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〇セミナー「議会改革を考える」     JIAM全国市町村国際文化研究所

 

1.開催概要

 

  市町村議会議員研修【2日間コース】

     議会改革を考える〜先進事例に学ぶ住民参加・情報公開〜

  令和6年1021日、22

  全国市町村国際文化研究所(JIAM) 滋賀県大津市

  @地方議会の展望 早稲田大学名誉教授   北川正恭氏

  A「議会改革度調査」から見る地方議会

           早稲田大学マニフェスト研究所事務局長 中村 健氏

  B住民参加・情報公開を進める取組@

           石川県加賀市議会副議長 上田朋和氏

  C同              A

           宮城県柴田町議会議長  高橋たい子氏

  D各議会における今後の議会改革推進の検討(演習) 中村 健氏

 

 

2.セミナー詳細(以下、文責は内田にあります)

 

@地方議会の展望 早稲田大学名誉教授   北川正恭氏

 

〇「気づきの連鎖」という話をしたい。かつて県議を3期務めた。中央集権の真っ盛り。国への陳情が県議の仕事だった。

〇衆院議員に当選。国では政治改革の運動が起きていた。「省益あって国益なし」と言われた時代の国会議員を4期務めた。

1990年からは政治改革運動に没頭。カネまみれの政治に「これでいいのか」と疑問を感じて。かつて敗戦で、310万人が死に、最貧国となった。それを変えざるを得ない事態であった。それまで国の最大の支出は軍隊であった。軍隊をなくそう。そして浮いたお金を経済に回そう。こうして工業社会へと進み、そこにカネをいっぱい注ぎ込んだ。工業には港が必要だ。それまで港と言えば日本海側がメインだったが、太平洋側が表側に変わった。1975年、ランブイエ会議。ここまでの30年間で、日本国は世界のトップグループに仲間入りした。これを世界が驚いた。「東洋の奇跡」と。天皇の国から民衆の国へと脱皮。

〇今、これにも匹敵する政治、経済、教育の改革の時。農業革命、産業革命以上の大革命期の感覚を持たねばならない。

〇今の子どもの寿命は107歳になる。ところが日本の年金は寿命70年で設計されている。今のあり方ではいけない、という気づき、「今の制度ではもたない」という意識を。

〇立法、司法、行政のしくみを考える。立法では、小選挙区制となり、比例と折衷の姿になった。これからも改革は続けていく必要がある。

〇行政は、省庁は製造者側、作る側のしくみとなっている。消費者庁、子ども庁など、これからは生活者の側に立つしくみになっていく。国策会社はもう動かない。

〇司法では、大宝律令以来、「おかみ」は信頼されるものであった。ししかし「官が民を裁く」時代から裁判員裁判の時代へ、司法試験改革の時代へ。

〇これらに通底していることは、地方制度改革である。地方議会も、執行部に「要望(お願い)」する議会から提案する議会へ。

〇改革が進んでいる議会ほど「まだまだ改革が足りない」「もっと改革できる」と感じている。そう感じていない議会が問題である。地方議会が国を変える、というほどの気概が必要だ。「ウチは議会改革が進んでいる」と思っている議会ほど改革が進んでない。報酬や定数の削減、「量的削減」は手段の変化に過ぎない。役人や官僚にできない改革を議会が始めよう。

〇提出された議案や予算を否決してみたら、執行部は変わる。議会では議員間討議を進めるべきだ。

〇市長はなぜ一人なのか。独任制が便利だから。議会はなぜ一人でないのか。合議制が間違いを質すのに適しているから。しかし制定当初、正しくても、10年経てば変える必要が出てくる。行政をチェックするのが議会、それだけじゃない議会の役割。「ウチの議会はこんなもんだ」との意識に負けるな。

〇執行部局は、公務を「今までのルールのとおりにやる」ものだ。前例主義にならざるを得ない。新しいことはやりにくい体質なのだ。議会は民意の代弁者だ。法律、規則を直すのが仕事だ。議員提案でやることだ。しかし今、議会の長老と呼ばれる人々は機関委任事務の下でやってきた人々だ。考えてはいけない時代の人々である。「変える」という最先端で、民意を反映することこそ議会の役割だ。

〇今では議会基本条例を制定した自治体議会は900に及ぶ。事務局職員と力を合わせて、「変える」議会にしていくことだ。墨田区議会が好例。議会事務局はオールラウンド。何でも勉強できる。議会事務局が役所の「左遷」でなく「エリートコース」となるべきだ。沖縄県議会は議員100人に事務局職員300人である。

