○「ポストコロナ時代の地方議会のあり方を考える」
オンラインセミナー 全3回
1.開催概要
第1回 令和2年11月5日(木) 10:00~11:30
基調講演「地方議会の危機対応の課題」
法政大学副学長 廣瀬克哉 氏
第2回 令和2年11月19日(木) 10:00~11:30
事例研究「ノンストップ! 取手市議会のオンライン」
取手市議会事務局次長 岩崎弘宣 氏
第3回 令和3年1月25日(月) 14:00~15:30
新春トークセッション
「~議会を止めるな!~ポストコロナ時代の議会運営と今なすべきこと」
法政大学副学長 廣瀬克哉 氏
西脇市議会議員 林 晴信 氏
(元)全国都道府県議会議長会事務局次長 内田一夫 氏
取手市議会事務局次長 岩崎弘宣 氏
2.受講趣旨
コロナ禍という未曽有の場面に、法令に縛られ身動きが取りにくい地方議会、という存在。この企画のキャッチフレーズ「コロナで議会を止めるな」にたいへん興味を持ち、ともすればコロナの恐怖の前に「守勢」に回りがちな議会がほんとうにそれでいいのか、問題意識を共有し、次のステップを模索すべく、このセミナーに参加しました。
3.セミナー詳細①基調講演「地方議会の危機対応の課題」
(以下、文責は内田にあります)
〇「集まって話す」のが“議会”だ。なのに、コロナで「人と人の交流ができない」事態になった。議員、職員、傍聴者それぞれ、集まればリスクが高まり「参集」できない事態となった。
〇傍聴は遠慮、自粛を求める議会もあった。コロナによって「議決機能」だけになっていたのではないか。安易に専決機能を使って、議会が機能を果たしたと言えるのか、振り返る必要がある。
〇危機だからこそ議会がその役割を担うことが求められた。物理的に「参集」できないときに「参集代替」はできないのか。「出席」について見直す時だ。
〇議会の本質は「多角的検証」である。団体の意思決定である。議会は密室ではいけない。秘密会は例外だ。決着へのプロセスを住民に伝えること、プロセスのただ中に住民がいることが大切。後で知らせるのが議会だより。これに対して「今、傍聴できる」ことこそ本質的な意義だ。
〇長の提案を議会が“多角的”に“吟味”する。これが本質。
〇リスクコミュニケーションの場として議会はある。地方が東京と同じ行動をとるのか、別の行動をとるのか、自治体がメッセージを発信しなければならない。首長がそれを出す背景に、「機能している議会」がなければならない。住民の暮らしを制限することに理解が得られてこそ政策が実現する。マスコミは首長の発出を玉石混交でコメントする。議会はマスコミ以上に「根拠を質す」議会であれ。実効性あるレスポンスを返す議会であれ。それでこそリスクコミュニケーションとしての議会の役割を市民に対して果たしたことになる。議会の準備が万全ならば、議会は市民にとって大変に役に立つ場となる。
〇議会の本質は「多数の目で見る」ということにある。保健所や専門医が知見や情報を発信するのに対し、これを「多数の目で見る」ことに意義がある。選挙で複数を選ぶ、とは、住民の“縮図”を作ることにほかならない。必要とされるのは「見落とし」なき意思決定。ある専門領域と別の専門領域を突き合わせて、「なるほど」と思われるような「見落とし」を見つける。その発見プロセスこそ議会だ。行政の見落とし発見が常の議会にあれば、行政側の準備も鍛え上げられる。耐えられるように周到な準備をするだろう。うかつに出せない。こうして条例のレベルが上がる。居眠り議会なら何でも通る。そうなれば議案が劣化していく。そうならぬよう、議会は普段から周到に。それによって非常時に「勘所」鋭く、メリハリを出すことができる。
〇「集まれない」事態に「書面質問」という手法がある。一定の効果はあるし、まっとうな答弁を期待できる。しかしスタティックなものになり、ダイナミックでない。動的、念押し、論点を明確にするやりとりという面で、リアルタイム応答には及ばない。しかし実際に議場に参集しているかどうかは、議会に求められる意義に対して本質的なことではないかも知れない。
