○「松野豊 特別講座」
1.
概要
日時 2019年7月22日 10〜12時半、14〜16時半
場所 東京都内のセミナー会場
演題 午前 議会改革ブレークスルー10の法則
午後 議会から仕掛けるシティプロモーションとマーケティング
2.
受講意図
講師の松野氏は前流山市議会議員。この経歴のほかにリクルート社での人材育成、組織風土改革を経験、「地方政府創造会議」、「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟共同代表」、大学での客員研究員など多彩で活発な経験や活動歴を持たれている方です。私も議員経験の年数は経ましたが、このように議会の内側だけでなく民間、学術各方面からの考察を聞けるものと思い、参加しました。
3.
セミナー内容@議会改革ブレークスルー10の法則
○「10の法則」とは
@議会改革は議員同士のコミュニケーション改革。
→「故郷を良くしていこう」と選挙を戦い選ばれた人たちなのだからひとつになれる。会派を越えての人間関係を創り上げる。
A憲法、自治法はじめ地方議会に関わる法律や仕組みを正確に理解し自身の腹に落とす。
→知識をひけらかすことなく、論理的に淡々と議論をする。
B全議員対象の研修会を企画し、大学教授など学識経験者に語ってもらう。
→議員が議員に説いてもうまくいかない。講演者とゴールイメージを共有するため事前にしっかりレクチャーを。
C先進地視察には会派や個人で行かず、議運、改革特別委員会、常任委員会として行く。
→「よかった」で終わらせず、「うちで実現するには」とのアクションプランにつなげる。
D議員個人の活動、選挙活動、会派活動、議会活動を明確に棲み分け。
→個人プレーは選挙にはつながるが議会改革を牽引できない。
E自分の手柄にしない。
→たとえ自分が発案者であったとしても「自分が実現しました」とメディアに打ち出さず、キーマンや先輩議員に手柄を譲る謙虚さとしたたかさ。
F議員間の議論のようすを公開中継。
→ユーストリームでほぼ投資ゼロで可能。カメラの向こうの有権者を意識し、非建設的な発言はなくなる。
G議会内で合意形成できたものは決議等で機関決定。
→機関決定で重みが増す。「申し送り」では改選後のアクションにつながらない。
H事務局を味方につける。
→事務局職員のスタンスを「実現できない理由を並べる」のでなく「どうすれば実現できるか」を議員に提案することにあると納得してもらう。
I議会基本条例を制定し、刃を研ぎ続ける。
→条例はゴールでなくスタート。トコトン議論する議会を実現し「市民に開かれた信頼される議会」の風土を醸成。
※?名? (breakthrough) 難関・妨害などを突破すること。特に、科学や技術の進歩、技術的改良による問題解決。
○作者不明「正範(せいはん)語録」に、
実力の差は努力の差
実績の差は責任感の差
人格の差は苦労の差
判断力の差は情報の差
真剣だと知恵が出る
中途半端だと愚痴が出る
いい加減だと言い訳ばかり
本気でするから大抵のことはできる
本気でするから何でも面白い
本気でしているから誰かが助けてくれる
○「ジャパンプロデューサー」。自分以外の誰かのために一生懸命汗水垂らして頑張っている人。バッジを付けているのは議員だが政治家とは限らない。政治家とはジャパンプロデューサー。プロデューサーとは「仕掛ける人」。NHK大河ドラマのプロデューサーは年功では決まらない。提案が通った人が任じられる。
○政治は粘り強く、あきらめない人間にとっての天職。マックス・ヴェーバー「職業としての政治」に、
自分が世間に対して捧げようとするものに比べて、現実の世の中が〜自分の立場からみて〜どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!」と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への「天職」を持つ。
○憲法93条に、議会は「議事機関」とある。審議し、決定すること。議会は民意を反映する場。自治体における最高の意思決定機関。会社なら株主総会。
