〇公益財団法人 丸岡文化財団の業務 坂井市
令和6年11月6日 午後2時〜3時 丸岡文化財団事務所
1.視察意図
建設が進む丸亀市の新市民会館。その運営は市福祉事業団に託されることがすでに決定しています。
坂井市には寛永年間に築かれたという丸岡城天守も現存しており、そのたもとに、日本一短い手紙「一筆啓上賞」で世間を沸かせた丸岡文化財団が、「日本一短い手紙の館」の中にあります。この財団が丸岡城の管理運営も担い、同市の文化発信をさまざまに行っています。丸亀城の管理運営、発信の強化、そしてお城の前に建つ新市民会館の運営はどうあるべきかについて参考にするために伺いました。
2.視察詳細
〇財団の概要。役員数12人、常勤0、非常勤12、非常勤のうち市派遣が1人。この人は教育委員会教育部長を務めた人。職員13人、うち市派遣は0だが職員退職者が2人という構成。
〇財団の経緯。坂井市公共施設管理公社と統合合併する形で平成6年に「文化振興事業団」として設立。丸岡城の管理とまちおこしを担うためH28、「丸岡文化財団」に。「一筆啓上賞」はH15にスタート。
〇取り組む事業の概要。文学賞によるまちづくり事業、文化を主体とした特別事業(俳句のあるまちづくり、おもひでカプセル、子供歌舞伎、一筆啓上グッズ、かまぼこ板アートとのコラボなど)、手紙の館の運営、丸岡城を活かした歴史文化の振興、丸岡城周辺公共施設の維持・管理など(それぞれについて説明いただきましたが省略します。別添資料を参考。ここでは丸岡城関連の部分のみ次に書きます)。
〇丸岡城を生かした歴史文化の振興事業。天守の開館時間は午前8時30分から午後5時。無休。有料入場者は114600人/年。なお来場者全体では40万人。歴史民俗資料の収集保存、公開展示。年末年始休館、入館者49291人/年。観光ボランティア。ガイド協会と連携。協会所属30人、実働10人。ガイドは無料、申し込み114件/年。ほかにおもてなし茶会を茶道連盟の協力を得て年21回。丸岡城御城印は16281枚発行、御城印帳456冊。歴史学習会を年3回開催。地域イベントとして桜まつり、古城まつり、紅葉まつりを開催。
〇公共施設を管理運営する事業。定期点検、清掃管理。霞ケ城公園、四季の森公園、ふれあい広場、イベント広場、お天守前公園、一筆啓上茶屋前駐車場ほかの駐車場とトイレ。
3.丸岡城ほかエリアを見学
事務所がある一筆啓上の館
建設が進む(仮称)観光情報センター
完成予想図
天守への道
一筆啓上賞の入賞作品が並ぶ
ボランティアガイド案内所とチケット売り場
天守に到着。入口までは急な階段を登る。
文化財ゆえに手すりを付けられないとのこと。
天守内の階段は急で、ロープで上る。
4.感想
JR北陸本線丸岡駅に降り立ちましたがここから財団所在地まではバス連絡がなくタクシーで。
一筆啓上の館はデジタルサイネージも活用した本格的な展示施設となっていました。「戦国自衛隊」の撮影もされたとのことで、動くジオラマも。
観光施設、文化施設の管理をどのような形態で行うのがベストなのか。管理の適正はもとより、いかに効果的に発信し、利用者や観光客の満足を追求するか。これまで、新市民会館のコンセプトから始まって全国各地の事例を、市担当者とともに勉強し、特別委員の一員としても切磋琢磨してきた一員として、すでに決定している福祉事業団が果たしてほんとうに、設計に私たちが込めた思いを具現してくれるのかに、一抹の心配を抱いています。
市役所職員、ならびに関連外郭団体を頭から否定するのはかえって不公平でしょうが、新しい視点、思い切った改革やアイデアの採用と断行。鋭い経営視点。こういった諸点を、ぜひ併せ持ったシャープな事業展開をしてほしいと切に望んでいます。
併せて、丸岡城やその周辺施設も一体として管理運営をしている。これについても、丸亀市においてこれからどう構えればよいのかの参考にもしたい。お城とその前に広がる街区をひとつとしてビジョンを描ける視点がなければならない。一つ一つのハコモノを別々の主体が管理している、という実態では、より高い成果が望めないのではないか。ここに危惧を持ちます。
坂井市ではこのほど新観光情報センター(仮称)を建設中。天守から見下ろす位置に、ちょっと天守のつくりをモチーフとした建物の外観がしゃれています。中身については今回の視察では触れられませんでした。こちらも、これからの議論となる(仮称)物産館の設計と運営方針の検討プロセスで、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。
同じ現存天守でつながる丸岡城と丸亀城。かつてはうどんとそばとで「対決」の交流を試みたこともありました。うどんとそばもいいが、こうした文化の発信や来訪者の満足度での「対決」(?)のほうも、提案したいと思います。