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○セミナー「地方議会の情報発信と住民参画のポイント」

 

 平成3127日 10時~16

 大阪科学技術センタービル内セミナールーム

 講師 議会事務局研究会共同代表 髙沖 秀宣氏

 

1.    受講意図

 

 セミナーのタイトルは上記のとおりですが、サブタイトルは、

 ~地域住民の関心や信頼を高めるために地方議会ができること~

 というものでした。

 議員は4年に1度、選挙の場面で有権者と接する。当選してお礼のあいさつくらいには回るでしょうが、さてその後の4年間、私たちは有権者、市民の皆さまと「正しいつき合い方」をしているのだろうか。

 そしてもう一つ。私たちの、行政との「つき合い方」は、これでいいのだろうか。

 議会が行政を「チェック」していたら事足りた時代は終わり、行政が道路などのインフラを整備・管理していればこと足りていた、そういう時代も終わった。子育てから老後まで、どの場面でも「住民参画」なくして行政の満足な展開はあり得ない。なのに行政はなお、“昭和”の香り漂う「国からの補助金次第」「市民には補助金を準備しました」というありさまのままではないのか。また市民は行政に「要求」するばかりであるとしたら、議会は、そこにどのように“一石”を投じればよいのか。ここのところ、私の関心はここにあります。去る1月に新庁舎の着工、それとともに隣接して市民交流活動センターの建設も始まります。私の念願した市民活動の拠点ができる。日々、建設は進むでしょうが「住民参画」というソフトの面での進展はどうなのか。ハコモノはできたけれど、アイデアなくして“閑古鳥”とはならないのか。

 私がここで髙沖先生のセミナーを受講して、その内容を議会と行政と市民と、3者が共有しなければならない、そんな思いでセミナーに臨みました。

 

 

2.    セミナー内容

 

○まずセミナー参加者各自の所属自治体の条例集を一瞥する。

○議会の役割は①執行機関の監視②政策提言・提案。だがその政策提言の素になるのは何か。それは住民の意思だ。②にはこれまで消極的だったが、これからは活発にやるように、システム化、制度化が必要だ。

○地方議会の劣化現象が言われている。投票率もダウン。住民が議会から離れる。住民の意思を把握していくべき。「反映しているはず」では通用しない。

○今日の参加者はほとんどが議会事務局職員。事務局職員の立ち位置はどこか。ここで三角形が描かれる。頂点にそれぞれ議会、長、住民。皆さんは長と議会の何となく真ん中どころ、と思っていないだろうか。ちがう。議会事務局職員の立ち位置はあくまで「議会」の中である。「議員と共に考える」立場なのだ。議会劣化、議会不信の責任の一端は議会事務局職員が半分は担うべきだ。

○住民が、社会の実態や制度をよく理解しないまま、役所に意見を言う場合もある。それは「ムチャ」なのか。検証する必要がある。予算審議で「政策の質を上げる」ことが議員の役目だ。そのための予算修正もある。その際、職員も一緒になって予算修正を作り上げる、アイデアも遠慮なく出すべきだ。

○議会不信が昂じて定数削減、報酬減額、政務活動費廃止という議論になる。でもそれは民意か。ここで参加者に質問。「過去5年間に議員削減をしてない市はありますか?」。誰一人挙手がなかった。参加者の自治体では例外なく議員定数削減を行っている。しかし。多彩で有能な議会議員となるために、定数を減らせば出にくいし、報酬が安ければ暮らしていけない。出たい、活躍したいけれど、「やめておこう」となる。なり手不足はその結果でもある。

○議会改革とは何を改革するのか。「議会力」の強化充実である。では議会力とは何か。A議員、B議員、C議員…の総和が議会力だ。なのにAB賛成、C

D反対と引きあっているのでは、議会力はそがれる。差し引きゼロになる。議員各人の「絶対値」を足していくよう工夫し、議会力を最大に高めていくのが議会改革だ。議員を削減するのが改革ではない。

