レポートTOP

○住民がつくる「おしゃれなまち」セミナー       東京都

 

1.セミナーの概要と聴講意図

 

  日時 平成31326日 13:3016:30

  会場 日本都市センター会館

主催 住民がつくるおしゃれなまち研究会

(戸田市と日本都市センターが共同設置した会)

  演目 住民がつくる「おしゃれなまち」

  副題 ~近郊都市におけるシブックプライドの醸成~

 

 副題にある「シビックプライド」。市役所がまちをつくるという観念や時代性を超えなければならない、との意識がとみに強くあります。

 まちづくりの成否はそれに市役所が気づくかにかかっており、元号が変わろうとも人間、そう簡単に意識が変えられるものではなく、失礼ながら公務員の意識と言うのは相当なテコ入れをしなければ、機構や人物、指導体制を変革しなければ変えられるものではない。しかし厳然と、それに対応して見事にシブックプライドの育成に成功し、あるいは少なくともその意識で取り組もうとしている自治体はすでに数えきれないと思います。

 今回の主催をしているのは自治体シンクタンクの役目を果たす日本都市センターが戸田市とコラボして共同研究した成果を発表するというもの。同日、研究成果をまとめた本も上梓され、さっそく会場で買い求めました。

 わが丸亀市にあっても職員、議員がその意識を広く共有することが必要。そして首長がその指揮官としてしっかり旗を振ることが肝要。その一助となればと、議会最終日の翌日日帰りで、東京に聴講に参りました。いわゆる「平成最後の」、私のセミナー参加です。

 先日の朝日新聞のコラムに、丸亀市もかつて招聘し講演をしていただいたコミュニティデザイナー、山崎亮氏の言葉がありました。「まちづくりは、“正しさ”よりも“楽しさ”がなければ」という趣旨でした。

 今回のセミナー「おしゃれなまち」には、その“楽しさ”の予感がします。どんな切り口を教えていただけるか。楽しみに臨みました。

 

 

2.基調講演

  早稲田大学社会科学総合学術院教授 卯月 盛夫 氏

 

○「近郊都市」とは中心都市からおよそ11時間半ほど離れた住宅都市・ベッドタウン。通勤圏内。もともとは近郊野菜を提供していた農村。大規模団地や戸建て住宅のすき間に畑や田んぼが残る風景。学校、道路、公園の整備に追われて無秩序なイメージ。後でできた道路が地域を分断したり、個性のない駅舎、駅前広場がある。こういうイメージ。

○ここには比較的高学歴の人が住み、キャリア女性も多く、新しいライフスタイルを求めて「行動する市民=アクティブシチズン」の比率が高い。

○「行動する市民」⇔「要求する市民」。要求型でない市民こそ「活かせる資源」だ。戸田市では、要求するだけでなく意見を言い、行動する市民が登場。世田谷ではかつて、古い農家の人々のしがらみ発言により若い市民の行動にブレーキがかけられた経緯がある。

○開発され古いものがなくなり自然景観も失われつつあるが、「微地形」が点在して残る。これがまち歩き・発見の資源となる。

○工場、倉庫が使われないで残る。これの利用転換で資源化。

○戸田市における夕景のおしゃれな水辺は大きな資源と着目。これを活かそうとするのがシビックプライドだ。また川辺に「寝っ転がって見られる戸田橋花火大会」は花火が降ってくる体験ができ、東京にはない。近郊ならではの貴重な資源と位置づけ。

○定住をめざした住宅政策。近郊都市は人口流動性が高い。都心の手狭なアパート暮らしから「川を越える」ことで、手軽な値段と通勤時間で子育てが叶うマンションや住宅が手に入る。

○最近では子育て世代同士の「コーハウジング=共生の住まい」も。これは世界共通の流れ。コモンキッチン。個別の専用スペースは比較的狭いが、共用のコモンキチンは広く取る。360度から人が作業できる「アイランド型キッチン」。コモンダイニング。食堂にも遊び場にもなる。専用部分から各自が1割を共同部分に提供する考え方。吹き抜けで楽しくパーティもやる。別に畳部屋も用意し、親などが泊まることにも対応。

