レポートTOP
〇第27回清渓セミナー

 

.概要

  令和4年(2022)101718日 日本青年館ホテル(東京都新宿区)

  テーマ:住民主体の地方自治を進めるために

  講義1 石破茂 衆議院議員 「今あらためて地方創生を考える」

  講義2 大南信也 神山まるごと高専設立準備財団代表理事

     「徳島県神山町 人口5000人の小さな町はなぜ進化し続けるのか」

  講義3 木下斉 (一社)エリア・イノベーション・アライアンス代表理事

     「地方創生 議会と自治体が果たすべき役割」

  講義4 清原慶子 前三鷹市長

     「民学産公官の協働によるコミュニティ創生とDX化の課題」

  講義5 小室淑恵 ㈱ワーク・ライフバランス代表取締役社長(オンライン)

     「結婚・出産数が増加!残業や離職率は減少!さらに業績が向上する

      働き方改革の方法とは? 2000社の働き方改革コンサル事例」

  講義6 能條桃子 (一社)NO YOUTH NO JAPAN代表理事

     「若者が声を届け、その声が響く社会を目指して」

 

.講義のあらまし

 

①石破茂 衆議院議員 「今あらためて地方創生を考える」(80)

 

〇毎年人口60万人ずつ人口減。21005200万人、22001391万人、2300423万人。今年の出生数は80万人を切るのではと言われている。マスクをしていると顔が見えない。そのことで恋愛感情が起きにくい。「里で出産」もコロナで微減。

3000あった市町村が現在1718に。かつて竹下登首相が「ふるさと創生」で一律1億円。土井たか子氏が「ばらまきやでー」と批判したがばらまきではない。地方の知恵比べだった。村営キャバレーを作った村もあった。自ら考えるのが「地方創生」だ。田中の「列島改造」、大平の「田園都市」。できればいいが失敗したら国がつぶれる、という危機感はなかった。今は失敗すると国がつぶれる危機感がある。「国がなんとかしてくれる」という考え方は、もうない。今こそ「自ら考え自ら行う」ときだ。

〇江戸265年間。駕籠と馬は出てくるが馬車と大型帆船は出てこない。大井川に橋を架けさせなかった。馬車や帆船は作ってはいけなかった。当時、天下=国ではなかった。平和が第一。中央集権と地方分権、見事にバランスを取った。東京一極集中させず、地方の独自性と参勤交代でバランス。堺屋太一「三度目の日本」にある説だ。しかし黒船によって方針は180度転換。富国強兵、殖産興業。東京一極集中が始まった。清に戦勝、ロシアにも負けなかった。一極集中は大成功だった。私の鳥取県人会では最後に必ず「ふるさと」を歌う。その中に「志を果たして いつの日にか帰らん」とある。帰るのだ。帰るところがあるということだ。

〇一極集中の国は日本と韓国しかない。「パリ一極集中」とか「ローマ一極集中」とかはない。「故郷に錦を飾る」という言葉は、英語に訳せない。

〇敗戦し、このまま貧しいと共産主義化するからアメリカと政府主導で資本主義に進んだ。昭和43年、1968年、たった23年で西ドイツを抜き世界2位の大国に。路線は大当たり。大卒は、東京本社でないと出世しトップになれない国。農業の手間は昔の10分の1になった。余った時間は公共事業に回された。地方は、公共事業と企業誘致で生きていく。それで雇用と所得を得るしくみになった。

〇三種の神器の時代。S40代はカラーテレビ、エアコン(クーラー)、クルマの3C。老人が少なく、支出が少ない日本。作れば売れた。3040年代はうまくいっていた。ミッシングリンク。「つなげてなんぼ」とされた。しかし作ったものは壊れる。壊れるものは直さなければならない。耐用年数50年、もう昔のようにはいかない。

〇休日は、彼女を乗せてドライブするのが夢だった。彼女と車で聴く音楽をテープ編集するのに前夜は徹夜した。今、学生にそれを言うと「テープ編集って何ですか?」と。

〇岸田首相「新しい資本主義」とは? ケインズ経済学の3要素①人口増=納税者増②金利の適切な設定③ぜいたく願望(ゾンバルト『恋愛とぜいたくと資本主義』)。金利ゼロとは市場原理が働かなくなり、必要なところにお金がいかないことを意味する。物価が上がる→景気が良くなる、とはならない。物価が上がる→年金や皆保険の将来不安、となる。これを取り除かないといけない。現代、この3要素ともになし。日本は大丈夫か?