〇三重県知事を務めたが、知事部局だけで改革はできない。議会も改革を。利権をやめようお互いに。要求型の質問ばかり。それを職員はバカにして「善処します」と。ここから脱却しよう。議会が変わらなければ執行部は変わらない。

〇日本で今、6人に1人の子どもが貧困。これは憲法にもとる。インクルーシブ公園は米では当たり前、日本にはまだない。「議会は監視するもの」という感覚は、国の罠にかかっている。そこに気付かない限り、対等な二元代表はあり得ない。

〇議員としてそれぞれ皆、やっているが、議会として何かやっているか? 議会議員は「みんなでやる」訓練をすべきだ。

〇北上市議会では報酬を月額5万円上げる案を出したが市民から猛反発。しかし誠実に対話を重ね、5万円アップを勝ち取った。西脇市議会ではデマンドバスを議会が実現。これにより、住民から議員報酬を上げよとの声が挙がり、2万円アップとなった。

〇個人の質問は空気銃だ。議会としての質問はバズーカ砲だ。

〇「追認」からの脱却なくして明日の議会はない。

2000年の地方分権一括法、2015年の地方創生。これら「国」がやるからうまくいかない。民意を反映した議会が一丸となって執行部に持ち込む。事務局を巻き込んで。これが必要だ。国が地方を変えるのではない。地方から国を変えるのだ。

 

A「議会改革度調査」から見る地方議会

           早稲田大学マニフェスト研究所事務局長 中村 健氏

 

〇熊本市では、高齢者がデジタル町内会を開催。小学生がタブレットを使って道路整備を提案し、実現。デジタル化を進めることで、今までできなかったことができるようになった。デジタル化が進んだ最大の要因は、「市長のリーダーシップ!」市長説明はすべてsidebooks内に格納した資料でのみ説明するよう徹底した。

〇国家公務員試験申込者数の推移(人事院)

          2012年       2021

院卒        3,752人       1,528

大卒       21,358人       15,883

〇東京23区の採用試験(筆記)の倍率の推移

 平成17年 8.27倍      令和6年 1.09

〇自治体職員の自己都合移植者数推移(総務省)

 2013年 6千人未満    2022年 1.2万人超

〇「17歳の自治会長」の話。中学に行かず、ぶらぶらしていた子が自治会長になった。自治会長の仕事は「集金」「いやな仕事」「悪口を言われる」「今まではこうだった」を押し付ける、というイメージだった。輪番制でやってきた自治会長の順番が当たり、17歳で自治会長に。彼の提案が次々と実り、町内会の改革が進んだ。会員みんなの「得意」を集めてプラットフォームを構築。みんなの出番を作ったことが成功の背景。人気が高まり、彼は3年間、自治会長を留任し、21歳でまちづくり会社を立ち上げた。

〇避難所となった体育館の画像を比較する。日本では、1995年の阪神・淡路大震災から今日まで、体育館、段ボール、雑魚寝という光景は変わらない。台湾で4/1に地震が発生したが、3時間後には温かい食事、きれいなトイレが提供された。

DXとは。これまでの市役所の活動を前提とした活動・運営でなく、これからの市役所のありたい姿を前提に今の仕事の進め方や組織運営を変えていくこと。議会がやるしかない。

〇議会「傍聴」のルール改革。太田市HP。「住所・氏名のご記入は必要ありません。乳幼児・児童の入場も可能です」。

〇これからは「議会力」の差で地域に差が生まれる。

 

B住民参加・情報公開を進める取組@ 石川県加賀市議会副議長 上田朋和氏

 

〇加賀市議会改革の足跡。R3.7月、HP刷新。議員ごとの賛否、行政視察報告、委員会報告など。H27.8月からフェイスブック、R4.4月からインスタグラム。R3.1月から議会ユーチューブ広報番組の配信。議員自らが議会の取り組みを解説。6年9月現在で計35(ここで動画紹介)。これらは新人議員と事務局職員で制作。議会だよりの改善。増ページ、フルカラー化、モニター員からの改善提案。紙面の工夫として高校、中学、小学生の生徒活動紹介、見開き特集ページ、フォントの工夫や議員のひとこと欄。配布方法の工夫。公共施設ほか。フェイスブックに先行掲載。

〇市民が参加する議会へ。H23より取り組み。女性議会、小学生議会、中学生議会、高校生議会、議会だよりモニター、議会おでかけ教室。

〇議会報告会は「議会おでかけトーク」として開催し、より活発な意見交換の場所に。グループトーク方式、進行は議員が務め、そのために議員は外部講師によるファシリテーション研修を受ける(2)。周知用ポスター。