○講師自身、流山市議会議員に初当選時、1期目は会派に属さず。「定刻に始まらない議会など“おかしいな”と思うことは多々あった。2期目、「日本一の議会改革をやりたい」との志を表明し、これに共鳴してくれた会派に加わった。議会内で気づいた点をブログや個人の新聞に書き、叩きまくって自らヒーローと勘違いしていた。それでは敵ばかり作り、改革につながらないと気づく。マニフェストの提唱者、竹下譲氏から助言を受ける。「一人で批判するのもいいけど、不信者には受けるだろうけど、2期目からは合議制を意識し、自ら「丁稚」をやりなさい」「視察も自分が計画すればこちらがコントロールできる。北海道に行きたいという議員がいれば、じゃあ栗山町に行きましょう、と組める」。
○経営学博士スティーブン・R・コヴィー著「7つの習慣」に学ぶ。これを2期目に実践。10年かかり、改革日本一を達成できた。成功者に共通する7つの法則。うち2つが大事。@パラダイム=ものの考え方Aプリンシパル=原則。
○議会改革が成功しているところには「キーマン」がいる。3重の輪が示される。中心は「個人」、次の外側が「チーム」(10人)、いちばん外側が「組織」(30人)。この個人が志を持つこと。「よそがやっているからタブレット入れました」では成功しない。
○習慣@「主体性を発揮する」。どしゃぶりに遭っても「困ったずぶぬれだ」と捉えるか「人に会えるな。ラッキーだ」と捉えるか。佐賀県職員円城寺雄介さんの成功例「全ての救急車にアイパッドを搭載」が実現。円城寺氏とのQ&Aより
・救急現場で病院が決まらない。冷や汗びっしょりの救急隊員、不眠不休の医師の顔を見た。「自分がやるんだ」と決めれば困難や障害などハードルは高いか低いかの問題となり「あきらめる」という選択肢はなくなる。
・「バカじゃないか」と言われても伝わるまで何度も説明。全職員相手でなく現場の「キーマン」を見つけて共感を得る。「オマエに言われても信用できない。でもいつもお世話になっているあの課長補佐に言われたら一度くらいやってみる」と。現場の救急車に乗せてもらえるまで1か月かかった。
・「ダメ」と言っている人間にも何らかの事情がある。批判の「指は自分に向ける」。最後に、「指は天、つまり“目標”に向ける」。つまずくと目線が落ちる。そこでみんなで「天」を見るようにもっていく。「情報を伝えるのでなく情熱を伝える」。自らの「率先垂範」から情熱は生まれる。
○習慣A「目的を持って始める」。上杉謙信「理念なき行動は暴挙であり、行動なき理論は空虚である」。
・議会基本条例制定状況はH27.1現在、全国1788自治体中742自治体、41.5%。流山市ではH21.4施行。前文で開かれた議会を「実現しなければならない」と、市民に信頼される議会運営に「取り組まなければならない」と“最上級”にした。
○習慣B「重要事項を優先する」。
・時間管理のマトリックス
緊急 緊急でない
重要 第T領域=必須 第U領域=準備・計画
重要でない 第V領域=錯覚 第W領域=浪費・過剰
第T領域…締め切りのある仕事、クレーム処理、せっぱつまった問題、
病気や事故、危機や災害
第U領域…人間関係づくり、真のレクリェーション、健康維持、準備や
計画、勉強や自己啓発
第V領域…必要性が低いと感じる報告、突然の来訪、無意味に感じる冠
婚葬祭、無意味に感じる接待や付き合い、雑事
第W領域…ささいな事柄、見せかけだけの仕事、暇つぶし、時間の無駄
遣い、テレビの見過ぎ、休憩のし過ぎ
・「事実」と「価値判断」の違いを知る。
「事実」=人によって解釈がわかれないこと。起こったこと、数字、言ったこと。
・議会でもホワイトボード、ポストイットの活用を。頭の中の見える化、話のプロセスの見える化。議会は「言論の府」。そのツールとして(これらを用いた流山市議会での議員と職員の自由討議の風景)。
・流山市議会では「議会費」の予算要望を自分たちで議論し、決定している(その概念図:会派ごとの事前協議→委員会ごとの協議→持ち帰っての会派ごとの事前協議→各委員長・事務局連絡協議会→代表者会議→正副議長で予算要望)。
・流山市議会では正副議長、正副委員長の「役選人事」を「ドラフト制」にした。
・流山市議会でのペーパーレス化による経費削減効果。
紙での見積もり:年間2計画書印刷、例年配布資料、総務課作成資料、議員への通知文書、本会議印刷製本料、計約335万円
Ipad16GBWifi+3Gモデル導入での見積もり:約210万円。
・流山市行政部門での同様の見積もりは約4304万円対1134万円。
4.
