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○樋渡啓祐氏講演「役所を動かす質問の仕方」   2015.11.2博多

 

 樋渡啓祐氏 元佐賀県武雄市長、樋渡社中CEO

 午前の部「よりよい一般質問のために」基礎編

 午後の部「     同      」応用編

 

1.    講演①基礎編

 

○「行ったことがない県」1位は秋田県、佐賀県は7位。

 「こんな県あったっけ?」ワースト1位は佐賀県、2位島根県、3位鳥取県。

 映画館の数、ツイッターの数でワースト1位、薬局の数、精神科医では1位。

 (話のマクラに)

○会場に聞く「質問形式は?」ほとんどの参加者が「一問一答」に挙手。

○武雄市では、議会中継(再放送)が「ニュース7」より高い視聴率50%。

 「バッター表」つまり明日の一般質問登壇者が出ると、飲み屋が盛り上がる。

 最大200人が傍聴に来たことがある。オーディエンスとつながる議会。電話もかかって来る。ネットで意見も来る。議場へPC持ち込みオッケー。本会議中にFBで即時に反応が来る。

○首長に「努力します」「検討します」「研究します」と答弁させない武雄市議会。

こうした武雄市議会に「劇場化だ」「下品だ、えげつない」との批判もあった。

が、それは議会を〝決定の場〟にしたかったからだ。

○市長が質問へ9割は答弁することだ。武雄市では95分まで市長が答弁。78割では首長の資質が問われる。首長しか答弁できないことを質問せよ。

説明をさせてはいけない。それは部長が答えること。例えば「どんな道路ができるのか」と聞かず、「道路ができた先のビジョンは?」これは市長しか答えられない。

○武雄市のまちづくりのコンセプト「ネットでできないことをやろう」。

○図書館、病院はうまくいった。次は起業家を全国から集め、アメーバのように広がる政策を目指す。

○マイナスをプラスに。人口に5万にイノシシ3万。そこで1008000円で発売。佐賀県ブランドより高く売れた。

○ホワイトボードに図示。

通常の自治体の姿は、

     市長

公務員試験に受かった人=役所vs選挙に受かった人=議会

の対峙構造。しかしそうではなく、

 副市長

役所 - 市長 - 議会 とイメージしている。

役所のトップには副市長がいて、武雄の市長は役所と議会の間に位置しているイメージ。

 役所と議会の間には〝共通言語〟がない。宗教対立のようなもの。

○いつも副市長は「辞表」をフトコロに。市長と副市長が互いに〝拒否権〟持つ。

○市長に初当選し、市役所内を「11万歩」と心がけた。議員が職場をうろうろしていると「議員が来た」と職員は喜ぶものだ。職員から〝隔離〟していてはならない。

○議員の仕事はマイナスをプラスにすることだ。そのための最大の場が「一般質問」だ。「モノを知っている人に人はひれ伏す」。知識が大事。

○質問のソースは、95%はテレビから。4倍速で録画を見る。編集されたテレビ番組はソースとして質が高いが、ネットは編集されてないので「玉石混交」どころか「石ばかり」。「おはようにっぽん」は必見。NHKの地方創生に関するアーカイブスはすごい。

○なぜTSUTAYAだったのか。それは「カンブリア宮殿」で増田社長を見たから。即面会を求め、成就した。

○議員にとって「ワールドビジネスサテライト」も良い番組。スマホで録画番組を議員と共有。これをネタに質問をすれば「一石三鳥」だ。市長、議員、職員で共有することだ。

○ブログを読んでくれる人の数は、右肩上がりの直線では増えない。ものごとは階段状に進む。勉強やスポーツの上達もそうだ。「高原状態」。ブログ、FB、ツイッターに効力はなく、「わら半紙」のほうが効く。

○「100点」になるには〝情報発信〟しかない。その最大の場が一般質問だ。

(休憩)