○市民活動支援のまちづくりファンド。アクティブシチズンの活動を財政支援する仕組み。同時に活動を技術的にアドバイスする専門家が伴走する仕組みも必要。これらにより「新たな公共」としてのコミュニティビジネスが生まれている。行政があれもこれもやるのでなく、市民のアイデアをになうべく市が補助、融資で応える。これに民間資金を乗せるという仕組みが理想。

○横浜市での実例。ある主婦が、役所がなかなか動いてくれないので自ら会社を辞め、「コミュニティカフェ」を開設。客からさまざまな「お困りごと」が持ち寄られ、これに対応する役目を果たすようになった。今では市職員がここに食事に来て、一緒に対応、また「チラシを置かせてください」ということになった。

○近郊都市に住むお父さんたちが近所の農家にお願いし、子どもらに野菜作りを教えてもらった。これは役所がやったのでは住民は乗ってこない。

○公共空間の質の向上と市民による利活用の推進。公共空間のデザインの質によって、市民から選ばれる時代だ。シビックプライドの醸成に果たす公共空間の役割は極めて大きい。

○「豊かで美しい景観」。それを「自由に使える市民性」。両面が重要。

○都市公園法、河川法、道路法の改正、通達、特区制度により、規制はかなり緩和された。自治体、市民のアイデアこそ重要になってきた。

○江戸時代から続く街路市を継承し、さらに今日的に発展させた事例。

○公園の市民利用が法改正で可能になった南池袋公園の事例。

○学校帰りの生徒が水辺の芝生公園で自由にくつろいでいる、これが理想。

○プラットフォームの必要性。多様な主体の連携、≪共働≫の仕組みが必要。役所はしつこく≪協働≫と書くが、実現は難しい。行政だけ、市民だけ、ではできない。行政、市民、企業、NPOがうまく≪共働≫することだ。第1次プラットフォームは「情報共有」。第2次プラットフォームは「課題解決」。この二層性を理解する必要がある。さらにプラットフォームの運営を担う「プラットフォーム・マネージャー」の存在が極めて重要。

○エリアマネジメントの実験。市が、市域全体で回していくのでなく、一部地域で回していくイメージ。地域課題を解決プラットフォームの先に、地域の自律システムが構築される。自治体に対し、「都市内分権」組織として位置づけられる「エリアマネジメント」組織が一つの姿だ。自由が丘駅前広場の社会実験を担った㈱ジェイ・スピリットの事例。(一社)蒲田おいしい道による「おいしい収穫祭」の事例。

○おわりに。近郊都市は受動的だった。今こそ独自の都市ビジョンを持つべきだ。アクティブシチズンの多いことが幸いだ。新しい文化は「周縁」から生まれる(=文化人類学者、山口マサオ氏の言葉)。自治体の力と市民の知恵を結集すれば、唯一無二の個性的なおしゃれなまちの実現は可能。

 

 

3.話題提供①

日本大学理工学部まちづくり工学科教授 岡田 智秀 氏

 

○「訪れたくなるまち」というが、テーマパークでも作らない限り、無理だ。

それよりも、住み続けたくなるまちづくりが重要だ。週末体験農業、グリーンツーリズム、ブルーツーリズムなどが盛んになってきた。先ほどの卯月先生のスライドのように、学生が放課後にお菓子を食べられる場所が大事だ。

○戸田の水辺。水上に、水辺に多様なアクティビティあり。この「辺」というのが重要。浜辺、川辺、野辺、山辺…。日本語としても美しい。「辺」とは、「沖」という概念と「奥山」という概念の中間。「オキ」と「オク」は人里離れた場所。「辺」とは、人が住むのでなく、自然と戯れ、リフレッシュするために行くところ、というイメージがある。唐津市の「虹の松原」は人口植林でできた防災施設。このように「辺」は多様な機能を持つ。和歌山県広川町の「広村堤防」。人が自然と戯れる「辺」の事例。