〇定期預金の金利8%の時代があった。今、ゼロ。地銀がしんどい今。結婚しない人が増える。万博時代に2%だったが今は24%に。婚姻率の高いのは東京、ワーストは秋田。秋田は美人で口説けない説もある()。一方、出生率。トップ沖縄、ワースト東京。東京に集中するから子ができない。出生率のいちばん低い東京に人が集まる。女子の結婚年齢は平均29歳、1子出産が30歳。女性に3重の負担がかかる。男性家事参加率、ダントツで日本が世界最低。

〇地方は「できない」理由ばかり言う。人が足りない、時間がない、データがない。しかしデータはリーサスで誰にも後悔している。産官学、に加えて金、労、言が英知を結集。「学」では大学、高校、中学も総合戦略に加わるべき。「金」は地銀、信用金庫。「言」は地方のテレビやラジオ、地方紙。「総合計画」を知っているのは市役所関係者だけ。これで「できない」と言ってはいけない。中央官僚が地方に派遣するのは県と県庁所在市のみ。市民が関心ないところは成功しない。鹿屋市の「ヤネダン」の成功事例を視察に来るが「ウチもやろう」とはならない。カリスマがいるから成功したんだ、ウチは無理だ、と。帯広の十勝バスの成功事例はミュージカルや映画にもなった。黄色いバスの奇跡。なんでバスに乗らないかを調べた。一軒一軒訪ねて調べた。すると「乗り方がわからん」が答えだった! クルマに乗っていたから分からなかったのだ。説明したら黒字になった。

〇鉄道は、1両でトラック33台分を運べる。ドライバー33人を減らせるのだ。戦車はリッター300mしか走らないから列車で運ぶ。鉄道は大事だ。ヨーロッパでは鉄道が復活しているが日本では廃線化が進む。バスは道路を走るがバス会社は道路を作らない。欧州にはどこにも路面電車がある。誰が負担するのかの議論がない日本。農林漁業に適した国、日本。土、水、気温、光。4つのとも具備している。EEZ水域の面積は世界6位。海が深いから体積だと世界3位。大きな強みだ。森林の割合は①フィンランド②スウェーデン③日本。しかし「カネにならない木」、人工林の体積(面積ではない)は①アメリカ②日本。

〇ドイツの保険会社が算出する世界危険都市ランキングでダントツ1位は東京。火山灰はガラスの結晶だ。雪の10倍の重さ。富士山が噴火したらどうなるか。

今こそリスク分散が急がれる。「うちの町はどうにもなんねえよ」と言っている町はどうにもならない。宮崎県小林市のPRビデオは一番おもしろい。方言駆使。誰がこれを作ったのか? 20代の市職員と中学生が作った。なぜ中学生か?

自分の町が好きな子は都会で学んでこの町に帰ってくる。秦野市の「陣屋」も参照。「乗ろう」では乗らない。乗りたくなる工夫を。いすみ市、越前市、叡山電鉄も参考に。自ら考える姿。地域地域のポテンシャルを探す。

〇民主主義が姿を変えた。都から新しい歴史ができたことはない。新しい国、新しい歴史を作るのはいつも地方だ、庶民だ。地方からニッポンを作る。地方の責任だ。

〇政治家渡辺美智雄。「野党に賛成してもらえなくても納得してもらえ」が身上。

〇ヨーロッパでは、体が良くならないときは医者を呼ばず、牧師を呼ぶ。

〇小選挙区になり、カネは使わなくなった。同士討ちがなくなったから。しかし。

〇田中角栄の言葉。「訪問した軒数しか票は出ない。握手した数しか票は出ない」。

 

<感想>

 マスコミを経て見る人物はやはり放送の「尺」や紙幅で取捨選択のフィルターにかけられている。悪いことではないが、それで人物を見通せると思わないほうがいい。そう思います。あの風貌、あの言葉の言い回し。それでイメージを決めつけている場合も多いのが常です。私はかつて鳥取市の目抜き通りを通っていてたまたま市の事務所がそこにあるのに気づきました。あまり堂々とした風でなく、あたかも散髪屋さんの入口のようなものであったと記憶しています。その扉に、何か心を打つ言葉が書いてあった。メモか写メかしておけばよかった。悔いていますが、その言葉を忘れました。政治家としての心情が出ているもので、今回のセミナー参加を決意するきっかけの一つでもある講義でした。

 訥々と語る。妙に説得力がある。私の知らない情報を、見せびらかしでなくすとんと心に落とす。あれが「話術」というものでしょうか。レジメ、スライド画像などなしの80分は集中と、静かなジョークによる緩和で絶妙な空気感のなか、あっという間。政界でもみくちゃの日々なのでしょうが、言葉に説得力がないと政治の世界は泳ぎ切れない。にじむ努力と勉強の痕跡。すごい人だと天才を褒めるというより、自分で鍛えた人だと仰ぎ見る印象。静かに、「地方の責任だ」と寄り切るところがすごい。地方創生の最前線で使命と責任をいただく私たちに、その覚悟をさせる内容でした。

 

 

②大南信也 神山まるごと高専設立準備財団代表理事

  「徳島県神山町 人口5000人の小さな町はなぜ進化し続けるのか」(40)

 

〇「創造的過疎」。(スライド)これまでの取り組みを紹介。

〇ワークインレジデンス。仕事を持ち込んでもらう。空き家とのマッチングが進む。ちょっと手を入れたら住める空き家を次々と。

〇戦時の「青い目の人形」がスタート。贈った主との国際交流が始まる。これを機に国際文化村委員会が発足、NPO法人グリーンバレー、神山町移住支援センターへと発展。こういう場面に必ず登場する「アイデアキラー」。難しい、無理だ、できない、急ぐ必要はない、誰が責任を取る、前例がない。これに抗いながら「できない理由よりできる方法を」「とにかく始めろ」。「やったらええんちゃうん!」
の雰囲気を盛り立てた。