○自治体議会による広報活動。読まれているか。そもそもそれを調査しているのか。

○参考として、会津若松市議会の「議会・広報紙モニター制度」。平成30年度から、広報議会モニターを選出。60名のモニターにアンケートを年2回実施し、広報議会編集の参考に。会津若松市議会は長野県飯綱町「議会だよりモニター制度」を参考にした。29年末、全国で議会モニター制度採用は25市。

○飯綱町のモニター制度。議員がいない集落から女性、若者を中心に議員が人選、手渡しによるアンケート実施で回答率はほぼ100%。毎回100を超える意見が寄せられる。これを基に毎号見直し。さらにモニターの中から立候補者が出る。なり手不足解消にも一役。

○議会だより編集への市民からの参加。編集委員として、または参考人として参加するスタイルがある。「広報広聴委員会」でなく「広報広聴会議」とすれば、市民をメンバーに加えることも可能。

○議会報告会。参加者が減る悩み。そこで「どうやって増やすか」のバリエーションを考えることだ。「住民と歩む議会」には住民との情報共有と参加が不可欠。

○議会基本条例に基づく開催は814市中375市、申し合わせ等による開催は同62市。合わせて437市であり、半分を超えている。採決の結果を伝えることよりも、判断のプロセスを伝えることが大切だ。

○住民の参加意欲を掘り起こす仕掛け。一方的な報告でなく、地域ごとの固有の課題をテーマとした意見交換など。住民が持つ意見を「ここに来ると述べられる」という制度保障をすることも一考。

○議会「報告会」からの脱却を考えよう。そもそも住民意見を聴くという面では、行政が行う機能よりも住民と常に接する議員が催すほうが優れているはずだ。この特性を認識してほしい。

○先進例、諫早市議会「市民と議会のわがまちトーク」。テーマを決めないフリートーク方式。出された意見を内容整理し、議会内対応、行政へ対応を求めるものなどに振り分け、行政へは「政策提言」にして提出。主な内容を議会だよりやHPで公表。

○先進例、鳥羽市議会「TOBAミライトーク」。離島が多い。行き詰まりの結果、議員と市民がワークショップ形式、ワールドカフェ方式で意見交換。

○先進例、久慈市「かだって会議」。この名で議会基本条例に明文化して話題になった。ワールドカフェ方式の「高校生×ギカイ」。

○先進例、滝沢市「議会フォーラム」。テーマを掲げ、ワークショップ形式。司会を議員でなく第三者に。テーマ選定では議会事務局職員もアイデアを出す。

○先進例、東村山市。もともと定例会の報告を内容としていたが試行錯誤。グループ、車座と形式を変えていくことで対話や笑顔が。また全議員が、事前準備や当日の運営、駅頭PR活動に参加。報告会のアンケート結果をもとに報告書を作り、HPで公開。ここで大事なことは「全議員でやる」こと。これで「議会がやる」ことになる。2016マニフェスト大賞・ノミネート。

○先進例、藤沢市。継続に反対意見も出た。外部有識者の意見を取り入れ、対面式からワールドカフェ方式へ。「議会と話そう♪カフェトークふじさわ」。学生が各グループのテーブルホスト役、「投票率向上」などテーマも工夫し市民と議員の話し合いを進めた。2016マニフェスト大賞・ノミネート。

○先進例、越谷市。市民が主体に運営する「フラット」。市民がテーマを考え、それに応じた会場や対象者にする。2017マニフェスト大賞・優秀賞。

○先進例、取手市議会と事務局「議会愛&チーム議会」。議会事務局の岩崎氏が「対話重視」の議会報告会を牽引。議会と事務局との「議会愛」で、対話重視の開かれた議会づくりと政策提言を実現。2017マニフェスト大賞・優秀賞。