○H256月議会で、モニター3台を議場に導入。市の説明は冗長になる。議員が説明したほうがインパクトもあり、コンパクトにもなる。

○ずっとトップ当選の吉川議員。この人は〝あざとい〟人(笑)。理事者と答弁調整をしない。質問ではまず全項目を紹介する。次にモニター画面をフル活用してプレゼンを行う。事務局は手を貸さない。この議員の行動パターンは、職員のフロアを回って自身の「会報」を配り歩いてから4階の議会へ。市民に対しては、「大根を包むのにも自身の古い会報を使う」。自家用車の後ろの窓にも会報を貼ってある。方針は「TTP」=「てっていてきにパクる」。

○彼は地元の事情にとても詳しい。ほとんど「戸別訪問」が身上。「公私混同」を超えて「公私一体」だ。市長との「連記ポスター」も大いに功を奏する「偽りのポスター」だ(笑)。これを玄関内に貼らせてもらう。市長が画鋲を持ち、議員がセロテープを担当する。こうして地域の「マーキング」を徹底して進める(犬のように)。

○そばにいる人に入れたがるのが有権者だ。それをやれば投票率は上がる。「魔除け」だ。

○会場に質問「通告を出さない議会は?」挙手はゼロ。

○「市長の資質を問う」という質問はオールマイティだ。

○かつて高槻市に勤めた経験から、「答弁調整」をすればするほどつまらない。

○「私の親が…」など自分の肉親のことを言うのが効く。答えは市長が出るしかなくなる。市民の「直接の声」も引用する。つまらないのは一般論だから。

○「他人の不幸は蜜の味」。ワイドショー的に大衆を引きつけることだ。「市民の代表」とは言わないことだ。理屈でなく〝情〟に訴える。

○議員は日ごろ、何をなすべきか。会報を撒く。手配りで。新聞折り込みはまず見ない。活動をサポーターといっしょにやる。選挙時には会報にホチキスで名刺を。集会情報を会報に載せる。市長としても、3日に1回は集会をやる。だんだん減っていく。市長なのに10人程度だ。最長でも1時間で。

○集会は、「笑わせる」「泣かせる」集会に。過疎の真っただ中。「初めて市長がここまで来た」「こんなとこまで来てくれた」と参加者は語る。市街地では走ること。文字よりも写真、写真よりも動画。これからは動画がキモ。長くて50秒。FBにも載せられる。「マーチと散歩」で犬が話題に。「マーチがんばれ」と。お茶の間の話題には動画だ。集会ではヤラセも可。情に訴える。

○「自治体にお金はないのか?」答えはノー。お金がないのは大ウソ。基金を使いたくない行政、資産運用も不可。交付税はどれだけついているかわからない。地方議員にわからないくらいに、総務省は仕組みを複雑にし、その結果、総務省職員もわからなくなっている。

○第一に、傍聴に連れてくることだ。市長にプレッシャーを与え、議員は負けん気を発揮できる。

○武雄市議会の傍聴席はいつもいっぱい。するとメディアも来る。なぜなら市長はここでしか言わないから。

○高齢者には時間がある。平日のほうが、職員負担が少ない。

○「首長には絶大な権限があるのか?」答えはノー。首長の権限は人事だけ。権限は議会にこそある。

○議会は「取締役会」だ。「株主総会」ではない。取締役会は〝Yes〟機関ではない。

○逆質問のオンパレード。これは盛り上がる。「してはいけない、とはどこにも書いてない」。議員の質問に対して「それはどんな効果があるのですか」と逆質問。それに対する議員からの答弁は、「そのとおり」「それはちがう」の2通りとなる。

○これからの議会は①モニター制度を設ける②一般質問と議案質疑の壁を取り払う。ダブりも可③逆質問を認める。

○「自治体ってスピードが遅いのか?」答えはノー。株主がいる民間のほうが遅い。関所が多い。役所の人々は毎年「天からお金が降って来る」と思っている。それが公務員世界だ。潰れるリスクのある民間はブレーキがかかる。株主とメディアにさらされている。自治体はメディアにさらされていない。潰れもしない。だからこそ、思い切ってできるのに。でも、職員に任せたら図書館オープンは「2年半後」との答えだった。そこで議会に相談した。「5者会議」を開催。市長、正副議長、議運委員長、該当常任委員長で構成。「1年でやろうよ」。政治家は〝足し算〟をやるべきだ。これに行政は逆上した。8月。ニュースネタがなくなる時期をねらい「スタバが図書館に入る」。これは大ニュースに。

