〇久留米市市民活動センター「みんくる」 福岡県久留米市
1.視察意図
久留米市は人口約30万人。丸亀市よりも大きな都市ですが、県下では県庁所在の大都市に対抗する地方都市という位置付けで共通していると思います。
丸亀市では新庁舎に市民活動の場が併設されることが表明され、ただ“ハコ”を準備すれば人が集まる、使ってくれるというものではないとの懸念もあり、いよいよ今こそ他市の事例を詳細に検討する時期だとの気持ちです。
そこで南九州方面に視察に出向く機会に、帰途、久留米市に立ち寄り、短時間、市役所にはお邪魔せず直接センターを見学させていただく簡略な方式で視察に伺うことにしました。
2.「みんくる」の概要
JR久留米駅から徒歩15分。というと郊外かと思えばそうでなく、市民会館が新たに商店街の真ん中にオープンし、にぎわう市街地のまさに中心部。商店街のアーケードを抜け出たところの繁華な交差点に位置するビルは、かつて大型商業施設(ダイエー)であったもの。その撤収に伴い市が5階部分を図書館に、最上階の6階には観光コンベンション協会、高校のサテライトキャンパス、久留米市児童センターなどとともに「みんくる」が入る。4階以下はテナントによる売り場面積。
駐車場は契約式。利用者は2時間無料でその後は1時間100円。
(市の担当部局は協働推進部協働推進課)
指定管理者方式。特定非営利活動法人ワーカーズコープが受任。
月~土 10~21時、祝・日 10~19時。第3月曜日と年末年始が休館日。
トイレ、エレベーター、エスカレーターなど共有。同フロアにセンターの交流スペースのほか、作業室、受付カウンター、会議室2、セミナー室2で構成(仕切りを取り除いてそれぞれ1室に)。各室は予約制、有料、飲食可。
ほかに貸しロッカー30、メールボックス48あり、有料。
活動を紹介する展示スペース、作業室には印刷機、ポスタープリンター、丁合機、紙折り機、裁断機など。プロジェクターも貸出し。
運営にあたる日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)は、こうした指定管理者を受ける全国団体。協同労働による「仕事おこし・まちづくり」を目指す法人。センター長自身、県外から「転勤」して来られた人。
常勤4人、非常勤3人、計7人が2交代で勤務。
ひと月5000人の利用者。市民活動目的の人以外で、学生が宿題をするなども入場を許している。
3.感想
これまで何か所となく訪問した、全国各地の市民活動センター。外見上、突出した印象はありませんでしたが、ここの指定管理者が全国展開の業者さんであることは意外。こういう形態もあることを初めて知りました。
ネットであらためて調べると、今年の4月から、この事業団が指定管理者になったとあり、3月末までは「久留米市民活動支援機構」という組織が担っていたことがわかります。指定管理者をめぐっては、公正に、厳しく判断がされているのでしょう。そういえば市民活動センターというものを初めて見学させていただいてと思われる、茅ケ崎市でも、「かろうじて取らせてもらいました」と笑顔の施設長さんの言葉が思い出されます。一般事業者つまりプロの人たちとコンペの結果、市民ボランティア団体が受託を射止めた、という経緯だったと思います。
それはそれとして、何を基準に「運営がすばらしい」と認めるのか。これはとても難しい問題だと思います。入場者数なのか、登録団体数なのか、はたまた利用料なのか、開館している時間の長さなのか。その究極はやはり“市民満足度”ということだろうと思います。
ここであらためて久留米の「みんくる」とネットで検索してみると、さまざまなヒットがあり、そこに事業団の自主開催講座、外部主催のものなどたくさんの催しが並んで出てきます。短い時間で施設を見ることよりも、こうして時間を追って、ほんとうの活動の姿を見つめなければ真実が見えてこないものでしょう。私と応対してくださったセンター長みずからの登場で「NPOの作り方」というセミナーも近々予定されているし、業務のひとつとして、エクセルなどで加盟団体が書類を作成するのをサポートする、そんなこともやっているようです。
そのことは、いただいた資料『月刊みんくる』というパンフレットを見てもわかります。ボランティア情報、みんくる活用術、活動の実績紹介のページ、補助金の案内。そして月刊イベントカレンダー。「これからは市民が公共を担う」という先見性を、どこまで市民が、行政が、また議会が認識するか。これで市の先行きが決まる。
もう一枚。「~キラリ輝く市民活動活性化補助金~活用してみてどうだった?ホンネトーク!」という催しの案内チラシもいただいて帰りました。ラックから勝手にもらって帰ったのだと思います。内容は、市の補助金制度が使いやすいかどうかの、使う側のトークバトルなのでしょう。厳しい注文も出るかも知れません。行政は「だったらやめときな」ではなく、「どうしたら使いやすいですか」と耳を傾ける。その度量がなければ、その発想がなければそもそもこのトークは意味がない。市役所側からの発案でこうした場所が準備されるとしたらすばらしい。そうではなくても、この事業団がブリッジの立ち位置で、役所を動かし市民を動かす、それならそれも、センターの大きな使命というべきでしょう。闊達な動きを、こうした紙面で垣間見ることができます。
かつて「体育館のボールの数まで公務員が管理しなければならないのか」と、辛辣なことを発言したのを思い出します。いま、体育館は指定管理者制であるばかりか、時代は公務の、市役所の内部にまで大きく民間企業、非正規公務員が担う、そんな様相となっている。フェイスブックでどう丸亀市を全国・世界に発信するか、というひとつをとっても民間マインドにすぐるものはない。会計システムもまた、単年度現金主義から発生主義、複式簿記へ、潮流は進む。ステレオタイプに何でもかんでも民営化、ということを言うのではありません。安上がり、財政不足を前面に押し出していうのでもない。市役所というシステムができた、その前のいにしえに立ち戻り、「まちはやっぱり、市民が作るのだ、自分たちの好きなように」というのが、そもそもまちづくりの根本思想でなければならない、立ち行かない。それに皆が気づかねばならない、そういう時代なのだと思いますが、肝心の行政マンの方々が、肩を張って「国からお金をもらう算段をするのは我らだ」と頑張っておられる、そういう時代をまず、スルーしなければならないのだと言わなければなりません。
これは公務員を否定しているのでなく、新たな公共を待望しているのです。そして、丸亀市が全国初でやるのではない。こうして失敗も成功も、全国各地に、すでにお手本があります。
われら市議会がその旗振り役となり、新しい時代を切り開く、行政を導く、その使命を存分に果たせるようにと、願うばかりです。