○先進例、犬山市「市民フリースピーチ」。本会議で市民が議員に対して発言できるしくみ。外国人議長、日本のしきたり、慣習にとらわれず。2018マニフェスト大賞・優秀成果賞。

○審議内容、意思決定プロセスの公開。秘密会は限定的に。議会の情報公開、「公開」に止まらず「情報提供」へ。政務活動費のネット公開はもちろん、さらには「成果の公開」も。

○傍聴席への資料配布。委員会では議員と同じものを。委員会の当日、開始30分前にWEB搭載、ネット配信。傍聴者にもタブレットを。

○議会広報紙の内容見直しへ、専門家を招いた勉強会(三重県議会で実例)

○議会活動の「自己評価」と「第三者による外部評価」。旭川市議会では議会基本条例に基づく議会運営の評価が行われている。外部評価制度として、上記自己評価の妥当性を5人以内の委員が合議制で評価するしくみを持つ。評価に客観性を持たせる。当事者はどうしても甘くなる。

○政務活動費の公開と使途の透明性。議長に義務が課された。議長はそれを職員に命じる。このことでこれから職員は大変な職務を負う。

○領収書のネット公開。反論として「全部さらすと、なぜこの店で買っているのかなど憶測を呼ぶ」とも言われるが、その時代は過ぎた。「号泣議員」を経て兵庫でも28年公開分からネット公開に踏み切った。事務局職員は議員の背中を押せ。手作業での情報公開は領収書の分量からしても煩雑。平日の昼間に閲覧できる人は限られ、現状ではネット公開が最善の手段だ。納税者への責任であり、隠さねばならない理由はない。公開しない理由として長崎市は「職員の手間がかかり残業手当の不要な支出」とした。職員は「いや、やります」と声を出せ。富山県議会の見解は「これまで問題は起きてない」。しかし富山市で不祥事が発生、それが富山県議会にも飛び火。副議長の辞任を招いた。

○これからは使途だけでなく「成果」を公表する時代。そこに議員と職員が知恵を絞ろう。それがあってこそ選挙の時の有権者の評価材料となる。

○政務活動費。議員個人の報告会には×。会派の報告会は△。議会の報告会は○。

○議員が、最低2000人の投票で当選できる…民意の代表と言えるのか? 多様な人材として、職域代表や地域代表、自治会代表もあっていい。しかし、「民意にかなった」政策提案ができているのかがポイントとなる。

○京丹後市議会では、収支報告のフォームに「成果報告」の欄がある。

 

~昼食~

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○出席各市議会の「広報戦略」の概要。各出席者からも意見を出す。

・串間市議会は広報広聴を常任委員会で。「意見を聞かせて下さい」のコーナーを新設した。

・丸亀市議会。基本条例第6章のタイトル「政策提案型議会にする」は意欲的。気に入った、と講師。

・米原市議会。事務局職員からの提案をどんどん議員が採用してくれている。

ちなみに議員報酬・議員定数改定に当たっては付属機関の議論を十分参酌するとの規定が基本条例にあり、H296人構成で審査会を設置した。この付属機関については法律上議論のあるところだが、大いに推奨したい。中吊り広告風、マンガ多用の紙面、オモテウラのカラーページを活用した訴求力。講師「ここまでやるなら『ご意見を送り返してもらう』工夫をしてはどうか」。なお自治法上「付属機関」は間違いで、正しくは「附属機関」。「付則」でなく「附則」。

・さぬき市議会は議会だよりがない。議員がコミュニティ放送で番組を担当している。

・出雲市議会。議会だよりの編集に止まらずHP、さらにA4ウラオモテの議会「速報版」を発行。CATVで月1回の番組を持つ。意見交換会も盛ん。

○良いアイデアを出したところが勝ちです。

○議会からの政策提言とは、土木とか教育とか、個々の政策の質を上げるのが主である。組織に口出ししないのが普通だ。提案は市長提案に対するものである。

○一般質問の後で「良い質問だった」との声が返ってくるか? 長崎・五島列島の小値賀町(おぢかまち)では傍聴者から反応を聴く「模擬公聴会」を実施している。第三者から評価される制度を担保すべきだ。

