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○ごみ袋への広告募集                   岡山県総社市

 

1.視察意図

 

  総社市ではごみ袋の「変動相場制」、市民が頑張ってごみを減量させられれ

 ばごみ処理料金を下げるという取組みとともに、ごみ袋に広告を掲載し、そ

 の収入を充てて少しでもごみコストを軽減しようという取組みを行っていま

 す。

  ごみ袋は広告媒体としていかがか、またごみコスト削減効果はどうか、勉

 強させていただくことにしました。

 

2.事業の概要

 

  ごみ袋に広告欄。20リットル袋、30リットル袋には4コマ、45リットル袋

 には9コマの枠を設ける。

  社名広告だけでなく、「私たちはごみ減量の趣旨に賛同し協力します」との

 文言を掲示し、企業のイメージアップも狙う。

  市のホームページで大きく宣伝。「残り○○枠」と、現在の募集状況を大き

 く掲示し、参加をアピールしている。

  同市の家庭ごみ排出量はH13からH16まで毎年増加。これによる地球温暖

 化防止と負担の公平を目的に、ゴミ袋有料化に踏み切った。H18年度から。

  H17年度をピークにごみ排出量は毎年削減。H2021年度には、当初目標

 として掲げた「H17年度比△20%削減」を2年連続で達成した。

  これに基づき、ごみ袋料金を値下げ。

  50円⇒25円、30円⇒15円、20円⇒10円に。(22.10.1施行)

  これに際して心配されたのは「リバウンド」。値下げで再びごみは増えない

 のか、との心配あり。そこで「総社みんなの約束書」を調印した。市民団体

 16団体が調印。今後も継続してごみ減量に取り組むことを誓い合った。

  ごみ袋値下げ分だけ、新たな歳入確保が必要。そのために広告募集を発案。

  値下げ後、H22年度には31.9%の削減を実現。リバウンドは起こらなかっ

 た。


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3.特記事項

  @トップの熱意、リーダーシップが、職員の意識を高めた。ごみ袋収入そ

   れ自体が目的なのではない。

   市長自ら「ガラス張り公開市長室」を設置。部長も同行し、市民と直接

   懇談する姿を示した。

  A半額にしたのは、旧のごみ袋(広告なし)と新しい袋との交換に際して、

   旧1枚=新2枚と換算しやすくするため。

  B「みんなの約束書」は、今後3年間、家庭ごみの排出量を見守り、「リバ

   ウンドしたらまた値上げします」との確認を明記した上で、地域、家庭、

   企業、学校、市がそれぞれ分担する課題に取り組むという内容。

   調印したのはコミュニティ連絡協議会、町内会、同連合会、商工会議所、

   校園長会、婦人協議会、老人クラブ連合会、子ども会連合会など、プラ

   ス市長。

  Cごみ減量への各種取組み。

   ・ごみ減量サポーターの募集。年1回報告をもらい、優秀者を表彰。

    ⇒コミュニティから選出。

     雑紙(ざつがみ=新聞以外の、菓子箱や雑誌など)を回収し、これを

     サポーターの収入とする。

     これはサポーターの発案によるもの。

     古紙を月に1度の回収では、家庭に溜まりすぎるので、支所ではい

     つでも、古紙2sで30リットルごみ袋1枚と交換してもらえる。

   ・「変動相場制」講演会に前横浜市長を招聘、200人が聴講。

   ・環境出前スクールの開始。

    ⇒ごみ回収業者のおじさんも子どもに喜んでもらえて、張り切る。

     ボランティアでお願いしている。

     パッカー車のしくみ説明、体験、実演を20分、後半20分はクイズ。

     市職員も出向く、今年度すでに14回実施ずみ。

  D歳入確保策としての広告募集

   ・値下げで4.250万円の歳入減。

   ・印刷を両面→片面とし、経費節減。

   ・これに広告掲載で歳入を補う。

   ・他にもHPのバナー、市の封筒や市民べんり帳への広告募集もあり。

   ・1枠名刺サイズで2万円。トータル164枠で328万円。10万枚単

    位で版を替える。

   ・複数枠応募もあり、104事業所ですべての枠が埋まった。

   ・環境課職員が広告取りに歩く。協力企業は市HPや広報でも紹介する

    ことで、付加価値も付ける。

   ・協賛してくれた企業へは、後日市長が礼に訪問。気持ちを届ける。

   ・ごみを入れて膨らむと、下の方が見えなくなるから、上のほうに移動。

   ・ごみ袋半額化に際して、従前のものと交換制度にしたが、そうしてい

    ない先進地もある。しかし実際には、たいへんな量のストックが家庭

    にあったので驚き。売り場では交換時に混乱もあった。

   ・リバウンド防止へ、工夫。

    市役所玄関に「30%達成」をアピール。マスコットキャラやハンドタ

    オルでも啓発。

   

4.感想

  総社市役所を訪問。

  まず目に飛び込むのはねずみのキャラクター、「チュッピー」くん。

  ここは雪舟のふるさとで、描いた「ねずみ」をモチーフに、ごみ減量キャ

 ンペーンのほか「乗合タクシー」など市のさまざまな取組みに大活躍。ねず

 みがオムツをしているのは、これも市長の熱心な発案で、同市を「子育て王

 国」と宣言しているからなのだそうです。ねずみと「ハッピー」をあわせて

 「チュッピー」というネーミングです。

  サンプルとしていただいたごみ袋にももちろん、「ごみ減量」とのタスキを

 掛けたチュッピーくんが描かれています。

  何かとても熱心に取り組んでいる、「力が入っている市役所だな」という印

 象が玄関からムンムンしている感じ。そこに、前述の「30%削減達成」の横

 断幕も、誇らしげに掲げられていました。

  市職員の皆さんも知恵を絞り、汗を流して「企業訪問」の日々。しかし広

 告が取れたら、後日市長自らがその企業に「御礼に」伺う、というこの姿勢、

 ハンパではありません。だからこそ、環境課の職員の皆さんも意気に感じて

 取り組んでおられるのでしょう。

  企業では、自社の広告が入ったごみ袋を、社の粗品に活用するという使わ

 れ方、スーパーマーケットではレジ袋にも変身、そしてある不動産業者はア

 パート入居者にプレゼントするという、なかなかのアイデア戦略もされてい

 ます。

  ごみ減量。言うは易く、なかなか実現が果たしにくい課題。でも成せば成

 る、ということを、市長の旗振りで、見事に達成している姿がここにありま

 した。そしてもう一つ。市民参加、市民との協働もまた行なうは難し。です

 が、総社市ではその両方を「一挙両得」と、カタチにしているところがすば

 らしいと思います。

  自治体が、ごみや環境だけを見ているセクション、住民団体だけを見てい

 るセクション、ばらばらのままだと、何も起こせません。これらをコーディ

 ネートするのはやはり、デザイナーとしての政治家ではないでしょうか。

  新旧ごみ袋の交換では「想定外」の事態に混乱もあったとお聞きしました

 が、そんな苦労話も笑いながらの、余裕のご説明でありました。


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