○そのルーツは。18世紀、産業革命前後に、クマと闘うという野蛮な遊びがあった。それがやがておしゃれに洗練され、プロムナードで憩うという姿に。ニース、カンヌなど。ニースはまさに“nice(ナイス)”な場所。そぞろ歩き、カフェ、見る、見られるの相互の関係。おしゃれな装置である。

○戸田の水辺はプロムナードの機能を持つ。富山県の富岩運河では環水公園にスタバ。「世界一きれいなスタバ」で表彰された。水辺カフェのポイントは水面に映る景色を強みに。ガラス建築が映える。アクアマリン福島は周辺の「暗さ」を逆手にとって成功。それを眺めるビューポイントとしてボートテラスを作り、おもてなしの場に。加茂川は水陸両義的な空間。飯田橋のカナルカフェは水辺ぎりぎり。このように水辺との高低差を活用し、いろいろな表情が味わえるように。品川区の水上レストランは天王洲アイルから徒歩8分。

○河川敷はさまざまな規制あり。ゆえに「仮設」の施設からスタートする。規制緩和で、墨田川にもできつつある。

 

 

4.話題提供②

  事業構想大学院大学学長・教授 田中 里沙 氏

 

○田中学長はかつて広告編集長のキャリアを持つ。現在、中央環境審議会委員、地方制度調査会委員、政府広報アドバイザー。これまでに「クールビズ」「2020エンブレム」「伊勢志摩サミット」「G20」ロゴや自治体キャッチフレーズなどに関わった。広告・広報コミュニケーションで活躍。

○事業構想大学院大学とは、地方創生を学ぶ大学で、社会人のための大学。マーケティングとは「どう人の心を動かすか」。行政で言えば「トップの思いを“見える化”する若手の力」を養成する。これまでのように「あれもこれも」では、受け手(である住民)は迷惑だ。資源掘り起しと発進の力を培う。そのような人材育成をする大学。東京、大阪、名古屋で開校している。新規事業担当者、事業承継者、起業を目指す方、地域活性を担う方を対象。“プロデュース”できる人を養成する大学である。

○持続可能な地域とは?社会とは? 人生百年時代、若者だけでなく老人もまた「新しいライフスタイル」を求める。

○よく「住みやすさランキングナンバーワン」などと言われるが、得てして首長の満足であり、住んでいる市民に実感はない。これからは住んでいる人の実感、共感、連携が大事だ。当事者意識を持つ市民が「自分で獲得する」ことが大事だ。

佐世保市の例。かつて西海国立公園は誰も振り向かない場所だったが、映画「ラストサムライ」が着目して再発見された。風とか水とか、知ることがメディアの最先端だ。住んでいる「中の人」と「外の人」つまりクリエイターの両者が必要。

○「九十九島の九十九ネタ」というキャッチがブレイク。

・「見てみよう」では「神様ありがとう! 的な夕日です」「岩肌バームクーヘン」「防空壕BAR」「恋に効くワンナイトハイビスカス」「超絶かわいい狛犬」など。

・「食べてみよう」では「東京で食べたら2万円定食」「かまぼこのストロー巻き」「シャンハイでは3000のカキ」など。

・「やってみよう」では「びしょ濡れ覚悟のイルカショー」「ふわもち!ふくれまんじゅう」「無人島女子会」「猟奇的!真珠採集体験」「堤防ダイブ」など。

99の「いいネタ」をネットで発信。

○これを整理すると、例えば子育て、コンパクトシティ、便利な買い物、アクセスの良さ、といった「分散している魅力」を、ひとつの「ブランドコンセプト」を扇の要のように位置付けて、そこに各ブランド要素を集約するという作業をすること。まずトップクリエイターが市長と対談する(=コンセプトワーク)。伝わってきた言葉からコピー案、ステートメント案、それぞれ3案ずつ提案する。まずこの「コアコンセプト」を見出し、それを発信する。動画、キャッチフレーズ、画像。あらゆる手法を駆使。市の作る分厚い「計画」。これは読む人のために“再構成”すべきだ。参加してもらうこと、体験してもらうことからスタート。これがトレンドだ。

