○介護支援ボランティア活動事業 山形県天童市
1.視察意図
65歳以上の高齢者が、「お世話になる」側から「お世話する」立場に。
そのことでますます元気になり、元気の輪を広げていくための事業。天童市では「お世話する」高齢者のボランティア活動にポイントを付与し、ひとつの励みとしています。全国各地で試みられているものの、さまざまな課題もあるようです。天童市の取り組みを教えていただきました。
2.事業の概要
・ 1日のボランティア活動に最大2ポイントを与える。1時間の活動で1ポイント。年間
5000円を限度に転換交付金として交付する。これを介護保険料の支払に充当していただ
く。1ポイント100円、限度額50ポイントという算定。
・ 介護保険制度スタート時に、保険料を払えない人への減免制度が検討され、減免はで
きないがそれに代わる制度として、この仕組みが採用された。
・ ボランティアを有料にすることに議論もあった。しかし意欲を高め健康増進につなげ
る趣旨で導入を決断した。天童市の近辺の市では例がなく、東京都稲城市、同千代田区
に先進事例があり、参考にした。
・ 平成20年10月スタート。今年4月1日現在、登録者39名(男18、女21)、受け入れ
施設は8施設。
・ ポイントの管理は市社会福祉協議会が行う。全国の同協会の保険に加入。
・ 指定の施設でイベントの補助や芸能披露、話し相手、配膳の手伝い、散歩や外出補助、
園芸、洗濯物整理、シーツ交換など。
・ 導入の効果として、アンケートによれば生きがい、張りのある生活ができるようにな
った、施設のスタッフも外部の人と交わることで意識が引き締まる、新鮮な空気になる、
これまで会話に参加しなかった入所者も輪に入るようになった、などの声。
・ 課題として、登録者数の伸び悩みがある。また、受け入れ施設か郊外に多い。使うの
に不便である。
3.感想
東北人の気質ということもあるのだと思うが、ボランティアをしてお金を受け取ることにためらいがあるのだと思う、と説明者の弁。スタートから4年目だが、なかなか登録者拡大ができない。実際にはグループ活動をしている方に直接勧誘する方法を採っていて、入るときには仲間といっしょに入る、という傾向になっている、とのことでした。
「おカネをもらうのはいやだ」けれども「タダならもっとイヤ」という、人間の心理にはとても複雑なものがあるでしょう。趣旨はたいへん良いと思います。それをどのように心理的にスムーズに導くかが、なかなか難しいのではないでしょうか。
高齢化が進み、老後を支える国の仕組みが心配される中で、自らの奉仕の気持ち、健康保持は誰もが抱く心です。にもかかわらずこの制度がなかなか拡大せず、また他自治体にも広がないことには、心理面でのさらなる工夫が必要なのかとも思いました。人間、若返ることはないのですから、現在の心身ともの健康を保持、増進させるために、何らかの方策が必要なことは誰しもが思うところですが、そのためにこの活動がさらに普及するにはどうしたら良いのか、私も考えていきたいと思います。