〇文化村(97)でやったことはアドプト・プログラム(道路清掃ボランティア)と国際芸術家村(アーティスト・イン・レジデンス)。海外のアーティストが住民の一員となって作品を製作。この運動がやがて「アートの森」づくりへ(05)。これが移住の機運を盛り上げる。図書館、歯科、パン屋、デザイナー。職種逆指名も。オフィス・イン神山(町屋改修事業)でクリエイターがお試し滞在。サテライトオフィスも誕生。渋谷に「神山ラボ」。牛小屋もオフィスに。築150年の酒屋がフレンチビストロに。若者に魅力ある仕事の誕生。サウナを作る、馬を飼う、と個人プロジェクトも展開。職業訓練「神山塾」。塾生が靴店、総菜屋、コーヒー焙煎所。カップルも誕生。「地域内経済循環」でえんがわ七夕まつりが賑わう。3Dプリンター・レーザーカッターを駆使するデジタル工房。クラフトビール醸造所。町内の大工が町産材木で子育て世代向け集合住宅。「地産地食」のフードハブ・プロジェクト。次は高専設立構想へ。「神山まるごと高専プロジェクト」。23年4月開校決定。ふるさと納税とクラウドファンディングで学校新設。

〇ポイントは「定住」でなく「レジデンス」=「一定期間滞在」の「風の人」。風の人が何かを持ち込む。

〇道路を整備したらその道を通って町の人が出て行った。そうではないまちづくりを。人を呼び込む「人材誘致」と「地域内経済循環」を基軸にした地方創生。働き方や働く場所の自由度を高め、地方に「高度な職」を呼び込むとともに、新たな「サービス」を生み出し、観光等との連携によって地域外から適度な外貨を取り込み地域内経済の循環による自律的発展を図る。

〇キーワード「好きステキに」。そのために「手」を入れる。

 

<感想>

 

 スライドと説明をじっくり聞いているテンポではない。重要なセンテンスをとにかくメモし、そしてペンをカメラに持ち替えてスライドの画面を撮る。大忙し。こうして報告書にまとめながら、なんだかすごいことが山間で行われている、ということだけはわかるが、それで私たちは何から手をつけていいのか、模糊としている。かろうじて「好きをステキに、を入れよ」の、地方創生の本質が叩き込まれた。それをやり抜き、高専開校にこぎつけた人がいる、町がある。理想でなく現実に。圧倒的な「活動報告」に打ちのめされました。打ちのめされてオワリにならぬよう、これからの提言の一助にしてまいります。

 

 

③木下斉(ひとし) (一社)エリア・イノベーション・アライアンス代表理事

     「地方創生 議会と自治体が果たすべき役割」(100)

 

〇「貰うことより稼ぐこと」「百人の合意より一人の覚悟」。強烈なセンテンスがスライドに掲げられる。傾いた早稲田商店街、年予算60万円の弱小商店街。これまでそこにあったのは「いかに稼ぐか」の議論でなく行政・企業から「いかに貰うか」の思考に終始していた。ある時、商店主の集まりに市職員が来ていて、「大売出しの予算どうしますか?」と聞いているのに驚愕。公務員に商売のことを聞かれちゃオシマイだ!

〇イベントをやっているだけ。イベントがなければ意味がない街であることを証明。補助金を当てにしている。補助金をもらっても儲からない。儲からないから子どもに跡を継がせない。これでは没落必至。

〇鯖江市は医療系精密機械の町。工場をやっている親が「東京に行くやつが幸せ、なんて思うな」と子に言っている。会社は大丈夫だ。ダメな事業者の声を聴けば聴くほど町はダメになる。これでは商店振興策でなく社会保障だ。

〇「百人の合意より一人の覚悟」。まちづくりワークショップにはもう参加しない。百人の合意したプランは1人も納得していない。百人の妥協に過ぎない。誰も責任を持たず、役所のせい、コンサルのせいにしている。10人の合意を10作る。それが10年に一つ残る。こう考えるべきだ。総合計画コンサル丸投げは末期。自分で考えられない職員。総合計画はカラーでグラフが載っていても何を言いたいかわからない。百人の妥協を目指しているからだ。福岡市が九州最強になったのはここ40年だ。並みいる熊本、長崎、八幡を抜いてついに福岡が九州一に。かつて工場誘致に失敗した同市。西日本新聞がこれからのあり方を分析。これによってサービス産業中心に方針転換したことが成功の因。「みんながわかる」とは逃げである。役人も難しいことを考えなくなる。何となく、何かをやっている。本当に何をやらねばならないのかを考えることもなく。「一人の覚悟」でなく「ゼロ人の覚悟」でやっている。

〇魅力的な民間をどう地域の味方にするか。氏は高校1年のときに早稲田商店会に関わり、環境まちづくり事業が成功し、100以上の地域がこれを手本とした。消防庁長官表彰、国交大臣賞などを受賞。高校3年で全国商店街の共同出資会社を設立。事業を通じた地域再生に取り組む。空き店舗対策について(パワーポイント)空き店舗率を引き下げるのは結果でしかない。そのエリアで商売が成立するように変えることが大切。儲かる実績をつくれば、次から次へと店が出てくる。空き店舗を埋めることはどうでもよい。空き店舗にはいってくれた店を徹底的に営業して成功させる「売上創造」が大切。改装費補助など「経費補助」をしてもビジネスは成功しない。(ここで取り組み事例を多数例示)