○春日市ブランドコンセプトの事例。協働のまちであることを表現。「みんなで春をつくろう」とのキャッチ。

○中高生から70代まで、一堂に会して聴いてみよう。市民と市民が向き合ってみることだ。

○武雄市ブランドづくりワークショップの事例。「それ、武雄が始めます。」とのキャッチ。

○三条市。廃校・温泉などのスポットと棚田を掛け合わせてランニングコースを設計。「地域の道を、走りたくなる道へ」。走ってみるといろいろ見える。外の目を借りる。「いいね」「危ないね」と気づいていく。人の力を借りて。3年がかりで立ち上げ。

○飯田市。農泊先進地。棚田ランで新たなターゲットに訴求。モデルコースを「Runtrip」サイトから発信。ターゲットの明確化、コンテンツの充実、観光の動線整理、メディア活用などtodoを整理していく。

○横浜市と事業構想大が連携協定を結び、「水辺を活かした魅力づくり」。2018からはライトアップ。19からは食。空きビルをリノベしてコンテナ店。20からはアクティビティ。「川の上からまちを見よう」。

○クリエイティブな視点で情報発信。ニュース性、理解・共感・好感・意味、ビジョン、一貫性と継続性。行政が一人で作らず、広報パーソンをたくさん作れ。

コミュニケーションによる価値創出。①見える化②関心③理解④共感⑤自分ごと化⑥気づきのアップデート⑦気づきの拡張。このプロセスを通じ、対象者を想定し、適切なメディアに適切な表現で情報発信、確認を繰り返す。そして「全員が当事者」になる巻き込み力を醸成していく。

○クリエイティブとは。予算の制約や法令による規制は常にある。制約制限のある中で考え続けることだ。

○楽しく、面白く、新鮮な驚きを。

○相手の立場、環境、視点からの想像。

○世の中の気分の理解。

○「おしゃれ」という言葉ももう古い。「ナウい」がナウくないように。でも一周回って、やはり「おしゃれはおしゃれ」だ。市の経営資源を見出して、磨きをかけ、発信することを研究し続けよう。

※事業構想大学院大学は定員90名、修業年限2年で34単位以上、授業日は平日夜間ならびに土曜日昼間。東京は青山、大阪はグランフロント、名古屋はJR

ゲートタワー内に所在。

レポートTOP

 

5.事例報告

  戸田市こども青少年部参事 梶山  浩 氏

 

○戸田市のプロフィル。平均年齢が低く(40.8歳は24年連続県内1)、高齢化率も低く(16.69%は全国市区3)、人口増加が続く(転入9951人転出9231)都市。

○戸田市はH20より自治体シンクタンクを持つ。

○近郊都市の価値を高める6要件とは①便利②環境③安全④医療⑤教育、そして⑥おしゃれ、だ。戸田市は⑥の評価が低いと認識(住民アンケートで「洗練されている」と回答した人はわずか1.3)。住民が主体となり「おしゃれ」な都市をデザインすることで共感を生もうとしている。

○「おしゃれな都市」の二つの捉え方。景観的な視点と住民的視点。後者は「人と人がつながら豊かなライフスタイルを楽しむことができる都市」と理解。そこで戸田市の水辺空間の魅力を構築。荒川、彩湖道満(さいこどうまん)グリーンパーク、笹目川、戸田漕艇場の4要素を連動させることで住民の「縁遠い」感覚から脱皮。ボートをやらない人には関係ない場所だった漕艇場もボート体験、水かけごっこなど楽しめる場に。笹目川からは船で荒川に出るという仕掛けを。おしゃれ志向の高まりを役所の力を借りないで実現しようという住民たちの盛り上がり。このように「魅力+人=豊かなライフスタイル実現」となる。キーワードは「主体的」「共感」「創造的」「付加価値」「多様性」…。市民が「お客さん」から「主体」に、“自分ゴト”と捉えるようにしていく。