〇授業の一環で小中学生が議会を傍聴。

〇子ども議会の開催。ただし先生の「働き方改革」の影響で存続が危惧。

〇加賀の若者投票率は75%、可児高校は90%。

〇中学生はしっかりと発言する。通学路、トイレの臭いなど。死亡事故発生の交差点について、安全対策を中学生が提案、トリックアートが実現した。

〇高校生との意見交換会で出された提案をもとに、一般質問や委員会での提案を。これにより、図書館での飲食は禁止だったものを一部開放することに。

〇議会おでかけ教室は小中学校に出向き、議会活性化特別委員会メンバー2名が講師となって議会の概要説明と意見交換を。

〇議会モニター、議会だよりモニター制度。市内各地区、女性団体、商工会議所、青年会議所からの推薦により任命。アンケートで意見をもらう。任期1年再任不可、謝礼は1回500円分の図書券。これまでの意見として「文字が小さすぎる」「文字ばかり」「毎回同じ」「インパクトある表紙を」など。議会モニターからは「議場バリアフリー」「ネット視聴者にも議員の持っている資料が見られるように」「市役所ロビーでも本会議が見られるように」など。

〇金沢大法科大学院との連携。市とロースクールとの連携はよくあるが、議会との連携はめずらしい。大学に出向いて講義。これはインターンシップの単位取得ともなる。インターンシップ受け入れも行う。

〇政策提案する議会へ。これまでに読書活動推進条例、デジタル技術の活用による持続可能なまちづくり条例、スポーツ推進条例を実現。

〇政策提案までいかなくとも、市長への「提言」を各種行っている。

〇その他。会議録公開の迅速化、タブレット端末導入、議会交際費内訳公開、議会申し合わせ事項の公開、傍聴席に大型ディスプレイを設置。ここにケーブルテレビの画面が写ることにより、傍聴席に背中を向けている質問者の顔が見える。

〇ペーパーレス化で、紙の節減効果以上に、事務局の事務効率アップに貢献。資料作成、配布の手間を減らす。

〇災害を想定し、オンライン会議を開催。

〇議会アンケートの導入。対象1500人から議会が取り組むべき課題を答えてもらった。

〇日曜議会。あわら市議会との議員連盟設立。議会図書室の機能強化として蔵書7300冊、レファレンス機能向上。議会図書室は市立図書館内市政図書室に併設させている。

〇議会改革度調査で2023年、1562議会中5位に。

 

C住民参加・情報公開を進める取組A 宮城県柴田町議会議長  高橋たい子氏

 

〇講演タイトルは「体系的な議会政策サイクルとICT技術を活用した情報発信・交流で住民の声や災害に対応できる議会へ」。

〇2年ごとに議会基本条例の目的が達成されているかを議会運営委員会において検証(条例27条に基づく)。チェックシートを準備し、議員全員で評価。その結果をもとに行動計画を作成。これを議会アドバイザーが第三者評価。評価結果と行動計画を公表。このサイクルを回す。議会アドバイザーは青森大学社会学部教授。

〇予算決算審査はワールドカフェを採用。楽しい。そこは「決める」場でなく「出し合って共有する」場。56人が適切。テーブルに1人が残ってあとは席替えする。同じ人が隣り合わない。3回で元に戻る。その後、最終討議を行う。あらゆるものにこの方式を使っている。高校生ともこの方式で意見交換。慣れてきて、「ちょっと黙っていて」というくらいに意見が出る。何でもあり、でなくテーマを決めて。

ICT化の取り組み。議会中継、タブレット導入、ペーパーレスシステム導入、SNSによる情報発信、会議録検索システム導入。

〇3種の議会懇談会。一般懇談会、団体懇談会(委員会ごと)、高校生との懇談会。コロナ禍の中でもオンラインで実施。

〇仙台大学が町にある。その副学長を招き、議員研修会。

〇久慈市を参考に、災害を想定した模擬の安否確認を抜き打ちで。コロナ禍でも止めない議会運営。町民対象の一般懇談会はオンラインで。議会運営委員会もオンラインで。

〇議会後、必ず「振り返り」を、「振り返りシート」で行う。全員一致項目しか残らないのをやめ、積み残しは常任委員会で継続調査とする。残りは一般質問で取り上げる。言ってもムダという「ゼロ」になるものをなくす。

〇「柴田町言える化議会」を目指す。

 

D各議会における今後の議会改革推進の検討(演習) 中村 健氏

 