○参考:金井利之「地域における民意」。一般質問不要論もある。機能していない一面もある。ベテラン議員は質問をせずウチウチで都幹部と「話をつけている」東京都議会。自治法上の根拠なくただ「会議規則」にあるだけ。それでもやめるよりは充実させるべきだ。民意対民意のぶつかり合いは健全で、徹底的にやるべきだ。ただし、質を高めるべきだ。議論を繰り返せ、議論をし尽くせ、出尽くすことが重要だ、審議時間が短すぎる。議論を尽くすことでしか、民意に近づくことはできない。議員の質問を行政職員に書かせる実態について金井氏。レベルの低い質問より行政職員の手を借りた方が市民のためだ。でも行政に不都合な質問は出てこないから次善の策だ。あくまで発注主は議員だ。もらった質問を吟味するならよい。作ってもらったものをそのまま読むのは愚の骨頂だ。できの悪い質問は突き返すべきだ。これに対する講師の見解:むしろそれなら議会事務局職員が作るべきでないか。しかし本来は、議員本人がレベルを高めることだ。

○議員活動の自己評価。北海道福島町議会の採用する議員の自己評価システム。全議員が5分野で3段階自己評価をする。①態度評価:町民の立場で発言・行動しているか②監視評価:行政をチェックしたか③政策提言評価:政策提言したか④政策実現評価:政策提言が実現されたか⑤自治活動・議会改革取組評価:議会報告はしているか。

○政務活動費にまつわる判例。決して議員に甘くない。議員報や議員HP制作費にまつわる判例では、政策の調査研究をするために使うのが政務活動費。自分の質問や答弁を載せるのはPRでしかない。全戸配布ならともかく。判断に困るときは「半額」にしておくと無難。

○議会図書室を“政策サロン”に。職員、議員がさまざまに活用を。三重県議会では司書を2人置く。各815時と1219時の勤務時間で、昼間1215時は2人体制としている。

○議会評価への住民参画。所沢市議会では自己評価、議会評価に加えて「第三者評価」のしくみ。旭川市議会では外部評価委員(大学名誉教授ら3)による外部評価のしくみ。専門的知見の活用でもある。これを基本条例に書き込むべきだ。4年ごとに見直しの規定を活用し、改正でレベルを上げよう。そうでないと基本条例を作った意味がない。これにより議会への住民参画を拡げよう。

○公聴会・参考人制度の活用。現行の会期日数ではこれを本気で活用することは無理。三重県議会は定例会年2回制にして会期日数を増やすことで公聴会を開催できた。

○常任委員会における公聴会の開催事例は8002議会のみ。参考人招致は123議会。

○市民の声を聴く栃木県大田原市議会。常任委員会「市民5分間演説制度」。開催前に公募で市民から発言者を募集する。名古屋市議会「市民3分間議会演説制度」。各定例会1回、常任委員会室で7名以内、議事録なし。犬山市議会の「市民フリースピーチ(5分間発言)。抽選で7名。

○犬山市議会ビアンキ・アンソニー議長「改革とは、市民の役に立つ議会になるよう審議の機能を上げること」。①議員同士の討論②政策立案と提言の力の向上③市民参加、この3つが大事。その根底には、議会の仕事は、市長など執行部のチェック機能だけではないとの問題意識がある。

○基本条例に書いたことは本気で活用を。一条、一条チェックして、事務局が背中を押して実現しよう。「この点については参考人を呼んではどうですか」など。

○兵庫県西脇市議会は日経グローカルで1位に。「ガバナンス」2月号に掲載。議長が「公聴会の開催」を公約して議長に当選した。住民に議会に来てもらうことは、自治法上の制度だ。活用すべきだ。「公聴会を開いてはどうですか?」と、事務局職員が常任委員長に提案するというシナリオを書こう。