○ポイントは①水辺空間のネットワーク化②おしゃれをコーディネートできる組織や住民の育成③おしゃれな都市を創造していくための行政内部の連携。

○今日、報告書が上梓されたがこれは「終わりでなく始まり」。これからは、市域18㎢、まっ平、舗装率99%は「自転車向き」であることから「自転車まちづくり」に取り組む。土手をママチャリ2時間で臨海公園まで行けるという取り組み。下りはチャリ、上りは船、というのを構想中。市民の中に「コーディネートできる人」「束ねる人」が必要。それを育成し、組織化していくのが今後の課題。これからは市に「おしゃれ課」が必要。

 

 

6.パネルディスカッション

  上記卯月、岡田、田中、梶山の各氏

 

≪卯月≫

○「アクティブシチズンが育たない」の声に。行政の差は大きいが、市民の差はそれほど大きくない。説明会をやっても市民が来ないのは、市民意識が低いのでなく、やり方が悪い。決めたものを説明したって誰も来ない。決める前から来てもらおう。つまり市民を信じてないのだ。

○補助金は“ヒモ付き”だ。市民運動を活発にしたいなら補助金はやめて助成金に。こちらは自由に使える。補助金を出し「あとは努力して」では育たない。補助金は3年で打ち切り。ここからは企業の寄付や銀行融資につなげないとビジネスになっていかない。「市民活動支援は子育てと同じだ」。寄り添い、伴走せよ。

市民活動推進課は、補助金を出す役所であってはいけない。金融機関とつながりのない市民活動の役所などあり得ない。市民は無関心なのでなく、諦めているだけだ。「プチ成功体験」=「皆に喜ばれた」を重ねよう。

○横浜市のコミュニティカフェは、子育て中のお母さんが作った成功例だ。500万円で空きオフィスを直し、開設。プラス融資、商店街、企業との連携で黒字化を達成した。保土ヶ谷市役所と連携し、赤ちゃんに「おめでとうBOX」を作りおむつなどのプレゼントをしているが、これらの中身はすべて企業からの寄付で成り立っている。

○高知市の有休農地活用の例では、社協、農協、PTAの共感を得て継続性を確保。6年になる。工夫は市民のアイデアだ。

≪田中≫

○流山市「母になるなら流山」の成功例。これはメディア戦略の成功例だ。コピーライターを起用。セミナー、体験談、産業界を巻き込む。そこには成功法があるのだ。まちづくりは「掛け算」だ。こちらが「1」や「ゼロ」ではダメだ。対象者の声を聴こう。公務員は完璧を目指すものだ。私たちは、難しいことは人に投げる。

○河内長野市は少子高齢化で悩んでいたが「課題先進地」を標榜した。スマートシティを市長が旗揚げ。デジタルアプリの導入でメディアの注目を引いた。「便利かも」「住んでいいかも」となり、首長の「PR戦略」成功例となった。ニュースに乗っかることが大事だ。さらに知りたくなるものだ。

≪岡田≫

○戸田市の「This is TODAとは?」。①ボート場。これはメジャーな存在。アピール力の成熟が大事。ボート場だけだったら「あるだけ」だ。隣の公園は役立たぬままだった。これを「くつろげる空間」に仕上げた。知名度とは、どこでも「飲み食い」とセットがDNAだ。②倉庫群。こちらはマイナーな存在。でも独特の「無柱空間」の魅力を持つ。スタジオ、カフェ、コミュニティの場に。デザイン次第で倉庫もおしゃれに。マイナーをメジャーに。