〇民間といっしょに市営住宅を経営する。図書館も民がリスクを抱えるような仕様で経営する。補助金は麻薬だ。依存性がある。だんだんハードになり、最初3分の1が半額に、そして全額に。そして貰い手は考えるのをやめる。外注をやめることだ。考える行政としかおつきあいしない。

〇岩手県紫波町(しわちょう)の例。自治体、民間(東急)、政府関連者が「合宿」してプランを叩き合った。ほんとに考えてるの? 気絶するほど議論した。自分を追い込んで考える人が減っている。すぐにパワハラ委員会に行く。出てこなくなる。人事課こそ最悪だ。独自起案の必要な時代に、それを評価しない人事課は最悪だ。自治体内完結型研修は最悪だ。ちゃんと評価している人事課があるところは伸びる。「あの自治体にはあいつがいる」と言われるまでになりたい。「余計なことするな」と言われ、やめるようではだめだ。

〇春日井市勝川(かちがわ)の商店街を例示。儲からないから空き家なのだ。対策空き家対策でなく「儲かる」ことを考えねばならない。「やらない親切」もある。市場分析を誰もやったことがない。商店街も役所も。郊外の大型店と勝負しない。半径150m内に何人いて、所得がいくらで、どんなチャンスがあるのか、調べもしない。彼らが欲しがる店がない。子育て家庭がたくさんあるのに子どもの教育の会社や子どもカフェがない。客は増えているのに需要に気づかない。人が減ってもやれる商売がある。

〇二宮尊徳の商法。今ある予算で新田開発をし、その利益を治水に投入した。これは今も同じセオリだ。地域課題は簡単なものから着手する。重たいものは後回し。稼ぐ事業を先にする。小さいことから機運を高める。

〇予算をつけて改装する。これは気に入らない。そうではなく、地主と入居する人が協議するのが今のやり方だ。空き店舗をなくすことでなく成功事例を作ることを目的に。ある商店街の親方は93歳。「私には時間がない」と言っている。しかし彼には「信頼」がある。自転車の範囲、ローカルで、投資が回収できる算段をすることだ。営業が先。役所もそうだ。回収できる投資をすべき。逆算から始める設計を。会社が売り上げを出せるように支援するのが本来の補助金だ。赤字を補助金で埋めるようでは誰も金を出したがらない。

〇ある写真館。今の世に、写真を撮ってもらいに来る客はいない。そこで店舗面積の4分の3を人に貸し、残り4分の1のスペースで出張フォトグラファーをして稼いでいる。

〇弱小自治体に「稼ぐインフラ」を作る。「カネが出ると知恵が引っ込む」。津山市アルネ津山、青森市アウガの事例。需要もないのに再開発をして失敗した例。開発方法の転換が必要であることを物語る。失敗を封印するから過ちが繰り返される。過ちを共有しよう。修正をともに考えよう。やるかやらないかを決めたのちにどうやるかを決めないことだ。

〇「公民合築」の紫波町オガールプラザ。一部を図書館に。テナントで資金を回収しつつ図書館運営。旧家の「納屋」の発想で図書館を配置した。一流設計者にやらせると入札が機能しなくなる。部品はイタリア製など。公共施設を作ってなおかつ固定資産税が入る。周辺の評価額も吊り上げるのがよい公共施設だ。

〇良き民間は常に忙しい。入札公募には出てこない。

〇紫波町では公民連携特別委員会、住民説明会を100回以上開催。藤原町長は「壊れたテープレコーダー」のようだとまで言われた。市民にていねいに何度も説明を重ねた。公民連携室を作り2人を配属。「やる気のある担当者が3代続いたためしはない」ので完了まで人事異動はフリーズ。テナント施設「オガールベース」は民設民営でバレーアリーナに。1年間の営業をちゃんと計画してから提案し、成功した。営業なくして公共経営はあり得ない。役場が直接分譲したエコ住宅は完売。民に託すプロセスを見直すべき。「部局長が勉強しないで岩盤になる」。

〇大東市は公民連携基本条例を制定。議会も理解。官民横断、地域横断による人材投資。公営住宅は民間経営で! 今こそ公務員への教育投資を。リスキリングが必須。特に中堅以上の不勉強は致命的。

 

<感想>

 