〇全員協議会をZOOMで開催した議会があった。協議や調整の場であり、意思決定でなく準備の場であるから、webでOKと言える。これを経て、本会議では採決のみを短くやる、という手法も考えられるが、これでは「傍聴」にならない。web会議を後刻youtubeで流すという手法もある。けれどもこれでは、見ている人の反応は追ってこない。ヤジや拍手が禁止されているとはいえ、傍聴では場面の展開により、表情や雰囲気が変わる。「おかしい」「なるほど」といった空気を体感しつつ進められることで、傍聴は意思決定に大きく影響するものであり、その点、webは本会議には及ばない。そもそも「傍聴」の「傍」は本番よりも劣後するもの、二次的なものと考えられてないだろうか。
〇議会の一番の役割は「チェック機能の確保」だ。「不要不急」と言われるが、一般質問も不要不急ではない。「気づきを促す」役割は大きい。「後回し」にしないよう、注意を要する。3月の議会を控えて12月にやらねばならない質問もある。3月に備え12月に「頭出し」をしていくことが必要な場合もあることに「注意喚起」しておきたい。委員会ではできない「今、聞くべき」というのがあるから、何とか質問の場を確保しておくべきだ。「緊急時だから省略しよう」では行政が気づいていない課題、見落としを防ぐという一般質問の効用を自ら失わせることになる。
〇危機の時だからこそ、例えばドクターなど、参考人や専門的知見の活用を進めるべきだ。オンライン参考人もあり得る。逆に、遠方にいる人にもすぐに出てもらえる利点もある。
〇ある議会では、議長と副議長が接触して両方とも感染するというリスクを避けるため、ZOOMを利用して毎朝30分、打ち合わせをした。これには法的に全く問題がない。同様に、事前に整理を行い、重要なもののみ委員会を開いて決めるという手法もある。しかし議決、採決、意思決定には必ず傍聴が必要であることを忘れてはならない。国会もやっているが感染者は出ていない。
〇自治法上、「出席」とは「参集」である。公益一般社団法人における評議員会では、「その場にいない出席者については議事録にとどめる」とされ、法的にオンライン出席はOKという仕組みになっている。新しい法令整備が求められる。
〇議会のみでなく、会社も学校も、オンラインツールを活用しつつ、対面でしかできないことを見極め、うまく組み合わせていくことだ。人数と時間に注意を払い、リスク回避をしながら。
〇議会にあっても、議事の組み立て、事前の論点整理や段取りを十分にしておく。これにより短い時間で対面の場面を活かすようにしてほしい。例えば裁判員裁判では、短い時間で済むように事前に工夫し、ぎゅっと集約して行われている。見落としなしで動いている。議員も事前準備をしっかりとって、論点に集中し、徹底して行うことで議会が責任を果たし権能を発揮することができる。その準備段階をどう住民と共有するか。「ここは見せる場面じゃない」という意識があるのではないか、懸念する。議員の納得を住民と共有する場面がなくなる心配がある。プロセスが住民にわかるように配慮と工夫が必要だ。
〇議会報告会は一方的な説明で終わるところがある。これではプロセスを示せない。質疑応答を設けることも必要だ。
〇議員同士のweb会議ができるのなら議会と市民もできるのではないか? 住民には、パソコンやスマホを持たないガラケーだけの人もいる。集会場で報告会をやっても勤めの人は来れない。あらゆる人が参加できる場、というのはあり得ない。あくまで「程度問題」ということになる。逆に、障がいがあって会場には来れないがPCでなら参加できる、話はできないがキーボードでなら参加できるというケースもあり得る。「誰もが参加できる」場づくりへたゆまぬ努力を。
〇コロナで「身近な人とは遠くなったが遠い人とは近くなった」と言われる。北海道と沖縄の議員も容易に交流ができる。議員もこうして上京しなくても自宅で受講できる。オンライン視察で出張予算が削られるかも知れない。文書でなくリアルタイムなら現場の詳細を聞きだせるとのメリットも考えられる。単なる記事を越えて、踏み越んだ調査も可能になるだろう。そして同時に、それ“地域住民とも可能になった”ことを考えよう。オンラインなら職場でも通勤中でも議会に参加できる。
〇議会のBCPを考えよう。議会側が多チャンネルで情報集約できる体制を。感染症の今こそこれをやるべきだ。議会が動くと行政に負担をかける、との思いがある。しかし自然災害とコロナは異なる。逆に議会が情報を集約し、行政にもたらすことも可能でないか。それは自然災害の時以上に望める。自然災害では現場に議員がかけつけるが、コロナではそうはいかない。議会らではのチャンネルを。