≪梶山≫

○不動産屋さんと仲良しにしている。ここまで話した政策秘書室にいた当時に取り組んだ仕事だ。今は「こども青少年部」だが。「庁内連携」は政策秘書が実施する。「横串」は難しいが、組織化をぜひやりたい。今回の研究も「おしゃれ」が戸田市のウイークポイントだと認識していたから都市センターとのコラボに乗った。そして高い成果を目指した。プロポーズして実現したものだ。ここからは、女性ビジネス応援もしたい。市が場所を提供し、時間があるときに作ったピアスなどの小物を、ネットで大々的な商売をする気持ちのない女性に「ゆるい商い、働き場所」をセットする。10時から15時までやりたい、とかの希望を叶える。

≪田中≫

○「クリエイターフレンドリーな街」とは? 自由、便利、自然体、プラス刺激があること。そのために創意工夫をする。それがクリエイターだ。「思い」を「カタチ」にしてくれる人を育てることだ。クリエイターは気難しいと思われているかも知れないが、反面、考えている人でもある。こういう人とフレンドリーになってほしい。

≪岡田≫

○人の集まる仕掛けとは? 八千代市に関わった。放牧場があったがこれまではほったらかしだった。これを団地にしたところ東京から大挙して流入。それが今は一気に高齢化。イナカでもなく都会でもない。「まち人しごと創生」で同市から相談を持ち掛けられた。そこでまず「町会長の一本釣り」からスタートした。ワークショップを開き、10回で250人が集まった。まちづくり合同会社を設立。

財産とは“人”である。集まり、発言し、実行してくれる“人”こそ資源だ。ロータリーで盆踊りを始めた。空き家をカフェに。これらは人と人とのつながりで実現できるものだ。行政と住民との信頼関係を築くことだ。今は廃校プロジェクトに挑戦中。

≪卯月≫

○「まちづくりファンド」とは? ある市では1980年に「まちづくり条例」。地区ごとに協議会を立ち上げ、それぞれに地区計画を作った。これを基に行政が予算付けに動いた。しかしこれだけではダメだ。「まちづくり協議会方式」でなく、もっとエリアを広げて市の環境、子どもなど課題解決に取り組むため、90年代、「公益信託まちづくりファンド」を設置した。例えば「まちづくり条例」では「ハマらない」市民もいる。世田谷の再開発プランに反対の人に市から予算は下りないが、公益信託ファンドなら助成が可能。この人に「まちづくりセンター所長」をお願いした。50万円を上限に、ソフト事業を行う内容だったが、そこからまちづくりの拠点づくりへと進展。運営助成金も出せるようにした。ここから先は企業からの寄付、そして銀行融資へと展開する。

○企業もできない、行政もできない。そこを市民がやる。それを行政が支えていく仕組みを。

○「おしゃれなまちづくり」へ、既存の規制をどう突破するか。漕艇協会や県などに頭を下げてきた。大切なのは成功体験だ。それを基に来年も、成功した町内の隣の町内でも成功体験を実らせていく。その「意を汲んだ」取り組みを、情熱を持ってやってきた。

 

 

7.感想

 

 私は、「イマドキ」の公務員が仕事をしていないなどとは言っていません。複雑化し、絶対量が絶対に増えていく公務。世間のあらゆる場面で「なり手不足」が言われる。公務員“でなければできない”仕事を精選していくべきである。災害時に、ライフラインは公務員でなければほんとうに信用できないのか。民間社員には一切任せられないのか。ガソリンスタンドもそうなのか。電車も電気も。そんなはずはないことを、日本の国はすでに証明しています。私はくれぐれも、公務員である現業職員や保育士が「ラクをしている」などと言っているのではありません。ほんとうに「定員管理計画」を守るなら、民間にできることを計画的に手離し、公務員にしかできないことに人を注ぎ込まないのか、そのことを何度も私は申し上げてきました。理解できる答弁がないからこそ、「ホントは身分を守りたいからじゃないのか」という低レベルの疑心暗鬼になってしまう。部長以上の執行幹部が、私たち市民に対してきちんと説明をすべきだ。そのことを何度も申し上げてきました。