○議会へ住民を呼ぶ工夫を一つからでもやっていこう。議案に関する意見を言ってもらうのが一番だ。市政、政策に関するフリースピーチもOK

○議会は憲法上「議事機関」だ。議会は“審議の機関”である。多様な民意を反映した議員が集まる。最終案に向けて“審議”をする。最終案へ、やむを得ず行うのが多数決だ。

○請願・陳情の活用。請願、陳情を受けて、それを政策提言、政策立案にしているか。採択したものは政策にしていかなければならない。市長に送るだけではダメだ。せめて骨子案を提言し、市長から提出させても可。

・津市の例。ペット霊園の設置に関する条例に関する請願。条例化した。条例案は首長が出すものと思い込んでいないか。議会提出よりも市長に要望したほうが速いと考えてないか。その根底に「議会はチェック機関」との考え方が蔓延している。そのような“与党”的意識を克服し、首長に対するいい意味での「政策対抗心」を醸成すべき。これが議員立法活性化のカギだ。

・米原市議会基本条例5条に「政策討論会」を明記。ここでの結果を提言に固め、市長に提案するしくみができている。

・日田市議会基本条例13条「政策研究会」。これまで3件を提言。

・串間市議会基本条例13条「政策討論会」。未開催。

・さぬき市議会基本条例1115条に「調査機関設置」。未設置。

○外部専門的知見の活用。自治法100条の2。「2」というのは後で加わったもの。議会のチェック機能を超えた議会機能がここで付与されている。

H27年中には全国市議会で1112件の事例がある。所沢市「議会基本条例の改訂に係る調査に関する内容」

H28年中には1414件。むつ市「大学准教授を招き議員勉強会」、松阪市「議員定数のあり方調査委員会」

H29年中には1314件。寝屋川市「専門的事項に係る調査会議」、山陽小野田市「附属機関の設置について専門家の意見を求めた」

・米原市議会基本条例102項。「専門的知見を有する学識経験者等を招致することができる」

・出雲市議会基本条例73項。「議会の議決により学識経験を有する者等に調査を委託し、その結果を参考として適切な判断を行う」

・山陽小野田市は江藤先生、滝沢市は佐藤先生がそれぞれ議会アドバイザーに。

・さいたま市議会は「さいたま大学」と連携、茨城市議会は龍谷大学と連携。

・四日市市議会は四日市大学から学生2人を「議員モニター」に。

○大学とどう連携するかが大切。学生がついてくることで投票率が上がり、議員志望者が生まれる。ぜひ連携模索を。大学図書館の活用も。ここでも事務局職員が推進力になってほしい。専門的知見をもっと議案審査に活用すべきだ。市長側の説明を100%信じてはならない。半分は議会が自分で知識を得よ。そのことに政務活動費を使う。知識なくして反論できない。政務活動費をこれに使わないのはもったいない。

○議会事務局職員の任免権は法律上、議長にある。議長が良い人を市長に要求すべきだ。外部から招聘するなら立場は特別職となる。副市長並みの議会事務局長にすべきだ。

○議会事務局職員は議員より多いのが理想だ。日本で唯一、都議会のみ、議員127人に事務局職員140人。職員による情報、調査レポートが充実している。職員定数条例上の職員以外に、「定数外」職員も可能だ。衆院法制局は出向させている。人事課は切ろうとしているが、ここは議長の頑張りどころだ。

○市長と議会との「情報量格差」は歴然。改革力の格差も歴然。だから政策提案ができない。そこで事務局充実、公聴会で市民の声を入れ、専門家の声を入れる。こうして政策提案議会になることだ。