〇議会改革の事例として、鷹栖町議会、あきる野市議会、大津市議会の例。「マンションのごみ箱は議会だよりだらけ()。大津市議会が行ったアンケート調査でわかること。若者はFBを見ない。力を入れても空振りです。マーケティングをやらない議会。若者とキャッチボールできる議会に。工夫次第だ。

〇議会の中の「長幼の序」は強いほうか? 議論が深まらない背景として、無言の圧力、時間の制限、最初から結論ありき、テーマから外れた話が多い、あきてしまう、まんべんなく皆が発言できない、話し合いの見える化ができてない。議論を深めるためには技術が必要だ。

〇ディベート(討論)とダイアログ(対話)との違い。ディベートではABかしか出ない。対話からは新しい「C」が生まれる。ファシリテーターのスキルが必要。

〇議論と討議。議論とは、グループ内で協力し1つの結論を出すこと。討議とは、ある問題に対して、互いに意見を出し合い、問題点を話し合うこと。ホワイトボードに書き出す。現状15要因15解決策20結論10分、というように。「要因」は、現状がなぜそうなっているかについて深く掘り下げること。問診と同じ。

※ここからはグループに分かれてワーク。「議会だよりをどのように改善すればよいか」。

〇働き方改革なのに、だんだん疲れていく役所。

〇「議員は何をしているかわからない」との答えは56%。「いなくても同じ」35%、「支援団体の利益」25%。「何をしているのかわからない」のは、お知らせが足りないから。

〇あるべき議会活動とは、

 課題意見聴取視察考察実行評価 であるべきなのに、実際は、

    意見聴取

これしかやってない。上記全プロセスを踏まえて、取り組み全体を報告すべき。

〇守る行政、変える議会。町の課題解決、未来のことは議会が決めているこういう姿に。

〇「議会事務局」でなく「議会局」と名乗るところは20議会のみ。市ではつくば市、横須賀市ほか。「事務局」じゃない。現状は事務局に政策立案の時間はない。やっているのは事務と庶務。事務局長は部長級なのになぜ「事務局長」なのか。

〇飯綱町議会の「議会政策サポーター」の例、大津市議会と鎌倉市のテレビ会議の例、戸田市議会の所管事務調査の機能強化の例、太子町では議場を自習室として開放、普段はフリースペースとして使っている。新見高校と新見市議会とのコラボの例。実際に陳情書を提出している。松本市も同様。

〇長野県高森町では建設課も子育て支援を担う。「建設課は何をしていますか?」「道路や公園を作っています」「それって子育てですよね?」そこで建設課とママとの意見交換(ワークショップ)が始まった。「子育てする建設課」として新聞に載った。これまで「談合」で載るくらいだったが()。「建設課ができる子育て支援」を掲げ、「日本一、子育て支援する建設課になるぞ!」と前のめりに。ワークショップでは67項目の意見が出された。例えば公園の駐車場の白線の引き直しで子どもの乗り降り、荷物の積み下ろしが容易になった。親は大喜び。それが新聞で報じられてさらに前のめりに。今度は公園の池も改修。この波動が、税務課へ、上下水道課へと伝わっていった。町の広報紙を市民が作成。ママさんたちがキャリアを生かして参画。ママネットワークを活用して情報収集も。

〇可児市「子育て健康プラザ」は可児市議会「ママさん議会」から。

10年後、議会は必要とされているか? 民意の集約、議論、企画、決定というプロセスはなくなることはない。「生活者起点」の議会に。

〇議員個人として動かず議会として動く、久慈市議会の例。議員は知っている、市民は知らない。だから2者が一緒に勉強会をすれば新しいアイデアも生まれる。情報公開から情報共有へ。住民参加から住民参画へ。住民参加とは、今の議会に住民が加わること、参画とは、これからの議会に住民が加わること。

〇一人一人のチカラは微力である。しかし、無力ではない。

〇地域から日本を変えていきましょう。地域を創るのは議会、議会を創るのは、あなたです!