 心地よい毒舌。高校時代からの意識の高さ、行動のシャープさは群を抜く。経験と理論に裏打ちされた毒舌は、まことに打ちのめされるのが心地よい。

 私は、商店街の復興の目的で受講したのではありませんので、行政職員に向けて、こんにちの空き店舗政策がどれほど的を射てないか、それを何としてもお伝えしなければならないとの立ち位置で聴きました。しかしそれは単に市の一部担当部局のノウハウの転換ではなく、「中堅以上の不勉強は致命的」とあるように、市役所の構造、市役所職員おしなべての意識構造の改革に言及したのにちがいありません。そこで氏の毒舌(何度も失礼)は市の人事部局のあり方にまで及び、「独自起案の必要な時代に、それを評価しない人事課は最悪だちゃんと評価している人事課があるところは伸びる」と。痛快。窓を開けて涼風が入ってくるように、気持ちに風が入りました。さてどうしたものか。講師を丸亀市に招く。これが私なりのいちばん安易な発想。ここまでの説得力ある論及を、どうして私から間接に職員に伝えることができるものですか。業者であれ市民活動家であれ、民間の空間に音もなく入り込み、きちんと連携のセッティングをやってのける人材こそ市役所に必要であることを痛感。部局長が勉強しないで岩盤になる。リベンジが怖いですが()、私はこれを言うために、選挙を勝って議員でいるのだ。声を大にして、講義の趣旨を市役所じゅうに叫んでまいります。

 

レポートTOP
 

④清原慶子 前三鷹市長

     「民学産公官の協働によるコミュニティ創生とDX化の課題」(90)

 

20代の学生時代に声をかけられ、三鷹市基本計画の策定に携わった。375人の公募市民。「みたか市民プラン21」に関わったことが今につながる。「民」が先である、民と官は対等である、そのスタンスを身に付けた。「自治基本条例」策定を当時の市長に要請した。「誰が市民になっても住民が主人公」であるために、と精神を前文に明記した。しかし公文書はわかりにくいので何度も出前で説明を重ねた。

〇「協働」の7原則。目標一致、相互理解、自主性尊重、対等、相互自立、情報公開、検証・評価の原則。「市民」の定義に「在活動者」も加えた。

〇地方創生の連携体制では、民、学、産、公(公共機関)、官()に加えて金(金融機関)、労(労働団体)、言(言論機関)、士(弁護士などの士業)にも参画してもらった。

Well-beingとは。Happinessよりもより包括的で、個人のみならず個人をとりまく「場」が持続的によい状態であること。2022.2.7文科大臣からの諮問文に「一人一人の多様な幸せ」と社会全体の幸せ」が両立すること、と。こども家庭庁の基本方針、デジタル田園都市国家構想にも明記。議員はこれを住民に「通訳」「翻訳」してほしい。

〇地域コミュニティと国の施策。①厚労省。「縦割り」では成し遂げられない「重層的支援体制」整備。国が応援して地域の自主性を実現。ポータルサイトに事例あり。②総務省。コロナでふれあい難しくなる中、地域コミュニティに関する研究会報告(R4.4.)HPに事例あり。地域運営組織の設立・運営に関する地方財政支援」として国が補助しており、知らないと損する。③農水省。農村RMO(リージョンマネジメントオーガナイゼーション)。市町村では使っていないかも。通知は出しているがそこで止まっているかも。

〇三鷹市長時代の取り組み。学生の声も反映してくれる三鷹市。「コミュニティ再生」から「コミュニティ創生」へ。戻るのではない。市が誘導しない三鷹まちづくりディスカッション。市職員は見守るのみ。市長と語り合う会、市長との対話による職員研修(詳細略)

〇デジタル田園都市国家構想。中山間こそデジタルの力で幸せに。不便、不安、不利を克服する「Digi田甲子園」。

〇自治体DX

行政のデジタル化「かきくけこ」。か:改善・改革・革新、き:協働・危機管理、く:工夫・クリエイト、け:「傾聴」を伴う「経営」、こ:高齢者・こども若者・コミュニケーション・コーディネート。これからは「親が子に教わる」ことをためらわない。

 

<感想>

 

 冒頭、「資料は90枚、準備しました。後刻配布いたします」。ここで圧倒され、語る内容・分量の豊富さに舌を巻きます。学生時代から「市民が主役」のまちづくりというテーマに傾注。その行動力、人格力で市民を糾合、そして市役所職員をリードしてきたのでしょう。とうてい、その一つ一つをここに紹介することができません。国ともつながり、提言する立場。資料中に国から自治体へのさまざまな支援制度が設けられているが「知らないかも」という指摘に困惑しました。大丈夫でしょうか。それを「こういう制度を設けました」から進んで「使ってください」さらに「使いなさい」と、だんだんに中央集権度が高まっていく。自治体が長らく慣れた「国の指示待ち」という体質は、そう簡単には剥がれ落ちない。でもそれをきちんとやりながら「国と地方は対等」「行政と民も対等」を具現してきた、そういうことだと思います。ここにスライドから1枚、紹介します。

お話の中にもまちづくりディスカッションの中で「市職員は口を出さない、誘導しない」とありました。そもそも、このスライドにあるようなディスカッションの場が丸亀市にあるか。マルタスはできてもこれがない。私はこのことをこれまでも申し上げてきました。

 今後もこのことを、声高に主張してまいるつもりです。

 

 

⑤小室淑恵 ㈱ワーク・ライフバランス代表取締役社長(オンライン)

     「結婚・出産数が増加!残業や離職率は減少!さらに業績が向上する

      働き方改革の方法とは? 2000社の働き方改革コンサル事例」

                               (80)