○条例見直しに際しては内々で、職員の意見を取り入れていく。住民意見が入れられるよう、しくみを変えていくことだ。

○議場外での住民参画。長野県飯綱町議会「政策サポーター制度」をH22年度から。町民目線を議会が取り入れ、町民と議員が協働で政策づくりを進める。公募サポーターなど12名と議員15名が協働で政策提言書を町長に提出。これは議員定数削減を機に、削減を補う意味合いで始まった。日当だけだから高くない。これは有力な制度だ。さらにサポーターから議員がこれまでに2人誕生した。

その際、市長に提出するなら予算の概算も付けるべきだ。付いたのかを予算審議でチェック。付いてないなら議会が付ける。

○住民との窓口対応の工夫。住民にとって議会は“遠い存在”。議会がどのように住民目線に立ち、住民とつながっていくか。ひとつの方法として議会事務局に「広報室」を設置する。委員会などで住民の意見を「ざっくばらんに」聴けるしくみを作る。住民から情報を議会独自のチャンネルで吸い上げるしくみ。ツイッター、目安箱など。ここでも議会事務局が素地づくりを。一般多数の住民とつながっていないと、民意は反映されない。5階にある議会は市民に近づきにくい。広報窓口で市民の近くに議会があるべきだ。

○事務局職員時代は全公務員時代の中で、全部を理解できる良き研鑽の場だ。議員に信頼され、オファーされる職員になれ。それでこそ「議会政策局」だ。選挙のたびに前進する議会であってほしい。職員はがんばれ!

○参考:土山希美枝「政策議会」。「議員は正面から政策に向かい合わない」。大津市議会は議会事務局を「議会局」とした。そのさらに先にあるのが「議会政策局」だ。政策と向かい合う事務局、職員になるべきだ。職員は議員の向こうに市民を見よ。政策でつながる議員と職員たれ。政策提案ができる議会へ、条件を整えることだ。情報を提供し、議論できる議会になれ。そのために職員も基礎体力、不断の勉強で、求められた資料に「付加価値」を付け、議員からの要求以上の応答をしてほしい。「言われなくても」の基礎体力が求められる。

○政策提言は、議員だけでは無理。半分は職員が担うべきだ。政治に関わるのでなく、住民の福祉向上に資する事務局職員であれ。むしろ議会基本条例に、こうした職員のあり方を明文化してはどうか。

○会派から政策サポートの相談があったら、事務局職員は積極的に関わること(1/25付け「自治日報」参照)。ただし会派に差別なく。職員からネタの提供があることで良い提案になる。ここで有用な政策企画に強い職員を、議長が“目を付けて”呼んでくることだ。

○四日市市議会基本条例34条「事務局職員は、常に議会の活性化、充実、発展を常に心がけ行動するものとする」。議員の意見でこれが入った。大したものだ。同市議会はマニフェスト研究会、日経グローカルの両方の調査でいずれも全国3位。この条文を富岡市議会も横手市議会もマネをした。いいことはどんどんマネをして。

 

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3.    感想

 

去年のNHK大河ドラマは幕末を描いていましたが、あの頃、西郷を留守居としてアメリカを皮切りに日本の調査団が世界を歴訪。そこで学んだことは「これからは民衆が選挙で政治家になる、つまりはどこの(「馬の骨」とは言わないまでも)誰がリーダーになるか知れない世になるから、行政組織をきちんと不動のものにしておくことだよ」と、訪問最後のビスマルクから伝授されたとか、別の番組で紹介していました。

以来、中央集権の色濃い日本の政治形態は滔々と今日まで。西暦2000年、画期的な「分権一括法」が制度化されたものの、早や20年近くの歳月が流れて、いやいや、20年ごときで国と地方の制度が、さらに人の心、公務員の心、そして政治家の心がそう簡単に転換できるはずもないよと、かのビスマルクも苦笑いしていることかも知れません。

議会の使命は行政チェックだけではない。そのことを講師は繰り返し、アプローチを違えてさまざまな角度から論及します。ここにこうして聴講する私たちは腹の底までそれを得心。けれどもそれぞれ現場に散れば、昨日までと変わらない日常に戻る。議員も、そして事務局職員も。