セミナー内容A議会から仕掛けるシティプロモーションとマーケティング
○以下、流山市での取り組みを紹介。
○流山市は首都圏から30q圏内。団塊世代のマイホーム、サラリーマンのベッドタウンとして発展。H17つくばエクスプレス改行で秋葉原間50分が20分に。
○講演者が初当選時の人口は12万人。現在19万余。現在も増加中。
○H15、全国初「マーケティング室」を市に設置。翌年「課」に。都心に住む人をターゲットに、将来住んでもらえる人を呼び込む戦略を。「父になるなら流山市」「母になるなら流山市」巨大ポスターを年1回、貼る駅をマーケティグして決める。1週間掲示。メディアがこぞって取り上げ、取り上げたメディアを市HPに掲載。「父に」は“いまイチ”。「母」1本に。
○マーケティグとは。企業や非営利組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客(市民)が真に求める商品やサービス(政策)を作り、その情報を届け、顧客(市民)がその商品やサービス(政策)をより効果的に得られるようにする活動」の全てを表す概念(Wikipediaより抜粋編集)。
○ピーター・ドラッカー「マーケティングとは、顧客のニーズを探り、対応する製品やサービスを提供する機能である。一方、イノベーションとは、顧客の新しい満足を創り出していく機能のことを指す。企業・組織のマネジメントは、この二つを有効に機能させることが、最重要の命題となる。
○マーケティグの「基本のキ」。
S:セグメンテーション:市場を細分化し、
T:ターゲッティング:ターゲットを絞って、
P:ポジショニング:立ち位置を決めること=競争優位性を設定。
○現代マーケティングの父、フィリップ・コトラー「マーケティングとは、ニーズに応えて利益を上げること」。
○成功事例「缶コーヒーワンダーモーニングショット」。缶コーヒーユーザーの4割が朝に飲んでいるという調査データに着目。しかもその多くがビジネスマン。ちょっと「ニガい」設定にした。
S:朝に缶コーヒーを飲む人
T:20、30代のビジネスマン
P:朝専用
コマーシャルにはこの世代にファン層多い仲間由紀恵さん起用。発売1週間で3000万本、2か月後には目標年間1億2000万本を達成。「ハマる」と「ハネる」。ピンポイント戦略で顧客をくすぐる。BMWのコマーシャルでは専門用語をあえて使って経験者のみ募集の戦略が成功した。
○流山市ではこの考え方をシティプロモーション戦略に応用した。民間シンクタンク出身の市長が当選。このことを「鳴り物入り」で売り出す。しかし、せっかくのマーケティング室も、やっていることはイベントだった。これに対して1年間、同じ質問を繰り返した。1回目、部長が答弁したが再質問に対して窮した。市長は原稿を読んでいるだけだった。2回目、市長が最初から答弁。回を重ね、一般質問が市長を動かした。市長の答弁として、全市民の中から「ターゲットを絞る」とは答弁しづらい。だから「これから市民になる人をターゲットにします」と市長答弁。ここから戦略が動き出した。
○H16→22。6年後。NHK「首都圏ネットワーク」番組上映。住民から「選ばれる」まちづくりを。
戦略@駅に子どもの送迎ステーションを設置。駅前に預ければ1日100円で市内の保育所に届けてくれるサービス。共働き夫婦に好評。
戦略A森のまちづくり。マンション建設業者に緑を増やすよう要請。官民協働、デパートにも建物の真ん中に樹木。「商品を売り込むというよりまちを売り込むのです」とマンション業者。今では学校の教室不足に。30代世帯が7000人、34%増。
○「駅貼り」大型ポスターに700万円。移住してきた本人さんたちを公募し、起用。しかし初回のポスターでは市のHPの記載すらない、メディアミックスもやってない。このことを次の質問で行った。
○サミュエル・ローランド・ホールによる「消費者の購買決定プロセス」。
A:アテンション:認知する
I:インタレスト:興味、関心を持つ
D:デザイア:欲しいと思う
M:メモリー:覚える
A:アクション:購買する
○ネット普及後の購買行動
A:アテンション
I:インタレスト
S:サーチ:ネットで検索する
A:アクション
S:シェア:体験や知識を共有する(口コミ)
→「流山市」を知らなかった。ネット検索されて「流山市」ってどうなの?