〇わが社は社員30人で全員が8時間勤務で帰宅。残業ゼロで収益を増やしています。

〇安倍首相が産業競争力会議で「この国には労働時間の上限を定める法律がない」と言い、これを受けて2018年に上限が定められた。

〇ワークライフバランス(WLB)とワークファミリーバランス(WFB)の違い。ライフはプラスに、ファミリーはマイナスに。残業ができない人に配慮する。残業ができる人とできない人が対立することになる。

〇「残業ニッポン」だが労働生産性で見るとOECD各国最下位の28位。

〇人口ボーナス期とオーナス期。ボーナス期とは人生の働く生産世代が上回る時代、オーナス期は「重荷」世代が上回る時代。1950年代はボーナス期。働く世代が右肩下がりに。一方「重荷」世代は右肩上がりに。そのクロス点は19902000年。従属人口指数とは、老人+子どもを働いている人口で割ったもの。19601990年の高度経済成長期、一生懸命に働いたから日本が豊かになった、のではなく、人口構成のせいだった。オーナス期にはヨーロッパが先に入った(入りかけた)が、少子化対策に予算を投入して持ちこたえた。日本はそれに失敗している。ヨーロッパでは「これは国の全体に関わることだから」と国民全体が合意した。中国もそれに気づいて軌道修正に取り組み始めた。日本は遅れている。

〇オーナス期からの分かれ道。①労働参画。日本ほど女性労働力を無駄にしている国はない。もったいない。なぜ途中でドロップアウトするのか。それは労働環境に問題がある。働いていては子どもを作れない、では未来の労働力を失う。②少子化対策。働き方改革で出生が増えた。長時間労働と少子化対策はつながっていた。1人目が生まれたときに夫が育児や家事をしていた家は2人目、3人目を産む。子が2歳までに離婚することが多い。産後うつでの死因1位は自殺。産後1か月が「ヤマ」。赤ちゃんをかわいいと思えない。赤ちゃんをはさんで感情共有が大事。男性育休はとても大事。妻がまとまった7時間の睡眠、朝日を浴びて散歩ができる。この育児期間に、「妻は離婚を決意する」。

144社に男性育休100%宣言を行ってきた。これまで育休は本人が申請する者だったが会社から声掛けすることにした。だが取得率はまだ13%。これは妻と子の2人の命を救うことだ。

〇令和男子は育休希望8割。オンライン、サブスクを活用。父親学級、管理職研修を進める。これまでの「成功体験」に「勇気ある決別を」。

〇かつてのボーナス期のルールは、勝つために、なるべく男、なるべく長時間、なるべく同条件の人を揃えるという「右向け右」の大量生産。耐えればいいことがある、忠誠心で大成功。かつて「転勤」は出世の希望だったが今は「辞めます」。それによって貯金もインフラもできたのだから、暗く思うことはない。しかしこれからはオーナス期。そのルールは、勝つために、なるべく男女、なるべく短時間、なるべく違う条件の人を揃える。それは仕事の質が変化したから。ここからは集中力が大切。

〇6時間睡眠ではストレスは取れない。しっかり寝ればコップのストレスが空になる。睡眠不足で怒りやすくキレやすくなる。会社だけではない。学校の先生にも起きる。そして生徒に当たる。それが不登校を招く。家庭では親も子に当たる。

〇部下の残業を減らすために結局上司が残業しているのでは何にもならない。全員が睡眠を取れる会社に。睡眠不足がアルツハイマー型認知症の要因になることが判明している。睡眠は国家戦略だ。

〇イノベーションができる要件とは。多様な人材、フラットな議論。24時間対応ができる人に頼る会社を脱しよう。

〇勤務間インターバル制度を提案。仕事と仕事の間でしっかり休みを取る。ROS(利益率)では「寝るほど儲かる」。従業員の満足度が向上し、離職率が下がる。マネジメントの手法が変わる。一人が「走り切る」在り方よりも「パス回しの美しさで勝つ」在り方に。

〇心理的安全性の研修を。叱られないとわかったら生産性が高まる。

〇会津若松市の「カエル会議」による働き方改革。仕事のマニュアル化を進め、「あの人に聞かないとわからない」という「属人化」をやめる。「秘伝のタレ」方式をやめよう。

〇四条畷市は最年少市長。「忙しさ管理表」。子ども政策課を設けた。「現場に来い」は「現場を見ろ」ということでなく「話をきいてもらう」ことだった。

〇ほかに民間事例()

Q&Aで働き方改革の「官民の違い」。民間は「変えなきゃ」と思うが官は「変えられない」と考え「思考停止」に陥っている。

 

<感想>

 

 リモートでの講義。残業ゼロで収益は増えている、と冒頭からインパクトある切り出し。振り返れば、モーレツに働いた、家族も犠牲に、妻は家庭を守る、といった成功神話にある美談?は、実は単に「働き手が圧倒的に多かった」だけ、その利益を享受する老人世代が少なかっただけ、という帰結には重たい気づきがありました。

