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○宮本正一氏セミナー「役所を動かす議員活動」          2015.11.4博多

 

1.    セミナー詳細

 

○有権者が満足する議員活動。

 政治活動:政治上の目的をもって行われるすべての行為の中から、選挙運動にわたる行為を除いた一切の行為

 選挙運動:特定の選挙において、特定の候補者の当選を得または得しめるために、選挙人に働きかける直接または間接の一切の行為

○満足のメカニズム

 期待>政治活動 不満足。期待が大きいと不満足になりやすい。それならば

             期待が少ないほうがいいことになる。

             たいしたことのない人が結局、満足を得ることに。

 期待<政治活動 満足  それでは「期待」とは何なのか。

○マイアミ大学パラスーラマン教授による5分野22項目の「期待のメカニズム」

 ①信頼度 ・公約した通りの活動をしている

      ・活動を信頼してお願いできる

      ・活動が正しく実行されている

      ・公約した時期に活動が提供される

      ・公約と違った活動をしていると感じたことがない

 ②スピード度 ・いつ活動が実行されるかを知らせてくれる

        ・相談者への対応がすばやい

        ・相談者をしっかりサポートしてくれる

        ・何かお願いした時にそれに対応できる準備ができている

 ③安心度 ・政治家本人・スタッフから自信を感じる

      ・相談に乗ってもらっている間も安心感が持てる

      ・政治家本人・スタッフが一貫して礼儀正しい

      ・政治家本人・スタッフが、相談の答える十分な知識を持っている

 ④まごころ度 ・相談者一人ひとりに目を行き届かせてくれていると感じる

        ・政治家本人・スタッフが十分な心配りで対応している

        ・相談者にとって一番の利益を提供してくれる

        ・相談者の必要としているものを理解している

        ・相談者側に合った面会時間帯である

 ⑤みた目度 ・最新の設備(インターネット等)を有している

       ・アピール度の高い施設(事務所等)を有している

       ・プロの自覚を感じさせる格好をしている。

       ・提供する相談付帯品(資料・ツール等)の見栄えがよい

これらのうち④「まごころ度」がいちばん大事。最も期待度が高い。選挙に強い人はここが強い。

ちなみに⑤「みた目度」では、特に格好、スタイル、見栄え。大統領選挙の3人のアドバイザーは、政策担当、資金担当、スタイル担当だ。

○質問作成の準備方法

 「質問の樹」 

 例:N市の高齢化率の増加という背景がある。

   「質問の幹」は「高齢者福祉計画の課題」。ここから「質問の枝」が伸び

る。「一人暮らし見守り」「地域包括支援センター」「介護老人福祉施設」

「シルバー人材センター」「介護予防事業」など

○自分のプロフィールを活かす。役人が一番嫌がるのは知らないことを聞かれること。かつてサラリーマンをやっていたことを強みに。民間体験、ノルマ、人事評価、勤務評定のことなどを話題にする。次に興味ある分野を設定する。これらを質問の枝にしていく。しかしこれらは当たり前で、やがてネタが切れる。そこで知識の弱い分野をあえて質問のテーマに取り上げたりして、自分の知識を増やさないといけない。厚みを持て。

○優先順位づけ。選挙出馬時の公約。公約達成のために敵を作るな。公約達成よりも〝まごころ〟だ。次に選挙出馬前の確認。この4年でやったこと、やっていることを文書に残す。次に調査結果の集大成。視察、文献、セミナー。これらを集大成して、学者なら論文にするところ、議員は一般質問で。それは議員しか「登壇」できない舞台だ。

○住民相談から質問までの流れ。

①現場主義。一人の言いなりはダメ。一人の声を聴いて質問しない。まず現場を見に行く。地域有力者と接触。地域有力者は自分には投票してくれないが、広報はしてくれる。

②次に担当課と協議する。担当の言いなりはダメ。課長と協議する。課長にとって議員に呼ばれるのは誉れ。課長は〝プチ改革意識〟を持っている。「変えてくれるかも」の期待感がある。おすすめは「若手課長」。議員の携帯番号を12つしか知らない課長はダメ。

③先進地への視察。名物担当者がいるもの。知り合っておくとあとで〝大化け〟の可能性も。

④国・県からのヒアリング。国・県の担当者はとても丁寧に対応してくれる。市よりも。直接担当者まで聞いておくこと。

⑤メディアからの情報収集。記者との付き合いを大切に。赴任してすぐの記者とはランチ会を。選挙前の交流はわざとらしい。常日頃の付き合いが大事。

○〝質問〟とは。「市町村の行財政全般にわたって、執行機関に疑問点をただし、所信の表明を求めるものである」。「問いただす」もの。格調高く。「信号はいつつくのか」という質問はもうやめよう。

○〝質問の範囲〟は広い。広域組合のことはどうか。「ホールディング」であり、金を出しており、影響があるから質問できる。

○〝質問の効果〟とは。ただ単に執行機関の所信をただし、事実関係を明らかにするだけにとどまるものではない。〝所信をただす〟=基本をあきらかにすることによって、執行機関の政治姿勢を明らかにし、それに対する政治責任を明らかにさせ、結果としては、現行の政策を変更、是正させ、あるいは新規の政策を採用させるなどの目的にと、効果がある。この「後段」を優先する議員が多いが、まず「前段」部分を踏まえることが大事だ。

○質問の取り扱い

①質問通告。質問は、議題と関係なく行財政全般にわたる議員主導による政策論議である。質問の構成を練り、論理構成をしてその要旨を議長に通告して質問の原稿を作る。議長は、質問要旨を理解して質問と答弁がよくかみあうように議事進行する義務があるので、通告内容には具体性が必要。「市政全般ついて」といった通告はダメ。完璧な答弁を引き出すための通告だ。通告は「議長に出す」ものだ。