今回の参加者は多くが後者。ていねいに講師は参加者の所属議会を調べて基本条例などをピックアップ。議会だよりの出来栄え、苦労話、基本条例の条文の実現状況などやりとりをしつつ、話を進めます。そして結末は、ほんとうに力を込めて、「職員ガンバレ」の大エールとなっていました。議員である私から見れば頼もしくもあり、またそれだけ議員の方が力量不足なのだと思えば面はゆくもあります。お話の中にあった大津市議会の実例、「議会事務局」を「議会局」にという話は、このセミナーの後の3月定例会、私の代表質問でさっそく紹介を。行政部局がなかなかに私の思う機構改革に着手してくれないことをもって今回は私が役所の機構について具体案を提案しました。その背景に、今回のセミナーでの講師の指摘がありました。本文に書いた通り「議会からの政策とは土木や教育などという個々具体の政策提案であって行政の内部機構などに触れるものではない」との指摘です。行政職員が窮屈な財政状況の中、懸命に行政運営に取り組んでいるのにそれに水を差すようなことを本当は言いたくないが、「どうして成果にこだわる仕組みができないのだろう」「戦略を強く押し出した旗振り役やアイデアマンをどうして置かないのか」といった思いが募る日々、議員ひとりの質問でなく議会として「市行政組織条例」の改正に触りたいところだとの思いがありましたが、講師のこの一言により、煩悶しながらも個人の質問の形に収めたという経緯でした。

講師の言及は議会と住民参画の諸般に及び、まだまだ挑戦のフィールドは多いとあらためて感じました。あまり一人で熱を帯びすぎると議会全体の中で私が突出することになり、結果合意形成は得にくくなるだろう、さりとて誰かが語り出さなければ、議会改革は「これでよし」になってしまうだろう。そんな悩ましさを抱えながら、セミナー会場を後にしました。

この一年を振り返り、わが丸亀の「市議会だより」は委員各位の大変に協調的で意欲的なムードのもと、これまでにない改善の足跡をたどりました。しかし考えようによれば、「今のメンバーが交代するとまた改善の熱量は下がるかも」「その時を標準として、あまり過激なことはしないほうがいいのかも」といった“見積もり”も出て来るかもしれません。しかし、私もこれから先、どれだけ議会人として仕事ができるか。講師の言葉にもあったように、議会事務局職員は議員の向こうに市民を見よ、とのとおり、もちろん市長部局の職員も一人残らずそうなのだが、自分の持ち場を踏まえた上での市民との対峙でなく、市民が選出した議員の立ち位置そのものから市民を見る、いや、さらに高邁に、事務局職員は各部署という持ち場を持たずに市民の願いや不満、議会を舞台裏から見るからこそ気づける議会制度の重要性、議員の果たすべきミッションや苦悩を体感することができ、その立ち位置から議員個人の弱みや欠点をも凌駕した縦横な振る舞いも可能という、まさに公務員人生全体の中の特別な研修の場所であるということができます。その観点からはぜひ、私のエネルギー、アイデア、情熱が尽きるまで私という議員を市民のために“使い倒して”ほしいものだと、そのようなことも考えました。

さて、以上でセミナーを受講しての概括を述べましたので、ここからは本題に添い、個別の感想を書いていきます。

 

予算審議にあたっては、予算修正を臆してはならない。住民の要求を精査しながら、正しい到達点を事務局職員と共に考え、見いだす。思えばわが丸亀市議会の予算審議の手法もここ数年で随分と様変わりしました。まだまだ到達点ではないがさわやかな通過点という感じはしている。審議時間の長さから「短くしよう」という意見、一部の選抜メンバーでやろう、分科会でやろう、という意見はこれからも出続けると思いますがやはり、審議内容を深め、全予算、全政策を俯瞰するためにも予算審議は「全議員で」行うべきだと改めて感じました。