 当時、私は市役所職員であってその「モーレツ」を人生体験していません。ただ就職1年目に開いた同窓会で話題が初任給のことになり、民間損保会社に就職した友人と公務員の私とで人に言えないような差があったことを覚えています。それ以降はそういう場でこの手の話はしないことに()。ここからはニッポンの働き方伝説に終止符を打ち、「オーナス期」を受け入れる働き方にシフトしなければならない。まちづくりは市役所がやることだ、との伝説は市民にもなくなり、元気な高齢世代は嬉々としてまちづくりに汗を流し、健康と笑顔で暮らす。そういうあり方を創出しなければならない。その主役、いや主役は市民だが重要な演出役は、私は公務員ではないのかと考えます。
 それに気づいた自治体が、次々と「シフト」大転換に注力している。講師があえて語った「思考停止」への警鐘を受け止めて、民間企業との連携、市民との協働を、仕組みの前にまず職員の自覚と理解のフェーズで俎上に上げなければなない、そういうことではないでしょうか。高齢者が開き直って「オレは重荷だ」などとうそぶくのを、笑って「これをお願いしますよ」とまちの中の主役に仕立てていく、その作業を誰が担うのか。「予算の執行」ではない職員の職務が、オーナス期にはあるのだと思います。

 

 

⑥能條桃子 (一社)NO YOUTH NO JAPAN代表理事

     「若者が声を届け、その声が響く社会を目指して」(75)

 

〇小学6年生で平塚市青少年議会に参加したことが「入口」。何日かインタビューなどして最後に議席から市長に質問。機会に恵まれた。しかし社会では声を上げたら届くのか? 社会を作っているのは誰か? ルールを勝手に作られるのはイヤだな、と感じてきた。

〇平塚から5時起きで東京の進学校へ通う日々が始まった。そこでは塾が当たり前、生活保護を受けるのは「頑張ってない子」だ、という空気。もう「決められている」感が漂っていた。

〇慶応大に進んで「失望」。卒業の後は暗い社会に出て、というような重い空気が学生にある。それに対して「自分だけ逃げきろう」感があった。大学2年の時に選挙があった。インターン体験で選挙事務所に。そこには若い人がいなかった。そしてオトナから「偉いね」と。若い人は票にならない。若い人はあまり行動していない。それでお互いに離れていっている。政治から若者に近づいてはくれない、と実感。

〇ここで休学してデンマークに留学。20代は80%の投票率。この「異次元」の仕組みを知りたい。デンマークではすべての店が5時閉店で、時間はたっぷり。

〇飲んでデンマークの人と語ると自分から「日本には良い政治家がいない」と語ると「良い政治家がいないのは良い国民がいないから」と返された。「あなたも文句を言ってないで参加しなさい」と。刺激を受け、デンマークからSNSで現在の「NO YOUTH NO JAPAN」を立ち上げた。

〇いちばん違うのは「知識量」。各政党の違いを誰もが言える。同様に政党の歴史や特色も説明できる若者たち。

〇一方で、クッキー作りのときに、「水500mlが3杯だから1.5ℓだね」と言うと「あなたは天才か」と驚かれた。

SNSでの発信に15000人が反応。「バズった」が、投票率は上がらなかった。でも続けようと思い、現在に至る。

〇投票教育は政治参加じゃない。

〇街頭演説を立って聴いてみたが周囲から見られて恥ずかしい。立っていると演説を終えた政治家が話しかけてきたりする。政治家は悪者みたいに描かれるけどいい人なんだよ、と知る()

〇地方で「VOTE For 〇〇(My Town)」運動を展開。神戸の投票済証がかわいい。これは豊中市の例。

〇投票済証をもらおう。スタンプ台紙づくりも(何ももらえません・笑)

〇本を出版。「YOUTH QUAKE」。私たちが欲しかった教科書を作った。副読本にしているところもある。豊中市は全高校生にパンフ配布。まちなかギャラリーに「投票案内所」を開設。マッチングアプリに広告で「選挙あるよ」。スマホのカレンダーアプリを活用し投票日を告げる。

〇森喜朗氏が「女性が入る会議は時間がかかる」と不適切な発言をした。しかし批判はするが1週間でみな忘れる。だから本人に届いてない。署名を通じ、処遇の検討、再発防止、再教育を求めていくアクティビストとしての活動が重要。

〇女性の議員は15.4%2030代が増えていくなら希望があるが、共働き世代でますます女性は政治進出ができない。進出する人をフォローする活動をする。議会で3人目の女性が立候補すると先の2人が票を取られると警戒する面もある。

〇ここからはデンマークの話。留学中、2つの選挙あり。EUの選挙もあった。選挙はワクワクするイベントだ。「オトナの文化祭」だ。日本では選挙事務所の中だけのお祭りだがデンマークでは学校も町も盛り上がっている。ごはんを食べる場所で開票速報に盛り上がっているのはまるでパブリックビューイングだ。授業を休んで選挙運動を行っている大学生も。

 

〇閣僚は20人中7人が女性。若い。気候変動が大きな争点となった。日本では大きく取り上げない。若い人の声が政治につながっている。

〇青年政治家を育てるシステムがちゃんとある。コーディネーターがおり、アドボケートしている。1415歳から政治参加をしているから40歳の首相が生まれる。「私と同い年の子が議員になってる!」とショックを受けた。18歳から立候補でき、22歳でEU議会の議員になっている。「社会は私たちが作っている」という感覚がある。