〇議会が単にシロウトの集まり、では困る。専門知見やアドバイスを随時集められるしくみを議会が常に持っておくべき。そのために普段から予算も確保。住民にも役立つ、行政にも役立ててもらえる情報、参考になり信頼できる情報発信を議会が担う。緊急時に専門知識が必要なのは行政だけではない。住民へも議会発で伝えることも議会の重要な役割だ。自分達の質問を専門家に投げて、議会としての知見とする。こうした専門的知見の活用は議会に不可欠だ。これでこそ議会のBCPと言える。
4. セミナー詳細②事例研究「ノンストップ! 取手市議会のオンライン」
今回は取手市議会事務局が中心で展開。同次長、岩崎弘宣氏を中心とした「チーム取手市議会」。冒頭、職員総出演でのコントが披露され、これまでの議会改革の流れが分かりやすく紹介されました。それだけで、彼らの本気度、熱血度が伝わります。
○コロナで、ペーパーレス、ICT活用の機運が一気にやって来た。「デモテック戦略」がスタート。「議会が住民の中にある」「議会の中に住民が含まれている」これをコンセプトに。
○オンライン議会を試行。今年8月、タブレットを導入。12人が議場に参集し12人が自宅に居て参加するという形。本会議には「参集」という自治法上の壁がある。
○5つの意義があった。①議案の説明は事前に。音声認識システムを活用し、その日のうちに文字化が可能に。これにより議案説明の時間を短縮。4~5時間の短縮を実現。議会感染症対策会議。これはYouTubeで発信している。各委員会による事前協議。第1波の時に実施。Zoomを活用。これらにより時間短縮と感染症対策を実現し、タイムリーな感染対策を提言することにつながった。
○②現地視察、学校視察の改善。全委員8人プラス事務局職員が大挙して訪問するこれまでのあり方をやめた。消防や市民会館の視察では職員がカメラを持ち込み、リモート視察。1日がかりの視察が半日で済んだ。また炎暑の中の移動を避けることができた。視察先が3個所ならば職員が2班に分かれ、A地点にカメラを持ち込んだ職員がC地点に移動してフォロー。職員は大変だったが大きな成果を得た。
○③オンライン研修の実施。これはHPから取手市に申し込みできるようにしている。
○④西脇市に学んだ。僭越だが大きな成果を得ることができた。
○⑤10月で紙を廃止しSideBooksを採用。まず議会が導入したが、市は10月からサーフェースで対応。
○9月、有事に備える条例改正。続いて会議規則、委員会条例も改正した。ただ最終的に「表決」については課題が残る。討論と表決はオンラインではやらない。
○議会と市P連とのオンライン意見交換会を実施。続いて医療従事者との意見交換会を企画しているが、コロナのため見送りの可能性がある。質疑応答、参加者による意見交換というスタイルが定着した。
○議会のICT化は、まず事務局がメニューを提示し、これに基づき議会がチョイスする、とのスタイルが確立。これにより、議会が後ろ向きになる余地がなくなる。
○音声認識システム「アンボイス」を採用。年間100万円のコストを入れて取手市議会専用の辞書を作った。これにより「…だべや」といった茨城の方言も正確に認識する。
セミナーの内容は以上ですが、別に同市議会から文書で「『Zoom』を用いたオンラインビデオ会議試行の感想」「オンラインビデオ会議の流れ」をいただいていますが、詳細にわたる流れの説明ですので省略します。
5. セミナー詳細③新春トークセッション
「~議会を止めるな!~ポストコロナ時代の議会運営と今なすべきこと」
法政大学副学長 廣瀬克哉 氏
西脇市議会議員 林 晴信 氏
(元)全国都道府県議会議長会事務局次長 内田一夫 氏
取手市議会事務局次長 岩崎弘宣 氏
林:
○議員定数20人のうち13人という大会派に所属していた。H20、議員定数について市民から疑問の声。これは議会不信のしるしと認識。同年、議会改革特別委員会を設置、H25、議会基本条例を制定。一般質問や「語ろう会」で出た政策を委員会で調査、合意形成に持ち込む制度をスタート。“声が届く議会”へ。
○委員会がここでは重要な役割を果たす。付託された案件を審査するだけでない。委員会に求められる「専門性」の期待に応えてこそ「委員会主義」だ。