②質問要領。質問は議長の許可を得て行う。市町村行政に全く関係ないものは許されない。大所高所からの政策を建設的立場で、簡明で次元の高い質問を展開したい。要望やお礼、お願いは厳につつしむべき。

○博士論文的な原稿の作り方。博士論文はフォーマットが決まっている。

 背景 仮説 検証 結論

 これを「質問の木」で整理していく。

 背景とは、地中の木の根っこに当たる。ここから質問の幹を立て、問題提起をし、質問に至る。結論の設定=答弁予測をしておく。「ふたをあけるまでわからない」ではNG。質問には多大なカネと時間がかかっているのだから。しっかりした根、太い幹がないと枝は伸びない。なぜ質問するのかを自問自答しておくこと。理事者との距離を決定して進める。「WITH」か「VS」か。それにより質問の仕方が変わる。

○A3の紙を広げて「質問の木」を書いていく。

(演習)

「地方創生は市民が主役」との〝幹〟の設定。「協働プラン」をめぐり、「しかし市民は関心がなく、限られた住民のみとつながる市役所」という実態がある。これが〝根〟である。

ここから〝枝〟として、「若手職員のファシリテーター育成」「NPOボラ団体の活動支援」「政治参加教育」「審議会の人選のあり方検討」「自治会・コミュニティのあり方、補助金の見直し」「地域担当職員の活用」「市民相談を政策提言のソースに」などが浮かぶ。

⇒行政と同じ方向を向くために〝根〟が必要。

○財務省のHPは必ずチェックしよう。

96兆円の国家予算。社会保障に31兆、国債に23兆、地方交付税に15兆。

 歳出で96.3兆円-公債費=72.8兆円。

 歳入で96.3兆円-公債費=59.4兆円。

 72.8兆円-59.4兆円=13.4兆円は常に不足している。ゆえに7%消費増税したいのが国の役人。このことを念頭に、質問しよう。省庁のHPをチェックしてから質問しよう。

○地方政治家が必ず読みたい一冊

 ・後藤田正晴『政と官』

 ・橋下 徹『最強の交渉術』

   

2.    感想

 

寝屋川市議会議員として長年活躍された経験を踏まえての説得力あるセミナー。氏も議員時代、紙ベースの「宮本正一NEWS」を発行。サンプルが添付されていましたが、カラフルで写真を多用。「寝屋川市を民営化します」などインパクトある見出しが目に飛び込みます。

一般質問の機会は年に4回。3月議会を終えると私も紙の「新聞」を携えて2か月間配布。その間にいただく市民からの声、相談事が積み重なると、次回6月議会でのいわゆる「質問ネタ」はほぼ満杯になっている、というのが通例です。

今回の氏のセミナーで、要注意と思ったのは「一人の声で質問しない」ということ。現場に行くのは当然のこととして、そこにいる「地元有力者」と会い、意見交換してから、というのは大事な視点と思います。「その有力者は私に選挙で一票入れてはくれないが、広報はしてくれる」とは、いかにも実感のこもったアドバイスです。

自分の、いささかの文章力に頼り、氏の指摘する緻密な質問の構築をおざなりにしているのも私の欠点です。理路整然たる「質問の木」というよりは質問当日までどんどんネタや肉付けが増え、通告締め切り時よりもさらに本番では「てんこ盛り」になってわかりにくくなる、ということもしばしば。そして毎度、時間をオーバーする危険にさらされ、結果、まとまりに欠けるという失敗を犯します。

このセミナー受講を機に、まさに多大なコストと時間をかけて行われる質問の機会を大切に使いたい。充実させてまいりたい。

質問の内容も含め、広く議員への有権者からの満足度を整理した冒頭の論点は説得力がありました。なかでも④「まごころ度」が最も大切、というのには私も実感。「みた目」度まで、最新の注意を払ってまいります。

18歳選挙権も実現します。「あなたの政党の山口代表はいつもさわやかでわかりやすいね」と、内外からお褒めをいただきますが、対照的に自分の欠点を指摘されているようで心苦しくもあります。わかったつもりの早口言葉、くどい言い回し、難解な言葉の多用、指導調・説教調の言葉遣い、などなど。かつて「新聞記事は自分の母親に語るように」と先輩から指導を受けた、という記者の体験談を思い出します。

現実の市議会で、通告のあり方についてはしばしば問題が発生するところ。いわゆる「ガチンコ」勝負とするために質問通告はそんなに具体的でないほうがよい、と言ったのはおととい、同じ場所で受講した樋渡啓輔元武雄市長。市長経験者のほうが「詳しくないほうが良い」と言い、今回、宮本氏は議員経験者でありながら「完璧な答弁を得るために正確な通告を」と語るのは皮肉な結果とも受け取れました。それにしても「通告は議長に提出するもの」という、今さらながらですが、そこにトラブル解決のひとつのポイントがあると思いました。

議長の手腕がますます問われるところ。そしてその手腕がそのままに、丸亀市議会の品質向上につながることと思います。

質問は議員だけに与えられた登壇場面であり、まさに議員活動の集大成の場。一問一答方式になりすでに3年が経過し、「これで満足」という結果の得られない結果で終わっていますが、答弁側の長さと質をどう向上させるのか、それもまた「議員主導」である以上、こちら側の課題として取り組まねばならないものと考えるしかありません。それにしても、「行政からの説明」を求めているのではない、「市長のマツリゴト」と対面したいのだ、との思いを、どのように具現したものでしょうか。

「役所を動かす議員活動」とのテーマに、議員経験17年の今、再度向かってみました。心も新たに、研修の成果をこれからの質問の「舞台」で示してまいりたいと思います。


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