここから、ブランドとは「差別化、違いづくり」を意味するようになった。

〇創生とは、初めて生み出すこと。従前と違うこと、かつ他地域と違うことを実施してこそ「創生」である。つまり、創生とはイノベーションである。地方創生とは「地方自治体が、従前と違う初めてのことを実施していく。あるいは、他自治体と違う初めてのことに取り組んでいく」ことである。

 

.感想

 

 1031日にこのセミナーを受講し、12月定例会での一般質問で、「こうしたアドバイザーを丸亀市でも設けては」との提案をしました。

 1時間という限られた時間で、取り上げたい内容はこれだけではない。特に、市民や企業との協働の姿について、市が後れを取っている、というよりスタートにも着いてない、そもそも何たるかがわかっていない、との認識も相まって、市民協働についてのアドバイザーを、との提案をしました。返ってきた部長答弁は、「市民が協働によって育成されれば市民がアドバイザーです」というもの。ここまで、このセミナーレポートを読んでくださった方には、私の心持ちも理解いただけるのではないでしょうか。「いやいや、あなたの設問が悪いんだよ」と、そういうご意見ならばぜひ、耳を傾けさせていただきます。

 本文との重複は避けますが、全国あちこちで「シティプロモーション」の火の手が上がり、課の名前にもつぎつぎと私の言う「キラキラネーム」が登場する中、わが丸亀市では今も「庶務課」ですか、と、これまで何度か、市役所職員の感情を害する発言もしてまいりました。もとより看板が仕事をするわけではありませんが、「庶務」では市民に発するものはなく、その職員に誇りは生まれません。

 西条市のアドバイザーをされている講師は、予讃線を定期的に使い、丸亀も通過しています。これまで市議会でも招へいしたことのある方です。地方自治体の失敗、いや、失敗以前に「何もしないこと」。ここを指摘し、行動を起こさせていく。気付かないなら、気付いている人を招くべきだとの結論になります。

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