〇日本では、54.5%が「関心ある」と答えるが18%しか投票に行かない。面倒くさい、忙しい、住民票がない。不在者投票をしようとしても切手はどこに売っているのかも知らない。紙の封筒は家にない世代。横浜はデジタル化した。選挙に行きやすい仕組みを整えることが大事。

〇日本の各自治体さまざまな施策。民主主義の担い手を育てること。教育現場で「中立」は大切だが何も教えないのでなく「積極的中立」を。課題をテーブルに載せた上での中立を。大人が民主主義を示すべき。

〇子ども議会、若者議会は全国に100くらいあるが、イベントで終わるものか、声を反映できる仕組みかが重要。予算がつく議会もある。デンマークでは「ユースカウンシル」という若者意見の場が常設されている。

〇政治家は運動会に来ず、給食に来てほしい。話をするのでなく話を聞いてほしい。まず若者と仲良くなって関係を築いてほしい。ある教室で質問。「政治家に会ったことがある人は?」すると全員の手が挙がり、逆に「なんでそんなこと聞くの?」という顔をされた。

〇今年の参院選を例に、不在者投票の「オンライン化」を提案。7/10が投票日。3年前の参院選投票日は7/21だった。4月に進学し、住民要件3か月を満たすには7/10では昔の住所に選挙権が残ったまま。こういうことを想定してほしい。この視点が足りてない。もったいない。

〇選挙に関心のない層まで届く広報戦略。広告、デザイン、工夫。広告まですることに抵抗感があるかも知れないが、重要。デザイナーにお金を払っても工夫すべきだ。若い人は明朝体が読めない。スマホはゴチック体。明朝体はなじまない。

SNSでの発信にU30に参加してもらう。自由に動ける環境を作る。若者に任せてみる。選管職員はチェックのみ。

〇選挙運営の在り方改革。これからは①エビデンスに基づいた投票率UP施策を。PDFでなくエクセルで発信して他のデータと紐づけて活用できるように。役人の勘、思い込みで意思決定をしがちだ。②「Z世代」とインターセクショナリティを矮小化するな。

 

<感想>

 

 まずは氏の、といっても現役の大学生。氏の行動力と展開力に圧倒されました。先の三豊市長も学生時代の「出逢い」と「気づき」が行動の原点でしたが、こちらはさらに若く、小学6年生の時。私たちも子ども議会、意見交換会を行っていますが、それが単に「行事」に終わってないか、声が反映されるのか、の問いに首がすくみます。中学、進学高校、そして大学で見てきた若者の政治参加意識、そして「オトナになる」ことへのさして希望のない大学生空気感。それらへの反発、というよりも彼女の生来の生命力へ、これらが「火をつけた」と言うべきでしょう。

 貴重なデンマーク留学。これこそが彼女の政治参加行動を決定的なものにしたし、それがまたこのような場も通じて日本の若者の政治参加のありようを変えていくのでしょう。私もその一員に、名乗りを挙げたいと思います。

 具体的には、次のような施策が提案されました。

 かねがね、一般に言われる「主権者教育」という言葉よりも、氏の言葉のなかでは私の使う「政治参加教育」のニュアンスに近い言い方になっていたことに異を強くします。ややもすれば「選挙教育」に終わる、それが主権者教育だとすませてしまうことへの警鐘がある。「声を届けないと」「社会は私たちがつくる」との意識こそ政治参加であり民主主義だ。そのように確信します。ゆえにこの表のとおり、選管任せではない、教育委員会だのみではない、私たち政治家が身を乗り出しての改革が必須です。「もうこの辺でいいのでは?」の妥協の心を超えて、議会が「さらに乗り出そう」の合意に至る。それを目標に掲げたい。当選し、議会に送り込んでいただいた私たちの、重要な責務の一つと自覚します。

 

 

.全体の感想

 

 2日間にわたる6つの講義はどれも濃密。個性にあふれ、講師個々人の行動の足跡、不動の実績に裏付けられた論説に、「君も動け!」と体を揺さぶられる思いです。

 講演の会場であった日本青年館は、新しい国立競技場の正面。休憩時間に散策をしました。ここで世界のアスリートが熱戦を繰り広げた。コロナで揺れに揺れた東京2020五輪、そしてパラリンピック。あの熱波も去った昼時に、講演からもらった熱波を冷ますひととき。報告書を書くのにカメラとペンを必死で持ち替えた、その画像を振り返りながら、あらためてその「熱さ」が呼び覚まされます。「竹下登の1億円はバラマキではなく知恵比べだった」。「スキステキに、を入れよう」「貰うより稼ぐこと」「誰が市長になろうと主人公は市民」「今はオーナス期。かつてのボーナス期の成功神話に決別を」そして「政治家は運動会でなく給食に来て」。ぐらぐらするほど圧倒的な熱に包まれた2日間でした。

 各講演者がまさに人生を賭している。そこから紡がれた言葉をひとつも聞きもらさず、そして聞いてオワリにすることなく、これからの議員活動で放出結実させねば、との思い。どこまでできるか。挑戦したいと思います。


レポートTOP