→こうしたことを踏まえてマーケティングをせよ、と質問で突っ込む。
○〜H28さらに6年後。「ペルソナ(想定されるターゲットの中でも最も重要な人物モデル)」を今明かす。「首都圏でフルタイムで働く30歳代の夫婦とその子ども。働くのは、生活費のためではなく自分のやりがいのため。よって、生活には比較的余裕があり、健康や食べ物などライフスタイルにはこだわりがある。週末は、家族でお出かけし、情報感度も高い。子どもの教育には関心がある」。
○これに基づいた「駅貼り」の改良。モデルとして登場した家庭の紹介やメッセージも。ネットと連動。JR7駅、小田急1駅。市に通常の公式ページのほかにPR専用「ライディング」ページを設けた。
○「母になるなら、流山市」。ここには主語「あなた」が隠されている。ここがすごいと高い評価。自分を主語にするところが「選挙戦でのキャッチのヒントにも」。
○認可保育園の新設・増設。H22の17園からH31年、75園に。待機児童はピーク時H28年の146人から現在はゼロに。ここに大きな訴求ポイントがある。
○前述「駅前送迎保育ステーション」市内2駅で大好評。H29、合計特殊出生率が1.62に(全国平均1.43)。実情を調べると郊外の園では待機児童が発生してないことが判明。「駅まで行けば届けてくれる」というサービスをやることに。
○子育て世代の移住成功で、市の人口構成は見事に変化。
○つくばエクスプレス沿線の自治体との人口推移比較。これにより、電車が来たというだけで人口増につながったとは言えないことがわかる。
○H30調査で全国市町村「転入超過」ランキング8位、政令指定都市を除けば全国1位。
○ここからはこうした戦略を「議会広報にも応用できないか」について。
@目的や目標、KPIを明確にする。目的とは「まと」。誰に? 市民に開かれ信頼される議会、議会のイメージ向上、若年層の取り込み、など。目標とは「いつまでに」「どうやって」。アンケート結果の向上、デザイン刷新、議会公式アカウント立ち上げなど。KPIとは指標。議会報告会参加者増、アンケートでの評価向上、フォロワー数の増加など。
Aターゲット別にメディア(媒体)を分ける。日本リサーチセンターによる2016年調査。総務省H30情報通信政策研究所による報告書(毎年)。このように個別にお金をかけて調査しなくてもデータはたくさん得られる。これらにより、若い層へは「議会だより」に限界。SNSを指向。
BCo-CREATE。皆を巻き込み、一緒に考えて一緒につくる。一人でなく2人、3人で4人、5人の効果を上げる「グループダイナミクス」。
○Dialogue(対話)。市民も巻き込み、「勝ち負け」でない対話を。対話と雑談と議論の違い。
手段 雰囲気 話の中身
雑談 自由 たわむれのおしゃべり、テーマなし
議論 緊迫 真剣な話し合い、テーマあり
対話 自由 真剣な話し合い、テーマあり
→譲歩、折衷よりも相互理解で「第三の案」を創出するのが「対話」。
○ダイアログのルール
@全ての人が発言し、全ての人が話を聴く
A断定や否定をせずに仮説を保留して話す
B体験を語ることできる場を持つ
Cコントロールされず主体的に選択をする(空気を読んだり場に流されない)
D全体像を見る
E役割分担を決める(司会、書記、タイムキーパー、発表者)
○講演者が参与を務める茨城県境町の取り組み例を紹介。「英語移住」で子育て日本一目指す。町にマーケティング推進本部を設置。駒大と提携、18歳現役大学生をマーケティングにおけるCMO補佐官に任じるなど話題になりヤフーのトップ記事に。ほかにも町政にかかわる参与として慶大生、電通社員、そして松野氏を起用。職員が「スーパー地方公務員」目指し「アフター5勉強会」を全6回。町の広報を新町長が編集し、一新。隈研吾氏設計の「道の駅さかい」を話題にして売上げ10億円突破。町長の「ハワイ好き」昂じてホノルル市と友好都市協定締結。全国から花火師4社の「ガチ勝負」で大きな話題、など。町長がスーパーパワフル町長だったからできたか? 本人はいたってマジメ、熱いからみんながついてくる。支えてくれる。スキルやテクニックではない。冒頭の「正範語録」の「本気でしているから誰かが助けてくれる」。
○まとめ。現状とゴールイメージの間のギャップ。ここに課題が潜む。課題が見つかれば解決を考えればよい。仕事とは、課題との逆遇とその解決の繰り返しである。
○スティーブン・R・コヴィー「組織のリーダーは往々にして、リーダーシップの新しい“教義”の風が吹くと、すぐにそっちにたなびく。もっと民主的な方がいいのか、それとも独裁的であるべきなのか? 厳しいリーダーであるべきか、寛容であるべきか? 話す方がいいのか、問いかける方がいいのか? 従業員の生産性を高める一番のテクニックは何なのか? これらが考慮すべき重要な質問であることは確かだが、しょせん二次的な問題である。第一に問うべきは「どれだけ真剣に考えているか」である」。
○「今よりもつと真剣に。巻き込みながら」。
5.