○議会に大切なのは「ゴールポスト」を決めることだ。議会がゴールポストを決める。そうすれば、行政は「逆算」は得意だ。

○〝完成型〟より〝修正型〟を求めれば、行政は前向きになれる。

○「物語に言葉を載せる」

○TSUTAYA社長との初対面。人生の大勝負は「名刺を渡す前の5秒」。自分が行きたい病院がない、自分が行きたい本屋がない、それをキーワードに。スピードは最大の付加価値。政治家は道を切り開く。

○「議員提案は実現不可能か?」写真で「議員が職員に教えを乞いに来ている姿」。職員が政策立案する際に議員の意見はしっかり入っていく。服装が自由な職場に、自由な発想が生まれる。議員「困っていることない?」職員「収納率の低下です」議員「これを質問しよう」。

○「何が何でも公募すべきか?」公募と入札が日本をダメにした。随契で図書館、病院をやると「癒着だ」と言われるが。答弁で「コウボ(酵母)はパンだけで十分だ」と言って議長から叱られた。「あなた、結婚は公募でしましたか?随契でしょ?」と反論したい。そこで「誰でもできるものは公募で」「特色を生かすものは随契で」。どちらがいいのかの「べき論」に持ち込むのが一般質問だ。

○議員の報酬は65%の人が「高い」と思っている。市民に「よくやっている」と認めてもらうことだ。総人件費のなかで議論すべきだ。

○一般質問を終えた後に、役所は質問に対応しているのか。武雄市では部長会で共有し、可視化し、進行管理している。

○議員活動の集大成が一般質問だ。

 

2.    講演②応用編

 

○質問成功の4パターン。3年前「防災無線は聞こえない」との声。ここからスマホの活用を思いついた。増田社長の妻が民生委員をしていて、聞こえづらいことのつらさがわかっていた。そこでスマホ会社を立ち上げた。社長は〝決める〟ことだ。「イノベーションは執念だ」と増田社長。

○成功①旬の話題、自治体にとって切実な問題を取り上げる。月額千円のスマホなどは旬。「ふるさとスマホ」略して「ふるスマ」の会社を立ち上げ。歩くと歩数のよってTポイントがつく。6千台を自治体が買い上げ、糖尿病予防に生かした。若年者が糖尿になると何十年、生涯医療費は莫大。糖尿病患者1人にいくらかかっているか。1400万円。治る見込みは少なく、透析にまる1日。「ふるスマ」は安くつく。登下校時の安全確保のため、散歩する人にスマホを持たせる。登下校時に歩いてくれたら「ポイント3倍」。すると歩いてくれる。人目がないときに痴漢は発生。これを防げる効果は大。北関東のある自治体で7千世帯にスマホを配る例。首から下げてGPS機能。重心計を装備し、倒れ方によってクモ膜下、心臓、脳と原因を判定、携帯から119番自動通報。「おかんアプリ」。田舎の母が歩いているのが東京の息子に知らされる。Tポイントの活用は無限。体重計と連動させてTポイント付与でスマホによる健康管理。

○この例で、質問ではいきなり「ふるスマ、どうですか」と質問しない。まず導入、「糖尿病の現状をどう考えますか?」部長「年間2千万円かかっています」第2の質問「対策は?」部長「歩くようにしてもらっています」「啓発活動をしています」第3の質問は「しかし」で始めない。「しかし」を発すると対抗モードになる。「それはいいことですね」と受け、やっていることを褒める。「そこで市長はそれをどう評価していますか?」①導入②対策③評価。政治家としての市長の評価を聴きたい。市長「まだ不十分だと認識している」そこで④提案。いきなり提案から入らない。ふるスマ先進事例を紹介。「市長、どう思いますか?」市長「努力します」「検討します」さらに質問「〝検討〟とは、やらないことだというのは本当ですか?」このように上げ足を取る=フックは、言論戦の手法だ。