議会報告会の参加者減少という「お悩み」。地域別・テーマ別も一案と思いました。同時に議会HPの充実は議会だより紙面へのQRコード貼り付けと連動させて進めるべき。来たる新年度の広報広聴の大きなテーマがこれになるだろうと私は思います。

 NYタイムズ「行くべき場所世界7位」に「瀬戸内の島々」が選ばれたとき、三豊市ではネットがダウンしたとのことでした。そして3月号ではこの画像が大々的に使われていました。誇らしいでしょう。三豊市だけが瀬戸内ではないよ、とばかりに、私どもも先日、本島に渡ってドローン撮影に挑みました。「負けるものか」の心意気を堅持してまいりたい。セミナー席上、参加されていた米原市議会の方が示した「議会だより」には驚愕。示されていたその1枚を、私はいただいて帰り、広報広聴委員会でメンバーの皆さんにお示ししたところです。「ウチもこんなふうに」とはゆめゆめ思っていませんが、どうやったら議会としてこういう発想に「ゴーサイン」が出るのか。刺激といえばあまりにも強い刺激をいただきました。

 「成果報告」の政務調査費。議員視察の報告を「成果報告」としてネット公開し、これを住民がさらに評価できるようにとのこと。不正あるいは不適切な支出のことだけが世間を騒がせる世にあって、収支の帳尻だけを報告する消極的なものから転じて視察の成果までも報告する方式。すでに報告フォームにその欄を設けている議会もあると知って、先進議会はどこも「立ち止まって」はいないのだ、とあらためて痛感。講師はこれからの情報発信は「反応が返ってくる」工夫を、と。まさに取り組み甲斐のあるテーマだと思いました。さらに「第三者から評価される制度を担保すべきだ」「議論を尽くすことでしか、民意に近づくことはできない」とも。そのために陳情や請願制度のほか議会報告会・意見交換会の場はもちろん、さらに「専門家の知見の活用」まで、なすべき手立ては無限にあることを教わりました。「それをもっと議案審査に活用すべきだ。市長側の説明を100%信じてはならない。半分は議会が自分で知識を得よ。知識なくして反論できない」と厳しい指摘も。市長と議会との「情報量格差」は歴然。改革力の格差も歴然。だから政策提案ができない。そこで事務局を充実させ、公聴会などで市民の声を入れ、専門家の声を入れる。こうして政策提案議会になることだ。ここに究極の、議会改革の粋を尽くした姿があるということでしょう。

 とともに「議会アドバイザー設置」は合意形成が大変だろうけれどもしかし、いったんこれに踏み切れば、いわば議会の“内側”のみから卵の殻を割ろうとするよりも、親鳥に外側からも割るのを手伝ってもらうのにも似て、大変に望ましいことでもあることでしょう。これからの議会改革のビジョン、そして次のステップが、はっきりと見えてきました。

 これまでわが市議会での広報広聴委員会は、常任、特別の明確に位置付けられた委員会ではなく、「まあ議会だよりの段取りをして」という程度の、事務局案頼りの存在であり続けた感がありましたが、それがようやく動き始めた、という場面です。そして今、セミナーを通じて日本に視野を広げれば、ひと時も立ち止まっていず、どんどん走る先頭集団がいることに気づかされます。その最先端の会津若松市議会は、まだ私たちからその姿さえ見えない、というほどの遠くなのかも知れません。

 しかし、彼だけが独走しているのではない。政令都市から、失礼ながら名前も存じなかった町村議会に至るまで、走る人は走っている。議員という使命をいただきながら漫然とビスマルク時代に揺蕩(たゆた)っている場合ではない。事務局職員という使命をいただいているメンバーと切磋琢磨し、自分が議員を辞するまでに何ができるか、飽くなき挑戦をしてまいりたい。

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