感想
松野豊氏。私と同じく一人の地方議会議員でした。どこがどう違うのか。資質か。才能か。そう考えさせるほどに、彼のこれまでの功績は輝いていました。才能や資質を比較検討する材料はありませんが、ひとつだけ、ここだけは明白に違う。それは「民間経験」でした。
組織の風土を改善したい。それは私も願うところ。でも私の社会経験20年はそのまま「公務員経験」。その現場で、このことを願うことはありませんでした。自分の職務のことでせいいっぱい。そこで私なりの挑戦や充実感を得てきた。しかし正直なところ、私のその20年間の前半は「上司の言いなり」「職場の雰囲気のまま」だったことを吐露します。その分、後半はそうでなかったこともここに記しておきたいと思います。それは人事異動という環境の変化が主原因ですが、たぶん、自分の中にも、「やってやろう」という意欲が、ここから芽を出した、そうも思うのです。でもついに、「職場の風土を改善したい」とは、ついぞ一度も考えた記憶がありません。反省も踏まえ、このことをまずここに書きたいと思いました。
松野豊氏の、議員としての活躍を支えたものは、民間経験ではなかったでしょうか。だからこそ、今、市政に、私は民間感覚、市民感覚を何としても取り入れる、そのための門を開くのは公務員自らである、そのことをここに一番に記したいと思います。
そういう経験の持ち主でなければならないということでなく、こういう経験値を公務に持ち込む、そういう仕組みがまずもって必要、いや丸亀の現在の市政に欠けている、そのことを申し上げたい。
新市長が登場。この方もマーケティング市場からの登場であったことが別のひとつの重要な要素です。でも新市長だけでも、松野氏だけでもなし得なかったこの流山市の政策実現ではなかったでしょうか。どこまでもどこまでも、住民の幸福は制度でなく「人」にかかっているのだと、改めて深く思います。
市に「マーケティング室」を設ける。これは新市長のいわば「仏を作る」という実績。けれどもこの仏に「魂」を入れたのは、ほかならぬ松野氏でした。二元代表制と言われる、その制度がいみじくもここで実を結んだ、そのように評しても過言ではないでしょう。一議員のアクション、ではありますが、でもそれが議会を動かしたのですから。
そして「朝」に特化した缶コーヒーの成功事例を通しての氏の展開は見事。これも、失礼ながら私の知る議員、私も含めて、このように可視的に、説得力をもってこれを行政と結び付けられる手腕も手法も、なかなか得難いものではないでしょうか。彼の、民間出身なればこその熱い切り口が私には感じられました。
また彼が参与職を務める自治体で、町長が自ら広報紙を編集するとか、ほかにあまたの眼を見張る数々の戦略を展開したことは、きっと松野氏のサジェスチョンによるところが大きかったのではないのか、そのようにも推察します。産学官、という言葉はすでに古くなりつつありますが、こうした発想の展開は、やはり既定の行政に斬り込む「度胸」がなければできないものと思います。
首長は「独占」の位置だが議会議員はそうではない。そのときに、「いい気になって」他の議員を糾弾していた1期目を猛省。「相手を立てる」配慮に満ち、議員としてでなく“議会”として進路を決めていく、そのように自身のフオームを“修正”した松野氏に驚嘆もし、共鳴もします。
せっかく市長が「マーケティング課」を設置したのにやってることはイベントだけ。このことをカラクチの提唱として4回連続で質問に取り上げた。このキッパリとした彼の決断に脱帽したい。そしてその「キリクチ」の見事さに学びたいと思います。4度目、質問の前に彼は市長と話し合いの場に呼ばれ、「市長として、市民の中から“ターゲットを絞るということは答弁できない”。だから市外の人をターゲットにしたい」と打ち明けられたのだそうです。これでこそ、議会質問の冥利というものです。
徹底して、「郊外の保育所にはまだ余裕がある。だから駅前送迎を」「民間に協力を呼びかけ、まちに緑を」など、積極果敢、かつ先見性に満ちた施策の提言。これでこそ、緊迫したスポーツのゲームを手に汗して見守るような二元代表制が実現する。やはり“人”なのだ。そのことに思い至ります。そういう人物を市民が選び、市が職員に選抜するのも大事。そして同時に、そういう人物を内部で“育てる”ことも、議会、行政共通の課題とも言えましょう。
11万市民が、ほんとうに、「納税の甲斐がある」議会と行政を望んでいる。そのことを日々痛感。私もその声に応えたい、その思いで仕事に臨んでいます。講演者の前に、わが身の非力を思います。
けれどもまさに「にもかかわらず」の意欲で、責任をまっとうしてまいりたい。そのように決意を新たにしております。研修でいただいた数々の学識、データを、忘れることなく、今後活用してまいりたい。