○本会議のほか委員会、議運すべて公開。個々の議員による視察は報告書を提出し、報告会を設けて全議員が共有。
○議会だよりは議員が主導で制作。FBによる発信も。
○「語ろう会」は議員を4班に分け、5自治会ずつを担当、2年で20会場を一巡する。事務局職員参加せず。
○課題懇談会。活動団体を対象としたテーマ別の懇談会。
○高校生版議会報告会。3校を訪問。1~4時限を使い、8時から12時まで立ちっぱなしで主権者教育を展開。
○そこにコロナ。現在は「課題懇談会」のみ続けている。今年は自治会をターゲットに。10/1~16日で小学校単位の8会場を予定。次は商店会を予定。常任委員会は毎月開催。そこで定例会を待たず、出された要望を取り上げる。そのために「陳情取扱規程」を策定した。
○先進地視察はオンラインで受け付けている。1月、松阪市からの要請があり、これを受けて実施した。
○中継ではUDトークを活用。ネット中継に字幕を付ける。
内田:
○全国都道府県議会議長会で40年勤務。
○コロナで定例会の「会期短縮」「質問簡略化」「専決を広く認める」に懸念の声。これは執行部への配慮でもあったのだが。議会は何のためにあるのか、を考えさせられた。
○米英では、議員は医療従事者と同じくエッセンシャルワーカーだ。最前線で活動すべきだ。議会を止めるべきではない。
○そこで密を避け、別会場を確保するなどの工夫が必要。出席者を定足数ギリギリで開催しておき、採決では全議員が入場する、という手法も考えられる。ただし入場議員の選別は難しい。それよりも「広い場所で」行うことが容易である。
○傍聴を遠慮してもらうことはやむを得ない措置。誰でも入場できるように受付簿を廃止したものの、コロナ対策として再度必要となっている。
○請願や陳情は、いずれも郵送可とすべき。
○感染者が出た場合への対応。議長と副議長は接触機会が多いことから、議長が感染し、副議長も感染した場合の「仮議長」について、あらかじめ決めておくべきだ。
○さいたま市では実際に議員が発症。この場合、氏名を公表すべきか。公表しない方針だったが、隠すのはやめようとなり、公表に変更した。
○福岡県古賀市議会では議員が感染。自然流会にするが、これでは議案が廃案になってしまう。そこで専決をしやすくするという手もある。
○効率的、集中した議会運営。板橋区議会、喜多方市議会の例がある。
○一般質問の時間などを制限するならば、文書質問の道を開くべきだ。
○大阪府議会では濃厚接触議員1名がオンラインで会議に参加した。
○コロナで考えるべきは基本的な議会のあり方だ。自己発信、議論する議会を今こそ創り上げるべきだ。
○オンラインを活用し、欠席議員の参加権利の確保を。出産、育児、介護の場合の議員の権利保障を、コロナを契機に進めるべきだ。
以下、トークセッション
○議会改革度ナンバーワンの西脇市議会は、取手市議会、大津市議会、芽室町議会を勉強した。
○西脇市では各議員がメール活用し、議長に情報一元化。とりまとめて市長に提言する流れを作った。
○(廣瀬)議員はエッセンシャルワーカーだ。団体意思の決定を担う。また市民に対して「コミュニケーションの要」としての役割を担う。議会はコミュニケーションのエンジンだ。市民に公開されることが重要だ。議場での議事に限らない。オンラインで効果を出せる。それは議会の責任そのものである。
○(林)コロナ対策に住民の声を反映されることが大事だが実際にどうすればよいか。「語ろう会」という「活動団体」対象ならOKと判断している。これとは異なり「不特定多数」の方々の声をどうするのかが課題。
○(内田)オンラインに夜住民からの意見聴取は、堅苦しくなく、良い面もある。
○(廣瀬)オンラインの経験は市民も議員もまだまだ浅い。経験を重ねるしかない。感染症によってツールが普及したのだから、これを「逆手」に、門戸を広げよう。
○(内田)取手市議会では出産議員のことからオンラインが始まったのが印象的だ。残念なのは「議会がこういうことをやっている」というのが市民に届かないことだ。住民の行動変容の先に、市民の議会への「行動変容」を望みたい。合議体が「参集できない」という緊急事態だ。議事機関の使命を果たすために何をすべきか。