 「公務員にしかできないこと」。それを今回のセミナーで深く理解できました。戸田市の、当時の「政策秘書室」の職員が、市のお宝である「水辺」の再構築を担い、県のお役人や漕艇協会のお歴々にも頭を下げてそれを実現した。これこそ「公務員にしかできないこと」なのだ、と。

 ではセミナー中に出された発言を辿りながら、それをもう一度確認したいと思います。

 「辺」の話。「海辺」という言葉もあります。丸亀市には大きなお宝です。こここそシビックプライドの結集地に望ましいと思って、新市民会館の建設候補地として私は主張してきました。それはついえ去りましたが、それにしても駅から港までは捨て置かれたまま。知恵のない行政に任せてはおけない。行政は自身が福島・新町をどうこうしようとせず、そこから撤退してそこをどうこうしてくれる「人」を導き込むことを考えるべきではないか。

 今回のセミナー参加で最も大きな収穫だったのは田中里沙氏の存在。わが市もぜひ、氏とこれから情報交流、アドバイスを受けるように、これから提案していきたいと思います。

いわく、「トップの思いを“見える化”する若手の力」を養成する。

いわく、市の作る分厚い「計画」。これは読む人のために“再構成”すべきだ。

いわく、まちづくりは行政が一人で行わず、広報パーソンをたくさん作れ。

そして「クリエイティブとは」。予算の制約や法令による規制は常にある。制約制限のある中で考え続けることだ。

これまで昭和の時代から、失礼ながら国の補助金の指針のままにある意味「思考を捨てて」まちづくりを推進してきた。この観念をどれだけ早く転換するかが、ポスト平成の世の公務の最大の課題、住民の宿願、ではないのでしょうか。

これからの公務はひたすら「アイデア」「人脈」「市民とのパイプ」が決め手なのではないでしょうか。

戸田市職員の梶山氏。「これからは市に「おしゃれ課」が必要」。言い得て妙。

卯月氏。「アクティブシチズンが育たない」との参加者からの問いに。「行政の差は大きいが、市民の差はそれほど大きくない。説明会をやっても市民が来ないのは、市民意識が低いのでなく、やり方が悪い。決めたものを説明したって誰も来ない。決める前から来てもらおう。つまり市民を信じてないのだ…補助金は3年で打ち切り。ここからは企業の寄付や銀行融資につなげないとビジネスになっていかない。「市民活動支援は子育てと同じだ」。寄り添い、伴走せよ。市民活動推進課は、補助金を出す役所であってはいけない。金融機関とつながりのない市民活動の役所などあり得ない。市民は無関心なのでなく、諦めているだけだ。

さらに田中氏。「公務員は完璧を目指すものだ。私たちは、難しいことは人に投げる」。公務員を否定、非難しているのではない。そのやり方とセンスを転換することが求められている。逆に、イマドキの公務員ほど面白い仕事を任せられている、期待されている職種はない、私はそのようにさえ思います。

そして「クリエイターフレンドリーな街」という言葉。役所が「できない」理由、法の縛り、予算がないことを盾に市民提案、議会提案に首をヨコに振る。体の良い言葉で。場合によっては公務員の「仕事っぷり」を全面否定するような場面に出くわすかもしれないこの「クリエイター」という存在。その方々にフレンドリーな街、フレンドリーな市役所。まずはこれが必要とされているのだ、と、私は思いました。卯月氏の締めくくりの言葉。「企業もできない、行政もできない。そこを市民がやる。それを行政が支えていく仕組みを」。これからのまちづくりのあり方、公務のあり方。これに尽きると思います。

どうか早い「目覚め」を。起こすのが議会の使命・責任と、あらためて自覚します。私が農業にまったくの素人であるように、首長といえども万能ではない。ただ首長の騎馬集団が900人を率い、11万人の安寧を導く“万能”を目指す集団であるように。その騎馬集団を万能たらしめるのもまた、私たち市民、そして議会であることを、あらためて自覚します。

レポートTOP