○ネットオークションを利用した公売・売却 広島県三次市
令和5年8月1日 13時 三次市役所
1.視察意図
同市HPの危機管理課のページに、この項目を見つけました。「KSI官公庁オークション」という耳慣れない言葉があります。「紀尾井町戦略研究株式会社」の運営するソフトウエアを活用しているとのことです。実績として、不用になった消防団車両を一般競争入札により売却の例が出ています。
財政の適正な運用の要請のもと、SDGsの観点からも資源の効率的な導入、活用、処分がこれまで以上に注視されます。公有物や差し押さえ物件をどう有効に活用し、かつ処分するか。ここにもネット時代の新しい工夫や取り組みがあってしかるべきと思います。導入経過、手続きの流れ、成果や課題について伺いました。
2.視察の詳細
〇これまでの経過。H16、合併で現在の三次市が誕生。これまで4次に及ぶ行財政改革大綱・推進計画を策定、運用してきたが、その中で、公共施設の徹底活用、市有財産の効率的活用を取り上げてきた。中でも3次大綱で「施設の適正配置と管理形態の見直し」が取り上げられ、現在、4次大綱中で取り組んでいる。
〇差押物件の公売。市民部収納課が所管。H19、Yahoo! 官公庁インターネットオークション」利用申し込み、H25、活用開始。R3、Yahoo!からKSIへ移転。広島県、三原市、庄原市も同様の活用をしている。オークションをやっているのは近隣では鳥取市、三原市、長門市。
〇公売の流れ。家宅捜索で差押→保管と管理→査定、見積価格決定→公売広告・見積価格広告→ネット公売。KSIで最高価申込者決定、売却決定→買取代金納付、引き渡し→税金へ充当。
〇公売実績。H25第1回、絨毯など3件、落札なし。同第2回、絨毯など9件、落札2件、絨毯55000円など。26は7件で落札2件、ソファー111000円など。以下省略。落札物件ではこのほか絵、置き物、衣類、空気清浄機、テレビ、電動自転車、高圧洗浄機、梱包機など。
〇成果と課題。全国へ周知できる。24時間入札に参加できる。これらの利便性により格段の入札参加人数を確保。これによって高価な落札が期待できる。滞納抑止へ、市民へのPR効果がある。課題は保管場所。スペースに限りがあり、物件によっては保管ができないことも。
〇公有財産処分。危機管理監危機管理課が所管。
〇現在、消防団員1296人、施設は格納庫133棟、消防ポンプ車7台、小型動力ポンプ付積載車123台、防火水槽815箇所。概ね30年で更新、廃棄時期を迎える。更新計画、地元要望をもとに経年劣化、損傷の程度から優先順位を決め、随時更新している。これまでは単純に廃車してきたが、R4からこのシステムをスタートさせた。
〇処分の流れ。6月に準備。システム利用料は落札額の8%。8月、入札公告、広報とHPで周知。10~11月、入札参加申込、入札、開札、売買契約締結。12月、入金、物件引き渡し。
〇活用事例。R4、S63年式日産サファリ、予定価格15万円に対し落札価格50万5千円、同H5年式日産アトラス、15万円に対し64万6920円。応札件数はそれぞれ13件、12件であった。R5、H8年式日産アトラス、15万円に対し71万9千円。視察時点でH7年式日産アトラスが入札手続き中。
〇成果と課題。未利用財産の解消と新たな財源確保に貢献。幅広い参加者を募り、高額で売買できる。全国一律のシステムで買い手も応札が容易。入札事務の効率化、手続きの透明化。職員の意識の変化。課題として、組織横断的な対応が必要、可視化により、市民からは「もともと無駄な購入をしていたのでは?」「もっと古いものがあるのでは?」との疑念に対し、丁寧な説明が必要となる。
3.感想
財源確保に対する意識、市民目線はこれまで以上に厳しいものがあります。地球環境、資源の利活用に対し、住民の暮らしそのものがシビアであり、行政はこれまでどおりとの意識から、ネット時代のあらゆるチャンスやシステムに敏感であり、果敢に挑戦していくことが必要です。市民に向けて「ムダをなくす」「税金の公平さを確保する」「滞納に対する意識を高めてもらう」などのメッセージ性があり、また下取りを業としている全国の人に呼びかけて入札することで大きな手ごたえがあることを確認できました。私も一度、オークションに参加したことがあり、締め切り直前になると異様な興奮状態になることを経験しました。説明いただいた担当者の方も同様の経験をしたとのことでした。これらを通じて、高額に売却できることもさることながら、職員の財源意識にも良い作用をもたらすことが期待されます。おそらく今後、これは、形は違えども公共の「標準装備」となっていくのだろうと思います。丸亀市でも飯山町の体育館でアナログな形で公売をしました。私も出向いてみましたが、準備から撤収まで、職員にかかる手間や時間はかなりのものです。それに対して収入はどうだったのかを検証のうえで、こうした時代に相応したシステムをぜひ前向きに検討されるよう望みたいと思います。