○(岩崎)取手市議会は本会議のオンライン化を試行した。議員の半数を議場に、半数をオンラインでつないで模擬議会をやった。議長選挙にあって、同数だった場合にくじ引きとなるが、それをどう扱うか、などが課題に残る。いずれにせよ「ニューノーマル~新しい常識」を、取手市議会HPで進めていきたい。
○(林)3月には「青空」議会も考えた。
○(内田)英国下院でのオンラインの取組み。議員総数650人。うち120人はZOOMで参加、50人が議場に入る。しかし残りは出席できない、との取り決めで、権利が制限されている。白熱したディベートができない。ZOOM操作スキル未熟もある。米国ではZOOMへの攻撃もあった。
○(廣瀬)議員10人が感染、出席制限され、議会が止まる、という不幸な事態はあり得る。そのリスク回避が必要。一般社団法人ではすでにオンライン会議での決定はOKになっている。地方公共団体もOKへ、制度の工夫が望まれる。一般質問への出席は制約が少ない。議決や討論の場への出席は制約が大きい。「表明機会の保障」を起点に、制度改正が必要だ。
以下、各自1分まとめ
○(林)「ウイルスが人を進化させる」という学説があるそうだ。議会もオンライン、公聴会など新しい運営に進化しよう。
○(岩崎)進化できず悶々としている議会も多いと思う。皆さんもオンラインに道が開けるよう、取り組みましょう。
○(内田)「2つの自立」を提唱したい。①執行部依存からの自立=議論する議会へ。②総務省見解からの自立=議会に委ねろ。
○(廣瀬)このセッションを通じ、「制度を変えるもの」と「今すぐできるもの」の二つが出た。正副議長が接触しないなどの対応はまだ不十分ではないか。リスクコミュニケーションをしっかり取り、議会が市民に“参照”される議会へ、市民が納得の議会へ、まい進したい。
6.感想
アメリカの大統領選挙を見守って、AになってほしくないからしかたなくBを選ぶ、逆にBだけはイヤだからやむを得ずAに投票、などという心情をいやというほど聞かされたような気がします。素人の考えですが、大統領制というのはほんとうに良い制度なのか、と、疑いを入れたくなる、そんな光景でありました。そして思ったのは「未熟ながらも各般各方面各層から選出された人たちで構成された合議体、つまり議会という制度は何がどうあろうと民主主義の根幹」。これでした。
試練のコロナ禍。合議体というのはこういう場面で困難をきたします。物事が決まらない、責任を負わない、カケヒキに終始し、論点がややこしくなる。しかし、委縮し、ときに混乱する議会という現場の私たちに、沈着なトーンでアドバイスを送る廣瀬教授の講義に私は心酔しました。だからこそ、議会というこの重要な「素人集団」には、そこに重大な権限が与えられているからこそ、こうした意見聴取、質疑応答、合意納得のチャンスの担保としての識者のアドバイスの場がぜひとも必要、そのように改めて思いました。
私たちはエッセンシャルワーカーなのだ。医療人と違いはない。覚悟することだ、そして市民を守り抜くとの情熱に今こそ燃えるべき。そのように覚悟を新たにしました。それは無謀に3密の渦中に飛び込めという蛮勇ではない。今日ならではのさまざまなツールの活用に臆することなく、人命救助にロープやスコップが要るように、私たちは市民のためにツールを使い、知恵を使う。苦手だ、と退くことは医療従事者が患者を拒むに等しい。そのようにも感じました。「コロナが人類を進化させる」という学説に触れられていましたが、「人類」を「議会」と読み替えれば、まさにこれは私たちへの要求であり、待望であると言わねばなりません。
果敢にオンライン化に取り組まれる先進議会のありようは、私たちの背中を押してくれる、というよりほとんど突き飛ばすほどに強烈です。次長のエネルギーを中心に、どこまでも事務局職員が一丸になって議員たちを突き動かす。これでこそ公務員だ、と、心から称賛を送りつつ、少し戸惑い、気後れも感じるところ。だがここはよその国ではない。大まじめで、汗をかいて未知なる分野に飛び出している。コロナと戦う、というより自分に挑戦する、その姿に、きっと議員も腰を上げるしかないのではないでしょうか。
議員が主導で、しかし職員と二人三脚で。このうるわしいムードの中で、互いの得意と守備範囲をきっちりと確認し合いながら、ポストコロナの市議会を創り上げるのだ、との意気に燃え上がりたいと思います。