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○新生活交通「雪舟くん」               岡山県総社市

 

1.視察意図

 

 買い物、通院などの足がないという問題は、高齢時代を迎えて誰もが無関心でいられないものです。

 丸亀市にはコミュニティバスが運行されていますが、改善に改善を加えているものの便数には限界があり、公共交通がこれからどうあるべきかの大きな岐路に立っていると思います。

 全国各地で「乗合タクシー」が導入されており、玄関から乗れる、目的地まで乗れる、安い制度が人気を博しています。

 総社市もその一つで、市が直営するめずらしい形態です。また「議会から発案が出された」というユニークな面もあります。

 その評価と課題は何か、丸亀市の参考にするため、視察させていただきました。

 

2.これまでの経緯

 

 H17年に合併し、現在の総社市が誕生。その合併協議の中でも、新市での公共交通のあり方につき、合併後速やかに検討することが約されていた。

 当時走っていた路線バスについて路線の変更、高齢者の多い一部の地区に予約型乗合タクシー、コミュニティバスを走らせながら、「地域公共交通会議」を開催しながら改良を重ねてきた。

 全ての路線が赤字に、また県からの補助金が打ち切られることも心配され、抜本的な見直しを余儀なくされた。

 H22にアンケート調査を実施。本数が少ない、バス停が遠い、利用したい区間がない、利用したい時間に便がない、というのがバスを利用しない4大理由。これをもとに、@地域格差のない A利便性の高い、公共交通の設立が望まれた。そこで、@空白遅滞の解消、A高齢者の移動手段の確保、B行政経費の見直し、の3つの見直し方針を掲げた。

 同時に、アンケートでわかった理想像は、目的地で降りられる、便数が多い、自宅から乗れる、安い、が4大要望であったことから、デマンド交通「ドアtoドア」の方式が選択された。

 

3.総社市新交通の特徴

 

○運営主体が総社市である。

 ⇒同市が参考にした先進地51市町のうち自治体直営なのは島根県雲南市と茨

 城県笠間市、四国中央市など5つだけ。ほとんどが商工会が主体であり、わ

 ずかに社会福祉協議会とTMOという自治体もある。

○原則、ドア・トゥ・ドア。入れないところは近くまで。

○車両は10人乗り4台、8人乗り5台の計9台。市が購入し運行業者に貸与す

 る方式。1台300万円は合併特例債を活用。

○運行エリアは市内全域。中心部の「共通エリア」を囲み、市内を4エリアに

 分割して運行。線でなく面でカバー。

○運行曜日は平日のみ。時間帯は8時〜17時。これは高齢者、通院、買い物利

 用をターゲットとしたため。これ以上便利にすると、民業を圧迫。それに周

 辺部の商店の客を奪うことになる。

○運行ダイヤは概ね1時間毎。

○運賃、1乗車300円。バス並みに設定。タクシー初乗り運賃も考慮した設定。

 全国でも300円のケースが多い。減免措置あり。

○利用対象者は登録制。そうすることでデータを取り、今後の見直しにも活用。

○予約方式。予約は1週間前から当日1時間前まで。今週金曜日に来週金曜日

 の予約ができる。順番に乗り、順番に降ろす[乗り合い方式」。

○運行事業者は市内すべてのタクシー業者(5)とバス業者(2)の7社。

 ⇒普通なら入札で1社にするところ。共存共栄全員参加方式を市長が提唱。

○通学の便のため既存の路線バスも走っている。これを保護するため、フィー

 ダー方式。幹線と支線を分けたデマンド方式。


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4.経費の問題

 

○導入前の状況

 路線バスへの補助、一部運行の乗り合いタクシーやコミュニティバスの経費、

 70歳以上の市民に交付していたタクシーチケット(一人5000円)経費、合計

 約6400万円

○導入後の状況

 新交通導入、現存路線バス存続分への補助、「雪舟くん」にも乗れない障がい

 者や介護タクシー利用の方への「いきいきチケット」、合計約5832万円

 

5.その他

 

○H21、議会で、議員有志による新交通システム研究会が発足、H22、議

 会に新交通システム調査特別委員会設置。同6月議会で市長が設置を正式答

 弁。議会が率先して提言した。

○医師会やスーパーマーケットとも協議した。

○市民への「出前説明会」は172

○正式スタート前、今年3月に18日間の「お試し期間」

○スタート直後、4月のデータ、1日平均利用者数142人、

 うち女性79.6%、60歳以上84.2%。

 

6.感想

 

 出前説明会が172回。民生委員、商工会議所、医師会、薬剤師会、自治会、スーパー、そして市職員向けの説明会など。

 私は「議会だより」の201012月号、翌年3、6月号と3冊をいただきましたが、毎号、「雪舟くん」の使い方を説明、というかアピール。まるで議会が主体者であるかのように力が入っています。もちろんそのほかにも全戸配布の説明チラシ。

 正式スタート前に「お試し」期間を設けたことにも、力の入れようが伝わってきます。

 あまりにサービスが過ぎると民間事業者を圧迫。交通事業者だけでなく、日曜や夜遅くまで「開業」すれば、周辺地域の商店から客を奪うことになる、という配慮にも納得できます。

 いただいた市民へのチラシも、とても解りやすくシステムを解説。市を挙げて、このシステムの成功に取り組んでいるような印象を受けました。表紙を眺めただけで、○登録制であること、○手順@電話で予約、として大きく予約の電話番号、そこで伝えること(名前、予約日と時間帯、迎えの場所と目的地)を列挙、A300円払い、乗車、B順番に移動、C目的地で降りる、○運行のきまり、と、いかにも高齢者をターゲットとした工夫が。

 これを書いているのは9月議会の真っ只中。今日も一般質問で公共交通のこれからのあり方が取り上げられ、もう再三になりましたので覚えてしまいましたが、担当部長の、「現行のコミュニティバスとの併用は困難」との答弁が耳に残ります。

 さて、わが丸亀市の公共交通のあり方は、どうしたものでしょうか。市民からの要望は、それはもう私とて、たくさんの方からお聞きしています。どんなスタイルで、どのエリアで。ゼロから制度設計をするだけに留まらず、現在のコミュニティバスをどうするのか、これがまた大変な課題となります。

 サービスのエリアはどうしても、「定住自立圏」の構想と一致させる必要があるでしょう。のみならず、坂出、宇多津との連結、利便性も求めなければなりません。もちろん、JR、琴電、船との連絡も。

 ここは総社市に学んで、議会が先に腰を上げるべきところかも知れません。仲間と、意見交換を始めてまいります。議会改革が進もうとする中、それは持って来いのテーマとも言えましょう。行動を、開始したいと思います。

 ちなみに愛称「雪舟くん」は、ご当地が雪舟のふるさとであることから。駅前にもねずみとともに、石のモニュメントがありました。ねずみのように小さくかわいく、よく走る。そして市民に愛されようとの願いが込められているようです。


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