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○予約制乗合タクシー                   山形県天童市

 

1.視察意図

 

丸亀市でも過疎化する周辺田園部では交通手段が喫緊の課題となりつつあります。

天童市は面積が113平方キロと丸亀市と近似。住民には車を運転しない人々も増えつつあります。昨年4月に天童市では予約制の乗合タクシーのシステム「DOMOSU」をスタートさせました。その仕組みと効果をお聞きすることにしました。

 

2. 制度の概要

 

・ 平成7年に市営バスを導入するも中心1路線以外の5路線は「空気バス」と呼ばれる。

市長交代の時期に、市民との懇談会、アンケート調査を実施。市営バスをあらため、予

約制乗合タクシーに切り替えた。

・ 229月、この制度を導入したのち、234月に現行の「区域型」を導入した。

・ 市内タクシー事業者2社の共同体が運営。市がこれに補助する。

・ 定路線乗合型を3路線と、区域乗合型を1区域という形態。

定路線型(まちなかエリア)

 停留所→停留所。

 利用日の1週間前から前日午後6時までに電話による予約をする。ただし午前10時以

 降の便は、当日の1時間前まで予約が可能。

 1200円。高齢者、小中学生、障がい者など100円。

区域型(郊外エリア)

 自宅→あらかじめ定めた87箇所の目的地。

 利用日の1週間前から前日午後6時までに電話による予約をする。

 1400円。高齢者、小中学生、障がい者など200円。

 87箇所には、公共機関、金融機関、医療機関、商店街のポイント、大型店前。歯科医

 院は入れなかった。

・ 小型タクシー車両を原則。予約によりジャンボタクシーも使う。

・ 月〜金曜日の運行。土日祝、お盆、年末年始は運行しない。

・ 会員登録制。現在、一般会員154人、割引会員626人。

  割引会員とは上記半額の対象者。

・ 現在の事業収支は年間1800万円。市からの補助金は1500万円。タクシー2台、オペ

レーターの人件費が中心。

・ 1日の利用実績、36.6

・ 利用者の年齢は80歳代が35%、70歳代22%、10歳代(小中学生の通学)12%、60

 代10%と続く。

・ 課題

 @路線バス、一般タクシーとの競合の問題。営業エリアを侵さないというルールを守ら

  なければならない。

A商店街との調整が難しい。行政サービスが商店の客を逃がざせることにつながる。通

 院で使うも、ついでにまちなかで買い物をする、といったケースで、区域型エリアで

 商店経営している方からは、客が来なくなるということ。

B車両を小さくしたから小学校の団体行動に対応できない。増発すればそれだけコスト

 増となる。

C電話予約の煩わしさ。利用者の67割が高齢者であり、いちいちの電話予約は煩わし

 い。「定期バスの頃は良かった」との声もある。

D利用時間帯の集中

 午前中に病院に行く、など利用時間が集中。閑散時間帯の対策が困難。

 

3.感想

 

これは今日的に、極めて必要度の高い事業と思います。にもかかわらず、運営は多くの困難を伴うことを、天童市を視察し、改めて強く感じました。マネをすれば良いというものではないことを、いくつかの先進事例を学ばせていただくたびに思います。

私は、丸亀市を中心市とする定住自立圏構想の諸施策の中でもこの公共の足の充実は最大のテーマと考えていますが、自立圏23町の実状を思うにつけ、また、このように先進地に学ぶにつけ、これがいかに難しい問題であるかを考えてしまいます。

ある程度の「空気バス」は仕方ないのだ。揶揄するほうが悪い。百人百通りの要望はあろうが、どこかで手を打たねばならないのだ、と、構想する前から「喧嘩腰」のような気持ちになります。しかしそれでも、病院に行けない、買い物に行けないという、やがて自分の身にふりかかるこの課題を、いつまでも後回しにはできません。

丸亀市で現在運行されているコミュニティバスをさらに便利に。しかし市民の負担は大きくなることでしょう。そのことを、行政は誠実に市民に説明し、理解と協力を求めつつ、最大の効果と満足点を模索するしかないのでしょう。

何度も私から提唱しているとおり、行政が市民の声を聴く姿勢を、格段に広げ充実させていくことが、わが市での取り組みにまず必要だと思います。その上で、この天童市の路線型、区域型混合の方式を、ぜひ参考にしてほしいと思います。

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