さらに「いつ?when」「どこで?where」特に「when」を激しく突っ込む。「市長、今、決めましょう!」ここで身振りが大事。デキル議員は身振りがいい。インプレッションが大切。引きずり出してイライラさせ、「検討します」で逃げ切らせない。「次の議会で答えてください」「また聞きます」。

○成功②地元のことばかり言っていると飽きてしまう。地元と先進事例の組み合わせ。いじめ、不登校を下げる政策の例。先進地事例を紹介。官民一体授業、移住も見込む。花まる学習会。ゲーム感覚を取り入れ。計算速度で新記録を打ち立て、周囲と競うのでなく自分と競わせる学習、など準備。「ウチならばこうしてはどうか」「どれくらいいじめ、不登校があるのか」「どんな対策していますか」「よくやっておられますね」「で、市長の評価はどうなんですか」ここで事例を紹介し「導入しませんか」「研究させてもらいます」「それはやりたくないということですか」「いつからいつまで研究するんですか」「また質問しますから」。

○球は投げるが主導権は渡さない。

○投げて丸め込まれるのは「ブラックホール」だ。

○逃がさないため「議会に報告してください」。

○日頃から、切り返しの練習をしながら風呂に入ると血圧が上がって良い(笑)。

○時間があるなら自分の両親や友人の具体例を上記①導入に加える。

○図書館のことを聞きたくても最初は「公共施設」から入る。「6時に閉まると聞きました」「図書館は直営でよくやっています」…

○議場にモニターは必須。大津市議会はその上にタブレットを備える。

(休憩)


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○武雄市フェイスブック課の設置。アクセス5万件から300万件に。これまでのHP運営経費600800万円が200万円に。FBならデザイン料、サーバー代がかからない。通販サイト「FB&良品」野菜などネット直売所。オイランタン、楽天出店料年間100万円からゼロ円に。儲かれば「税収増」だから手数料をもらわない。年間800万円以上を売り上げている。「CCC」カルチャーコンビニエンスクラブ、ツタヤは年中無休、21時まで。Tカードと図書カードを併用でき、1割安い運営費を実現。ツタヤにしてみると自分のブランド価値が高まる。思った以上に効果は大。「公」と組むとブランド力アップ、社員モチベーションもアップ。「行政はブランドだ!」

○これからは「官民のハイブリッド」しかない。ただ組み合わせが大事だ。

○高槻市の放置自転車対策費7千万円。これを何とかしたいと市長から持ちかけられた。そこで放置自転車をヤフーオークションにかけると「飛ぶように」売れた。

○アイデアノートのすすめ。左のページに仕事の項目。ここに放置自転車が来る。右のページには趣味の項目。ここにはマイレージ集めとかネットオークションが載る。この左右の項目をマッチングさせることでアイデアが生まれる。アイデアは〝ゼロ〟からは生まれない。

○成功③地元と観光客のコラボ。事例を列挙。ブレットハウス(三浦)、すだち、散髪屋、夕張のおにぎりや、空港から2時間半もかかる1800円で40分待ちのおにぎりやが流行る。不便だがすごい人気。ムダに人がいることで、そこにコミュニケーションが生まれる。これからの野菜は通販。地元の人が書く「食べログ」で人が集まり、リピーターも増。床屋のサイト「エキテン」も参照。議員は発信力がある。最大に生かそう。

○成功④共感+制度。はぴねす犬北九州(ボランティアグループ)による活動で殺処分寸前の犬が生かされた例。震災ペットを受け入れに東北へ。なつかないで2回逃亡し、殺さねばならないルール。でも「共感」することと「応援」することが合わさって「実行」が生まれた。殺処分2時間前に〝救出〟。2時間前にもなれば当の犬も殺される自分を把握していた。共感と応援をつなぎ、地方創生が実現する。議員もまた「共感されている」から1票を得る。人の心に刺さらなければ落選あるのみ。

