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○証明書コンビニ交付                  宮城県大崎市

 

1.視察意図

 

コンビニでいつでも、全国どこからでも住民票などが受け取れる。

関西に展開していないセブンイレブンがまずこのシステムを受け入れたことで、すでに関東では普及が進んでいる「証明書コンビニ交付」の事業。関西ではまだ「日常的」にはなっていませんが、全国展開ももう時間の問題とも言われています。

便利なのはわかっているがどれだけ経費がかかり、メリットとデメリットはどうなっているのか。この事業に先進的に取り組む宮城県大崎市に伺いました。

 

2.システムの概要

 

○住基カードを使って全国の「キオスク端末機」で証明書を取得できる仕組み。

不正アクセス、情報流出を防ぐために専用回線、ファイヤーウォールを用いる。

○現在のところ、住基カードの普及率は656万枚÷全人口=約5%。大崎市民の取得率は

 約2%と低く、今年度中に6%達成を目指している。(県下の第1位は仙台市)

○導入までの経緯

・市職員の定員適正化計画により400人の職員削減が進んでいる(H1827)。

・ワンストップ窓口を実施し、あらゆる証明書を市民課で交付することになったことに

 より、待ち時間が増え、窓口混雑が発生している。

・証明書の取り扱い件数を見ると、住民票と印鑑登録証明書で6割に達する。これをコ

 ンビニで交付することにし、市役所の職員減や混雑緩和ができる。

・古川駅の市民窓口が廃止されたことで利便さが低下している。

・日曜日も午前中の4時間を開庁して交付している。時間外交付の要望も多い。

・LASDECと呼ばれる補助事業がH26までの3年間で終わる。この制度を活用する

 ことで経費を安くする。特別交付税も活用。

・全国的にはH222月、千葉県市川市、東京都三鷹市、渋谷区が先がけ。現在、42

 団体が実施。大崎市では人口規模が同じ会津若松市を参考にした。

○推進策

・対象は住民票の写しと印鑑登録証明書とする。

・住基カード登録を無料化する(H26.3まで)。

・住基カードをもっと利用できるようにする(図書館、税や戸籍の証明など)。

・写真を無料で撮影、出前申請などでさらに普及を図る。

・のぼり、広報でさらにキャンペーンをする。

○見込まれる効果

・早朝、深夜、休日でも取れる(6302300)。

・全国13000店舗のセブン・イレブンで取れる(大崎市内には26店舗)。

・申請書を書くことも不要、待ち時間なし。

・市も発行業務を少なくできて、個別対応の時間を増やせる。

・混雑緩和

○費用対効果

・手数料300円のうち120円がコンビニの収益となる。

・これによる収入源額と導入経費との合計よりも、経費削減効果のほうが上回る計算。

 (ただしLASDEC助成金と特別交付税を算入した計算による)

 

3.感想

 

大崎市は市域800平方キロと広大。合併により誕生し、旧古川市で実施していた時間外交付も新市全域で実施していた。時間外や休日にも証明書交付サービスがあり、さらに拡充してほしいとのニーズは高かった。そこに駅での発行業務も終えることになり、また広い市域で市役所が遠いということもあり、コンビニ交付に踏み切った。

しかし大崎市がコンビニ交付事業で目指すのはこの分野での市民ニーズを解決するというだけでなく、行政資源の効率的運用という側面も持つ。市役所窓口で行政職員が証明書を交付するということにかかるコストは高い。民間にできることは民間に。そのことで、本来、行政が手がけなくてはならない課題に、行政マンは専念する。このことも大事な利点である。

さらに、政府が進める「電子自治体」構想がある。将来的にはこれにマッチングした地方自治体のシステムにしていかなければならず、今回のコンビニ交付はその一面を担っている。

同市を訪問し、新幹線を降りてすぐのところに市役所があるのに、案内いただいたのはとても遠い別の庁舎。旧町の庁舎も現在分庁舎として使われている。なるほど、たいへんな市域の広さである。

東日本大震災から12ヶ月を経ているが、市内では折れた電信柱は取り替えたものの、いまだに斜めになっている電柱は使われている。停電は57日間続き、給水には復旧に1ヶ月を要した箇所もあったとのこと。

復興作業にも自治体の大きな力が割かれていると思われるが、まさしく市役所と市民が総がかりで復興に取り組む中で、このコンビニ交付事業はその一環としても期待され、民間活力利用を通じて市民の利便に資するという時代のニーズにも的確にマッチしていると思われた。

これからは国からの補助が見込めないことも考えられるが、タイミングを見計らい、コンビニの事業展開を見極めて、丸亀市でも遅れることなく、この事業を検討するべきと思われた。市役所職員が住民票を交付している、というごく当り前の光景にさえ、今は「カイゼン」の目を向けなければならない。この局面から、大いに重要であると思われた。

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