 

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3.感想

 

 まず、柴田町議会からの報告で、書ききれなかったものを補足します。

 通年議会となり、忙しくなった。しかし忙しくなるのが議員の仕事だ。それでいいのだ。町民からある提案があれば、「作戦会議」と称して3回聞き取りを行う。これにより議論が深まる。これまで定例議会会期は1週間だったがそれが30日に。もう慣れた。「これまでどおり」は楽だ。

 議会基本条例も流行のように作った。が、2年経って検証する、とある。さあどうしようか、となった。町田市は例年、改革ランキングでトップ入りするが、基本条例は制定していない。

 ファーストペンギンは大事だが、セカンド、サードの同調者も大事だ。聞き手がうなずいてくれると心理的に安定する。すなわち人間関係が重要だ。

 相談するときには、反対しそうな人にまず相談するのが私のコツ。

 戸田市議会のHP「年間活動テーマ」を設定しているのを参照してください。

 議会懇談会に来てくれないとの悩みがあるが、来てくれる工夫を。紙を回したり配ったりしても人は集まらない。しゃべりたい人が占拠する例も。そうなると来たい人が帰ってしまうことに。それで6人でチームを組み、防災がテーマならその関係者の所に行こう、となった。「3人くらい連れてきて」とお願いすると、ハッピを着て全員が来てくれた。紙もSNSも、見る人しか見ない。顔と顔でしか、人は動かない。

 会津若松市議会「議会白書」を参考にしてください。議会が町内会にお願いし、除雪補助の「スノーバスターズ」が実現。私道の除雪に市から補助が出ないことがきっかけだった。資料のここかしこに、必死で走り書きしたものは、以上です。

 全国で、よくぞまあここまで徹して議会改革に挑む人がいるものだ、と感心。感心で終わってはいけませんが、通り一遍のお題目でなく、ほんとうに、議会が民主主義の基礎的な仕組みとして本来の使命を果たさなければ、民主主義といっても選挙とか、本会議とか、議決とかの手続きばかりで形骸化してしまう、いや、この国の民主主義はそもそも形式に始まり形式に終始し、それが民主主義だと思い込んでいるフシがある、そのようにすら思えます。熱い思いを、このペーパーでせめて、後輩の皆様と市民の皆様に、語り残しておかねばと思います。

 私の議員時代の始まりがちょうど自公連立政権の始まりで、また地方分権一括法により、国と地方が上下でなく対等である、との思潮が始まった頃に一致します。冒頭に語った北川先生の講演を日比谷公会堂で聴講したときのことを覚えています。「議員の皆さん、東京へは、陳情に来るのでなく勉強に来てください」。時を同じくして、鳥取では当時の片山知事が「自立塾」を創始。ここでも何度も、目からウロコが落ちました。

 しかし議会改革はそれほど容易ではなく、私が議会改革特別委員会の初代委員長を仰せつかって、栗山町の議会事務局長を招へいし、また来る日も来る日も委員の皆さんには審議にお付き合いいただいた。条例案の説明のために船で島にも渡り、マスコットキャラクターの京極くんにも協力願い、プレゼン資料を自ら製作したことも懐かしい。瞬間最大風速でしたが、早稲田大学マニフェスト研究会の改革度ランキングにもちょっと上位につけたこともあったと記憶します。しかしどこまでも、壁は、北川先生の言葉にもあったように「ウチはこんなもんじゃ」という心の中の岩盤です。私も、基本条例ができた。これで一服や、という思いがなかったといえばウソになります。しかし時代は急変し、ほとんど視界もないスピードで、後輩議員も出て、タブレットなど先のまた先だろうと思いこんでいたが、意外とすんなり、実現した。「紙でないと」とこだわっていた古株先輩議員はかわいい後輩から申し出られると意外に簡単に「攻略」できた。議会だよりの裏表紙に、私が得意とする手法で「対話形式」の記事も連載させていただきました。自分個人の広報紙ならいくらでも続けられる。進化もできる。でも団体戦で、その壁を破ることそれ自体がもうしんどい。そうなると「老兵去るべし」となるのでしょう。

 世はSNSが席巻し、フェイク渦巻く混沌が、正常な選挙制度さえ覆すという時代となりました。だが、引き返すことは誰にもできない。法の整備が後追いで、ポスター掲示のルールや立候補の禁止事項などを慌てて、そのくせあまりスピード感が感じられない様相で進められている。もはや、私の視野では制御ができない、そんな御代となりました。ここで私はまもなく退任します。先日、高松で開かれた四国新幹線の会合に参加している私を見て、他市の議会議員が驚きの表情をしていました。「まだ学ぶ気か」。また先日、国会議員に同行して市内の識者と意見交換。そのあとで国会議員が「退任するとは思えませんね」と一言。知識も知力も体力ももう若くはないが、情熱だけは炭火のように暖かい。自分をそのように見ています。

 これからの市議会を、個々の議員が市長に要望する姿から提言する姿へ持ち上げてほしい。それが叶わなければ日本は暗い。最後の日まで、叫びます。

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