○ツタヤ図書館1周年謝恩会で制作したビデオを見る。着工1週間前。現場で職人が深夜、皿うどんを食べながらの声。「ちゃんとやらないと」。プロの仕事に妥協はない。武雄のスタバは全国2位。地方には人がいないというのは何の言い訳にもならない。スタッフに「問題はすべて市役所が解決するから」と告げる。全職員に、そう言わせていた。市職員は「彼ら民間人といっしょに仕事をできて、私たちも成長した」。参加したすべての人々にそれぞれのストーリーがあった。200人のボランティア、市長も妻も親戚も、22時まで働いた。ボラの一人は「最後までやらせてほしい。ここはボクらの図書館だ」。子ども「ここはパパがやったんだ。パパはすごいんだ」。…それぞれのストーリーを組み合わせると、それは〝ヒストリー〟になる。ヒストリーとは「より高いもの」。それを紡ぎだす力を持て。

 

3.    感想

 

ここまで、当日書きなぐったA4の紙9枚のメモを〝解読〟しながらセミナーを辿ってきました。講師は早口でマイペース、展開も目まぐるしい。笑わせるところで笑ってペンを休めると「メモ」が完成しなくなる。右手はほとんど〝運動〟状態の一日でした。

そのメモを読み返してもう一度、色違いのマーカーを引いてみます。

・本会議中に、FBに市民の反応が即、届く。これは以前にアメリカの議会では当たり前と、どこかで読んだことがありました。FBの登場で、それは加速しているでしょう。速く「標準装備」に、しかも駆使しなければなりません。

・首長しか答弁できないことを質問せよ。ごもっともです。私たちは理事者を「とっちめる」ために質問をするのではない。だからこそ「しかし」と発せず「そうですね」「よくやってくれています」というのは、この講演を受講してから心なしか、私の質問にもそのニュアンスが入ってきた感じがします。でも一面それは、ある市民から「媚びを売るな」と批判をされましたが。私は俗にいう「ガチ」で、市長と政治の語らいがしたい。部長の説明は冗長になる、という指摘は実感がこもっていて、まさにそうならざるを得ないのだと知ります。「あとで担当から電話で答えさせます」のような質問は避けたい。市民に申し訳ないことです。このセミナーにたまたま高松市議会の私の仲間も来ていましたので、「高松の市長は何割くらい自分で答弁する?」と聞いてみました。帰ってから近隣市のそれぞれの仲間の議員にも聞いて回りました。正確ではありませんのでここではそれには触れません。「ガチ」で勝負する当時の樋渡市長。彼ならではの良さも課題もあるのでしょうが、だからこそ「居酒屋を盛り上げる」ほどの議会であったのでしょう。丸亀市議会ではこれまで市長が答弁したら次には部下、というような流れがなんとなくあり、部下の答弁のあとで市長に聞く、というのは無礼であるような、そんな遠慮がありました。このセミナーの印象を語って、わが市議会でも「市長はどう評価されますか」を普通のやりとりにしてまいりたい。

・行政と議会には「共通言語」がない、とは的を射ています。あたかも外国人同士の会話で、通訳が要ります。樋渡氏はまさに「通訳者」のイメージを持っていたようです。議員17年目。いまさらながらの「より良い質問のために」と題されたセミナーへの参加。気恥ずかしくもありますが、その背景には「言語がわからない」「届いてない」というもどかしさを、私もどこかで感じているのだと思います。その話の流れで「耕す」と書いた「耕務員(こうむいん)」という言葉を使っていましたが、その説明がメモにありません。想像するのに、公務員は〝耕す人に〟ということだったのでしょう。

・余談めいていましたが、いつもトップ当選するその議員の行動様式。4階にある議会に来るまでに職員のフロアを歩き回り、自分の「会報」を撒く。私にも「心当たり」ありですが、さまざまなメリットを、私も感じています。もう一歩進んで、職員に「あれせえこれせえ」でなく、職員と「どんな課題があるんですか?」という対話が進めば、まさに「三方よし」の議会になると思うのですが。そして議場や委員会室でのモニター画面駆使は願うところ。丸亀市ではどうやら「新庁舎建設」まで待たねばならないようですが。市の説明よりもインパクトを持ち、コンパクトに。魅力的なお話です。それにしてもこの議員さん、「ダイコンを包むのまで古い会報で」というのには敬服しました。

