○豊見城(とみぐすく)市新庁舎建設計画について 沖縄県豊見城市
1.建設に向けてのこれまでの経緯
旧庁舎(現庁舎の前の庁舎)は昭和33年に建設。老朽化、手狭、増築を重ねた不便、分散化が課題となる。
平成5年には新庁舎建設が検討され、審議会を設置し、建設位置まで答申を得るも財政逼迫で一旦は立ち消えに。
14年度、旧庁舎の位置が商業施設の中にあったことから現庁舎の土地を購入。「10年以内の新庁舎建設」を目処とし、当分の館、仮庁舎としての現庁舎に移転。しかし財政的に困難で新庁舎建設は17年度に再び凍結。
24年度の総合計画の中に新庁舎への移転、小中学校の建て替えなどが盛り込まれ、本格検討に。25年、国の「緊急防災・減災事業債制度」を活用することを検討。これにより建設計画を進めることとなった。28年度着工を目指している。
「緊急防災・減災事業債制度」は東日本大震災の教訓から、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災・減災のための地方単独事業を対象とする地方債。庁舎建設に適用される例は少ないが、豊見城市の場合、庁舎の位置が海岸から近く、津波災害の可能性に該当し、適用となった。26~28年度の適用期間。
2.構想している新庁舎の特徴
シンプル、機能性、防災拠点としての免震構造、オープンフロアで壁なし、フリーアクセスが可能、床下配線で省スペース。コンビニを検討。
上記地方債の適用期限から逆算し、通常基本構想、基本計画に各1年、計2年を費やすところ、両方をまとめて発注する方式を採用。審議会は毎月開催するピッチとなった。
起債充当率100%、交付税措置70%、市負担30%。
上位計画である総合計画、都市計画マスタープランにおける方針として「中心市街地に行政機能を置く」ことと明記。これを基に11の候補地から適地を選定した。
新庁舎の延べ床面積の積算では、総務省方式による10,859㎡に加え、2,030㎡の保健センター、多目的ホール等を加えた概ね13,000㎡とした。
事業手法の比較。公設直営(従来)方式、PFI方式、リース方式を検討。前述のとおり国の制度に呼応したスピードが優先された。PFI方式では民間事業者の意向調査やリスク分担の整理等、事前準備に相当の期間を要すること、導入可能性調査やアドバイザー費用がかかることから採用せず。リース方式では国の補助事業対象外となることから、これも採用しないこととなった。
設計者の選定方式の比較。競争入札方式、コンペ方式、プロポーザル方式を検討。コンペ方式はプランを提示させ、設計案を選択するもので、大きな変更が難しいことから選択せず、市民や発注者のニーズへの対応、技術・経験・実績を備えた設計者の選定に優れたプロポーザル方式を選んだ。
事業スケジュール。H26年度の1年間で基本構想・基本計画を構築。27年4月にプロポーザル。27年度末に基本設計、実施設計が完了。28年4月に着工の予定。
3.新庁舎建設に市民の声を盛り込む
市民アンケートでは新庁舎の位置、あり方、新庁舎に求める機能、施設、設備等について聞いた。2,000人に実施。回答673人中40%に当たる271件に「自由意見」書き込みあり。
市民ワークショップは参加者20名程度、2~3グループで3回開催した。19時からの開催とした。今回の視察後、9月にはレイアウト案を示して身体障害者団体との意見交換を予定している。
市庁舎建設審議会は10委員で構成。大学学長など学識者、国・県関係者、自治会会長、社会福祉協議会会長、婦人連合会会長、青年連合会会長、商工会会長、JA支店長。5回開催したほか、先進地視察も実施した。
議会については、「議事堂建設についての特別委員会」を設置。議論はこれから始まる。
4.感想
丸亀市でも合併特例債の活用期間が迫る中、現在の計画では31、32の両年度にまたがる建設工事のうち、32年度工事分は適用とならないことになっています。
定まった制度であるとはいえ、割り切れない感じがします。
唯一考えられるのは基本構想・基本計画の策定に要する時間を短縮することであり、豊見城市はそれを実際に行っています。
視察でこのことを尋ねると、それぞれに1年間をかけることの意味は市民の声をどこまで聞くかということになり、その作業をいかに充実させて短時間ですませるかにかかっているとのことでした。
これらの財政事情を説明すれば、市民の理解は得られると思います。また事務作業が限られた人員でどうしても1年間を要するのであれば、臨時に増員するなど手立てが講じられるのではないのかと私は思います。新幹線よりも速く、と無茶なことを言っているのかも知れませんが、現に豊見城市は行っているのであり、この研修視察の後、丸亀市の近隣市でも同様のことを聞きました。
国の特別な起債制度を活用する点は私たちの参考にはなりませんが、市の財政負担をできるだけ軽減するために全力を投入し、英断をしてほしいと思います。
まだ新庁舎の姿もなく、建設工事の現場も見ない視察となりましたが、丸亀市の現在にとって大事なことを教わりました。ぜひ参考にしてほしいと念願します。