レポートTOP

○「政策企画部が進めるまちづくり」ほか      島根県大田市

 

1.    概要

 

平成30131()

視察項目①「政策企画部が進めるまちづくり」について

    ②「多世代同居近居支援事業」について

 

2.    視察①「政策企画部が進めるまちづくり」について

 

○「市政策企画部まちづくり推進課」。市の企画部門が旗振り役となり、同市の「協働によるまちづくり」と「持続可能なまちづくり」を担っている。

○人口がここ10年で5000人減少、合併したH17年の4万人から現在35千人へ。市域7ブロックに計27カ所の「まちづくりセンター」を設け、推進。

○合併後のH18より、地域コミュニティの活性化+効果的・効率的な公共サービス提供+市民や地域のまちづくりへの参画、この3つを実現するための“協働によるまちづくり”をスタート。同4月、7つのコミュニティブロックを設定しそれぞれに「まちづくり委員会」を設置、同12月、「協働によるまちづくり推進指針」策定。H2127のまちづくりセンター、7つのブロック公民館、ブロック支援担当職員を配置。H244月、本庁に「まちづくり支援担当」を集約。

○この活動により、人材育成、文化伝承、地域福祉、高齢者福祉、子育て支援、地域美化、防災・防犯、産業振興、健康づくり、定住支援を推進。その全部を全地区が推進するのではなく、例えば乗合タクシーは3地域、農家レストランを2地域、買い物支援を4地域で展開するなど自主的に協議。耕作放棄地解消には12地域が取り組み、久利地域でのさつまいも産直市開催は人気を博している。

○取り組み事例として紹介されたもの①仁摩地域の「恋活実行委員会」②三瓶地区の「てご使隊」(除雪作業や粗大ごみ搬出、家事援助)③長久町地域の若者組織結成。イベント、高齢者生活支援、地域の清掃活動などに若者40人が活躍。

H29からは「持続可能なまちづくり」推進事業をスタート。手順は①意識醸成し組織を形成する②地域ビジョンを作成し担い手を確保する③仕組みづくり④収入確保、運営費用の確保。「協働によるまちづくり」から「持続可能なまちづくり」へと事業転換を図っている。

○まちづくり推進課の人員体制。推進係1名、まちづくり支援担当7名。合併当時は「総合政策部地域政策課」→H22「総務部まちづくり推進課」→H26「政策企画部地域振興課」。意思疎通ができやすくなった。

○まちづくり推進課のメリットは地域が相談しやすい、活動支援が迅速にできる、など。デメリットは職員が苦情受付係になり負荷がかかる、職員に頼り、自立につながらない、など。

○地域への支援内容。①ブロックーまちづくり委員会活動交付金、同運営交付金②まちづくりセンター活動等交付金③市民・地域団体の活動に対し地域力向上プログラム事業交付金④地域運営組織へステップアップ準備交付金、持続可能なまちづくりサポート事業補助金。

H27から地域力向上プログラム事業。財団からの助成を活用し、公開プレゼン方式で事業を選択。毎年68事業。ソフト事業に上限30万円で9/10の補助率。ハード事業に上限50万円で同補助率。

H29からステップアップ準備交付金。地域課題の解決に向けて自治会、老人会、婦人会、地区社協、PTAなどを結集する活動を助成。視察、研修会、ファシリテーター育成、会議費など。まちづくりセンターに各10万円。

H29から持続可能なまちづくりサポート事業(県補助金を活用)。地域住民が展開する「生活機能の確保」事業を支援。地域コミュニティに補助率9/10で上限200万円、市内の特定非営利活動法人に補助率2/3で上限200万円。必要な修繕、車両や設備の取得を対象。

 

3.    感想①

 

 深刻な人口減少傾向。行政からの支援や施策には限界があり、これからのまちづくりはそれぞれの地域の特徴、強み、人材を生かした、地域住民の合意と納得のうえのものにしなければ、市域一律画一では持続できない。無理がある。こうした意識を強く前面に出した市の方策だと感じました。

 推進するのは市民部局でなく総務政策部局。まちづくりへの住民の意識や行動が市長にダイレクトに伝わる。私が常に提唱しているのはこのことです。私は、まちづくりは市の市民部局のみが担うのでなく、教育も都市計画も災害対策も含めた「総務」部局で、全庁横断的に、市長直轄で推進すべきと考えています。

 それがカタチになっていると、大田市の姿を見て感じました。

 それにしても悩ましいのは、あまり手厚く行政が乗り出すと地域の自立が進まない、というジレンマ。地域に職員を着任させる。たちまち職員は苦情と要望処理係になってしまう。これでは職員も地域住民も気の毒だと思います。わが丸亀市も「地域担当職員」を配置していますが、その活動ぶりと課題、そして成果を「見える化」し、職員も、また「よその地域のようす」も全市で共有する、それが理想だと思います。そのためにも市長直轄が望まれると思います。

 これを参考に、その悩ましさを打ち破る粘り強い試行錯誤を続ける以外ない、そう思いました。

 

4.    視察②「多世代同居近居支援事業」について

 

H2712月議会で一般質問を受けた。まち・ひと・しごと創生総合戦略策定時に議論し、事業を構想した。

○事業内容。市内で親・子・小学生以下の孫の多世代で同居、直線2㎞以内での近居、3年以上継続見込みの世帯を対象に、1世帯5万円を補助、さらにUIターンには25千円を加算。(H29はそれぞれ4万円、2万円に改定)

○交付実績。H28は申請12(うちUIターンは7)H2916(7)

同居・近居の別ではH28同居9、近居3H29同居12、近居4.

 

5.    感想②

 

 ご恵与いただいた立派な冊子「H29年度版 定住支援ガイドブック」。表紙には4コマまんが。浦島太郎のパロディーで、いじめられているのはカメでなくサザエ。大田市のマスコットキャラです。助けてくれたお礼に、すてきな場所にとご案内。「もしかして客引き?」との心配をよそに、住民が横断幕を持って歓迎する光景。「ようこそ!! 住みたい田舎「日本一」の大田市へ!!」で幕。ちなみに裏表紙には「おおた」じゃないよ「お・お・だ」だよ、と手作り感がいっぱい。同市の定住サイト「どがどが」がアピールされています。

 ページを開くと、UIターンの相談窓口、住まい探し、同窓会、仕事探し、大田の暮らし、観光情報、転入手続き、ふるさと納税、山村留学センター案内など至れり尽くせり。空き家バンク、定住奨励事業などといっしょに、多世代同居近居支援事業も紹介されています。さらに県の「暮らしお試し体験施設」、市の備える「木質燃料活用機器導入促進事業」「生ごみ堆肥化装置設置事業補助金」「太陽光利用システム導入促進事業」「家庭用燃料電池導入促進事業」ほか、ユニークなところで「石州瓦等利用促進事業」なども掲載。本気度、というよりも「真剣度」が伝わってくるコンテンツです。東京、大阪での相談会にも参加表明。仕事探しではハローワークのほかジョブカフェ、創業支援、保育士さんいらっしゃい、産業体験支援、農業研修まで。全力を挙げている雰囲気がみなぎっています。

市役所が「総力を結集」。ずっしりと手ごたえを感じます。補助金制度を準備すれば足りる。そうではない、執念やエネルギーが政策には必要。そんなことすら感じました。

 少子高齢化は容赦なく進みます。自治体が人口の争奪戦をする、とも揶揄されますが、「ここにしてよかった」と喜ばれるために必要なのは、それへの飽くなき追究をやめない、行政の意気込みなのかとそのように思いました。


レポートTOP