・市長は議員とタッグを組んで〝戸別訪問〟。室内に連記ポスターを貼ってもらいに回る。あなたはセロテープ、ボクは画鋲。市長自身3日に1回は地域で集会に参加、という、このエネルギーは同じ〝種族〟とは思えない。ですが大いに煽られました。これからは動画の時代。長くて50秒、という指摘に、私も、と、興奮を覚えたのですが、現時点でまだ実現していません。

・議会の傍聴者を増やす、ひいては投票率を伸ばす。休日議会、夜間議会もなされていますが、樋渡氏は「平日のほうが職員負担は少ない」とバッサリ。「高齢者には時間がある」とも。何よりまず、議会内での「温度を上げる」ことが先決でしょう。

・取締役会は〝Yes〟機関ではない、との厳しい一言。議会は株主総会であってはならない。実質、空港の管制塔、船の艦橋であるべきです。

・議会の充実3ポイントとして①モニター設置②一般質問と議案質疑の壁を取り払う③逆質問を認める。他の議員と語らい、可能なところから議論し、達成してまいりたい。

・役所は毎年「天からお金が降って来る」と思っている。市長ならではの重くて厳しい感想でしょう。

・職員に任せたら「図書館オープンは2年半後」。このテンポ感。罪はないが、この話の直後、「政治家が足し算をやるべき」と議会に期待。そして「行政はゴールポストが決められたら、逆算は得意」というのもうなずけます。

・一般質問のありようとして「球は投げるが主導権は渡さない」というのはとても痛快。私の場合、どうなのか。答弁者は内心で「してやったり」の得意顔なのか。私の見るところ、丸亀市議会はどちらも主導権を握っていない。だから試合が見ていてつまらない、それが現実なのではないでしょうか。市長が主導権を握るのも、ひとつのありようかと思いますが、もちろん、私はそうはさせないつもりです。

・「これからは〝官民ハイブリッド〟。これしかない」という言葉には心底、共鳴。それに気が付かなければならない。いや、賢い行政の人々は重々、気づいてはいるのだが手法が定まらない。職員に温度差があり、ヒエラルヒーの階層ごとにも思いが異なり、「先輩の背中を」見ていたのでは官民ハイブリッドの時代など百年待てどもやって来ない。それを開くのが議員の意識の高さ、となるのでしょうが、自省も込めて、官民ハイブリッド化を阻む行政・議会の〝二重ロック〟がかかっている印象をぬぐえません。

・紹介のあった左項に仕事、右項に趣味という貸借対照表のようなノート。これもいうなれば「ワーク」と「ライフ」のハイブリッド化とも表せましょう。「アイデアはゼロからは生まれない」。豊かな趣味や人間形成、ゆとり。こうしたスタイルがあって仕事も豊かに。議員もまたまったく同じでしょう。

・そして締めくくりに見せてもらった「ツタヤ図書館」のメイキングビデオ。「彼ら民間人といっしょに仕事をできて、私たちも成長した」と言い切る市役所職員の方たち。

 樋渡市長時代の武雄市政を振り返り、賛否はさまざま。例えば114日に高松で聴講した元総務大臣、鳥取県知事だった片山善博氏は、実名こそ挙げなかったが「シアトル(スタバの本拠地)に市民のお金を吸い取られて何の地方創生か」とまで批判していました。こちらもまた傾聴に値する貴重な指摘。それはともかく、樋渡氏が「何もない」とあきらめ自嘲していたふるさとの市民に一石を投じた、なかんずく市役所の職員の意識に電流を走らせた、さらに議会人たちの目を覚まさせた、その事実は否定しようがありません。

 市長時代の熱い日々。私はセミナー終了後にご著作を買い求め、〝お約束〟のサインをいただきました。くだんの高松市議と3人で記念のカメラにも。長身の氏は真ん中に立ち、それぞれ左右に手を回して私たちのわき腹をくすぐる。いやがうえにも笑顔のスリーショットとなりました。市長をくすぐる、行政をくすぐって動かす。ここに彼の辣腕としたたかさを見ました。

 このレポートを身に沁み込ませながら、これからの議員としての行動にほとばしらせたい、そんな思いです。


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